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2023年4月15日 (土)

新世代のロック・アイコンか?

Title:Praise A Lord Who Chews But Which Does Not Consume;(Or Simply,Hot Between Worlds)
Musician:Yves Tumor

おそらく今、もっとも注目されているロックミュージシャンの一人、Yves Tumor(イヴ・トゥモア)。アメリカはマイアミ出身で現在はイタリア在住という彼。前々作「Safe in the Hands of Love」で、かのWarpからデビューしたことでも大いなる話題に。徐々に注目を集めており、今年のフジロック出演も決定。今回のアルバムは日本でも注目を集めており、一躍、話題のミュージシャンとなっています。

今回のアルバムリリースに際して「異形のロックスター」というコピーを用いているようですが、エレクトロサウンドを用いつつ、実験性の高い音楽性が持ち味の彼。特に前々作「Safe in the Hands of Love」ではその実験性という方向性が強く、若干聴きにくいアルバムになっていました。ただ、前作「Heaven to a Tortured Mind」ではよりポップな歌モノ路線にシフト。さらに今回のアルバムでは以前の彼ららしい実験性を垣間見せつつも、アルバム全体としてはポップで聴きやすいロックのアルバムといった作品になっていました。

まず冒頭「God Is a Circle」は軽快な打ち込みのリズムを入れつつ、疾走感あるギターサウンドが特徴的なナンバー。続く「Lovely Sewer」もテンポよいニューウェーヴ風の楽曲。エレクトロサウンドとロックを融合させた、テンポよく聴きやすさを感じさせるナンバーが続きます。

ただ、アルバムの中で大きな印象を受けるのが中盤「Parody」「Heaven Surrounds Us Like a Hood」ではないでしょうか。ファルセットボイスのメロがまず耳に残る作品で、清涼感を覚えるファルセットボイスによりAOR調にまとめられたメロディーラインはThundercatあたりを彷彿とさせる楽曲。そこに重なるサウンドはサイケロックにエレクトロサウンドも融合させたイヴ・トゥモア流のロックサウンド。ファルセットボイスに一種のセクシーさを感じさせつつ、彼らしい実験性のある、今のロックのスタイルを提示したような作品に仕上がっています。

後半の「Echolalia」も印象的。軽快でリズミカルなサウンドをベースとしつつ、セクシーさも感じるボーカルが加わり、グラムロック的な雰囲気を感じさせる楽曲。エロチックを感じさせる楽曲に独自性を感じさせるロックチューンに仕上がっています。

間には「Operator」「In Spite Of War」など疾走感のあるポップなギターロックを挟みつつ、アルバム全体としてはエレクトロやサイケロックを融合させたロックチューンは、グラムロック的な要素も強く、どこかセクシーさも感じさせます。彼については「ロック・アイコン」という呼ばれ方をしています。ヒットシーンの中心がHIP HOPに代わった現在において、ロック・アイコンという言葉はなかなかお目にかからなくなりましたが、独特の個性を押し出した音楽性を持つ彼は、まさに「ロック・アイコン」という言葉がふさわしいミュージシャンと言えるでしょう。現状、残念ながらまだ売上的に大きくブレイクはしていませんが、アルバム毎に楽曲のポピュラリティーも増しているだけに、今後一気にブレイクする可能性も高そう。今後のロック界を担う・・・というと大げさな表現かもしれまえんが、そんなポテンシャルも感じさせる傑作でした。

評価:★★★★★

Yves Tumor 過去の作品
Safe In The Hands of Love
Heaven To A Tortured Mind

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