「KING」を超えて「GOD」に
Title:GOD Deluxe Edition
Musician:忌野清志郎
忌野清志郎が2005年にリリースしたソロアルバム。このたび、シングル及びレア音源をまとめたDisc2と、当時のカウントダウンジャパンのライブ映像などを収録したDVD/Blu-rayをまとめたデラックスエディションとしてリリースされました。
本作については、リアルタイムで聴いており、その当時の感想も当サイトでアップしていました。既に旧サイトは閉鎖しているのですが、手元パソコンに残っている過去ログでこのアルバムの感想をあらためて読んだのですが・・・あまりに稚拙な感想だったので今回は再アップはやめておきました。以前、「KING」のデラックスエディションをここでも取り上げたのですが、その時と一緒ですね・・・。
そんな訳で、本作を聴くのは発売当初にリアルタイムで聴いて以来なのですが、久々に聴くと、本作、こんなに素晴らしい傑作だったのか!!と驚いてしまいました。実はリアルタイムで聴いた時の感想はさほど高い評価ではなかったんですよね。ただ、それもその頃の私の音楽的な知識の拙さが大きな要因だったのですが。
前作「KING」もルーツ志向の強いアルバムでしたが今回のアルバムも彼のルーツ志向が非常に強い作品に仕上がっていました。まず1曲目「ROCK ME BABY」から、非常に分厚く「黒い」ホーンセッションをバリバリと聴かせる、ストーンズ張りのロックンロールからスタートします。「仕草」は哀愁たっぷりのムーディーな雰囲気で、ホーンセッションを聴かせつつ、フォーキーな要素も。「REMEMBER YOU」は60年代のポップソングを彷彿とさせるメロディアスで切ない曲調に仕上がっています。
タイトルチューン「GOD」もホーンとピアノで爽快なロックチューンに仕上げていますし、それに続く「KISS」もホーンセッションとギターでミディアムチューンのソウル風のナンバーに。「サイクリング・ブルース」もタイトル通りのブルースナンバーをしんみりと聴かせてくれます。
このアルバムは彼のプライベイトスタジオ「ロックン・ロール研究所」で1年かけて制作されたそうで、それだけの力の入れようも感じます。特にバックのホーンセッションやピアノのサウンドが非常に「黒さ」を醸し出しており、彼が大きな影響を受けたサザンソウルのサウンドの持つ、ザラザラ感をそのまま再現しています。そしてこのサウンドをバックにしているからこそ、アルバム全体として彼が影響を受けたロックンロールやソウル、ブルースからの影響を強く感じさせます。
一方、歌詞についても彼らしさが存分に発揮されており、この点は前作「KING」以上に社会派な歌詞が多い作品に。なんといっても「ママもうやめて」は児童虐待について取り上げたという、かなりヘヴィーなナンバー。「GOD」についても、「神」の存在をアイロニックに表現しており、このような歌詞は間違いなく彼のルーツであるブラックミュージックでは登場しないでしょう。
そしてラストを締めくくる「JUMP」。間違いなく忌野清志郎の曲の中でも指折りと言える傑作。切なさと明るさを同居させたメロディーも印象的ですし、社会情勢をユニークに切り込みつつ、一方では非常に前向きな歌詞も印象に残ります。もう文句のつけようのない締めくくりとなっています。
この時、キヨシローは54歳。既に言わずと知れた「レジェンド」と言える位置にいるミュージシャンでした。それにも関わらず、このアルバムは、彼にとって最高傑作では?とすら思えるほどの勢いのある充実したアルバムに仕上がっていました。
ちなみにDisc2のシングル&レア音源集ももちろんよかったですが、こちらは前作「KING」のボーナスディスクのライブ音源に比べると、ちょっと物足りなかったかな。ただそれを差し引いても、十分楽しめる内容ではありましたが。
あらためて忌野清志郎というミュージシャンの偉大さを感じることが出来る傑作アルバム。この次のアルバムが生前リリースした最後のオリジナルアルバムとなってしまうのですが、この段階でこれだけ脂ののったアルバムを作り上げており、あまりにも早かった彼の死を非常に残念に感じました。
評価:★★★★★
忌野清志郎 過去の作品
入門編
忌野清志郎 青山ロックン・ロール・ショー2009.5.9 オリジナルサウンドトラック
Baby#1
sings soul ballads
ベストヒット清志郎
COMPILED EPLP ~ALL TIME SINGLE COLLECTION~
KING Deluxe Edition
ほかに聴いたアルバム
Not Unusual/阿部真央
途中、カバーアルバムを挟んだため、オリジナルとしては実に約3年ぶりとなるあべまのニューアルバム。いままでギターの弾き語りスタイルだった彼女が、今回のアルバムでは主軸の楽器をピアノへとシフト。さらに全体としてバラードナンバーでしんみり聴かせるようなアルバムに。より大人になったような落ち着いた作風になっている一方、歌詞を含めて良くも悪くも大人しめの作風はちょっとパンチの弱さも感じます。とはいえ、次の一歩を歩みだすには必要な1枚とも言えるかもしれない本作。これからの彼女の動向も注目です。
評価:★★★★
阿部真央 過去の作品
ポっぷ
シングルコレクション19-24
おっぱじめ
Babe.
YOU
阿部真央ベスト
まだいけます
MY INNER CHILD MUSEUM
花降る空に不滅の歌を/a flood of circle
こちらは約1年3か月ぶりとなる新作。a flood of circleと言えば、アルバム毎に出来不出来の差が激しく、特にポップ路線にシフトした時は駄作率が高くなってしまっていました。前作「伝説の夜を君と」もポップ路線に走った結果、正直今一つだったので今回はどうか・・・と思っていたのですが・・・これが快心作とも言うべき傑作になっていました。特に疾走感あるギターロックを主軸としつつ、メロディーラインはほどよくポップ。ポップなメロとハードなサウンドをほどよく融合させたスタイルとなっており、前々作「2020」はまさにそんなポップとハードを上手く融合させた傑作になっていただけに、それに続く傑作になっていました。この路線を次回作以降も維持できれば良いのですが・・・ともかく、このアルバムに関しては彼ららしさが文句なしに発揮されていた傑作です。
評価:★★★★★
a flood of circle 過去の作品
泥水のメロディー
BUFFALO SOUL
PARADOX PARADE
ZOOMANITY
LOVE IS LIKE A ROCK'N'ROLL
FUCK FOREVER
I'M FREE
GOLDEN TIME
ベストライド
"THE BLUE"-AFOC 2006-2015-
NEW TRIBE
a flood of circle
CENTER OF THE EARTH
HEART
2020
GIFT ROCKS
伝説の夜を君と
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