レジェンドによるデビュー40周年記念作
Title:On The Street Again -Tribute & Origin-
Musician:The Street Sliders&Various
1983年にメジャーデビュー後、そのロックンロールのスタイルで数多くのミュージシャンたちに影響を与えたThe Street Sliders。惜しまれつつ2000年には解散した彼らですが、今年はデビュー40周年ということで数多くの企画が予定されており、5月3日には、日本武道館での再結成ライブも予定されています。そんな中、リリースされたのが本作。2枚組のアルバムのうち1枚はTributeとして、彼らの影響を受けた数多くのミュージシャンたちがスライダーズの代表曲をカバー。そしてもう1枚はOriginとして、彼らの代表曲をリマスタリングして収録したベストアルバムとなっています。
このトリビュートアルバムの方が非常に豪華で、The Birthdayにクロマニヨンズ、仲井戸麗市、渡辺美里、斉藤和義、エレカシといった大物からGEZAN、T字路sのような、知る人ぞ知る的な実力派バンドまでズラリと並んでおり、スライダーズが数多くのミュージシャンたちによくわかります。
どのミュージシャンたちも実力の持ち主なだけに、それぞれ楽曲を自分のスタイルで解釈しつつ、一方でスライダーズへの愛情もしっかりと感じさせるカバーになっていました。The Birthdayの「Let's go down the street」はチバのしゃがれ声が楽曲の雰囲気にピッタリマッチ。クロマニヨンズの「Boys Jump The Midnight」も彼ららしいパンキッシュにまとめつつ、楽曲をカバーできる喜びを感じさせる若々しいカバーになっています。
斉藤和義の「ありったけのコイン」も彼らしいブルージーなギターの弾き語りによるカバーになっており、エレカシの「のら犬にさえなれない」もまた、エレカシらしい力強いバンドサウンドを聴かせつつ、メランコリックさを前に押し出した点もエレカシらしさを感じます。
そんな中、個人的に耳を惹いたのは渡辺美里の「Special Women」。正直、最近の彼女のボーカルは、声量にまかせて声を張り上げただけ、といった印象があったのですが、ごめんなさい!長年のファンでありながら彼女のボーカリストとしての実力を甘く見ていました!!これでもかというほどパワフルなボーカルながらも、しっかりとリズムに乗ってロッキンに聴かせるカバーになっており、文句なしにカッコいい!最近、「大人」路線にシフトしたような彼女ですが、久しぶりにロックな渡辺美里を感じるカバーになっていました。
一方、2枚目のオリジナル盤。私自身は、スライダーズについてはリアルタイムではほとんど聴いておらず、2003年にリリースした「THE LEGEND」を聴いていたくらいの知識でした。そんな私が今回、久々に彼らの曲を聴いたのですが、こちらも文句なしにカッコいい!すっかりスライダーズのサウンドに魅了されてしまいました。
彼らの曲の大きな魅力は、やはりなんといってもそのバンドサウンドでしょう。サウンドは比較的音数を絞ってスカスカ。にも拘わらず、非常に力強いグルーヴ感を覚えます。ここらへん、明確にストーンズからの影響を感じさせるのですが、本家ストーンズと同様、グルーヴを生み出す独特のタイム感が素晴らしいの一言でしょう。そこに乗るHARRYのボーカルも非常にカッコよく、サウンドにもマッチ。こういうグルーヴを出せる日本のロックバンドは、今の時点でも稀有ではないでしょうか。
また「Baby、途方に暮れてるのさ」ではレゲエのリズムを取り入れていたり、「愛の痛手が一晩中」ではフォーキーに聴かせてくれていたりと、様々な音楽への挑戦も魅力的。さらにこれらの曲がロックのナンバーの中に入っていても全く違和感ない点、これらの曲でもしっかりとスライダーズらしさが楽曲を流れているからでしょう。
これだけ本格的なロックンロールを演りつつ、日本武道館を十分埋めれるだけの人気をしっかり確保していた点、日本の音楽シーンも捨てたもんじゃないな・・・とも思ってしまいます。彼らの曲の魅力は、今聴いても全く衰えることはありません。むしろ時代を経て、あらためて彼らの唯一無二のバンドサウンドに魅了されるロックリスナーも多いのではないでしょうか。今回のベストアルバムでは、そんな彼らの魅力を存分に味わうことが出来ました。5月3日のライブは残念ながらさすがに行けないのですが、ライブもカッコいいだろうなぁ・・・。
評価:★★★★★
ほかに聴いたアルバム
Sunshine/藤巻亮太
ソロデビュー10周年の節目に、約5年4か月ぶりにリリースしたオリジナルアルバム。レミオロメンの時から変わらないポップでメロディアス、ほどよくフックも利いたメロディーラインが魅力的な一方、全体的に無駄に分厚いサウンドが重ねられているようなアレンジにはちょっと陳腐さも感じます。レミオロメンの最後の方から思っているのですが、彼の書くメロディーは比較的シンプルなので、アレンジももっとシンプルの方がおもしろいと思うのですが・・・。
評価:★★★★
藤巻亮太 過去の作品
オオカミ青年
旅立ちの日
日日是好日
北極星
RYOTA FUJIMAKI Acoustic Recordings 2000-2010
君に会いたいんだ、とても/矢野顕子・野口聡一
宇宙飛行士の野口聡一がISSに滞在中に見た風景を歌詞にまとめ、それを矢野顕子が曲をつけてピアノ一本で歌い上げた作品。なんでこんな企画が登場したんだ??と思いますし、一歩間違えればトンデモになってしまいそうなアルバム・・・。実際、歌詞については、無理やり曲をつけたような作品も少なくなく、若干違和感が。「宇宙で見た世界」と言われても、うーん・・・と感じてしまいます。とはいえ、矢野顕子の曲自体は今回も絶品で、この企画をなんとか成立させている大きな要素になっています。
評価:★★★★
矢野顕子 過去の作品
akiko
音楽堂
荒野の呼び声-東京録音-
Get Together~LIVE IN TOKYO~(矢野顕子×上原ひろみ)
矢野顕子、忌野清志郎を歌う
飛ばしていくよ
JAPANESE GIRL - Piano Solo Live 2008 -
さとがえるコンサート(矢野顕子+ TIN PAN)
Welcome to Jupiter
矢野顕子+TIN PAN PARTⅡ さとがえるコンサート (矢野顕子+ TIN PAN)
矢野山脈
Soft Landing
ラーメンな女たち(矢野顕子×上原ひろみ)
ふたりぼっちで行こう
音楽はおくりもの
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