バンドとしての安定感が増した1枚
Title:Tank-top Flower for Friends
Musician:ヤバイTシャツ屋さん
約2年半ぶりとなるヤバTのニューアルバム。相変わらず「Tシャツ屋さん」であるにも関わらずタイトルやジャケットがなぜかタンクトップというユニークさは相変わらず。人気の面では一時に比べて若干落ち着いた感もありますが、昨年8月には(ちょっと意外だったのですが)初となる日本武道館ライブを成功させるなど、まだまだバンドとしての勢いを感じさせる活動となっています。
前作「You need the Tank-Top」ではいい意味でバンドとしての安定感を感じさせる作品となりました。メンバーもそろそろ30代。現在のメンバーとなって活動も来年では10年目ということで、そろそろ有望若手株から中堅人気バンドに脱皮していっている感もあります。そんな中でリリースされたニューアルバムですが、前作以上にいい意味でバンドとしての安定感を覚える作品になっていました。
まず前作以上に楽曲のバリエーションを感じさせます。アルバムの冒頭「Blooming the Tank-top」こそ、マキシマム ザ ホルモン直系のハードコアからスタートするのですが、「ちらばれ!サマーピーポー」は夏フェスを意識したような爽やかさも感じるギターロックナンバー。冒頭2曲はハードなナンバーが続いたかと思いきや、続く「dabscription」はメロウなAORナンバーとなっており、ヤバTのイメージとは少々異なるナンバーに驚かされるのではないでしょうか。
その後もヘヴィーなギターロックが並んだかと思いきや、「インターネットだいすきマン」のような脱力的なポップスが入ってきたり、「くそ現代っ子ごみかす20代」や「職務質問~1日2回も~」のようなハードコアテイストの曲が入ったかと思えば、岡崎体育とのコラボで話題となった「Beats Per Minute 220」のような疾走感あるポップ色も強いギターロックが入ったり、前作同様、パンクロック、ギターロックの色合いが目立つ構成になっていたのですが、いい意味で緩急を感じさせるアルバム構成も魅力的で最後まで一気に楽しむことが出来ます。
歌詞も前作同様、以前の彼らのような「いかにも」な内輪的なネタは消えて、「ちらばれ!サマーピーポー」や「俺の友達が俺の友達と俺抜きで遊ぶ」のような、陰キャ思考の、広い層が同調できそうなネタの曲が並びます。アニメ「かいけつゾロリ」の主題歌「ZORORI ROCK!!!」がアルバムの中に入っていたのはちょっと意外。アニメの内容に沿った歌詞の曲なので、普通、オリジナルアルバムには収録されなさそうなタイプの曲なのですが、こういう曲もアルバムの中に違和感なく組み込めるのも彼ららしいといった感じでしょうか。
ちなみに、彼らの歌詞を聴いてちょっと思ったのですが、ヤバTって、というか作詞担当のこやまたくやって、女の子や友人と一緒のバンド組んでいるし、さらにそれが大成功しているし、普通に考えれば今どきの言葉でいえば「陽キャ」だと思うのですが、それでも、こういう陰キャ視点の曲の方が受けがいいというのは、「ぼっちざろっく」が人気を博するように、もう、ロックというのは「陰キャ」が聴くものになったのでしょうか・・・?今時の「陽キャ」はHIP HOPなのかなぁ?ま、この年齢(40代)の私にとってはどうでもいいことといえばどうでもいいことなのですが。
そんなことを考えつつ、ただアルバムとしては前作同様、いい意味で安定感が増して、いままでのいかにも若手的な内容から徐々に「大人」にシフトしつつあるようにも感じます。バンドとして、まだまだ変化し続ける途上のようにも感じされる彼ら。そんな成長の最中の1枚として聴きごたえもある傑作でした。
評価:★★★★★
ヤバイTシャツ屋さん 過去の作品
We love Tank-top
Galaxy of the Tank-top
Tank-top Festival in JAPAN
You need the Tank-top
ほかに聴いたアルバム
WINK TOGETHER/CHAI
2021年5月にリリースしたアルバム「WINK」収録曲を、世界5か国のミュージシャンとコラボしたリミックスアルバム。もともとがエレクトロ色が強いポップスアルバムだったこともあり、リミックスの方もエレクトロ色が強め。ただ、ZAZEN BOYSと組んだ「ACTION」のファンキーなサウンドが断然カッコよく、やっぱり彼女たちはバンドサウンド主体のロックな方面が似合っているように思うんだよなぁ・・・。次回作がどの方面に振り切れるのか気になるところなのですが・・・。
評価:★★★★
Journey through the new door/BLUE ENCOUNT
4人組ロックバンドによる5曲入りのミニアルバム。ほどほど分厚いサウンドを聴かせるギターロックに、メランコリックさを加味したポップなメロディーラインは、良くも悪くも典型的なJ-POPバンドといったイメージ。ただ、楽曲的にはインパクトもあり、バンドとしての訴求力も感じさせます。ちなみにこの春から、ベースの辻村勇太が活動拠点をアメリカに移しながらも、脱退はせず、楽曲制作やレコーディングは一緒に行うとか。正直なところ、あまり海外向けのバンドといった印象はないのですが、アメリカでの活動がこのバンドにどのような刺激を与えるのか、楽しみな感じはします。
評価:★★★★
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