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2023年3月21日 (火)

シューゲイザー好き必聴

Title:After the Magic
Musician:Parannoul

Afterthamagic

韓国の音楽と言えば、いまや日本どころか世界を席巻しているK-POP。その好き嫌いに関わらず、人気ぶりは否定しようがありませんし、また日本に限らず、既に一時期のブームというよりもひとつのジャンルとして定着しつつあります。個人的にはあのタイプのアイドルポップスは好きではないので、シングル単位くらいしか聴いていないのですが、ただもちろん韓国の音楽シーンは、いわゆるアイドルポップスだけではありません。今回紹介するには、世界的なインディーシーンの中で注目を集めているポストロックミュージシャン、Parannoul。本人は表に出てこないため、人となりは不明なのですが、宅録系のソロミュージシャンだとか。ある意味、K-POPとは真逆の位置にいるミュージシャンとも言えるかもしれません。

アルバムは、まずギターのストロークで弾き語る「Polaris」からスタート。清涼感ある歌声とストリングスの音色が美しく、メランコリックなメロも耳を惹くのですが、この楽曲が本領を発揮するのは中盤から。前半の静かな雰囲気が一転、1分56秒からいきなりダイナミックなノイズが入ってきて、楽曲の雰囲気は一転します。とはいえ、ホワイトノイズで埋め尽くされた曲は非常に幻想的で美しく、典型的なシューゲイザーサウンドなのですが、そのノイズに身をゆだねつつ楽しめる作品になっています。

3曲目「Arrival」も最初から楽曲はギターノイズで埋め尽くされる、シューゲイザーの作品。ただ、そのバックで静かに鳴っているピアノの音色が耳を惹きますし、メロディーラインは至ってメランコリックでポップに仕上がっています。さらにそれに続く先行シングル「We Shine at Night」も魅力的。こちらも楽曲を埋め尽くすノイズの中、バンドサウンドが鳴り響く楽曲で、切なさを感じるメロディアスな歌も魅力的。また、ノイズの中でしっかりとビートを刻むドラムの音色も印象的。こちらはなんとなく90年代に活躍した日本のバンド、スーパーカーを彷彿としました。

「Parade」も序盤はピアノとストリングスが入ってケルティッシュなポップソングからスタート。こちらも途中からギターノイズとダイナミックなバンドサウンドが埋め尽くすのですが、序盤のケルティッシュやサウンドやメロは最後まで流れ続けているのもユニーク。「Sketchbook」もギターノイズで埋め尽くされつつ、エレクトロビートが鳴り響くリズミカルな作品となっている点がまた独特。ただビートにまけない狂暴さを感じるノイズも印象に残ります。

さらに後半「Imagination」はグッと変わって、ポップでメロディアスなギターロックに。爽やかなサウンドが印象に残ります。こちらも途中からノイジーなサウンドが入りますが、終始、爽やかなポップソングという印象は変わりません。またラストを締めくくるタイトルチューン「After the Magic」も、ホワイトノイズで美しくデコレートされつつ、ストリングスやピアノの音色が美しいポップチューンに。女性コーラスも入りつつメランコリックに聴かせる歌も実に魅力的な作品になっています。

そんな訳で全10曲1時間弱の長さで、終始ドリーミーなギターノイズが鳴り響くこの作品。この楽曲を埋め尽くすホワイトノイズとポップでキュートなメロディーラインという組み合わせは、まさにシューゲイザーの王道とも言っていいスタイルとなっています。そこにピアノやストリングスの音色も加わり、実に美しい音の世界を繰り広げられる作品になっています。

今回のアルバムのキャッチフレーズは「このアルバムは、あなたが期待するものではなく、私がいつも望んでいたものです」というもの。ただ率直に言って、シューゲイザー好きなら間違いなく待ち望んていたようなアルバムではないでしょうか。個人的にも思いっきり好みの壺をついた今回の作品。まさに「私的」ベストアルバムの年間ベストクラスのアルバムだったと思います。歌が韓国語という点も、ちょっとした「異世界」感があり楽曲にプラスに働いている感も。いや、すっかりはまっていきそう。全シューゲイザー好きは聴くべき1枚です。

評価:★★★★★

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