坂本龍一の音楽家としての意欲も感じる
Title:12
Musician:坂本龍一
現在、がん闘病中の坂本龍一。ただ、音楽活動については積極的に続けており、昨年末もオンラインでのライブ配信を行い大きな話題となりました。そしてそんな中リリースされたのが、オリジナルアルバムとしては実に約6年ぶりとなるアルバム。タイトル通り、12曲の楽曲が収録されている作品となっています。
タイトルを見ればすぐにわかると思うのですが、今回、楽曲のタイトルには日付が振られています。今回のアルバムは彼の闘病生活の中で、日記を描くにように作成された作品となっており、それぞれ作成した日の日付が曲名になっています。スタートしたのは2021年の3月。そこから11月へと飛んで、そのあとは2022年の3月まで、比較的コンスタントなペースで作成が進められています。
日々変化する体調の中での、その時々の体調と音楽作成のペースがリンクしていくのでしょう。おそらく特に2021年の11月以降は体調も持ち直し、また、多くの曲が作成されているあたりは、ひょっとしたらアルバム制作も意識したのかもしれません。特に序盤「20210310」から「20220123」はピアノで静かに聴かせるアンビエントのような作品が続いており、また曲によっては、彼の息遣いが録音されていると思われる曲も。ここらへんの曲はピアノで音をひとつずつ拾いつつ、生きているということをアピールするような曲が続いていたように思います。
ユニークなのはその後「20220202」や「20220214」などエレクトロを取り入れた作品が並んだり、さらに「20220302」には「saradande」という副題がついているなど、ただ音を紡ぐのではなく1つの曲を作り上げようとするような創作意欲も感じさせる曲も並びます。特にこの時期、3月26日にはオーチャードホールでのコンサートにゲスト出演しており、おそらく体調としてもかなり盛り返してきたのでしょう。それが楽曲にも表れているのではないでしょうか。
そういう意味では後半になると、複雑で独特のメロディーラインを聴かせるピアノ曲が並びます。特に日付的にはラストとなる「20220404」は非常に美しいピアノで奏でるメロディーが印象的な曲。序盤のようなアンビエント的な曲調ながらも、しっかりと構築されたメロディーラインのある曲に仕上がっています。
全体的にはアンビエントテイストが基調となりつつ、坂本龍一の音楽家として衰えることない意欲を感じさせる美しい作品に仕上がっていました。決して「闘病中のアルバムだから」といったような同情的な見方ではなく、ひとつの音楽作品として非常に美しい音を聴かせてくれる傑作アルバムに仕上がっていたと思います。おそらくラストの日付が「20220404」と1年前ということを考えると、この続きもあるのではないでしょうか。あえて言わせてもらえば、次回作も期待して待っています!
評価:★★★★★
坂本龍一 過去の作品
out of noise
UTAU(大貫妙子&坂本龍一)
flumina(fennesz+sakamoto)
playing the piano usa 2010/korea 2011-ustream viewers selection-
THREE
Playing The Orchestra 2013
Year Book 2005-2014
The Best of 'Playing the Orchestra 2014'
Year Book 1971-1979
async
Year Book 1980-1984
ASYNC-REMODELS
Year Book 1985-1989
「天命の城」オリジナル・サウンドトラック
BTTB-20th Anniversary Edition-
BLACK MIRROR : SMITHEREENS ORIGINAL SOUND TRACK
Ryuichi Sakamoto: Playing the Piano 12122020
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