バンドの危機を乗り越えて(?)
Title:COMPACT DISC
Musician:ゴールデンボンバー
オリジナルアルバムとしては約3年3か月ぶりとなる新作。ゴールデンボンバーといえば、紅白に連続出場していた2010年代中盤においては、まさに「一世を風靡した」と言ってもいいほどの国民的な人気ぶりを博していました。その後も、なぜかヒットは出していたのに紅白に呼ばれなくなったり、本人たちもそれを逆に自虐的にうちだした「もう紅白に出してくれない」なんていうアルバムをリリースしていた頃は、まだ高い人気を誇っていました。
しかし、ご存じの通り、2021年には鬼龍院翔の二股騒動が、さらに同じ年に歌広場淳の不倫騒動が取り上げられると、バンドとして危機に陥ります。特にメンバーの人なつっこいパーソナリティーもバンドの人気の要素であっただけに、この不倫騒動のショックは大きく、バンドとしての存続も難しいのではないか、とすら感じました。
そんな騒動を乗り越えてリリースされたのが久々となるニューアルバム。結果としては、ビルボードでは5位、オリコンでは3位という結果に。ただ、オリコンでの初動売上8千枚は前作の初動2万1千枚から大幅にダウンしています。ここ3年でCDをめぐる市場は大幅に変化したので、CDの初動売上大幅ダウンがそのまま人気の大幅ダウンとは言い切れません。やはり人気の落ち込みは否めないまでも、予想していたよりも上位に食い込んでおり、彼らにとってみれば大健闘とも言える結果になったようにも感じられます。
また、アルバムとしても彼ららしいユーモラスな楽曲が並ぶ、バラエティー富んだ展開になっているのはいままでと同様。まず第一に、このストリーミング全盛の時代にあえて「COMPACT DISC」というタイトルにしているあたりから、彼ららしさを感じます。
ユーモラスな曲といえば、まず目につくのは「Yeah!めっちゃストレス」で、松浦亜弥の2002年のヒット曲「Yeah!めっちゃホリディ」のパロディー。「おさかな地獄」も同じく2002年にヒットした「おさかな天国」のパロディーで、「魚は僕らを待っていない」という歌詞は、完全に「おさかな天国」のもじりとなっています。
サウンド的にも「Yeah!めっちゃストレス」はアイリッシュトラッド。鬼龍院翔が現地まで行って学んだそうです(・・・の割には、と思ってしまいますが・・・)。さらにタイトルからしてユーモラスな「踊るなよ-Do Not Dance-」はトランスですし、「THEガマン」はハードコア。「おさかな地獄」は典型的なビジュアル系っぽい作風になっていますし、「バブルはよかった」はタイトル通り、バブル期を彷彿させるようなシンセ主体の曲調に。しっかりと曲の内容と絡めて、かつバラエティー富んだ作風を聴かせてくれています。
いろいろな騒動はあったものの、アルバムとしてはいつものゴールデンボンバーらしい、ユーモラスで、バラエティー富んでいて、そしてちょっとだけアイロニックな、最後まで飽きさせない内容になっていました。ここらへん、いい意味で作詞作曲を手掛ける鬼龍院翔のウイットさを感じさせます。ただ、それを差し引いても、15曲68分というのはちょっとボリュームありすぎな感じも・・・。個人的にはあと2、3曲減らして50分程度の長さなら、ちょうどよかったような感じもするのですが。
評価:★★★★
ゴールデンボンバー 過去の作品
ゴールデン・アワー~下半期ベスト2010~
ゴールデン・アルバム
NO MUSIC NO WEAPON
キラーチューンしかねえよ
音楽が僕らを駄目にする
The Golden J-POPS
恋愛宗教論
もう紅白に出してくれない
ほかに聴いたアルバム
CAOLI CANO COLLECTION/かの香織
懐かしいなぁ・・・という感覚で聴いてみた作品。女性シンガーソングライターかの香織のベストアルバム。といっても、あまり深い思い入れがあった訳でもなく、まとまって音源を聴くのもこれがはじめて。同作にも収録されている1996年にリリースされた「午前2時のエンジェル」がリアルタイムでは結構、ラジオなどでよく流れていた記憶が。どちらかというと、当時のガールズポップの流れで取り上げられていた記憶はあるのですが、ただ、残念ながら大きなヒットはありませんでした。あらためて聴いても、比較的90年代っぽい軽快なポップソングがメインで、全体的に明るくメロディアスに、アコースティック主体のサウンドが特徴的。ちょっとセクシーなボーカルも魅力になっているのですが、インパクトという面で少々弱いのがヒットにつながらなかった要因かなぁ。90年代J-POPをリアルタイムに聴いていた世代だと、懐かしさを感じるかもしれませんが。
評価:★★★★
iCoN/Nobel Core
SKY-HI主催のレーベル「BMSG」の初のミュージシャンとしてメジャーデビューも果たしたラッパーの5曲入りとなるEP盤。ダークな雰囲気でリズミカルに聴かせるラップが特徴的ですが、タイトルチューンの「iCoN」はノイジーなギターサウンドも入ってロッキンな曲調。また全体的にもメロディアスなメロディーラインが流れており、特にラストの「ジェンガ」はしっかり聴かせる歌モノに。ラッパーとしてのスキルもさることながら、ソングライターとしてのメロディーセンスも感じられる実力の持ち主で、このメロディーセンスを生かせていけばおもしろい方向に成長しそうな予感も。
評価:★★★★★
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