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2023年3月19日 (日)

現役感バリバリ

Title:Mercy
Musician:John Cale

先日、御年75歳でバリバリの現役として活躍しているIggy Popのニューアルバムを紹介しました。今回紹介するのは、The Velvet Undergroundのメンバーとしてもおなじみのジョン・ケイル。なんとこの3月で御年80歳!!そんな彼が、なんとオリジナルアルバムをリリース。約6年ぶりとなる新作ということですが、さらにそのアルバムが、非常に挑戦的な作品になっていたというから驚かされます。もともと彼自体、キャリアのスタートからして現代音楽だったようですが、その時の挑戦心が、80歳となった今でも全く衰えていないのが驚かされます。

アルバムはまずタイトルチューンの「MERCY」からスタートしますが、ドリーミーなエレクトロチューン。続く「MARILYN MONROE'S LEGS(beauty elsewhere)」はタイトルとは裏腹に、メタリックなエレクトロサウンドを入れつつ、不気味で、ちょっとドリーミーな雰囲気が独特な作品となっています。

このように基本的に作品はドリーミーなサウンドで展開していきます。そんな中でもお経のような淡々としたボーカルが不気味に響く「THE LEGAL STATUS OF ICE」はメタリックなサウンドが特徴的。メランコリックな歌を聴かせる「I KNOW YOU'RE HAPPY」から、ラストはピアノやストリングスの音を物悲しく聴かせる「OUT YOUR WINDOW」も、金属音を響かせるようなピアノの音色がどこかメタリック。ラストはどこか無機質なメタリックさを感じさせる楽曲で締めくくられます。

そんな本作の中で、もうひとつ特徴なのはジョン・ケイルのボーカルでしょう。上にも書いた通り、御年80歳の彼。もちろん、もう「おじいさん」の声なのですが、そんな渋みのある声をアルバムの中で上手く生かしています。全体的にはサウンドのひとつとして楽曲に溶け込ませているような曲が多いのですが、「TIME STANDS STILL」ではメランコリックに力強く歌い上げていますし、「I KNOW YOU'RE HAPPY」では前述のようにメランコリックな歌を聴かせてくれます。彼の渋みのあるボーカルが、本作では重要な味になっていました。

また、もう一つ大きな特徴が、若手ミュージシャンが多く参加している点。特に「STORY OF BLOOD」では、今話題の女性シンガー、Weyes Bloodが参加。その歌声を聴かせてくれていますし、「EVERLASTING DAYS」ではAnimal Collectiveが参加。他にも様々なミュージシャンが参加しています。ともすればおじいちゃんと孫くらいの年の差がありながら、これだけ多くのミュージシャンに声をかけて参加させているあたり、彼の若々しさと年をとっても変わらない挑戦心を感じます。

もちろん、その結果としてのアルバムの出来が悪いわけありません。あのジョン・ケイルだから、という点抜きとして、現役感をバリバリ感じられる文句なしの傑作アルバムに仕上がっていました。しかし、自分が80歳になった時、これだけ柔軟に生きられるのか・・・ということを考えると、あらためてジョン・ケイルのすごさを感じ入ります。これだけ若々しいんだから、まだまだ次も、次の次も、新作を世に送り出してくれそうですね。いつまでもお元気で!!

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

NO THANK YOU/Little Smiz

Little

前作「Sometimes I Might Be Introvert」が大絶賛を受け、イギリスを代表する音楽賞、ブリッド・アワードで最優秀新人賞を獲得するなど、一躍注目のミュージシャンとなった、イギリスのラッパー、Little Simzの新作。HIP HOPを主軸にしつつ、メランコリックな歌も聴かせてくれるポップな作風が魅力的。また、エレクトロサウンドやトライバルなリズム、ジャズやオーケストラサウンドなど幅広い音楽を取り入れた作風に仕上げており、最後まで飽きさせません。前作に引き続き、本作もかなり高い評価を受けそう・・・。非常に自由度の高い作品ながらも、彼女の実力も実感できた傑作でした。

評価:★★★★★

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