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2023年3月12日 (日)

初の全米1位獲得シングルも収録

Title:Gloria
Musician:Sam Smith

2019年に自らがノンバイナリーであることを公言したSam Smith。同アルバムの先行シングルともなった「Unholy」は、ドイツ出身のシンガーソングライターで、トランスジェンダーでもあるキム・ペトラスとタッグを組んだ作品。同作は全米ビルボードチャート1位を獲得し、ノンバイナリーとトランスジェンダーを公言するミュージシャンが同チャートで1位を獲得するのは初の快挙だったそうです。

今回のアルバムは前作から約3年ぶりとなるニューアルバム。そんな彼の状況を反映されたアルバムだそうで、「創造的で眩しく、豪華で洗練された、予想外の、そして時にはスリリングでエッジの効いたサウンド」と「セックス、嘘、情熱、自己表現、不完全さに触れた歌詞」で構成されたアルバムとなっているそうです。実際、アルバムの1曲目を飾るのはタイトルそのまま「Love Me More」でゴスペル調のコーラスも美しい楽曲なのですが、タイトル通り、自分を愛せるようになってきた、という現在の心境を歌っています。

・・・とまあ、こうやって書くと、いかにも昨今のLGBTを反映した作品になっていますし、いわば「政治的な正しさ」を感じさせるアルバムにも感じさせます。そうなるとちょっと堅苦しいんじゃ・・・とすら感じたりするのですが、ただ実際は、そんなこと関係なく、今回のアルバムも文句なしに素晴らしいポップアルバムに仕上がっていました。

冒頭の「Love Me More」に続く「No God」も同じくメランコリックでゆっくり歌い上げる美しいナンバー。「Lose You」も物悲しく歌い上げる歌をバックに、打ち込みでリズミカルなビートが印象に残る楽曲に。カナダのSSW、ジェシー・レイエズをゲストに迎えた「Perfect」も力強く歌い上げるバラードナンバーに、と特に前半はその美しい歌声でメランコリックに歌い上げるポップチューンが続きます。

そしてこのアルバムの核となるのが中盤に組み込まれた前述の「Unholy」。荘厳に歌い上げるボーカルに、メタリックさも感じるエレクトロサウンド、そして後半から登場するキム・ペトラスのテンポよいラップが組み合わさった、挑戦心あふれた独自性の強い荘厳さを感じるナンバー。どこか気高さすら感じさせるこの曲は、全米1位も伊達じゃない、アルバムの中でも強いインパクトを持った作品に仕上がっています。

その後もアコギで聴かせる「How To Cry」、ダウナーなHIP HOP風のトラックが印象的な「Six Shots」、トライバルなリズムが印象的な「Gimme」、エレクトロダンスチューンで80年代っぽさも感じる「I'm Not Here To Make Friends」へと続き、タイトルチューン「Gloria」では荘厳なゴスペル調のコーラスを聴かせてくれます。

サム・スミスといえば、イギリスを代表するSSWなのですが、同じイギリスの大人気のSSWといえばエド・シーラン。個人的に時々混同してしまうのですが(笑)、今回のアルバムのラスト「Who We Love」では見事この2人のコラボが実現。実力派SSWの2人がタッグを組んだこともあり、非常に美しくメロディアスなポップチューンに仕上がり、このアルバムのラストを飾っています。

そんな訳で、バリエーションある作風を聴かせつつ、良質なポップチューンを並べた今回のアルバム。前述の通り、難しいこと抜きとして極上のポップスアルバムとして楽しめる傑作アルバムに仕上がっていました。ポップスシンガーとしての実力をいかんなく発揮した1枚。あらためてその魅力を強く感じることのできた作品でした。

評価:★★★★★

Sam Smith 過去の作品
IN THE LONELY HOUR
Thrill It All
Love Goes
Love Goes: Live at Abbey Road Studios


ほかに聴いたアルバム

JAPANESE SINGLES COLLECTION-GREATEST HITS-/Air Supply

ここでも何度か紹介している、主に80年代に人気を博した洋楽のミュージシャンの、日本でのシングル曲を集めた企画。今回はオーストラリアのポップバンドとして80年代に一世を風靡したAir Supply。名前は聴いたことはもちろんあるのですが、曲をまとめて聴くのははじめて。全体的にはメロディアスで爽やかなポップソング。良くも悪くも癖がないAORといったイメージなのですが、曲によってはカーペンターズを彷彿とさせる部分もあり、メロディーの良さはやはり耳を惹きます。いかにも80年代っぽい、広い層に支持されそうなポップソングが魅力的でした。

評価:★★★★

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