「穏やか」ではないサウンド
Title:タオルケットは穏やかな
Musician:カネコアヤノ
現在、人気上昇中。個人的にも今、もっとも注目を集めるシンガーソングライターのひとりであるカネコアヤノ。フォーキーなメロディーラインと、そんなメロに沿ったような、どこか郷愁感漂いつつも、一方で歌詞の登場人物の体温を感じられそうな歌詞が特徴的。先日もはじめて彼女のライブに足を運び、その実力を再認識したのですが、そのライブツアーのタイトルにもなったアルバムがこちら。オリジナルアルバムとしては、約1年8か月ぶりのニューアルバムとなります。
特に今回のアルバムに関しては、よりギターサウンドやバンドサウンドを前に押し出した、ロックテイストの強いアルバムに仕上がっています。そもそもアルバム冒頭「わたしたちへ」は、これでもかというほど強烈なギターノイズからスタート。さらにギターを聴かせつつ、そのノイズの向こうから彼女のボーカルが顔を覗かせるというスタイルになっています。
その後も「予感」では途中からハードロックテイストのギターリフが登場。非常にヘヴィーでダイナミックなバンドサウンドを聴かせてくれますし、「気分」もメランコリックなメロが流れつつ、サウンドはドリーミーでサイケテイスト。タイトルチューンの「タオルケットは穏やかな」もノイジーなギターサウンドが前に押し出された楽曲となっています。
前作「よすが」は比較的、楽曲のバリエーションの多い作品に仕上がっていました。それに比べると本作は「楽曲の幅」という面では若干狭め。その点、よりロックなサウンドを主軸として、良く言えば統一感のあるアルバムに仕上がっていました。もっとも、そんな中でも「月明かり」はギターのアルペジオで聴かせる作品になっていましたし、最後の「もしも」は打ち込みのリズムを入れるなど、決してヘヴィーなギターサウンド一本やり、という訳ではありません。特に「もしも」は最小限のサウンドに留めて、空間を聴かせるような作風が印象的。タイプとしては坂本慎太郎の作品に似ている感もあるのですが、ちょっと他の楽曲とは異なる作風にも挑戦しています。
もちろん、そんなヘヴィーなサウンドに全く負けていないカネコアヤノのボーカルも特筆すべき存在でしょう。先日、足を運んだライブでも、ヘヴィーなバンドサウンドと対峙する彼女のボーカルが非常に印象に残りましたが、これだけヘヴィーなサウンドを前に出しつつも、しっかり「歌」を届けるスタイルは本作でも変わりありませんでした。
よりサウンド主体となった今回のアルバム。ここ最近、年間ベストクラスの傑作を続けざまにリリースしている彼女ですが、本作も文句なしに年間ベストクラスの傑作だったと思います。あらためて彼女の実力を実感した1枚でした。
評価:★★★★★
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