はじめてのヨ・ラ・テンゴ
Title:This Stupid World
Musician:Yo La Tengo
1984年に結成し、既に結成から40年を経過しつつ、いまだ第一線で活躍し続けるオルタナ系ロックバンド、ヨ・ラ・テンゴ。その名前はもちろん以前から知っていたのですが、いままで一度もアルバムを聴いたことなく、ここで取り上げるのもこれがはじめて。ちょっと意外な気もするのですが、売上面では大きなヒットもなく、なんとなくいままでスルーしてきました。ただ、今回のアルバムはピッチフォークでBest New Albumに取り上げられるなど評価もよく、今回、はじめて本作をチェックしてみました。
ヨ・ラ・テンゴについては、いままで音もほとんど聴いたことなかったので、なんとなくイメージとしてラテン系の音を出しているバンド、と勝手に思い込んでいたのですが、ただ今回聴いてみてビックリ。むしろノイジーなギターを前面に出してくる個人的な好みにもピッタリとマッチしてくるオルタナ系ロックバンドで、勝手なイメージとは全く異なっていました。
アルバム冒頭を飾る「Sinatra Drive Breakdown」もいきなりノイジーなギターサウンドでスタート。ダウナーに歌うボーカルをバックに、ガレージ風のギターサウンドが鳴り響いています。さらに続く「Fallout」に至っては、ギターのホワイトノイズバックに、ダウナーながらもキュートなメロディーを奏でる歌を聴かせるという、シューゲイザーの影響を強く受けたギターロックを聴かせてくれ、完全に個人的な壺にはまりまくりの1曲になっています。
続く「Tonight's Episode」もギターノイズをバックにしながら、そこで奏でられるのは軽快なロックンロール風のナンバーという微妙なバランスがユニークな作品に。さらにここで作風は一転。「Aselestine」は女性ボーカルでアコースティックに聴かせるフォーキーで爽やかなポップチューンに。続く「Until It Happens」もアコギやパーカッションで郷愁感たっぷりに聴かせる楽曲。さらに「Apology Letter」もフィーキーな作品となっており、ノイジーなギターサウンドを聴かせ続ける前半から一転、アコースティックなサウンドを押し出したナンバーを清涼剤のように挟んできています。
ところが後半は一転、前半以上にサイケなサウンドを押し出したような作品が並びます。「Brain Capers」はサイケなサウンドを前面に押し出した楽曲に。さらに強力なのがタイトルチューンの「This Stupid World」で、楽曲を埋め尽くすギターノイズが狂暴に響き渡る中、バックに流れる歌をよく聴くと、実は非常にポップでキュートという、アルバムの中でももっとも狂暴ながらも甘美な楽曲を聴かせてくれます。ラストの「Miles Away」は女性ボーカルでドリーミーなポップで締めくくり。まさにアルバム全体を締めくくるに相応しいドリームポップとなっています。
そんな訳で、シューゲイザー風の前半、フォーキーな中盤、よりサイケ度を増した後半という構成もユニークですし、また聴きごたえのある内容も。なによりもサイケなギターノイズをバックにしながらも、ポップで時としてキュートさを感じるメロディーラインというバランスが実に素晴らしい(そして個人的に思いっきり「壺」にはまった)作品となっていました。これまでなんとなくスルーしてきたことを後悔するような傑作アルバム。全体的にベテランバンドらしい卒のなさを感じつつ、アルバムとして上手くまとめている点も特筆すべき事項でしょう。彼らの作品を過去に遡って聴いてみたい、そう感じてしまうような傑作でした。
評価:★★★★★
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