バラエティーに富んだ曲調でありつつ統一感も。
Title:Desire,I Want to Turn Into You
Musician:Caroline Polachek
今回紹介するのは、アメリカの女性シンガーソングライター、Caroline Polachekのニューアルバム。もともとシンセポップデゥオのChairliftのメンバーとして活動していたそうで、同ユニットは2012年にリリースしたアルバム「Something」が各種メディアから高い評価を受けるなど、注目されたユニットだったようです。ただ、その後はソロへ移行。本作は、彼女にとってソロ2枚目のアルバムとなるようです。
・・・といっても、個人的にChairliftはノーチェックでしたし、彼女についてもこのアルバムで音はもちろん名前もはじめて知ったミュージシャン。ただ、このアルバムも高い評価を受けていたようなのではじめてチェックしました。
楽曲はエレクトロポップを主軸とした構成。おそらくその点はChairliftからの流れを組むものではないでしょうか。ただ、その上でエレクトロポップを軸としつつも、アルバムの中で様々な作風の曲を聴かせてくれています。冒頭に流れる「Welcome To My Island」はまさにニューウェーヴ系のエレクトロポップの王道を行くような楽曲。軽快なサウンドとポップなメロが大きなインパクトとなっています。
かと思えば続く「Pretty In Possible」では重低音のビートを前に強調したクラブ系の音にシフト。さらに「Sunset」では一転、ラテン風のサウンドを聴かせる楽曲になっていますし、かと思えば「Crude Drawing Of An Angel」では静かなサウンドをバックにゆっくりと歌い上げる、荘厳さも感じさせる曲に仕上げています。
後半「Fly To You」ではGrimesとDidoをフューチャーし、高速なエレクトロビートを繰り広げていますし、「Smoke」はドリーミーなエレクトロサウンドを、ラストを締めくくる「Billions」ではトライバルなビートを組み込んでいます。
そんな感じでエレクトロポップを軸にしつつ多様な音楽性を聴かせる彼女ですが、一方で共通項も。まずひとつはどの曲もポップなメロディーを聴かせてくれているという点。そのためバラエティーに富む曲調ですが、ポップミュージックという枠組みからはずれていません。その結果、アルバム全体としていい意味で聴きやすい内容に仕上がっていました。
もう1点はどの曲もサウンドを比較的絞り込んでおり、タイトな雰囲気を感じさせる点。楽曲によっては、分厚いエレクトロノイズを聴かせる曲もありますが、基本的に必要最小限の音に絞り込んでおり、全体的に引き締まったサウンドになっている印象を強く受けました。この点もアルバム全体として統一感を覚えた大きな要素のひとつになっていたと思います。
エレクトロサウンドをベースとして様々な音楽性を感じさせる一方、全体の統一感も覚えるこのアルバムは間違いなく彼女の実力を存分に発揮した傑作アルバムだったと思います。まだまだ人気の面ではブレイク前のようですが、いい意味で広い層にアピールできそうなポピュラリティーもありますし、今後、徐々に注目を集めそう。エレクトロポップが好きなら今のうちにチェックしたい1枚です。
評価:★★★★★
ほかに聴いたアルバム
Raven/Kelela
デビュー作「Take Me Apart」が高い評価を受けて注目を集めたアメリカのシンガーソングライターKelelaの2作目のアルバム。エレクトロ主体のシンプルなサウンドを静かに聴かせつつ、メロウで伸びやかなR&Bを聴かせてくれます。時としてドリーミーに、また時としてリズミカルなハウス風の作品も登場したりと、バラエティーに富みつつも、音はタイトでシンプルにまとめあげているスタイルが大きな魅力。独特な雰囲気を醸し出しており、こちらも今後、さらに注目を集めそうな予感のする1枚です。
評価:★★★★★
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