ボーカリストとしての魅力あふれるベスト盤
Title:原田知世のうたと音楽
Musician:原田知世
原田知世のデビュー40周年を記念してリリースされたオールタイムベスト。今回のベストアルバムを聴きながら考えたのですが、原田知世って、気が付いたらすごいよい立ち位置にいるよなぁ、ということをふと思いました。1980年代のアイドル全盛期にデビューし、一躍人気を確保しつつも、アイドル冬の時代となった90年代には上手く女優としてシフト。現在までその地位を確保しています。
歌手としても最初のアイドル歌手から「ボーカリスト」としてちょうど上手くシフトしたのが顕著で、1983年に「時をかける少女」でブレイク。その後も「天国にいちばん近い島」や「早春物語」がヒットを記録するものの、徐々に売上は下降気味に。そんな中、1997年にシングル「ロマンス」がスマッシュヒット。カーディガンズなどの人気でスウェーディッシュポップが注目を集める中、カーディガンズのプロデューサーであるトーレ・ヨハンソンプロデュースという点が大きな話題となり、その当時の渋谷系ブームの流れにのって大きな話題となりました。
当時、リアルタイムで「ロマンス」は聴いていたのですが、既に原田知世といえば、「過去のアイドル」というイメージ。シングル曲も低迷していた中、この曲はまさに起死回生のヒットというイメージがあります。オリコン最高位39位で、売上枚数も累計6.8万枚というのは、当時としてもかなり寂しい数値で、その程度しかヒットしなかったのか・・・と意外に感じたのですが、同曲も含む直後のアルバム「I could be free」はベスト10ヒットを記録しているので、このシングルの売上以上に多くのリスナーの支持を集めたのでしょう。
ただ、今回のベスト盤、リリース順に並んでいるようなのですが、この曲あたりで彼女のボーカリストとしてのスタイルも大きく変わったように感じます。デビュー直後の彼女のボーカルは、ある意味、非常に淡々としており、機械的な印象すらあります。それが大きく変わったのはこの「ロマンス」以降。デビュー当初からの清涼感ある歌声に、柔らかさを伴う表現力も加わり、ボーカリストとしてあきらかに一皮むけた感のある成長を遂げています。
その後、2000年代には高橋幸宏らが結成したバンド、pupaでボーカルを担当。またシングルとしてはその後、大きなヒットはないものの、2016年にはカバーアルバム「恋愛小説2-若葉のころ」はチャート4位というヒットを記録。このベスト盤もオリコン最高位8位(ビルボードでは13位)とヒットを記録するなど、ボーカリストとして今に至るまで一定以上の評価を受けています。
今回、特にここ最近の曲については原田知世の曲はあまり聴いていなかったので、はじめて聴いた曲がほとんどだったのですが、やはりボーカリストとして非常に魅力的だな、ということを改めて感じます。特に「ロマンス」やそれに続く同じくトーレヨハンソンプロデュースの「シンシア」も同様なのですが、アコースティックベースの暖かいサウンドに彼女のボーカルがピッタリとマッチします。
Disc2の、比較的最近の曲に関してもアコースティックベースの作品が多く、彼女の歌声ともピッタリマッチする良曲が続きます。そういう意味では、しっかり彼女のボーカルという素材を調理した作品が多く、彼女は作家陣にも恵まれていたんだな、ということをあらためて感じます。そんな彼女のボーカルを軸として構成された曲なので、ベスト盤全体としての統一感もあり、非常に良質なポップアルバムとして楽しめた作品でした。
オリジナルアルバムとしても昨年、「fruitful days」をリリースしていますし、ミュージシャンとしても積極的な活動を続ける彼女。過去のデータを調べると、2009年の「eyja」以降、彼女の作品に触れるのは久しぶりだったようですが、やはりコンスタントにチェックしなくてはいけませんね。あらためて彼女のボーカリストとしての魅力を感じる1枚でした。
評価:★★★★★
原田知世 過去の作品
eyja
ほかに聴いたアルバム
Flowers/OKAMOTO'S
OKAMOTO'Sの最新作はいわゆる企画盤なのですが、その企画とは「メンバー内コラボレーションアルバム」。通常、OKAMOTO'Sの楽曲の多くは、オカモトショウ、オカモトコウキが楽曲制作を担当しているのですが、今回のアルバムでは他のメンバー、ハマ・オカモト、オカモトレイジも作詞作曲ほか楽曲制作に参加。メンバー4人が様々な組み合わせで楽曲制作に参加したアルバムとなっています。
で、そんな企画盤の本作ですが、これが意外なほどアルバムの出来が良かったので驚き。メロディーラインはメランコリックながらもいつも以上にインパクトもあり、ちょっと癖のあるオカモトショウのボーカルにもマッチ。OKAMOTO'Sのアルバムは、「惜しい」出来の作品が多いのですが、これが予想外に傑作に仕上がっていました。むしろメンバー全員が楽曲制作に参加した方が、良いアルバムが出来るのでは?このメンバーコラボが次回作以降にどんな影響を与えるのかわかりませんが、これを機に、OKAMOTO'Sの音楽性がもっと広がりそう。
評価:★★★★★
OKAMOTO'S 過去の作品
10'S
オカモトズに夢中
欲望
OKAMOTO'S
Let It V
VXV
OPERA
BL-EP
NO MORE MUSIC
BOY
10'S BEST
Welcome My Friend
KNO WHERE
Ampersand/Spangle call Lilli line
ミニアルバム「Remember」から約1年10ヶ月ぶり、フルアルバムだと実に約4年ぶりとなるSCLLの最新作。本作では2008年のアルバム「PURPLE」以来、実に15年ぶりに共同プロデューサーとしてsalon musicの吉田仁を迎えた作品になっています。そのため、初期に回帰したようなサウンドが特徴的となっており、よりドリーミーなエレクトロポップの路線に。シティポップ寄りだったり、ポストロック寄りになったりと、作品によって様々にシフトしていたSCLLですが、ある意味、エレクトロポップ路線により焦点を絞ったアルバムに仕上がっていました。
評価:★★★★
Spangle Call Lilli Line 過去の作品
VIEW
forest at the head of a river
New Season
Piano Lesson
SINCE2
ghost is dead
Dreams Never End
SCLL
Remember
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