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2023年3月

2023年3月31日 (金)

「声」をテーマ

Title:あのち
Musician:GEZAN with Million Wish Collective

前作「狂(KLUE)」が高い評価を得たロックバンドGEZAN。その前作は様々な音楽的要素を入れて、現状を切り裂くような狂暴なサウンドを聴かせてくれ、その内容には私も圧巻させられました。そんな傑作アルバムに続いてリリースされた本作のテーマは「声」。「データ化され、取捨選択される時代に、人間が持つ変えの利かない声をテーマに制作された」そうで、コーラスグループのMillion Wish Collectiveとのコラボという形での作品となっています。

そのため今回のアルバムでとにかく目立つのはMillion Wish Collectiveの合唱。イントロ的な1曲目に続く「誅犬」ではいきなりこれでもかというほどの「声」の壁に圧巻されます。その後も前半はこの圧倒的に分厚いコーラスが楽曲のバックに壁を築くような作品が並びます。その後もゴスペル的なコーラスを入れた「萃点」や、分厚い合唱をバックに歌い上げる、ちょっとアイロニックな歌詞も魅力的な「We Were The World」、さらに終盤の「JUST LOVE」では前半、この分厚いコーラスだけで曲を構築しようとしています。

もちろん本作は「声」で圧倒する一辺倒ではありません。「TOKYO DUB STORY」では、一人ひとりの様々な言葉を重ね合わせるような「声」で実験するような作品になっていますし、「終曲の前奏で赤と目があったあのち」もやはり、様々なセリフが重なるあう演劇的かつ実験的な作風となっています。インターリュード的にボイスパーカッションも入っていたりと、全体的にまさに「声」でどのような音の世界を構築できるのか、実験するようなアルバムになっていました。

そんな実験的でかつアバンギャルドな度合いの高い作品になっているのですが、一方では意外とポップで聴きやすい、という印象も同時に受けるアルバムにもなっていました。その分厚いコーラスの前で鳴り響くのは、そのコーラスに負けないだけの力強いバンドサウンド。ヘヴィーなギターや力強いドラムが「声」と上手く融合してリスナーの耳を切り裂きます。ただ、メロディーライン自体にアバンギャルドな点は薄く、例えば「もう俺らは我慢できない」ではラップというスタイルで社会派な歌詞を聴かせますか、リズミカルでテンポのよいラップは意外と聴きやすさを感じますし、前述の「We Were The World」もメロディーライン自体は至ってポップ。「Third Summer of Love」のようなさわやかさすら感じさせるポップチューンすらあります。

意外とメロディアスで聴きやすい内容で「声」の実験を繰り広げつつ、一方で歌詞も印象的。歌詞からして皮肉的な「We Were The World」では「JUST SAY NO (WAR)」とストレートな反戦のメッセージを繰り広げていますし、「もう俺らは我慢できない」でも

「人を殺していい正当な理由?
正しい戦争 美しい戦争
JUST SAY NO ありえないっしょ」
(「もう俺らは我慢できない」より 作詞 マヒトゥ・ザ・ピーポー)

という、非常にストレートな反戦のメッセージを繰り広げています。他にもこの曲ではスターリンの有名な歌詞のフレーズが登場したり、「いつまで清志郎に頼っているんだ?」という挑発的なメッセージも登場。「We Were The World」でもジョン・レノンが登場しますし、要所要所に先人に対するリスペクトも感じさせます。

ラストは、こちらも明らかにブルハの曲から取られたと思われる「リンダリリンダ」では、みんな太鼓のリズムをバックにゆっくりと歌っているというある種の微笑ましさも感じるような楽曲で終了。実験的な作品の大団円とも言える作品で締めくくられています。

その実験的な作風がありつつ、一方では意外とポップさを感じる部分もあるため、最後までどんな作品が登場するのかワクワク楽しみながら聴ける作品になっていました。サウンドに圧倒された前作に引き続き、「声」に圧倒された本作はまたしても年間ベストクラスの傑作アルバムだったと思います。とにかく圧巻されつつも楽しめる1枚でした。

評価:★★★★★

GEZEN 過去の作品
狂(KLUE)


ほかに聴いたアルバム

十二次元/女王蜂

その性別不詳で妖艶な雰囲気のルックスも大きなインパクトのバンド女王蜂。ちょっと久々、約3年ぶりとなるニューアルバムとなります。久々となった今回のアルバムは、マイナーで怪しげな雰囲気たっぷりの作品になっているのですが、その雰囲気を醸し出している大きな要素となっているのが和風のサウンド。エレクトロサウンドやダイナミックなバンドサウンドを取り入れている中に絶妙に入ってくる「和」のテイストが、独特の妖艶さを醸し出しています。終始、雰囲気たっぷりの作風になっており、女王蜂らしさをしっかり生かした作品になっていました。

評価:★★★★★

女王蜂 過去の作品
孔雀
蛇姫様
奇麗
失神
Q

BL

大瀧詠一 乗合馬車 (Omnibus) 50th Anniversary Edition/大滝詠一

大瀧詠一が、まだはっぴいえんどとして活動している中、1972年にリリースしたソロデビューアルバム。その後の楽曲で感じる大瀧詠一らしさの萌芽を感じられる一方、洋楽からの影響がよりストレートである意味わかりやすく、そういう意味ではソロとしてその方向性を模索しているという部分も垣間見れる作品。とはいえ、ポップスとしてはこの時から非常に高いクオリティーを維持しており、彼の才能は十分に感じられます。

評価:★★★★★

大滝詠一 過去の作品
EACH TIME 30th Anniversary Edition
Best Always
NIAGARA MOON -40th Anniversary Edition-
DEBUT AGAIN
NIAGARA CONCERT '83
Happy Ending
A LONG VACATION 40th Anniversary Edition

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2023年3月30日 (木)

男性アイドル勢が1位2位

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週は1位2位に男性アイドルが並びました。

今週1位はJIMIN「FACE」が獲得。韓国のアイドルグループBTSのメンバーによる初のソロミニアルバム。CD販売数及びダウンロード数で1位獲得。オリコン週間アルバムランキングでは初動売上22万4千枚で1位初登場となりました。

2位はスターダストプロモーション所属の男性アイドルグループ超特急「B9」がランクインしました。CD販売数2位、ダウンロード数56位。オリコンでは初動売上5万9千枚で2位初登場。前作「Dance Dance Dance」の初動7千枚(7位)からアップしています。

3位初登場はBABYMETAL「THE OTHER ONE」。CD販売数3位、ダウンロード数2位。オリコンでは初動売上3万6千枚で3位初登場。直近作はベスト盤「10 BABYMETAL YEARS」で同作の初動5万2千枚(2位)からダウン。オリジナルアルバムとしては前作「METAL GALAXY-JAPAN Comlete Editon-」の初動7万3千枚(3位)からもダウンしています。

続いて4位以下の初登場盤です。まず4位にハロプロ系女性アイドルグループアンジュルム「BIG LOVE」がランクイン。CD販売数4位、ダウンロード数3位。オリコンでは初動売上2万3千枚で4位初登場。前作「輪廻転生〜ANGERME Past, Present & Future〜」の初動売上1万枚(5位)からアップしています。

5位には女性コーラスグループLittle Glee MonsterのEP盤「Fanfare」が初登場。オーディションで選ばれた新メンバー3人が加わり、新生6人組となった彼女たちの初となるEP盤。オリコンでは初動売上1万2千枚で6位初登場。直近作のオリジナルアルバム「Journey」の初動1万8千枚(2位)からダウンしています。

6位にはThe Street Sliders&Various「On The Street Again-Tribute&Origin-」がランクインしてきました。80年代から90年代にかけて活躍し、一世を風靡したロックバンド。2000年に解散したものの、数多くのミュージシャンたちに影響を与えていますが、そんな彼らの40周年を記念してリリースされたトリビュートアルバムと、トリビュートされた曲を中心にオリジナル作をリマスタリングした2枚組のアルバム。オリコンでは初動売上1万枚で7位初登場。オリジナルアルバムとしての最終作「NO BIG DEAL」は最高位31位どまりでしたので、解散後、さらに人気を確保していることがうかがわせる結果となっています。

8位初登場は秦基博「Paint Like a Child」。ベスト盤のリリースを挟んだものの、オリジナルとしては約3年4カ月ぶりとちょっと久々となるニューアルバム。CD販売数8位、ダウンロード数12位。オリコンでは初動売上7千枚で9位初登場。前作「コペルニクス」の初動1万3千枚(6位)からダウンしています。

9位には大滝詠一「大滝詠一 NOVELTY SONG BOOK」がランクイン。タイトル通り、彼のノヴェルティーソング(≒コミックソング)をまとめたアルバムで、Disc1には大滝詠一本人が歌唱したもの、Disc2には彼が楽曲提供やプロデュースを行った作品を収録しています。CD販売数9位。オリコンでは初動売上6千枚で10位初登場。大滝詠一名義の直近作は「A LONG VACATION 40th Anniversary Edition」で同作の初動売上1万9千枚(5位)からダウンしています。

最後10位には遊助「遊 are the one」がランクイン。俳優上地雄輔の歌手としてのアルバム。CD販売数10位、ダウンロード数65位。オリコンでは初動売上5千枚で11位初登場。前作「Are 遊 Ready?」(15位)から横バイ。

今週のHot Albumsは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2023年3月29日 (水)

ラストソングが1位を獲得

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週はアイドルグループの解散前最後のシングルが1位を獲得しています。

今週1位は女性アイドルグループBiSH「Bye-Bye Show」が獲得。CD販売数1位、ダウンロード数91位、ラジオオンエア数2位。今年6月29日に東京ドームで行われるライブをもって解散を予定している彼女たち。ラストシングルはTHE YELLOW MONKEYの吉井和哉が作詞作曲プロデュースを手掛け、演奏はそのイエモンのメンバーによるものだそうです。オリコン週間シングルランキングでは初動売上13万8千枚で1位初登場。前作「ZUTTO」の1万9千枚(3位)から大きくアップしているのはラストシングル所以でしょうか。

2位には米津玄師の配信限定シングル「LADY」がランクイン。日本コカ・コーラ「ジョージア」CMソング。ダウンロード数及びラジオオンエア数で1位獲得、ストリーミング数は27位で、総合順位では見事ベスト3入りしました。米津玄師は「KICK BACK」も先週の8位からワンランクアップの7位にランクインさせており、これで2曲同時ランクインとなっています。こちらはダウンロード数は17位から23位にダウンしていますが、ストリーミング数は先週から変わらず4位をキープ。YouTube再生回数も14位から11位にアップ。これで24週連続のベスト10ヒットとなりました。

3位にはOfficial髭男dism「Subtitle」が先週からワンランクアップでベスト3返り咲き。これで通算23週目のベスト3ヒットとなります。ストリーミング数は今週も1位でこれで23週連続。YouTube再生回数は8位から6位にアップ。一方、ダウンロード数は5位から7位にダウン。これでベスト10ヒットは24週連続となりました。

続いて4位以下ですが、初登場曲は1曲のみ。それが6位初登場のATEEZ「Limitless」。韓国の男性アイドルグループ。CD販売数で2位にランクインしましたが、その他のチャートは圏外となり、総合順位もこの位置に。オリコンでは初動売上7万2千枚で2位初登場。前作「Dreamers」の3万5千枚(2位)からアップしています。

続いてロングヒット曲ですが、まずVaundy「怪獣の花唄」は5位から4位にアップ。ストリーミング数2位、カラオケ歌唱回数1位は先週から変わらず。ダウンロード数は11位から19位にダウン。一方、YouTube再生回数は18位から13位にアップ。これで12週連続のベスト10ヒットとなりました。

10-FEET「第ゼロ感」は先週から変わらず9位をキープ。ダウンロード数は3位から5位、ストリーミング数も5位から6位、YouTube再生回数は16位から19位といずれも下落傾向となっています。ただ、これで16週連続のベスト10ヒットとなりました。

また先週まで7位にランクインしていたなとり「Overdose」は今週11位にダウン。ベスト10返り咲きは2週でストップ。通算ベスト10記録も16週でストップとなりました。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

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2023年3月28日 (火)

バラエティーに富んだ曲調でありつつ統一感も。

Title:Desire,I Want to Turn Into You
Musician:Caroline Polachek

今回紹介するのは、アメリカの女性シンガーソングライター、Caroline Polachekのニューアルバム。もともとシンセポップデゥオのChairliftのメンバーとして活動していたそうで、同ユニットは2012年にリリースしたアルバム「Something」が各種メディアから高い評価を受けるなど、注目されたユニットだったようです。ただ、その後はソロへ移行。本作は、彼女にとってソロ2枚目のアルバムとなるようです。

・・・といっても、個人的にChairliftはノーチェックでしたし、彼女についてもこのアルバムで音はもちろん名前もはじめて知ったミュージシャン。ただ、このアルバムも高い評価を受けていたようなのではじめてチェックしました。

楽曲はエレクトロポップを主軸とした構成。おそらくその点はChairliftからの流れを組むものではないでしょうか。ただ、その上でエレクトロポップを軸としつつも、アルバムの中で様々な作風の曲を聴かせてくれています。冒頭に流れる「Welcome To My Island」はまさにニューウェーヴ系のエレクトロポップの王道を行くような楽曲。軽快なサウンドとポップなメロが大きなインパクトとなっています。

かと思えば続く「Pretty In Possible」では重低音のビートを前に強調したクラブ系の音にシフト。さらに「Sunset」では一転、ラテン風のサウンドを聴かせる楽曲になっていますし、かと思えば「Crude Drawing Of An Angel」では静かなサウンドをバックにゆっくりと歌い上げる、荘厳さも感じさせる曲に仕上げています。

後半「Fly To You」ではGrimesとDidoをフューチャーし、高速なエレクトロビートを繰り広げていますし、「Smoke」はドリーミーなエレクトロサウンドを、ラストを締めくくる「Billions」ではトライバルなビートを組み込んでいます。

そんな感じでエレクトロポップを軸にしつつ多様な音楽性を聴かせる彼女ですが、一方で共通項も。まずひとつはどの曲もポップなメロディーを聴かせてくれているという点。そのためバラエティーに富む曲調ですが、ポップミュージックという枠組みからはずれていません。その結果、アルバム全体としていい意味で聴きやすい内容に仕上がっていました。

もう1点はどの曲もサウンドを比較的絞り込んでおり、タイトな雰囲気を感じさせる点。楽曲によっては、分厚いエレクトロノイズを聴かせる曲もありますが、基本的に必要最小限の音に絞り込んでおり、全体的に引き締まったサウンドになっている印象を強く受けました。この点もアルバム全体として統一感を覚えた大きな要素のひとつになっていたと思います。

エレクトロサウンドをベースとして様々な音楽性を感じさせる一方、全体の統一感も覚えるこのアルバムは間違いなく彼女の実力を存分に発揮した傑作アルバムだったと思います。まだまだ人気の面ではブレイク前のようですが、いい意味で広い層にアピールできそうなポピュラリティーもありますし、今後、徐々に注目を集めそう。エレクトロポップが好きなら今のうちにチェックしたい1枚です。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

Raven/Kelela

デビュー作「Take Me Apart」が高い評価を受けて注目を集めたアメリカのシンガーソングライターKelelaの2作目のアルバム。エレクトロ主体のシンプルなサウンドを静かに聴かせつつ、メロウで伸びやかなR&Bを聴かせてくれます。時としてドリーミーに、また時としてリズミカルなハウス風の作品も登場したりと、バラエティーに富みつつも、音はタイトでシンプルにまとめあげているスタイルが大きな魅力。独特な雰囲気を醸し出しており、こちらも今後、さらに注目を集めそうな予感のする1枚です。

評価:★★★★★

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2023年3月27日 (月)

はじめてのヨ・ラ・テンゴ

Title:This Stupid World
Musician:Yo La Tengo

1984年に結成し、既に結成から40年を経過しつつ、いまだ第一線で活躍し続けるオルタナ系ロックバンド、ヨ・ラ・テンゴ。その名前はもちろん以前から知っていたのですが、いままで一度もアルバムを聴いたことなく、ここで取り上げるのもこれがはじめて。ちょっと意外な気もするのですが、売上面では大きなヒットもなく、なんとなくいままでスルーしてきました。ただ、今回のアルバムはピッチフォークでBest New Albumに取り上げられるなど評価もよく、今回、はじめて本作をチェックしてみました。

ヨ・ラ・テンゴについては、いままで音もほとんど聴いたことなかったので、なんとなくイメージとしてラテン系の音を出しているバンド、と勝手に思い込んでいたのですが、ただ今回聴いてみてビックリ。むしろノイジーなギターを前面に出してくる個人的な好みにもピッタリとマッチしてくるオルタナ系ロックバンドで、勝手なイメージとは全く異なっていました。

アルバム冒頭を飾る「Sinatra Drive Breakdown」もいきなりノイジーなギターサウンドでスタート。ダウナーに歌うボーカルをバックに、ガレージ風のギターサウンドが鳴り響いています。さらに続く「Fallout」に至っては、ギターのホワイトノイズバックに、ダウナーながらもキュートなメロディーを奏でる歌を聴かせるという、シューゲイザーの影響を強く受けたギターロックを聴かせてくれ、完全に個人的な壺にはまりまくりの1曲になっています。

続く「Tonight's Episode」もギターノイズをバックにしながら、そこで奏でられるのは軽快なロックンロール風のナンバーという微妙なバランスがユニークな作品に。さらにここで作風は一転。「Aselestine」は女性ボーカルでアコースティックに聴かせるフォーキーで爽やかなポップチューンに。続く「Until It Happens」もアコギやパーカッションで郷愁感たっぷりに聴かせる楽曲。さらに「Apology Letter」もフィーキーな作品となっており、ノイジーなギターサウンドを聴かせ続ける前半から一転、アコースティックなサウンドを押し出したナンバーを清涼剤のように挟んできています。

ところが後半は一転、前半以上にサイケなサウンドを押し出したような作品が並びます。「Brain Capers」はサイケなサウンドを前面に押し出した楽曲に。さらに強力なのがタイトルチューンの「This Stupid World」で、楽曲を埋め尽くすギターノイズが狂暴に響き渡る中、バックに流れる歌をよく聴くと、実は非常にポップでキュートという、アルバムの中でももっとも狂暴ながらも甘美な楽曲を聴かせてくれます。ラストの「Miles Away」は女性ボーカルでドリーミーなポップで締めくくり。まさにアルバム全体を締めくくるに相応しいドリームポップとなっています。

そんな訳で、シューゲイザー風の前半、フォーキーな中盤、よりサイケ度を増した後半という構成もユニークですし、また聴きごたえのある内容も。なによりもサイケなギターノイズをバックにしながらも、ポップで時としてキュートさを感じるメロディーラインというバランスが実に素晴らしい(そして個人的に思いっきり「壺」にはまった)作品となっていました。これまでなんとなくスルーしてきたことを後悔するような傑作アルバム。全体的にベテランバンドらしい卒のなさを感じつつ、アルバムとして上手くまとめている点も特筆すべき事項でしょう。彼らの作品を過去に遡って聴いてみたい、そう感じてしまうような傑作でした。

評価:★★★★★

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2023年3月26日 (日)

年齢を経たからこそ感じる魅力

Title:GRRR Live!
Musician:The Rolling Stones

2012年にバンド活動50周年を記念してリリースされたベストアルバム「GRRR」。その後、「50&カウンティングツアー」と題して北アメリカとヨーロッパで30回の公演を行いました。本作で収録されているのは、そのうち2012年12月15日に行われた、ニュージャージー州ニューアークのプルデンシャル・センターでのステージの模様をおさめたライブアルバムとなります。

まず、このライブアルバムの大きな特徴として、やはりベスト的な選曲の良さに目がいくでしょう。ベストアルバムリリース後のツアーで、ツアー自体も50周年を記念したツアーということもあって、彼らの代表曲を惜しみなくプレイしています。序盤から「It's Only Rock'N'Roll(But I Like It)」「Paint It Black」「Gimme Shelter」とキーラチューンの連続。さらに締めくくりも「Jumpin' Jack Flash」「(I Can't Get No)Satisfaction」と、おそらく会場でも大盛り上がり間違いなしの代表曲連続の選曲となっています。

ただ一方、ライブ盤を聴くにあたってちょっと気になったのは、失礼ながらもバンドメンバーが既に「おじいさん」とも言える年齢に達している点。この時、ミック・ジャガーは69歳、キース・リチャーズは68歳、チャーリー・ワッツは71歳、ロン・ウッドは65歳。先日鬼籍に入ったチャーリー・ワッツ以外は、10年以上経った今でも現役で元気に活動しているとはいえ、やはり年齢による衰えは気になってしまいます。

しかし、実際にライブ音源を聴くと、そんな懸念が杞憂であることを強く感じました。よくよく考えるともともとストーンズの魅力って、ロックバンドにありがちな若さあふれるパワフルなプレイ・・・ではないんですよね。キースのギターは見方によっては「ヘナヘナ」なのですが、あの独特のグルーヴ感が魅力ですし、チャーリーのドラムもジャズをベースとした軽やかなプレイ。ミックも決して声を張り上げるタイプではありません。

もっとも彼らの音楽の原点であるブルースは、もっと高齢者のプレイヤーはたくさんいて、年を取れば取るほど味が出てくるような音楽。そう考えると、ストーンズのプレイもメンバーが年を取れば取るほど、若い時とは別の味が出てきても当然かもしれません。そんな大ベテランとなった今だからこそ感じられるストーンズの魅力を再認識したライブアルバムになっていました。

また、このライブアルバムでもうひとつ大きな魅力なのが、豪華なゲスト陣。「Gimme Shelter」ではLady Gaga、「I'm Going Down」ではジョン・メイヤーとゲイリークラークジュニア、「Who Do You Love?」ではBlack Keys、「Midnight Rambler」ではミック・タイラー、さらに「Tumbling Dice」ではブルース・スプリングスティーンという超豪華なゲストが参加しています。ここらへん、ストーンズの偉大さを感じます。まあ、アメリカの中心部で行われたという土地柄の良さもあるのでしょうが・・・。

ここ最近のステージーといっても、もう10年以上前になってしまいましたがーで、若い頃に比べると、と思ってしまったのですが、この年齢になったからこそ感じられる味わいも覚えたステージになっていました。文句なしにファンなら要チェックのアルバムです。このメンバーでライブが行われることは残念ながらもうないのですが・・・残ったメンバーで1日も長く、活動を続けてほしいです。

評価:★★★★★

The Rolling Stones 過去の作品
Shine a Light: Original Soundtrack
Some Girls LIVE IN TEXAS '78
CHECKERBOAD LOUNGE LIVE CHICAGO 1981(邦題 ライヴ・アット・ザ・チェッカーボード・ラウンジ・シカゴ1981)
(MUDDY WATERS&THE ROLLING STONES
GRRR!
HYDE PARK LIVE
Sweet Summer Sun-Hyde Park Live
Sticky Fingers Live
Blue&Lonesome
Ladies & Gentlemen
ON AIR
Voodoo Lounge Uncut
Honk
The Rolling Stones Rock and Roll Circus
A Little Bang (Bigger Bang Tour EP)


ほかに聴いたアルバム

The Waeve/The Waeve

blurのギタリスト、グレアム・コクソンと、2000年代中盤に一時期話題となったレトロポップバンド、The Pipettesのメンバーだったシンガーソングライターのローズ・エリナー・ドゥーガルによるユニット。2人ともボーカルが取れるユニットということもあり、2人が交互にボーカルを取り、曲によりエレクトロポップやニューウェーヴ、ギターロック、ホーンセッションを入れたり、ストリングスを入れて伸びやかに聴かせたりとバラエティー富んだ展開が魅力的。これからの活躍も楽しみになってくるユニットです。

評価:★★★★★

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2023年3月25日 (土)

バンドの危機を乗り越えて(?)

Title:COMPACT DISC
Musician:ゴールデンボンバー

オリジナルアルバムとしては約3年3か月ぶりとなる新作。ゴールデンボンバーといえば、紅白に連続出場していた2010年代中盤においては、まさに「一世を風靡した」と言ってもいいほどの国民的な人気ぶりを博していました。その後も、なぜかヒットは出していたのに紅白に呼ばれなくなったり、本人たちもそれを逆に自虐的にうちだした「もう紅白に出してくれない」なんていうアルバムをリリースしていた頃は、まだ高い人気を誇っていました。

しかし、ご存じの通り、2021年には鬼龍院翔の二股騒動が、さらに同じ年に歌広場淳の不倫騒動が取り上げられると、バンドとして危機に陥ります。特にメンバーの人なつっこいパーソナリティーもバンドの人気の要素であっただけに、この不倫騒動のショックは大きく、バンドとしての存続も難しいのではないか、とすら感じました。

そんな騒動を乗り越えてリリースされたのが久々となるニューアルバム。結果としては、ビルボードでは5位、オリコンでは3位という結果に。ただ、オリコンでの初動売上8千枚は前作の初動2万1千枚から大幅にダウンしています。ここ3年でCDをめぐる市場は大幅に変化したので、CDの初動売上大幅ダウンがそのまま人気の大幅ダウンとは言い切れません。やはり人気の落ち込みは否めないまでも、予想していたよりも上位に食い込んでおり、彼らにとってみれば大健闘とも言える結果になったようにも感じられます。

また、アルバムとしても彼ららしいユーモラスな楽曲が並ぶ、バラエティー富んだ展開になっているのはいままでと同様。まず第一に、このストリーミング全盛の時代にあえて「COMPACT DISC」というタイトルにしているあたりから、彼ららしさを感じます。

ユーモラスな曲といえば、まず目につくのは「Yeah!めっちゃストレス」で、松浦亜弥の2002年のヒット曲「Yeah!めっちゃホリディ」のパロディー。「おさかな地獄」も同じく2002年にヒットした「おさかな天国」のパロディーで、「魚は僕らを待っていない」という歌詞は、完全に「おさかな天国」のもじりとなっています。

サウンド的にも「Yeah!めっちゃストレス」はアイリッシュトラッド。鬼龍院翔が現地まで行って学んだそうです(・・・の割には、と思ってしまいますが・・・)。さらにタイトルからしてユーモラスな「踊るなよ-Do Not Dance-」はトランスですし、「THEガマン」はハードコア。「おさかな地獄」は典型的なビジュアル系っぽい作風になっていますし、「バブルはよかった」はタイトル通り、バブル期を彷彿させるようなシンセ主体の曲調に。しっかりと曲の内容と絡めて、かつバラエティー富んだ作風を聴かせてくれています。

いろいろな騒動はあったものの、アルバムとしてはいつものゴールデンボンバーらしい、ユーモラスで、バラエティー富んでいて、そしてちょっとだけアイロニックな、最後まで飽きさせない内容になっていました。ここらへん、いい意味で作詞作曲を手掛ける鬼龍院翔のウイットさを感じさせます。ただ、それを差し引いても、15曲68分というのはちょっとボリュームありすぎな感じも・・・。個人的にはあと2、3曲減らして50分程度の長さなら、ちょうどよかったような感じもするのですが。

評価:★★★★

ゴールデンボンバー 過去の作品
ゴールデン・アワー~下半期ベスト2010~
ゴールデン・アルバム
NO MUSIC NO WEAPON
キラーチューンしかねえよ
音楽が僕らを駄目にする
The Golden J-POPS
恋愛宗教論
もう紅白に出してくれない


ほかに聴いたアルバム

CAOLI CANO COLLECTION/かの香織

懐かしいなぁ・・・という感覚で聴いてみた作品。女性シンガーソングライターかの香織のベストアルバム。といっても、あまり深い思い入れがあった訳でもなく、まとまって音源を聴くのもこれがはじめて。同作にも収録されている1996年にリリースされた「午前2時のエンジェル」がリアルタイムでは結構、ラジオなどでよく流れていた記憶が。どちらかというと、当時のガールズポップの流れで取り上げられていた記憶はあるのですが、ただ、残念ながら大きなヒットはありませんでした。あらためて聴いても、比較的90年代っぽい軽快なポップソングがメインで、全体的に明るくメロディアスに、アコースティック主体のサウンドが特徴的。ちょっとセクシーなボーカルも魅力になっているのですが、インパクトという面で少々弱いのがヒットにつながらなかった要因かなぁ。90年代J-POPをリアルタイムに聴いていた世代だと、懐かしさを感じるかもしれませんが。

評価:★★★★

iCoN/Nobel Core

SKY-HI主催のレーベル「BMSG」の初のミュージシャンとしてメジャーデビューも果たしたラッパーの5曲入りとなるEP盤。ダークな雰囲気でリズミカルに聴かせるラップが特徴的ですが、タイトルチューンの「iCoN」はノイジーなギターサウンドも入ってロッキンな曲調。また全体的にもメロディアスなメロディーラインが流れており、特にラストの「ジェンガ」はしっかり聴かせる歌モノに。ラッパーとしてのスキルもさることながら、ソングライターとしてのメロディーセンスも感じられる実力の持ち主で、このメロディーセンスを生かせていけばおもしろい方向に成長しそうな予感も。

評価:★★★★★

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2023年3月24日 (金)

彼の人柄もわかる遺作

おそらく私が「rockin'on」誌を読んで、最初にその文体から書き手がわかるようになったのは間違いなく松村雄策氏の文章でしょう。

とにかく、彼の書く評論は非常に独特でした。最初は音楽とは全く関係ない、彼の日常にまつわるエッセイからスタートします。そんな音楽とは全く関係ないエッセイが続いたかと思えば、途中にその「日々の出来事」から、時としてこじつけのようにミュージシャンに対するエピソードに展開。最後は、音楽にまつわる話で終わるのですが、時として、ミュージシャンが登場するのは最後の最後。ほとんどが彼の日常にまつわるエッセイで終わるような評論すらありました。

正直、最初は「音楽と関係ないじゃん」と、あまりいい印象を受けませんでした。しかし、そんな氏の文章を何度か読むうちに、徐々にその独特の文体が気に入るようになってきました。なによりも、書き手の自己主張が激しい「rockin'on」の評論の中で、書き手の日常を綴りながらも、決して自己主張をするわけではなく、どこか暖かさを感じる彼の文体には大きな魅力を感じていました。

今回紹介するのは、音楽評論家松村雄策氏のエッセイ集「僕の樹には誰もいない」。彼は昨年3月、70歳でこの世を去りましたが、本作はその彼が生前に残した、ほぼ「rockin'on」誌に残した作品をまとめた1冊。なぜかロッキン・オン社ではなく、河出書房新社からの発行となります。

冒頭にも書いた通り、彼の書く論文は非常に独特。音専誌に寄稿した文章でありつつ、時として音楽以上に自らの日常を描いたエッセイであることが多々あり、また音楽に関しても、「評論」というよりも彼のそのミュージシャンに対する思い出を語ることが多く、正直、「音楽評論家」というよりも「エッセイスト」といった肩書の方がピンとくるかもしれません。

ただ、そんな彼の文章が非常に魅力的なのは前述の通り、自己主張をするわけでもない自然体の文体、そして何よりも音楽、特に彼が好きなミュージシャンに対する愛情が真摯に伝わってくる作風になっているからだと思います。

とにかくビートルズが好きな彼は、このエッセイ集でも至る所でビートルズの思い出が語られます。基本的にリアルタイムに経験した内容なだけに、非常に説得力のある内容になっていますし、ある意味、しっかりとした知識の裏付けもあるだけに単なるおじさんの思い出語りになっている訳ではなく、ポピュラーミュージック史の証言者としての役割も果たしています。

特に「rockin'on」誌では、時として、話題のミュージシャンを必要以上に持ち上げて、話題にならなくなるとほとんど取り上げなくなる、というケースが目立つのですが、彼の場合、エッセイ集全体を通じて、好きなミュージシャンについて全くぶれずに応援しているだけに読んでいて非常に信頼感のある印象もあります。日本人ミュージシャンではCOILの岡本定義と、元PEALOUTの近藤智洋を応援しているのですが、終始一貫して応援し、取り上げており、そのぶれなさ具合にも信用が置けまし、また誠実な彼の人柄も感じることが出来ます。

このエッセイ集も、そんな彼の人柄が伝わる文章が多く収録されており、また彼の日常を垣間見る内容にもまた、松村雄策という人物を身近に感じられる、そんな魅力的な1冊となっていました。それだけに彼の遺稿となった「Still Alive And...」はリアルタイムでも読んでショックを受けたのですが、あらためて読んでいて胸がグッとなりました・・・。

最近、ビートルズ関連のCDなどが発売されると、彼が生きていたら、どんな論文を読めたんだろう・・・ということをいつも考えてしまいます。それだけ強い印象を私たちに残してくれた松村雄策氏。あらためてそのご冥福をお祈り申します。数多くの素晴らしい作品を、ありがとうございました。

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2023年3月23日 (木)

こちらもジャニーズ系が1位獲得

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

こちらもジャニーズ系アイドルグループが1位獲得です。

今週1位はNEWS「音楽-2nd Movement-」が獲得。CD販売数1位。ジャニーズ系としては珍しい7曲入りのEP盤で、昨年8月にリリースされたアルバム「音楽」の続編という扱いになります。オリコン週間アルバムランキングでは初動売上10万7千枚で1位初登場。直近作である「音楽」の初動10万6千枚(1位)より微増となっています。

さて、今週ちょっと奇妙なのが2位初登場盤。米良美一「うぐいす~米良美一 日本を歌う」が初登場。CD販売数2位。彼は1997年にリリースした、山田耕筰や中田喜直といった、日本の作曲家による作品を歌ったアルバム。ただ、奇妙なのはこの作品、ビルボードのセールスチャートでは5万3千枚を売り上げて2位にランクインしているのですが、オリコンでは今週50位以内にランクインしていないだけでなく、発売日3月17日のデイリーチャートでもランクインしていません。今一つ、この差が謎なのですが・・・なぜビルボードだけこれだけ上位にランクインしているのでしょうか???

3位は刀剣男士 formation of 江水散花雪「ミュージカル『刀剣乱舞』~江水散花雪~」がランクイン。ゲーム「刀剣乱舞」を元としたミュージカルに使用された楽曲を集めたアルバム。CD販売数3位、ダウンロード数11位。オリコンでは初動売上2万5千枚で2位初登場。同シリーズの前作、刀剣男士 formation of パライソ「ミュージカル『刀剣乱舞』 ~静かの海のパライソ~」の初動1万7千枚(7位)からアップしています。

続いて4位以下の初登場盤です。まず4位にLiella!「Second Sparkle」がランクイン。CD販売数4位、ダウンロード数8位。アニメキャラによるアイドルプロジェクト「ラブライブ!スーパースター!!」に登場する架空のアイドルグループによる2枚目のアルバム。オリコンでは初動売上2万枚で3位初登場。前作「What a Wonderful Dream!!」の初動1万9千枚(3位)から微増。

さらに今週は2枚同時ランクインのアルバムが初登場。それがholo*27「holo*27 Originals Vol.1」「holo*27 Covers Vol.1」。それぞれ5位、7位にランクイン。「Originals」はCD販売数6位、ダウンロード数1位、「Covers」はCD販売数7位、ダウンロード数2位。VTuberのグループ、ホロライブとボカロP、DECO*27によるプロジェクトで、「Originals」はオリジナル曲を収録した曲、「Covers」はDECO*27の曲をカバーしたアルバム。オリコンでは2枚のアルバムを同時に収録した「holo*27 Special Edition」が初動6千枚で8位に初登場しています。

6位にはHoneyWorks「ねぇ、好きって痛いよ。~告白実行委員会キャラクターソング集~」が初登場。CD販売数5位、ダウンロード数18位。YouTubeなどで活動するユニット、HoneyWorksが人気声優を起用して作成されたアルバム。オリコンでは初動売上1万2千枚で5位初登場。前作「好きすぎてやばい。〜告白実行委員会キャラクターソング集〜」の初動2万7千枚(5位)よりダウン。

9位にはBMK「the FIRST」がランクイン。CD販売数8位。名古屋を拠点とするアイドルグループBOYS AND MENの弟分として、BOYS AND MEN研究生として活動していたグループが改名したグループ。オリコンでは初動売上1万1千枚で6位初登場。アルバムとしてはBOYS AND MEN研究生時代から含めて、本作が初となります。

またベスト10返り咲きも1枚。韓国の男性アイドルグループStray Kids「THE SOUND」が先週の13位から10位にランクアップ。2週ぶりのベスト10返り咲きとなりました。

今週のHot Albumsは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2023年3月22日 (水)

日韓のアイドルソングが上位に

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週もCD売上の上位3組がそのままベスト3に並ぶ展開になっています。

まず1位初登場はジャニーズ系アイドルグループSnow Man「タペストリー」。CD販売数及びラジオオンエア数1位、YouTube再生回数3位。映画「わたしの幸せな結婚」主題歌。オリコン週間シングルランキングでは初動売上90万2千枚で1位初登場。前作「オレンジkiss」の初動83万枚よりアップしています。

2位初登場はAKB48の姉妹グループで瀬戸内地域を拠点とする女性アイドルグループSTU48「息をする心」。CD販売数2位、ラジオオンエア数93位。オリコンでは初動売上21万7千枚で1位初登場。前作「花は誰のもの?」の初動15万7千枚からアップしています。

3位には韓国の女性アイドルグループKep1er「I do! Do you?」がランクイン。CD販売数3位、ダウンロード数86位。オリコンでは同作を収録した「<FLY-BY>」が初動売上5万1千枚で3位初登場。「<FLY-UP>」の初動6万8千枚(2位)よりダウンしています。

以上、今週は新曲3曲はベスト3に並びましたが、4位以下に初登場はゼロ。相変わらずロングヒットが目立っています。

まずOfficial髭男dims「Subtitle」。今週、新曲3曲に押し出される形で4位にランクダウン。ついに22週連続キープしてきたベスト3ヒットが途切れました。とはいえ、ストリーミング数は22週連続の1位、ダウンロード数は7位から5位にアップ、YouTube再生回数は先週と変わらず8位をキープしており、来週以降のベスト3返り咲きは十分にありえそう。これで23週連続のベスト10ヒットとなります。

5位にはVaundy「怪獣の花唄」がワンランクダウン。これで11週連続のベスト10ヒット。ストリーミング数は3位から2位に、ダウンロード数も13位から11位にアップ。カラオケ歌唱回数も1位をキープしています。一方、YouTube再生回数は15位から18位にダウンしています。

さらに7位にはなとり「Overdose」がなんと先週の8位からランクアップ。ストリーミング数が11位から8位にアップしているほか、YouTube再生回数は今週なんと5位から2位にアップしています。今回のランクアップについて、先週のチャートのコメント欄に、Adoによるカバー動画の影響とご指摘をいただきましたが、これを機に、再度のブレイクとなるでしょうか。これで通算16週目のベスト10ヒットとなります。

ここに来て失速気味なのが米津玄師「KICK BACK」で先々週の3位から5位、そして8位と下落傾向が続いています。ダウンロード数は16位から17位にダウン。ただ、ストリーミング数4位は先週と変わらず、YouTube再生回数は15位から14位と若干のアップとなります。来週以降の巻き返しはあるのでしょうか。これで23週連続のベスト10ヒットとなりました。

そして9位には10-FEET「第ゼロ感」が先週の6位からダウン。ただ、こちらはダウンロード数は6位から3位、ストリーミング数は6位から5位、YouTube再生回数も18位から16位にアップしています。こちらも映画の方はまだヒットを続けており、来週以降の巻き返しも期待できます。これで15週連続のベスト10ヒット。

今週のHot100は以上。一方、Tani Yuuki「W / X / Y」は今週14位にダウン。ベスト10ヒットは通算42週でとりあえずストップです。ただ、ストリーミング数はまだ6位につけているので、まだまだ来週以降のベスト10返り咲きの可能性もありそうです。明日はHot Albums!

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2023年3月21日 (火)

シューゲイザー好き必聴

Title:After the Magic
Musician:Parannoul

Afterthamagic

韓国の音楽と言えば、いまや日本どころか世界を席巻しているK-POP。その好き嫌いに関わらず、人気ぶりは否定しようがありませんし、また日本に限らず、既に一時期のブームというよりもひとつのジャンルとして定着しつつあります。個人的にはあのタイプのアイドルポップスは好きではないので、シングル単位くらいしか聴いていないのですが、ただもちろん韓国の音楽シーンは、いわゆるアイドルポップスだけではありません。今回紹介するには、世界的なインディーシーンの中で注目を集めているポストロックミュージシャン、Parannoul。本人は表に出てこないため、人となりは不明なのですが、宅録系のソロミュージシャンだとか。ある意味、K-POPとは真逆の位置にいるミュージシャンとも言えるかもしれません。

アルバムは、まずギターのストロークで弾き語る「Polaris」からスタート。清涼感ある歌声とストリングスの音色が美しく、メランコリックなメロも耳を惹くのですが、この楽曲が本領を発揮するのは中盤から。前半の静かな雰囲気が一転、1分56秒からいきなりダイナミックなノイズが入ってきて、楽曲の雰囲気は一転します。とはいえ、ホワイトノイズで埋め尽くされた曲は非常に幻想的で美しく、典型的なシューゲイザーサウンドなのですが、そのノイズに身をゆだねつつ楽しめる作品になっています。

3曲目「Arrival」も最初から楽曲はギターノイズで埋め尽くされる、シューゲイザーの作品。ただ、そのバックで静かに鳴っているピアノの音色が耳を惹きますし、メロディーラインは至ってメランコリックでポップに仕上がっています。さらにそれに続く先行シングル「We Shine at Night」も魅力的。こちらも楽曲を埋め尽くすノイズの中、バンドサウンドが鳴り響く楽曲で、切なさを感じるメロディアスな歌も魅力的。また、ノイズの中でしっかりとビートを刻むドラムの音色も印象的。こちらはなんとなく90年代に活躍した日本のバンド、スーパーカーを彷彿としました。

「Parade」も序盤はピアノとストリングスが入ってケルティッシュなポップソングからスタート。こちらも途中からギターノイズとダイナミックなバンドサウンドが埋め尽くすのですが、序盤のケルティッシュやサウンドやメロは最後まで流れ続けているのもユニーク。「Sketchbook」もギターノイズで埋め尽くされつつ、エレクトロビートが鳴り響くリズミカルな作品となっている点がまた独特。ただビートにまけない狂暴さを感じるノイズも印象に残ります。

さらに後半「Imagination」はグッと変わって、ポップでメロディアスなギターロックに。爽やかなサウンドが印象に残ります。こちらも途中からノイジーなサウンドが入りますが、終始、爽やかなポップソングという印象は変わりません。またラストを締めくくるタイトルチューン「After the Magic」も、ホワイトノイズで美しくデコレートされつつ、ストリングスやピアノの音色が美しいポップチューンに。女性コーラスも入りつつメランコリックに聴かせる歌も実に魅力的な作品になっています。

そんな訳で全10曲1時間弱の長さで、終始ドリーミーなギターノイズが鳴り響くこの作品。この楽曲を埋め尽くすホワイトノイズとポップでキュートなメロディーラインという組み合わせは、まさにシューゲイザーの王道とも言っていいスタイルとなっています。そこにピアノやストリングスの音色も加わり、実に美しい音の世界を繰り広げられる作品になっています。

今回のアルバムのキャッチフレーズは「このアルバムは、あなたが期待するものではなく、私がいつも望んでいたものです」というもの。ただ率直に言って、シューゲイザー好きなら間違いなく待ち望んていたようなアルバムではないでしょうか。個人的にも思いっきり好みの壺をついた今回の作品。まさに「私的」ベストアルバムの年間ベストクラスのアルバムだったと思います。歌が韓国語という点も、ちょっとした「異世界」感があり楽曲にプラスに働いている感も。いや、すっかりはまっていきそう。全シューゲイザー好きは聴くべき1枚です。

評価:★★★★★

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2023年3月20日 (月)

ブラジル音楽界の巨匠による2作品

今日紹介するのは、ブラジル音楽界の巨匠、レチエイス・レイチに関する2枚のアルバム。今年、日本独自でCD化され、話題を呼んでいるようです。

Title:O enigma Lexeu
Musician:Letieres Leite Quinteto

レチエイス・レイチというミュージシャンは音源はもちろん、名前を聴くのも今回はじめてのミュージシャンです。1959年にブラジル北東部のバイーア州で生まれた彼は、アフロブラジリアンをベースとした音楽で特に2000年代のブラジルの音楽シーンに大きな影響を与えたそうです。残念ながら2021年に新型コロナウイルスにより61歳という若さで生涯を終えました。こちらはそんな彼がクインテットを率いて録音した1枚。もともと2019年に配信限定でリリースされてリアルタイムでも話題になったそうですが、このたび、あらためてCD化されたようです。

音楽の紹介としてはクロスオーバー・ジャズという表現を使っており、類似のミュージシャンとしてウェザーレポートのようなフュージョンジャズ系のミュージシャンの名前があげられています。確かに、基本的にはシンプルで、比較的王道を行くような爽快なジャズがメイン。メロディアスであか抜けたサウンドは、日本でも広いリスナー層が楽しめそうな作品となっています。

特に前半の「Tres Yabas」などは、まさにメランコリックな美しいピアノの調べが耳を惹きますし、「Tramandai」も哀愁感たっぷりのサックスの音色が胸に響きます。ラストの「Mestre Moa do Katende」もテンポのよい軽快なジャズナンバーになっており、日本でもおしゃれなラウンジに流れてきそうな・・・・・・という表現は、あまり誉め言葉にはなっていませんか?

ただ、これだけだとよくありがちなクロスオーバー系のジャズユニットということになるのですが、彼らがユニークなのはアフロブラジリアンというジャンル通り、アフロ系のサウンドを組み込んでいる点でしょう。1曲目の「Casa do Pai」は郷愁感あふれる作品なのですが、パーカッションの音色が響いていますし、その後も軽快でトライバルなパーカッションがアルバムの中のひとつの重要なキーとして機能しています。

フュージョン系ジャズのような耳なじみやすさがありつつ、一方ではトライバルなパーカッションが独特のグルーヴを作り上げている、そんな一味変わったジャズの傑作アルバムになっていました。遅ればせながら、レチエイス・レイチという才能に惹かれた1枚でした。

評価:★★★★★

Title:Cancao da Cabra
Musician:Sylvio Fraga&Letieres Leite

こちらはブラジルはリオ・デ・ジェナイロ出身のシンガーソングライター、シルヴィオ・フラーガがレチエイス・レイチとタッグを組んで作成されたアルバム。こちらも2019年にリリースされた作品が日本限定でCD化されたようです。

クロスオーバー・ジャズがベースだった上記「O enigma Lexeu」と比べると、こちらはあくまでもシルヴィオ・フラーガがメインのアルバム・・・なのですが、かなり多彩な音楽性を聴かせてくれます。1曲目の「Eua」からして、いきなりギターロックの作品になっており、ちょっとビックリしますし、逆に「O Lagarto e o Gato Largado」は「O enigma Lexeu」にも通じるような、弦楽器の重奏を美しく聴かせる作品に。かと思えばタイトル曲である「Cancao da Cabra」はアコースティックギター1本を静かに爪弾きながら、メランコリックな歌声を聴かせる作品になっています。

その後も「Sono do Burgo」「Sei da Cor da Noite」はブラジル音楽の色合いが濃い作品になっていますし、かと思えば終盤「Sao Bernardo」はメタリックなサウンドからスタート。アバンギャルドな作風かと思えば、後半はサックスをベースに伸びやかな歌声を聴かせる曲調に。ラストの「Nevoeiro」もアコースティックギターをベースにしつつ、アバンギャルドさを感じさせる作品に仕上がっています。

全体的にはラテン系やブラジル音楽をベースとしながら、メランコリックなメロを重ねつつ、一方でどこかポストロック的なアバンギャルドさも垣間見れる作品になっていたように感じます。クロスオーバー・ジャズに徹していた「O enigma Lexeu」に比べると、よりレチエイス・レイチの幅広い音楽性が垣間見れる作品になっていたようにも感じました。

どちらもレチエイス・レイチの才能を強く感じられる作品。いまさらながらですが、わずか61歳という早世が惜しまれます。ブラジル音楽好きに限らず、広いリスナー層が楽しめる傑作アルバムでした。

評価:★★★★★

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2023年3月19日 (日)

現役感バリバリ

Title:Mercy
Musician:John Cale

先日、御年75歳でバリバリの現役として活躍しているIggy Popのニューアルバムを紹介しました。今回紹介するのは、The Velvet Undergroundのメンバーとしてもおなじみのジョン・ケイル。なんとこの3月で御年80歳!!そんな彼が、なんとオリジナルアルバムをリリース。約6年ぶりとなる新作ということですが、さらにそのアルバムが、非常に挑戦的な作品になっていたというから驚かされます。もともと彼自体、キャリアのスタートからして現代音楽だったようですが、その時の挑戦心が、80歳となった今でも全く衰えていないのが驚かされます。

アルバムはまずタイトルチューンの「MERCY」からスタートしますが、ドリーミーなエレクトロチューン。続く「MARILYN MONROE'S LEGS(beauty elsewhere)」はタイトルとは裏腹に、メタリックなエレクトロサウンドを入れつつ、不気味で、ちょっとドリーミーな雰囲気が独特な作品となっています。

このように基本的に作品はドリーミーなサウンドで展開していきます。そんな中でもお経のような淡々としたボーカルが不気味に響く「THE LEGAL STATUS OF ICE」はメタリックなサウンドが特徴的。メランコリックな歌を聴かせる「I KNOW YOU'RE HAPPY」から、ラストはピアノやストリングスの音を物悲しく聴かせる「OUT YOUR WINDOW」も、金属音を響かせるようなピアノの音色がどこかメタリック。ラストはどこか無機質なメタリックさを感じさせる楽曲で締めくくられます。

そんな本作の中で、もうひとつ特徴なのはジョン・ケイルのボーカルでしょう。上にも書いた通り、御年80歳の彼。もちろん、もう「おじいさん」の声なのですが、そんな渋みのある声をアルバムの中で上手く生かしています。全体的にはサウンドのひとつとして楽曲に溶け込ませているような曲が多いのですが、「TIME STANDS STILL」ではメランコリックに力強く歌い上げていますし、「I KNOW YOU'RE HAPPY」では前述のようにメランコリックな歌を聴かせてくれます。彼の渋みのあるボーカルが、本作では重要な味になっていました。

また、もう一つ大きな特徴が、若手ミュージシャンが多く参加している点。特に「STORY OF BLOOD」では、今話題の女性シンガー、Weyes Bloodが参加。その歌声を聴かせてくれていますし、「EVERLASTING DAYS」ではAnimal Collectiveが参加。他にも様々なミュージシャンが参加しています。ともすればおじいちゃんと孫くらいの年の差がありながら、これだけ多くのミュージシャンに声をかけて参加させているあたり、彼の若々しさと年をとっても変わらない挑戦心を感じます。

もちろん、その結果としてのアルバムの出来が悪いわけありません。あのジョン・ケイルだから、という点抜きとして、現役感をバリバリ感じられる文句なしの傑作アルバムに仕上がっていました。しかし、自分が80歳になった時、これだけ柔軟に生きられるのか・・・ということを考えると、あらためてジョン・ケイルのすごさを感じ入ります。これだけ若々しいんだから、まだまだ次も、次の次も、新作を世に送り出してくれそうですね。いつまでもお元気で!!

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

NO THANK YOU/Little Smiz

Little

前作「Sometimes I Might Be Introvert」が大絶賛を受け、イギリスを代表する音楽賞、ブリッド・アワードで最優秀新人賞を獲得するなど、一躍注目のミュージシャンとなった、イギリスのラッパー、Little Simzの新作。HIP HOPを主軸にしつつ、メランコリックな歌も聴かせてくれるポップな作風が魅力的。また、エレクトロサウンドやトライバルなリズム、ジャズやオーケストラサウンドなど幅広い音楽を取り入れた作風に仕上げており、最後まで飽きさせません。前作に引き続き、本作もかなり高い評価を受けそう・・・。非常に自由度の高い作品ながらも、彼女の実力も実感できた傑作でした。

評価:★★★★★

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2023年3月18日 (土)

ソロでは初参加!

奥田民生2023 ラビットツアー~MTR&Y~

会場 日本特殊陶業市民会館フォレストホール 日時 2023年3月1日(水)19:00~

Okudatamio

奥田民生のソロライブにはじめて足を運んできました!以前、ユニコーンのライブに足を運んだことあるので、奥田民生自体はそこで拝見したことがあるのですが、ソロは初。やはりユニコーンのライブを見たからには、奥田民生のライブも一度は見ておかないと・・・ということで足を運んできました、市民会館。コロナ禍の規制もなくなりつつある中、会場は満員・・・とまでは残念ながら行かなかったようですが、ほぼ9割以上の入りでした(ただ、2階席以上の状況はわからないのですが・・・)。

定時を10分くらいたった時にメンバーがステージ上に登場。ステージの証明が明るくなることなく、メンバーが登場してきたので、最初はベースの小原礼を奥田民生本人だと勘違いしました・・・。その後、最後に奥田民生本人が飄々とした雰囲気で登場。ライブがスタートとなりました。

最初は「太陽が見ている」からスタート。その後「無限の風」を挟み、「月を超えろ」が登場。ステージバックには大きな「月」のセットが浮かび上がります。その後、最初のMCへ。メンバー紹介となるのですが、特に「コント」的な演出もなく、和気あいあいとした雰囲気ながらも、楽屋的なノリでのメンバー紹介。ある意味、奥田民生らしい肩の力が抜けたMCが展開されます。

その後は「ライオンはトラより美しい」「カヌー」「音のない音」と続きます。この日は特に特定のアルバムのリリースツアーではなく、過去のベスト的な選曲となっているのですが、ヒット曲やシングル曲の連続でなく、知る人ぞ知る的な曲の選曲となっているのも奥田民生らしさを感じます。

続くMCも、名古屋ネタとなりましたが、こちらも良くも悪くも楽屋でのトークそのままのノリで。ただMC明けの「愛のボート」では最後にバンドメンバーによるジャム演奏を披露。ロックバンドとしての実力を見せつけてくれます。「白から黒」でもエレピのソロをバチっと決めて、まさにプロフェッショナルとしての実力を強く感じるステージになっていました。

後半は「明日はどうだ」でも会場のテンションも上がっていきます。ここから一気に後半戦へ。会場のテンションがあがる中、最後は「イナビカリ」「手紙」そして「御免ライダー」で締めくくります。

会場はもちろんアンコールへ。こちらも比較的早めにメンバーは再登場。簡単なMCの後、「さすらい」へ。これまた会場は盛り上がり、ラストは「快楽ギター」へ。会場の盛り上がりの中、ライブは終了。約2時間弱のステージでした。

今回、はじめての奥田民生ソロのステージでしたが、全体的に淡々とした雰囲気で進んだステージ。特に肩の力が抜けたようなステージだったのは彼らしさを感じます。また、MCをはじめとして演出的な部分はほとんどなし。演出的な要素を多分に含んでエンタテイメント性が強かったユニコーンのライブとは、ある意味、真逆とも言えるステージになっていました。個人的にはもうちょっとMCが多めなのかな、とも思っていたのですが、MCも少なめ。ある意味、ストイックさすら感じるステージだったと思います。

ユニコーンでのライブとは異なるものの、奥田民生らしさを感じることが出来たステージ。熱心なファンではない身としては、もうちょっとヒット曲を聴きたかったな、という感想もあったものの、とても楽しめたライブでした。また足を運びたいです!

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2023年3月17日 (金)

ボーカリストとしての魅力あふれるベスト盤

Title:原田知世のうたと音楽
Musician:原田知世

原田知世のデビュー40周年を記念してリリースされたオールタイムベスト。今回のベストアルバムを聴きながら考えたのですが、原田知世って、気が付いたらすごいよい立ち位置にいるよなぁ、ということをふと思いました。1980年代のアイドル全盛期にデビューし、一躍人気を確保しつつも、アイドル冬の時代となった90年代には上手く女優としてシフト。現在までその地位を確保しています。

歌手としても最初のアイドル歌手から「ボーカリスト」としてちょうど上手くシフトしたのが顕著で、1983年に「時をかける少女」でブレイク。その後も「天国にいちばん近い島」「早春物語」がヒットを記録するものの、徐々に売上は下降気味に。そんな中、1997年にシングル「ロマンス」がスマッシュヒット。カーディガンズなどの人気でスウェーディッシュポップが注目を集める中、カーディガンズのプロデューサーであるトーレ・ヨハンソンプロデュースという点が大きな話題となり、その当時の渋谷系ブームの流れにのって大きな話題となりました。

当時、リアルタイムで「ロマンス」は聴いていたのですが、既に原田知世といえば、「過去のアイドル」というイメージ。シングル曲も低迷していた中、この曲はまさに起死回生のヒットというイメージがあります。オリコン最高位39位で、売上枚数も累計6.8万枚というのは、当時としてもかなり寂しい数値で、その程度しかヒットしなかったのか・・・と意外に感じたのですが、同曲も含む直後のアルバム「I could be free」はベスト10ヒットを記録しているので、このシングルの売上以上に多くのリスナーの支持を集めたのでしょう。

ただ、今回のベスト盤、リリース順に並んでいるようなのですが、この曲あたりで彼女のボーカリストとしてのスタイルも大きく変わったように感じます。デビュー直後の彼女のボーカルは、ある意味、非常に淡々としており、機械的な印象すらあります。それが大きく変わったのはこの「ロマンス」以降。デビュー当初からの清涼感ある歌声に、柔らかさを伴う表現力も加わり、ボーカリストとしてあきらかに一皮むけた感のある成長を遂げています。

その後、2000年代には高橋幸宏らが結成したバンド、pupaでボーカルを担当。またシングルとしてはその後、大きなヒットはないものの、2016年にはカバーアルバム「恋愛小説2-若葉のころ」はチャート4位というヒットを記録。このベスト盤もオリコン最高位8位(ビルボードでは13位)とヒットを記録するなど、ボーカリストとして今に至るまで一定以上の評価を受けています。

今回、特にここ最近の曲については原田知世の曲はあまり聴いていなかったので、はじめて聴いた曲がほとんどだったのですが、やはりボーカリストとして非常に魅力的だな、ということを改めて感じます。特に「ロマンス」やそれに続く同じくトーレヨハンソンプロデュースの「シンシア」も同様なのですが、アコースティックベースの暖かいサウンドに彼女のボーカルがピッタリとマッチします。

Disc2の、比較的最近の曲に関してもアコースティックベースの作品が多く、彼女の歌声ともピッタリマッチする良曲が続きます。そういう意味では、しっかり彼女のボーカルという素材を調理した作品が多く、彼女は作家陣にも恵まれていたんだな、ということをあらためて感じます。そんな彼女のボーカルを軸として構成された曲なので、ベスト盤全体としての統一感もあり、非常に良質なポップアルバムとして楽しめた作品でした。

オリジナルアルバムとしても昨年、「fruitful days」をリリースしていますし、ミュージシャンとしても積極的な活動を続ける彼女。過去のデータを調べると、2009年の「eyja」以降、彼女の作品に触れるのは久しぶりだったようですが、やはりコンスタントにチェックしなくてはいけませんね。あらためて彼女のボーカリストとしての魅力を感じる1枚でした。

評価:★★★★★

原田知世 過去の作品
eyja


ほかに聴いたアルバム

Flowers/OKAMOTO'S

OKAMOTO'Sの最新作はいわゆる企画盤なのですが、その企画とは「メンバー内コラボレーションアルバム」。通常、OKAMOTO'Sの楽曲の多くは、オカモトショウ、オカモトコウキが楽曲制作を担当しているのですが、今回のアルバムでは他のメンバー、ハマ・オカモト、オカモトレイジも作詞作曲ほか楽曲制作に参加。メンバー4人が様々な組み合わせで楽曲制作に参加したアルバムとなっています。

で、そんな企画盤の本作ですが、これが意外なほどアルバムの出来が良かったので驚き。メロディーラインはメランコリックながらもいつも以上にインパクトもあり、ちょっと癖のあるオカモトショウのボーカルにもマッチ。OKAMOTO'Sのアルバムは、「惜しい」出来の作品が多いのですが、これが予想外に傑作に仕上がっていました。むしろメンバー全員が楽曲制作に参加した方が、良いアルバムが出来るのでは?このメンバーコラボが次回作以降にどんな影響を与えるのかわかりませんが、これを機に、OKAMOTO'Sの音楽性がもっと広がりそう。

評価:★★★★★

OKAMOTO'S 過去の作品
10'S
オカモトズに夢中
欲望
OKAMOTO'S
Let It V
VXV
OPERA
BL-EP
NO MORE MUSIC
BOY
10'S BEST
Welcome My Friend
KNO WHERE

Ampersand/Spangle call Lilli line

ミニアルバム「Remember」から約1年10ヶ月ぶり、フルアルバムだと実に約4年ぶりとなるSCLLの最新作。本作では2008年のアルバム「PURPLE」以来、実に15年ぶりに共同プロデューサーとしてsalon musicの吉田仁を迎えた作品になっています。そのため、初期に回帰したようなサウンドが特徴的となっており、よりドリーミーなエレクトロポップの路線に。シティポップ寄りだったり、ポストロック寄りになったりと、作品によって様々にシフトしていたSCLLですが、ある意味、エレクトロポップ路線により焦点を絞ったアルバムに仕上がっていました。

評価:★★★★

Spangle Call Lilli Line 過去の作品
VIEW
forest at the head of a river

New Season
Piano Lesson
SINCE2
ghost is dead
Dreams Never End
SCLL
Remember

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2023年3月16日 (木)

こちらもアイドル系が目立つチャートに

今週のHot Albums

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今週もまたアイドル系が目立つチャートとなりました。

まず1位初登場はNMB48「NMB13」が獲得。CD販売数1位、ダウンロード数32位。ちなみに13枚目のアルバムではなく、結成13年目に由来するアルバムタイトルだそうです。オリコン週間アルバムランキングでは初動売上13万8千枚で1位初登場。前作「難波愛~今、思うこと~」の初動15万9千枚からダウン。

2位初登場は幾田りら「Sketch」。CD販売数4位、ダウンロード数1位。ご存じ、YOASOBIのボーカリストによるソロ作。フルアルバムとしては本作が初となります。オリコンでは初動売上1万7千枚で4位初登場。直近作はミニアルバム「Jukebox」でしたが、本作はライブ会場及びタワーレコード限定販売だったため、ランク圏外でした。

3位にはGENERATIONS from EXILE TRIBE「X」がランクイン。CD販売数2位、ダウンロード数8位。こちらもアルバムタイトルは、アルバムが10枚目、ではなく、デビュー10周年に因むアルバムタイトルだそうです。オリコンでは初動売上2万2千枚で2位初登場。前作「Up&Down」の初動4万6千枚(3位)からダウンしています。

続いて4位以下の初登場盤です。まず4位には男性アイドルグループ7ORDER「DUAL」がランクイン。CD販売数3位、ダウンロード数16位。もともとジャニーズ系として結成したものの、メンバー全員がジャニーズ事務所を退所し、そのまま再度結成したという異色のグループ。オリコンでは初動売上2万枚で3位初登場。前作「Re:ally?」の初動2万8千枚(4位)からダウン。

5位はIDOLiSH7, TRIGGER, Re:vale, ŹOOĻ「アイドリッシュセブン Compilation Album “BLACK or WHITE 2022”」。スマートフォン向けゲームアイドリッシュセブンで登場するキャラクターによるコンピレーションアルバム。CD販売数3位、ダウンロード数16位。オリコンでは初動売上1万4千枚で5位初登場。

6位にはアニソン系女性シンガーReoNa「HUMAN」がランクイン。CD販売数6位、ダウンロード数6位。オリコンでは初動売上1万枚で7位初登場。直近作はEPの「Naked」で同作の初動売上7千枚(6位)よりはアップ。オリジナルアルバムとしての前作「unknown」の初動1万3千枚(4位)からはダウンとなっています。

7位初登場は名古屋を拠点とする女性アイドルグループ手羽先センセーション「ハローニューワールド」。CD販売数7位。オリコンでは初動売上1万枚で6位初登場。前作「行く先、手羽先」の初動6千枚(7位)からアップ。

8位にはSir Vanityのミニアルバム「midnight sun」が初登場。声優の梅原裕一郎、中島ヨシキを中心としたバンドですが、メンバーに「ビジュアル担当」がいるあたり、アイドル色が強い印象が。CD販売数8位、ダウンロード数45位。オリコンでは初動売上6千枚で9位初登場。本作がデビュー作となります。

最後10位にはONEW(SHINee)「Circle」が初登場。韓国の男性アイドルグループSHINeeのメンバーによるソロミニアルバム。韓国盤のためCD販売数は対象外となり、ダウンロード数2位のみで総合順位にランクインしています。

今週の初登場は以上。一方、先週までロングヒットを続けていた結束バンド「結束バンド」は今週11位にダウン。連続ベスト10記録は11週でストップとなりました。

今週のHot Albumsは以上となります。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2023年3月15日 (水)

またアイドル系が上位に

今週のHot100

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ロングヒット勢の勢いが若干落ち着いている影響か、CDリリースで上位にランクインしてきたアイドル系が今週は上位に並びました。

まず1位を獲得したのがNiziU「Paradise」。CD販売数2位、ダウンロード数3位、ストリーミング数13位、ラジオオンエア数4位、YouTube再生回数4位。韓国の事務所が仕掛けた日本人女性アイドルグループなのですが、楽曲は日本のアイドルポップスに寄せた感じ。日本ではこういう曲の方は売れると踏んだのでしょうか?オリコン週間シングルランキングでは初動売上15万2千枚で2位初登場。前作「Blue Moon」の初動16万1千枚よりダウンしています。

2位はジャニーズ系アイドルグループなにわ男子「Special Kiss」。CD販売数はこちらが1位でしたが、ラジオオンエア数24位、YouTube再生回数13位で、ジャニーズ系らしくダウンロード数とストリーミング数は対象外。結果、総合順位は2位となりました。オリコンでは初動売上51万6千枚で1位初登場。前作「ハッピーサプライズ」(1位)から横バイ。

そんな訳で、1位2位と初登場曲が並びましたが、今週の初登場はこの2曲のみ。結果、3位以下はまたロングヒット曲が並んでいます。

まず3位はOfficial髭男dism「Subtitle」。ストリーミング数は21週連続の1位。ただYouTube再生回数は6位から8位、ダウンロード数も6位から7位と全体的には若干の下落傾向。ただし、これで22週連続のベスト10&ベスト3ヒットとなります。

4位はVaundy「怪獣の花唄」が2位からダウン。ストリーミング数は2位から3位、ダウンロード数は10位から13位、YouTube再生回数も12位から15位にダウン。ただ、カラオケ歌唱回数は先週から変わらず2週連続の1位となっています。これで10週連続のベスト10ヒットとなりました。

5位には米津玄師「KICK BACK」が先週の3位からダウン。ストリーミング数4位、ダウンロード数16位は先週から変わらず。YouTube再生回数は9位から15位にダウンしています。これで22週連続のベスト10ヒット。

6位は10-FEET「第ゼロ感」で、こちらも先週の4位から2ランクダウン。ただ、ダウンロード数、ストリーミング数ともに5位から6位にダウン。YouTube再生回数も13位から18位にダウンしています。これでベスト10ヒットは14週連続に。

そしてTani Yuuki「W / X / Y」は先週の6位から10位に再びダウン。土俵際の粘りを見せています。ストリーミング数は6位から8位にダウン。YouTube再生回数も20位から24位にダウンしていますが、ダウンロード数は34位から30位に若干のアップ。これで通算42週目のベスト10ヒットとなりました。

さらに今週、なとり「Overdose」が先週の18位から8位にアップ。1月4日付チャート以来、10週ぶりのベスト10返り咲き。通算15週目のベスト10ヒットとなっています。特に大きな要因となっているのがYouTube再生回数が先週の72位から5位に大幅アップとなっている点。ただ、なぜここに来てYouTube再生回数が大きくランクアップしたのかは不明・・・。YouTubeのチャートは上位にランクインしていた曲がいきなり圏外になったかと思えば、次週には再び上位にランクインするなど、ランク動向がいささか不鮮明な部分があるので、あまり信用が出来ない部分もあるのですが・・・。

一方、先週、ベスト10に返り咲き多Ado「新時代(ウタ from ONE PIECE FILM RED)」は今週11位にダウン。ベスト10ヒットは1週のみに留まりました。

今週のHot Albumsは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2023年3月14日 (火)

ロックオペラ第2幕

Title:ATUM-actⅡ
Musician:The Smashing Pumpkins

以前も紹介したスマパンがはじめたプロジェクトの第2弾。昨年11月に「ATUM-actⅠ」として配信限定のアルバムをリリース。全3部作となる同プロジェクトは、1月に第2幕、4月に第3幕がリリースされ、第3幕リリースと同時に3枚組のCDをリリースという壮大な「ロックオペラ」となっています。そして、予定通り配信限定でリリースされたのが第2幕となる本作。無事、リリースされました。

ある意味、スマパンらしいともいえる重厚なプロジェクトである本作。静かな森の中にいるようなイントロからスタートする冒頭の「Avalanche」は、途中からシンセを主導としつつダイナミックなアレンジを展開。続く「Empires」は一転、ヘヴィーなギターリフ主導のハードロック風のナンバーへと続きます。ただ、いずれも重厚さを感じるアレンジとメランコリックなメロディーラインという点は共通。「actⅠ」も同様でしたが、ある意味、非常にスマパンらしいといる作風になっています。

その後も、「Neophyte」「Night Wave」「Every Morning」のようなシンセを主体にドリーミーに聴かせる作品を軸にしつつ、その間に「Moss」「Beguiled」といったヘヴィーなギターリフ主導のハードロックな作品が交互に展開されるような構成に。ある意味、夢見心地なサウンドで夢の世界にリスナーをいざないつつ、ヘヴィーなサウンドでガツンとリスナーの目を覚ます、といった感じでしょうか。アルバム全体としての統一感を持たせつつ、リスナーを飽きさせない展開を聴かせてくれる作品になっています。

最後はシンセでニューウェーヴ風の分厚いサウンドを聴かせつつ、メランコリックなメロディーラインをしっかり聴かせる「The Culling」、ピアノとアコギというアコースティックなサウンドで暖かくも切ないメロを聴かせる「Springtimes」で締めくくり。最後まで美しいメロの曲をしっかりと聴かせる点、スマパンらしい締めくくりと言えるかもしれません。

そんな訳で「actⅠ」に続く同作。基本的には前作から引き続き、分厚いサウンドとメランコリックなメロに実にスマパンらしさを感じさせる作品になっていました。ただ、前作から引き続き、ということはつまり逆に言うと、前作の気になったについてもそのままということ。シンセのアレンジはちょっとチープに感じてしまいますし、ダイナミックなアレンジはちょっと大味に感じてしまいます。そういう点を含めてもスマパンらしいといえばらしいのかもしれませんが・・・。

評価:★★★★

The Smashing Pumpkins 過去の作品
Teargarden by Kaleidyscope
OCEANIA
(邦題 オセアニア~海洋の彼方)
Monuments to an Elegy
SHINY AND OH SO BRIGHT,VOL.1/LP:NO PAST.NO FUTURE.NO SUN.
CYR
ATUM-actⅠ

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2023年3月13日 (月)

曰くつきのリミックス盤

Title:百薬の長
Musician:椎名林檎

このアルバムに関しては、ご存じの通り、公式通販サイト限定盤についてくるグッズがヘルプマークや赤十字のマークに酷似し騒動となり、結果、アルバムのリリース自体も延期。CDリリース以上の話題となってしまいました。そのグッズを巡る騒動についての雑感については後程、書こうと思うのですが、そんな曰くつきのアルバムとなってしまった本作。グッズ自体、椎名林檎がノータッチだと公言してしまった以上、このアルバム自体も彼女がノータッチという可能性もありうるのですが、ただ、そんな状況を差し引いても、このアルバム自体の出来は、非常に素晴らしいものに仕上がっていました。

基本的にエレクトロ系のミュージシャンが自由に彼女の曲のリミックスを行っている本作。結果として、それぞれのリミックスにおいて、それぞれのミュージシャンの個性が前に押し出されているようなアレンジに仕上がっていました。まずアルバムの冒頭は、アメリカのエレクトロミュージシャンTelefon Tel Avivのリミックスによる「あの世の門 ~Gate of Hades~ (Telefon Tel Aviv Version)」からスタートするのですが、ダウナーながら力強いビートを奏でるエレクトロアレンジが耳を惹きます。そしてそれに続くは砂原良徳による「JL005便で ~Flight JL005~ (B747-246 Mix by Yoshinori Sunahara)」なのですが、こちらも聴けば一発でまりんらしさを感じる音作りとなっています。

アシッド・ジャズの第一人者、Gilles Petersonによる「ちちんぷいぷい ~Manipulate the time~ (Gilles Peterson’s Dark Jazz Remix)」も音数を絞ったエレクトロビートが非常にカッコよいナンバーに。岡村靖幸がリミックスを手掛けた「長く短い祭 ~In Summer, Night~ (Yasuyuki Okamura 一寸 Remix)」は最初は普通のエレクトロといった感じなのですが、後半になると岡村ちゃんらしいファンキーな要素も感じられます。

そしてなんといっても聴いていて一発で彼のリミックスだとわかったのが石野卓球による「浴室 ~la salle de bain~ (Takkyu Ishino Remix)」で、疾走感あるテクノチューンが実に石野卓球らしい楽曲に。ラストを締めくくる鯵野滑郎の「いとをかし ~toogood~ (Ajino Namero Bon Voyage Remix)」も楽しいチップチューンに仕上げています。

エレクトロチューンを中心に、12人12様に椎名林檎の楽曲を好きなようにいじった今回のアルバム。グッズ騒動でケチが付いてしまった形になってしまいましたが、内容的には非常に優れたアルバムですし、なによりも12人の優れたトラックメイカーの実力を感じることが出来る作品になっていました。椎名林檎の、という以上にリミキサーとして参加したミュージシャンに興味がある方は要チェックのアルバムです。

評価:★★★★★

椎名林檎 過去の作品
私と放電
三文ゴシップ
蜜月抄
浮き名

逆輸入~港湾局~
日出処
逆輸入~航空局~
三毒史
ニュートンの林檎~初めてのベスト盤~


ほかに聴いたアルバム

TIME LEAP/佐藤千亜妃

Timeleap

佐藤千亜妃のニューアルバムは、「時間旅行」をテーマとした5曲入りのEP盤。前EPの「NIGHT TAPE」ではメロウな楽曲を聴かせてくれた彼女。本作では、その延長戦上を意識しながら、軽快なR&B風のポップスに仕上げられており、いかにも今どきのポップソングという印象を受ける作品になっていました。この方向性がおもしろいのでは?と思った前作に比べると、今回はちょっと方向性がはっきりしなくなっていた作品に。いろいろな意味で挑戦の過程といったイメージはあるのですが・・・。次の一手は?

評価:★★★★

佐藤千亜妃 過去の作品
SickSickSickSick
PLANET
KOE
NIGHT TAPE

curtain call/MONKEY MAJIK

途中、ベスト盤のリリースを挟んだため、純然たるオリジナルアルバムとしては約3年ぶりとなるMONKEY MAJIKのニューアルバム。ここ最近、比較的安定した良作が続いていますが、本作もそんな良作の1枚。前半から中盤にかけてはシンセで爽快に聴かせるニューウェーヴ風の楽曲が、終盤はアコースティックにしんみり聴かせる作品が並んでいます。全体的には派手さはないものの、卒なくポップにまとめあげているという印象の作品に。洋楽テイストを醸し出しつつ、ほどよくJ-POPに着地させている作風に彼ららしさを感じます。

評価:★★★★

MONKEY MAJIK 過去の作品
TIME
MONKEY MAJIK BEST~10years&Forever~
westview
SOMEWHERE OUT THERE
DNA
Colour By Number
southview
enigma
COLLABORATED
northview
20th Anniversary BEST 花鳥風月

続きを読む "曰くつきのリミックス盤"

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2023年3月12日 (日)

初の全米1位獲得シングルも収録

Title:Gloria
Musician:Sam Smith

2019年に自らがノンバイナリーであることを公言したSam Smith。同アルバムの先行シングルともなった「Unholy」は、ドイツ出身のシンガーソングライターで、トランスジェンダーでもあるキム・ペトラスとタッグを組んだ作品。同作は全米ビルボードチャート1位を獲得し、ノンバイナリーとトランスジェンダーを公言するミュージシャンが同チャートで1位を獲得するのは初の快挙だったそうです。

今回のアルバムは前作から約3年ぶりとなるニューアルバム。そんな彼の状況を反映されたアルバムだそうで、「創造的で眩しく、豪華で洗練された、予想外の、そして時にはスリリングでエッジの効いたサウンド」と「セックス、嘘、情熱、自己表現、不完全さに触れた歌詞」で構成されたアルバムとなっているそうです。実際、アルバムの1曲目を飾るのはタイトルそのまま「Love Me More」でゴスペル調のコーラスも美しい楽曲なのですが、タイトル通り、自分を愛せるようになってきた、という現在の心境を歌っています。

・・・とまあ、こうやって書くと、いかにも昨今のLGBTを反映した作品になっていますし、いわば「政治的な正しさ」を感じさせるアルバムにも感じさせます。そうなるとちょっと堅苦しいんじゃ・・・とすら感じたりするのですが、ただ実際は、そんなこと関係なく、今回のアルバムも文句なしに素晴らしいポップアルバムに仕上がっていました。

冒頭の「Love Me More」に続く「No God」も同じくメランコリックでゆっくり歌い上げる美しいナンバー。「Lose You」も物悲しく歌い上げる歌をバックに、打ち込みでリズミカルなビートが印象に残る楽曲に。カナダのSSW、ジェシー・レイエズをゲストに迎えた「Perfect」も力強く歌い上げるバラードナンバーに、と特に前半はその美しい歌声でメランコリックに歌い上げるポップチューンが続きます。

そしてこのアルバムの核となるのが中盤に組み込まれた前述の「Unholy」。荘厳に歌い上げるボーカルに、メタリックさも感じるエレクトロサウンド、そして後半から登場するキム・ペトラスのテンポよいラップが組み合わさった、挑戦心あふれた独自性の強い荘厳さを感じるナンバー。どこか気高さすら感じさせるこの曲は、全米1位も伊達じゃない、アルバムの中でも強いインパクトを持った作品に仕上がっています。

その後もアコギで聴かせる「How To Cry」、ダウナーなHIP HOP風のトラックが印象的な「Six Shots」、トライバルなリズムが印象的な「Gimme」、エレクトロダンスチューンで80年代っぽさも感じる「I'm Not Here To Make Friends」へと続き、タイトルチューン「Gloria」では荘厳なゴスペル調のコーラスを聴かせてくれます。

サム・スミスといえば、イギリスを代表するSSWなのですが、同じイギリスの大人気のSSWといえばエド・シーラン。個人的に時々混同してしまうのですが(笑)、今回のアルバムのラスト「Who We Love」では見事この2人のコラボが実現。実力派SSWの2人がタッグを組んだこともあり、非常に美しくメロディアスなポップチューンに仕上がり、このアルバムのラストを飾っています。

そんな訳で、バリエーションある作風を聴かせつつ、良質なポップチューンを並べた今回のアルバム。前述の通り、難しいこと抜きとして極上のポップスアルバムとして楽しめる傑作アルバムに仕上がっていました。ポップスシンガーとしての実力をいかんなく発揮した1枚。あらためてその魅力を強く感じることのできた作品でした。

評価:★★★★★

Sam Smith 過去の作品
IN THE LONELY HOUR
Thrill It All
Love Goes
Love Goes: Live at Abbey Road Studios


ほかに聴いたアルバム

JAPANESE SINGLES COLLECTION-GREATEST HITS-/Air Supply

ここでも何度か紹介している、主に80年代に人気を博した洋楽のミュージシャンの、日本でのシングル曲を集めた企画。今回はオーストラリアのポップバンドとして80年代に一世を風靡したAir Supply。名前は聴いたことはもちろんあるのですが、曲をまとめて聴くのははじめて。全体的にはメロディアスで爽やかなポップソング。良くも悪くも癖がないAORといったイメージなのですが、曲によってはカーペンターズを彷彿とさせる部分もあり、メロディーの良さはやはり耳を惹きます。いかにも80年代っぽい、広い層に支持されそうなポップソングが魅力的でした。

評価:★★★★

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2023年3月11日 (土)

ちょっと癖のある入門書

今回は最近読んだ音楽関連の書籍の紹介です。

今回は、ちょっと毛色が違ってクラシック関連の書籍になります。音楽評論家の許光俊によるクラシックの入門書「はじめてのクラシック音楽」。クラシック音楽というジャンルは興味を持つ方は多い一方、非常に敷居が高く感じるジャンルでもあるため、この手の入門書は数多く出ていますが、そのうちの1冊。新書形態で読みやすそうな内容だったので手に取ってみました。

私自身は「これでクラシック音楽を幅広く聴いてみよう」・・・と強く思った訳でもなく、また、この手のクラシック音楽入門書は何冊か読んだことあるのですが、そんな中、今回読んだこの「入門書」について感じるのは、まず「入門書」としては比較的癖のある内容だったかな、ということを感じました。どうも、この音楽評論家の許氏は、自分の個性的な意見を強く押し出すタイプの評論家のようで、そこらへん好き嫌いがわかれそうなタイプのようですが、それでも同書については「入門書」ということで、かなり意見は控えめだったよう。それでも要所要所に彼のクラシック音楽に対する見方が垣間見れる1冊になっていました。

そんな率直な物言いもあってか、まず内容的には読みやすい文体になっているのが大きなプラスポイント。また、「クラシック音楽とはどのような音楽か」からスタートし、「クラシック音楽の聴き方」や、さらにクラシック音楽に出てくる用語の解説も簡潔に紹介しているため、クラシック音楽の初心者についてはわかりやすく、またクラシック音楽に対して、どのようなスタンスで臨めばよいのか、というのも非常にわかりやすく書かれていました。

またこの本で「入門書」としてありがたかったのが、クラシックの演奏家・指揮者の紹介に、かなりの部分を割いている点でした。この手のクラシックの入門書は、クラシックの基本的な用語や作曲家についての解説でほとんどを占められており、演奏家についての紹介をしている本というのはいままでほとんど出会ったことがありません。ただ、クラシック音楽というのは、演奏家・指揮者によってかなり内容が変わってしまうジャンル。そういう意味では演奏家・指揮者の紹介に、かなりのボリュームを割いているというのは、初心者にとってはかなりありがたく、またクラシック音楽の世界をより深く知ることができる内容になっていました。

一方、賛否がわかれそうなのが、まさに上にも書いた許氏の見方が強く反映しているという点。「入門書」ということで、独自の意見は比較的抑え気味なのですが、それでも特に演奏家・指揮者の紹介では「これが一般的な見方なんだろうか・・・」とちょっと戸惑ってしまうような物言いもあります。例えばカラヤンの項では彼をかなり批判的に書いていますし、小澤征爾についても批判的に記載しています。ここらへん、ある種の見方を知ることが出来る点ではおもしろくもある反面、一般的な見方なのかどうなのか、初心者には判断できず、「入門書」としてはどうなんだろう・・・と感じてしまいます。

さらに物足りなさを感じた点としては、まずクラシック音楽全体の「歴史」についてはほとんど記載がなかった点。一般的にクラシックの入門書では、バロック音楽、古典派、ロマン派といった感じで、時代毎にまとめられており、クラシック音楽全体の歴史についてわかるような記載が多いのですが、この本では作曲家は主に「出身国」毎にまとめられており、一応、章によって時代区分はなされているものの、若干、クラシック音楽全体の流れについてはわかりにくかったように思います。ここらへん、時代区分で作曲家を並べなかったのは、わざとなのかもしれませんが・・・。

また、これを読んで、「じゃあ、クラシックを聴いてみよう」という方に対して、手にとるべき音源の紹介もなかった点も非常に残念。特に本書の中には、初心者はオンラインよりもCDを手に取って聴いてほしい、ということを書いてあるんですから、まず初心者が聴いてみるべき、お勧めのCDの紹介はほしかったなぁ。これについてもちょっと残念に感じました。

そういう訳で、「入門書」としてちょっと癖のある部分も感じられたため、おそらく他のオーソドックスな「入門書」と一緒に読んだ方が無難なようにも感じます。ただ、オーソドックスな「入門書」では物足りなさを感じられる部分を、同書ではしっかりとフォローしており、そういう意味でも「入門書」としての機能を果たしている1冊と言えるかもしれません。個人的にはなかなかクラシック音楽まで手が回らないのですが・・・ただ、これを読んで、またクラシック音楽に挑戦してみようかな、とも思えた1冊でした。

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2023年3月10日 (金)

「穏やか」ではないサウンド

Title:タオルケットは穏やかな
Musician:カネコアヤノ

現在、人気上昇中。個人的にも今、もっとも注目を集めるシンガーソングライターのひとりであるカネコアヤノ。フォーキーなメロディーラインと、そんなメロに沿ったような、どこか郷愁感漂いつつも、一方で歌詞の登場人物の体温を感じられそうな歌詞が特徴的。先日もはじめて彼女のライブに足を運び、その実力を再認識したのですが、そのライブツアーのタイトルにもなったアルバムがこちら。オリジナルアルバムとしては、約1年8か月ぶりのニューアルバムとなります。

特に今回のアルバムに関しては、よりギターサウンドやバンドサウンドを前に押し出した、ロックテイストの強いアルバムに仕上がっています。そもそもアルバム冒頭「わたしたちへ」は、これでもかというほど強烈なギターノイズからスタート。さらにギターを聴かせつつ、そのノイズの向こうから彼女のボーカルが顔を覗かせるというスタイルになっています。

その後も「予感」では途中からハードロックテイストのギターリフが登場。非常にヘヴィーでダイナミックなバンドサウンドを聴かせてくれますし、「気分」もメランコリックなメロが流れつつ、サウンドはドリーミーでサイケテイスト。タイトルチューンの「タオルケットは穏やかな」もノイジーなギターサウンドが前に押し出された楽曲となっています。

前作「よすが」は比較的、楽曲のバリエーションの多い作品に仕上がっていました。それに比べると本作は「楽曲の幅」という面では若干狭め。その点、よりロックなサウンドを主軸として、良く言えば統一感のあるアルバムに仕上がっていました。もっとも、そんな中でも「月明かり」はギターのアルペジオで聴かせる作品になっていましたし、最後の「もしも」は打ち込みのリズムを入れるなど、決してヘヴィーなギターサウンド一本やり、という訳ではありません。特に「もしも」は最小限のサウンドに留めて、空間を聴かせるような作風が印象的。タイプとしては坂本慎太郎の作品に似ている感もあるのですが、ちょっと他の楽曲とは異なる作風にも挑戦しています。

もちろん、そんなヘヴィーなサウンドに全く負けていないカネコアヤノのボーカルも特筆すべき存在でしょう。先日、足を運んだライブでも、ヘヴィーなバンドサウンドと対峙する彼女のボーカルが非常に印象に残りましたが、これだけヘヴィーなサウンドを前に出しつつも、しっかり「歌」を届けるスタイルは本作でも変わりありませんでした。

よりサウンド主体となった今回のアルバム。ここ最近、年間ベストクラスの傑作を続けざまにリリースしている彼女ですが、本作も文句なしに年間ベストクラスの傑作だったと思います。あらためて彼女の実力を実感した1枚でした。

評価:★★★★★

カネコアヤノ 過去の作品
燦々
燦々 ひとりでに
よすが

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2023年3月 9日 (木)

こちらは初登場が多め

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

ロングヒットばかりが目立ったHot100と比べ、今週のHot Albumsは初登場が多めとなっています。

まず上位はまた男性アイドルグループが並んでいます。まず1位初登場はジャニーズ系。ジャニーズWEST「POWER」が1位獲得です。CD販売数1位。オリコン週間アルバムランキングでも初動売上24万8千枚で1位初登場。前作「Mixed Juice」の初動21万3千枚(1位)からアップしています。

一方2位は、先週1位を獲得した韓国の男性アイドルグループStray Kids「THE SOUND」がワンランクダウンながらもベスト3をキープしました。

3位には中島みゆき「世界が違って見える日」が初登場。CD販売数3位、ダウンロード数1位。彼女のファン層から考えて、ダウンロードではなくCDを買って聴こうとする世代と思われるのでダウンロード数1位はちょっと意外でしたが、1位2位がCDをグッズ的に販売しているアイドルグループだった影響でしょう。オリコンでは初動売上3万1千枚で3位初登場。直近作はライブアルバム「中島みゆき2020ラスト・ツアー『結果オーライ』」の初動4万枚(2位)からダウン。オリジナルアルバムとしての前作「CONTRALTO」の初動1万7千枚(3位)からアップしています。

続いて4位以下の初登場盤です。まず4位にRockon Social Club「1988」がランクイン。CD販売数4位。1980年代後半から90年代にかけて人気を博したジャニーズ系の男闘呼組のメンバーを中心としたバンド。ジャニーズ系としては珍しい「ロックバンド」の形態をとったアイドルグループで、この流れがTOKIOに引き継がれる訳です。1993年に活動停止後、昨年、活動を再開し話題を呼びましたが、こちらは「男闘呼組とは別」という扱いなのでしょうか。ちなみにメンバーは男闘呼組の3人+寺岡呼人のようです。オリコンでは初動売上1万6千枚で4位初登場。

5位初登場はヤバイTシャツ屋さん「Tank-top Flower for Friends」。CD販売数6位、ダウンロード数12位。約2年3か月ぶりのニューアルバムとなります。オリコンでは初動売上1万枚で5位初登場。前作「You need the Tank-top」の初動4万5千枚から大きくダウンしてしまいました。

6位にはスターダストプロモーション所属の男性アイドルグループSUPER★DRAGON「mirror」がランクイン。CD販売数5位。オリコンでは初動売上8千枚で6位初登場。前作「Force to Forth」の初動2千枚(33位)からアップ。

8位にはExWHYZ「xYZ hYPER EDITION」が初登場。CD販売数7位。昨年6月に解散した女性アイドルグループEMPiREのメンバーによる新しい女性アイドルグループによるデビュー作。オリコンでは初動売上6千枚で7位初登場。

最後10位には「THE IDOLM@STER CINDERELLA MASTER Cool jewelries! 004」がランクイン。CD販売数8位、ダウンロード数9位。ゲーム「アイドルマスター シンデレラガールズ」からリリースされたキャラソンをタイプ別に収録したアルバムだそうです。オリコンでは初動売上4千枚で8位初登場。同シリーズの前作「THE IDOLM@STER CINDERELLA MASTER Cool jewelries! 003」の初動5万2千枚(1位)からは大きくダウンしています。

一方、ロングヒット盤は結束バンド「結束バンド」が先週と変わらず7位をキープ。ただCD販売数は12位から14位にダウン。先週1位だったダウンロード数も2位にダウンしています。これで11週連続のベスト10ヒットとなりました。

今週のHot Albumsは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2023年3月 8日 (水)

ロングヒット曲が躍進

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週は大型の新譜が少なかった影響で、ロングヒット勢の盛り返しが目立ちました。

Subtilte

まず1位はOfficial髭男dism「Subtitle」が先週の2位からランクアップ。6週ぶりの1位返り咲きとなりました。これで21週連続のベスト10ヒット&ベスト3ヒットで、通算13週目の1位獲得となります。特にストリーミング数は今週で20週連続の1位。YouTube再生回数も先週の6位をキープしているほか、ダウンロード数も8位から6位にアップしています。

さらに2位はVaundy「怪獣の花唄」が先週の5位からランクアップ。こちらは8週ぶりのベスト3返り咲きで、なおかつ2位は自己最高位。ストリーミング数は先週から変わらず2位をキープし、ダウンロード数は14位から10位、YouTube再生回数も15位から12位にアップ。さらにカラオケ歌唱回数も初の1位を獲得しています。これで9週連続のベスト10ヒットとなりました。

3位も米津玄師「KICK BACK」が先週の6位から一気にアップし、5週ぶりのベスト3返り咲き。これで21週連続のベスト10ヒットとなり、通算17週目のベスト10ヒットとなります。ただ、ストリーミング数は3位から4位に、YouTube再生回数も8位から9位にダウン。ダウンロード数は17位から16位に若干のアップとなりましたが、全体的に下落傾向になっています。

そんな訳で、ここ最近、上位をキープしてきたロングヒット曲がベスト3に並んだ今週のチャート。4位以下もロングヒット曲が目立ちます。まずベスト3に続く4位に10-FEET「第ゼロ感」。7位からアップし、自己最高位更新。13週連続のベスト10ヒットとなりました。ダウンロード数は4位から5位にダウンしたものの、ストリーミング数は5位をキープ。YouTube再生回数も14位から13位と若干ですがアップしています。

さらにTani Yuuki「W / X / Y」が10位から6位に再びアップ。これで通算41週目のベスト10ヒットとなりました。ダウンロード数は32位から36位、YouTube再生回数も18位から20位にダウンしていますが、ストリーミング数は先週の6位をキープしています。

そしてベスト10圏外からの返り咲きとしてAdo「新時代(ウタ from ONE PIECE FILM RED)」が11位から10位にアップ。4週ぶりのベスト10返り咲きとなりました。これで通算36週目のベスト10ヒット。ただし、ダウンロード数こそ26位から25位にアップしていますが、ストリーミング数は11位から15位、YouTube再生回数も28位から29位といずれもダウンしています。

相変わらず異常ともいえるようなロングヒットが目立つHot100。ただ、これに関しては、ちょっと前に日本ではヒットチャートにランクインする曲が異常に少ないという点を指摘する記事が出て、話題になりました。

ヒットの固着──Spotifyチャートから見えてきた停滞する日本の音楽

新しいものに対して異常なまでに挑戦したがらない日本の傾向というのは、なんとなく現在の日本経済の停滞感からくるような感じもします。失敗することを異常に忌避する日本人の性質も起因している感じもします。また、この記事で分かる通り、いまだに音楽全体の売上のうち、CDなどのソフトが占める割合が高い日本にとって、レコード会社の興味はもっぱら「CD」であって、積極的にストリーミングでヒット曲を売り込もうとしない、という傾向もあるのかもしれません。

ただ、異常なまでの新陳代謝のなさが、日本の音楽シーンの停滞を招いているのは間違いないでしょう。以前にように、オリコンで週替わりにヒット曲が入れ替わって、何がヒットしているのか全くわからない、という状況よりはマシだとは思っているのですが、ただこの状況はもうちょっと改善する必要がありそうです。

さて、そんな中、今週唯一のベスト10初登場となったのが7位百足&韻マン「君のまま」。ストリーミング数3位、ダウンロード数53位。「むかで&いんまん」と読む2人組のラッパーユニット。百足は高校生ラップ選手権第15回大会で優勝、韻マンもベスト4入りを果たしているそうです。楽曲はタイトルでわかるようないかにもJ-POP的なラブソング。大会で優勝した、少なくとも「実力派」と称されそうなラッパーがこのような歌を歌うあたり、完全にHIP HOPも「売れ線J-POP」の波に飲み込まれちゃった感があります。KICK THE CAN CREWやRIP SLYMEあたりで「セルアウト」呼ばわりされていた時代とは、隔世の感があります・・・。

また今週は「新時代」以外にももう2曲、ベスト10圏外からの返り咲きがありました。それがどちらも韓国の女性アイドルグループNewJeansで、「OMG」が17位から8位、「Ditto」が16位から9位に、それぞれランクアップ。「OMG」は8週ぶり、「Ditto」は2週ぶりのベスト10返り咲きとなりました。「OMG」はストリーミング数が先週の9位から8位に、YouTube再生回数が25位から24位、ダウンロード数が62位から56位とそれぞれアップ。「Ditto」はストリーミング数は先週から変わらず7位をキープ。ダウンロード数も56位から48位にアップ。一方、YouTube再生回数は42位から52位にダウンしています。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

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2023年3月 7日 (火)

世界的に大ブレイク!

Title:RUSH!
Musician:Måneskin

前作「Teatro d'ira: Vol. 1」が大きな話題を呼んだロックバンド、マネスキンのニューアルバム。出身国が「イタリア」という珍しさもさることながら、この時代にハードロック路線を前面に押し出した、その音楽性も大きな話題になっています。一方で、ベースのヴィクトリアはバイセクシャルを公言したり、トップレスの衣装でパフォーマンスを行ったりと、現代的なLGBTにもつながるスタイルも話題を呼んでおり、ある意味、オールドファッションな楽曲を演奏しつつ、そのスタンスは現代につながっている、そんなバンドということでも大きな話題となっています。

本作は、そんな彼らの最新作。日本でも昨年、サマソニに来日し、そのパフォーマンスも大きな話題となりましたが、本作ではビルボード、オリコン共にベスト10ヒットを記録。日本だけでなく、イギリスのナショナルチャートでもベスト10ヒット、アメリカのビルボードチャートでも18位と、なんだ、みんな結局、こういうロックが好きなんじゃない、と思うような結果になっています。

また、そんな言わば「昔ながらのロック」を演りつつも、一方ではロックという枠組みの中でも意外とバラエティー富んだ曲調が魅力的で、今回のアルバムでも1曲目「OWN MY MIND」はヘヴィーなギター主体のハードロック風のナンバー、続く「GOSSIP」もかのトム・モレロをゲストに迎えて、ヘヴィーなギターリフが主導なヘヴィーロックとなっていますが、続く「TIMEZONE」は分厚いバンドサウンドでメロディアスに聴かせる、むしろパワーポップの色合いが強いような楽曲となっています。

その後もリズミカルなドラムが特徴的な「FEEL」や他にも「KOOL KIDS」は疾走感あるサウンドで、むしろパンクの色合いが強い楽曲に。「MARK CHAPMAN」も駆け抜けるようなサウンドが心地よいロックチューンに仕上がっていますし、リズミカルな「MAMMAMIA」あたりはオルタナ系の影響も感じさせます。また「IF NOT FOR YOU」のようなギターで静かに聴かせる曲も間に挟まっており、アルバムの中でちょうどよいインパクトとなっています。

ただ、アルバム全体としては何よりもギターを前に押し出したヘヴィーなバンドサウンドという点で統一されており、ロックのダイナミズムを体現化している点が大きな魅力。前作同様、いかにもロック然とした曲は、聴いていて素直に気持ちよいですし、やはりこういう難しいこと抜きに爆音を聴かせてくれるロックが好きなんだ!ということをあらためて実感できるアルバムになっていました。前作に続き、文句なしの傑作。世界レベルで注目を集めており、今後、ますます大きな存在になっていきそう。これからも気持ちよいロックを世界に広めてほしいです。

評価:★★★★★

Måneskin 過去の作品
Teatro d'ira - Vol.1

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2023年3月 6日 (月)

現時点での集大成

Title:映帶する煙
Musician:君島大空

今、最も注目を集めている男性シンガーソングライターの一人、君島大空。毎回、EPがリリースされる都度大きな話題となりますが、ちょっと意外なことに本作がフルアルバムとして初のリリースとなります。ちなみに、相変わらず難読なアルバムタイトルが続きますが、本作はこれで「えんたいするけむり」と読むそうで、「色や景色が互いに写りあうこと」という意味だそうです。

今回のアルバムは初のフルアルバムということもあるのでしょう、現時点での君島大空の集大成といった印象を受けます。特にサウンド面において。直近のEP「袖の汀」では、比較的アコースティックベースで歌をしっかりと聴かせるという印象がありました。一方、今回のアルバムはアコースティックなサウンドに留まらない様々なサウンドを取り入れており、君島大空の音楽性の広さを感じさせる構成となっています。

まずアルバムはタイトルチューンの「映帶する煙」からスタートするのですが、こちらはイントロ的なインストチューン。いきなりノイズからスタートしており、アコースティックというイメージを大きく覆します。そのイントロに続く実質的な1曲目である「扉の夏」はアコギとピアノをバックに彼のハイトーンボイスで静かに聴かせる彼らしいナンバー、夏の風景を気だるく描写する歌詞も印象的に聴かせてくれます。

ただし、続く「装置」は様々な音をサンプリングして彩豊かな賑やかなサウンドが印象的な曲ですし、「世界はここで回るよ」も前半、アコースティック風のサウンドながらも後半は不気味なエレクトロノイズが重なります。さらに「都合」に至っては、ノイジーなギターサウンドを軸にするロックチューン。君島大空のボーカルもサウンドに合わせてか、(彼にしては)低音でシャウト気味に歌っています。

さらに「回転扉の内側は春?」ではユニークなサウンドを多くサンプリングした、ちょっと陳腐は表現になりますが、おもちゃ箱をひっくり返したようなサウンドが特徴的。ラストを飾る「No heavenly」もヘヴィーなギターを軸にしたダイナミックなサウンドが特徴的となっています。

様々なサウンドに挑戦しているという点、前々作「縫層」に共通するものを感じます。同作は非常に自由度を感じさせるアルバムでしたが、今回のアルバムも同作と同様、君島大空の自由な音楽性を強く感じる作品になっていました。ただ、それと同時に、今回の作品は前作「袖の汀」からつながる、アコースティックテイストの楽曲をハイトーンボイスで静かに聴かせるというスタイルもアルバムの中で同時に提示していました。「19℃」「光暈」などといった作品がそれ。こういった歌をしっかり聴かせるアコースティックな楽曲が、アルバムの中でいわば連結管のような役割を果たして、アルバム全体に統一感を与えていました。

結果として、まさに現時点における君島大空の集大成となった今回のアルバム。彼の魅力を存分に感じさせる作品になっていました。文句なしの年間ベストクラスの傑作アルバムだと思います。今年は彼のますますの飛躍が期待できそうです。

評価:★★★★★

君島大空 過去の作品
縫層
袖の汀


ほかに聴いたアルバム

ユーモア/back number

昨年は紅白歌合戦に出場し、大きな話題となるなど、現在も高い人気を誇るバンドback numberの、実に約3年10か月ぶりとなるニューアルバム。分厚いサウンドにメランコリックなメロディーラインは、良くも悪くも売れ線のJ-POPといったイメージを強く持ってしまう構成に。特に一部、小林武史が参加しているのですが、ストリングスを使っていかにも音を塗りたくったようなサウンドメイキングはいかにも彼らしいのですが、どうも楽曲を平坦にしてしまっている印象を受けます。純粋に「歌」を聴かせるバンドなんだから、サウンドはもうちょっと薄味の方がよいようにも思うのですが・・・。

評価:★★★★

back number 過去の作品
スーパースター
blues
ラブストーリー
シャンデリア
アンコール

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2023年3月 5日 (日)

よりロックな局面を強調

カネコアヤノ Zepp Tour 2023”タオルケットは穏やかな”

会場 Zepp Nagoya 日時 2023年2月20日(月)19:00~

Kanekoayano1

個人的に、今、もっとも注目している女性シンガーの一人、カネコアヤノ。最新作「タオルケットは穏やかな」も傑作アルバムでしたが、それに続くツアーにも足を運んできました。会場はZepp Nagoya。最近注目のミュージシャン・・・とはいえ、決して万人受けしそうなタイプのミュージシャンでもないので、Zeppならそれなりに余裕をもって見られるのかなぁ、と思っていたのですが、すいません、見くびりました。Zepp Nagoyaは立席で超満員。その人気の高さを感じさせる客の入りとなっていました。

ステージは5分程度遅れただけでスタート。まずメンバーが登場すると、いきなり激しいジャムセッションからスタート。もともと、楽曲にヘヴィーなギターサウンドは加わっていたのですが、正直、かなり予想外に激しいライブのスタートとなりました。

そこからまずは「わたしたちへ」からスタート。最初は「カウボーイ」を挟んで「季節の果物」と、昔からの曲も挟みつつ、最新アルバムお曲がメインで進みます。その後も「やさしいギター」から「春」、「眠れない」といった展開でライブは続いていきました。

基本的にカネコアヤノのボーカルを中心として、バンドメンバー3人というシンプルなセット。このバンドメンバーの奏でるサウンドが非常に分厚く迫力があり、CD音源で聴くよりもヘヴィーなサウンドを聴かせてくれ、その演奏にも圧巻されるステージになっていました。ただ、それ以上にすごかったのがカネコアヤノのボーカル。もともと非常に声量のあるボーカリストだということはCD音源でもはっきりしていたのですが、ライブステージ上で、バンドメンバーの奏でる分厚い音に声が全く負けていません。ボーカルスタイルとしても、1曲1曲歌詞をかみしめるように歌うスタイルだっただけに、これだけ激しいバンドサウンドをバックにしつつ、歌詞の内容までしっかりと伝わってきます。彼女のボーカリストとしての実力を強く感じるステージになっていました。

その後の「愛のままを」ではまたヘヴィーなバンドサウンドを聴かせてくれたり、「こんな日に限って」でもサイケなサウンドで聴かせたりと、ロックな側面も非常に推し進めたステージになっていました。ステージもカネコアヤノ+メンバー3人のみとシンプルなセットになっていたのですが、照明もバックに電球のような光が並ぶだけという非常にシンプルなもの。メンバーの影も協調するようなステージは、なんとなく70年代あたりのアングラバンドのイメージを彷彿とさせます。そんな中で唯一、ちょっと凝っていたのが「月明かり」で、最初、動物の鳴き声からスタート。さらにパフォーマンス中はバックに回転灯が廻り、ちょっと不思議な空間を作り上げていました。

さらに「もしも」では歌詞の「小さなころのお前が」を繰り返してサイケ感を強めていたり、「車窓より」では激しいドラムソロを聴かせてくれたりと、楽曲のロックなイメージをより強調するようなパフォーマンスが続きます。逆に「花ひらくまで」では爽やかな雰囲気の曲を聴かせてくれており、ヘヴィーな展開が続いたライブの中でも大きなインパクトとなっていました。

ラストは「退屈な日々にさようならを」ではノイズで会場を埋め尽くし、ファンを圧巻したかと思えば、最後はアルバムの表題曲でもあり、ライブツアーのタイトルでもある「タオルケットは穏やかな」で締めくくり。こちらもヘヴィーなバウンドサウンドをこれでもかというほど聴かせてくれました。

そんな訳で、ライブは約1時間40分程度のパフォーマンス。バンドサウンドの演奏もさることながらも、それに負けない、力強いカネコアヤノのボーカルも非常に印象に残るステージでした。一方で、ライブの最中にMCは一切なし。最後に一言「ありがとうございました。」とだけ声を発してステージは終了しました。また、彼女自身、アコギ1本のみのアルバムもリリースしており、また、そのスタイルでのライブも行っているのですが、この日はそのようなパフォーマンスはありません。完全にバンドスタイルとアコースティックスタイルを切り離しているのですね。ただ、個人的には、今回のライブ、ある意味、同じようなスタイルの曲が続いていて、ちょっとメリハリが弱いようにも感じたので、途中、アコースティックなパフォーマンスを挟んでもよかったような気もするのですが、そこは切り離すというのが彼女のポリシーなんでしょうね。

より「ロック」な局面を強調した今回のパフォーマンス。カネコアヤノのボーカリストとしての実力も見せつけられた圧巻のステージだったと思います。彼女の才能をあらためて実感しました。次は、アコースティックスタイルのライブも見てみたいな。彼女の活躍はまだまだ続きそうです。

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2023年3月 4日 (土)

坂本龍一の音楽家としての意欲も感じる

Title:12
Musician:坂本龍一

現在、がん闘病中の坂本龍一。ただ、音楽活動については積極的に続けており、昨年末もオンラインでのライブ配信を行い大きな話題となりました。そしてそんな中リリースされたのが、オリジナルアルバムとしては実に約6年ぶりとなるアルバム。タイトル通り、12曲の楽曲が収録されている作品となっています。

タイトルを見ればすぐにわかると思うのですが、今回、楽曲のタイトルには日付が振られています。今回のアルバムは彼の闘病生活の中で、日記を描くにように作成された作品となっており、それぞれ作成した日の日付が曲名になっています。スタートしたのは2021年の3月。そこから11月へと飛んで、そのあとは2022年の3月まで、比較的コンスタントなペースで作成が進められています。

日々変化する体調の中での、その時々の体調と音楽作成のペースがリンクしていくのでしょう。おそらく特に2021年の11月以降は体調も持ち直し、また、多くの曲が作成されているあたりは、ひょっとしたらアルバム制作も意識したのかもしれません。特に序盤「20210310」から「20220123」はピアノで静かに聴かせるアンビエントのような作品が続いており、また曲によっては、彼の息遣いが録音されていると思われる曲も。ここらへんの曲はピアノで音をひとつずつ拾いつつ、生きているということをアピールするような曲が続いていたように思います。

ユニークなのはその後「20220202」「20220214」などエレクトロを取り入れた作品が並んだり、さらに「20220302」には「saradande」という副題がついているなど、ただ音を紡ぐのではなく1つの曲を作り上げようとするような創作意欲も感じさせる曲も並びます。特にこの時期、3月26日にはオーチャードホールでのコンサートにゲスト出演しており、おそらく体調としてもかなり盛り返してきたのでしょう。それが楽曲にも表れているのではないでしょうか。

そういう意味では後半になると、複雑で独特のメロディーラインを聴かせるピアノ曲が並びます。特に日付的にはラストとなる「20220404」は非常に美しいピアノで奏でるメロディーが印象的な曲。序盤のようなアンビエント的な曲調ながらも、しっかりと構築されたメロディーラインのある曲に仕上がっています。

全体的にはアンビエントテイストが基調となりつつ、坂本龍一の音楽家として衰えることない意欲を感じさせる美しい作品に仕上がっていました。決して「闘病中のアルバムだから」といったような同情的な見方ではなく、ひとつの音楽作品として非常に美しい音を聴かせてくれる傑作アルバムに仕上がっていたと思います。おそらくラストの日付が「20220404」と1年前ということを考えると、この続きもあるのではないでしょうか。あえて言わせてもらえば、次回作も期待して待っています!

評価:★★★★★

坂本龍一 過去の作品
out of noise
UTAU(大貫妙子&坂本龍一)
flumina(fennesz+sakamoto)
playing the piano usa 2010/korea 2011-ustream viewers selection-
THREE
Playing The Orchestra 2013
Year Book 2005-2014
The Best of 'Playing the Orchestra 2014'
Year Book 1971-1979
async
Year Book 1980-1984

ASYNC-REMODELS
Year Book 1985-1989
「天命の城」オリジナル・サウンドトラック
BTTB-20th Anniversary Edition-
BLACK MIRROR : SMITHEREENS ORIGINAL SOUND TRACK
Ryuichi Sakamoto: Playing the Piano 12122020

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2023年3月 3日 (金)

戦前リズム・ボーイズの世界

Title:山賊の合唱 リズム・ボーイズの世界 1934-1939

戦前のSP盤復刻レーベル、ぐらもくらぶ。当サイトでもなんどか取り上げている注目のレーベルですが、ここ最近、しばらく戦前SP復刻盤のオムニバスアルバムのリリースがなく、どうしたんだろうか、と心配していましたが、ちょっと久々にアルバムがリリースされました。今回のアルバムは戦前のリズム・ボーイズの曲を集めたアルバム。リズム・ボーイズとは戦前のコーラスグループ。主に4人の男性グループからなるこの「リズム・ボーイズ」は、合唱により楽曲に奥行きが増すということもあり、一世を風靡。さらに演芸の世界でもあきれたぼういずのような「ボーイズもの」として波及したとか。今回のアルバムはその「リズム・ボーイズ」の楽曲を集めた作品となります。

もともとリズム・ボーイズはジャズボーカル・グループを範としており、「ジャズコーラス」とも呼ばれたそうで、もともとは戦前のアメリカン・サウンドを模したところからスタートしているそうです。今回のアルバムは主に録音時期順に収録しているのですが、特に前半の曲は、軽快な(当時の)「洋楽調」の作品が並びます。1曲目「愉快な水車」はかなり洋楽のジャズテイストが強い作品になっています。しかし、2曲目の表題曲となったポリドール・リズム・ボーイズの「山賊の合唱」は演奏こそジャズ調なのですが、歌詞やメロディーラインはどうも和風な民謡的な要素が見え隠れしています。

ただ、その後も前半は比較的「洋楽調」。「恋人がないとね!」などは低音部のボイスパーカッションが入っていて、四つの音声というリズム・ボーイズの特性をよくあらわした曲調になっています。また、リズム・ボーイズといっても、女性ボーカルがメインにリズム・ボーイズがバックコーラスというスタイルの曲が多く、「雨の降る日も」「春の溜息」などはまさにそのようなタイプの曲。爽やかな女性ボーカルに合唱が加わり、楽曲に厚みが出た作品に仕上がっています。

しかし、後半になれば時代と共に、徐々に民謡調、浪曲調の曲が増えていきます。「草津節」などタイトル通り、「草津節」をリズム・ボーイズ風にアレンジした曲ですし、「モダン十戒」などは完全に浪曲風。洋楽的な流行でも時代を経るとすっかりと日本風に変わってしまうという日本の音楽の傾向は昔から変わらないようです・・・。

さらに時代が下ると、戦時色が色濃く反映された曲が収録されています。「支那の兵隊」などはコミカルながらも、非常に戦時色強い歌詞が特徴的ですし、「上海特別陸戦隊」「砲車行」など、特にあえてなのでしょうが、戦時色が強い曲が並びます。また「日本萬国博覧会の歌-紀元二千六百年記念-」という、幻に終わった戦前の万博の曲なんかも収録されており、その時代性をうかがわせるセレクトになっています。

最後には、この「リズム・ボーイズ」の流れから派生した演芸「ボーイズもの」の音源も収録されており、まさに「リズム・ボーイズ」の世界をいろいろな方向に広げて様々な曲を収録した選曲に仕上がっており、この1枚で「リズム・ボーイズ」というものがどのようなムーブメントであったのかわかる最適な1枚になっていました。ここらへんのいい意味で卒のないセレクトはさすがです。戦前SP盤の魅力がまたひとつしっかりと伝わってくるオムニバスアルバムでした。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

秋の日に/宮本浩次

宮本浩次が女性ボーカル曲をカバーしたアルバムの最新作。本作は6曲入りのミニアルバム。女性ボーカル曲のカバーアルバムが続いているのはセールス的に好調だからなんでしょうが、ただ、正直なところ、彼の独特なボーカルスタイルで歌っているだけの「カラオケ」というイメージがぬぐえません。今回のアルバムでは初回盤で彼のソロライブの模様をおさめたライブ盤が収録されており、そこでエレカシの曲も披露しているのですが、そちらの方が圧倒的に出来がよい・・・。そろそろやはりエレカシとしての活動に戻ってほしいなぁ。

評価:★★★

宮本浩次 過去の作品
宮本、独歩
ROMANCE
縦横無尽

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2023年3月 2日 (木)

今週も男性アイドルグループが1位獲得

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

Hot Albumsでは今週も男性アイドルグループが1位を獲得しています。

まず今週1位を獲得したのが韓国の男性アイドルグループStray Kids「THE SOUND」が獲得。CD販売数1位、ダウンロード数2位。オリコン週間アルバムランキングでは初動売上37万7千枚で1位初登場。国内盤では初となるオリジナルフルアルバム。国内盤では前作となるミニアルバム「CIRCUS」の初動13万1千枚(2位)からアップしています。

2位はNOA「NO.A」がランクイン。CD販売数2位、ダウンロード数7位。もともと韓国のYGエンターテイメントで日本人初の練習生として活動し、その後、アイドルグループ8LOOMにも所属。そしてソロミュージシャンとして活動を開始した彼の、初となるフルアルバムとなります。オリコンでも初動売上5万枚で2位に初登場しています。

3位初登場はTHE RAMPAGE from EXILE TRIBE「ROUND&ROUND」。CD販売数3位、ダウンロード数5位。オリコンでは初動売上4万3千枚で3位初登場。LDH所属の男性グループ。前作「RAY OF LIGHT」の初動6万1千枚(2位)よりダウンしています。

続いて4位以下の初登場盤です。まず4位に「うたの☆プリンスさまっ♪ Shining Live ドラマCD3『No More to Forgive』」。CD販売数4位。女性向け恋愛アドベンチャーゲームからのドラマCDとなります。オリコンでは初動売上1万4千枚で4位初登場。同シリーズの前作「うたの☆プリンスさまっ♪ Shining Live ドラマCD2『久遠(くおん)を結びし愛しき縁(えにし)』」の初動6千枚(11位)からアップ。

5位初登場はLOVEBITES「ジャッジメント・デイ」。CD販売数5位、ダウンロード数4位。女性5人組のヘヴィーメタルバンドで、2021年8月にメンバー脱退に伴い活動休止していましたが、2022年10月に新メンバーを迎えて活動を再開。活動再開後、初のフルアルバムとなります。オリコンでは初動売上1万枚で5位初登場。直近作はベストアルバム「イン・ザ・ビギニング ~ザ・ベスト・オブ・2017-2021」で、同作の初動5千枚(22位)から大きくアップ。また、直近のミニアルバム「GLORY,GLORY,TO THE WORLD」の初動6千枚(11位)からもアップしています。

6位には「25 -A Tribute To Dragon Ash-」がランクイン。CD販売数6位、ダウンロード数6位。デビュー25周年を記念してリリースされたトリビュートアルバム。現在、Hot100でロングヒット中の10-FEETや、MAN WIDH TA MISSION、BRAHMAN、MONGOL800など豪華なミュージシャンが参加しているほか、Dragon Ash自体も新曲で参加しています。オリコンでは初動売上8千枚で6位初登場。

8位はSHARE LOCK HOMES「switch」が初登場。もともと動画投稿サイトへのダンス動画が話題となった男性4人組のダンスグループ。CD販売数7位。オリコンでは初動売上4千枚で11位初登場。前作「jumble」(18位)から横バイ。

初登場最後は10位にDIALOGUE+「DIALOGUE+2」がランクイン。女性声優8人組のアイドルグループ。CD販売数9位、ダウンロード数23位。オリコンでは初動売上5千枚で9位初登場。前作「DIALOGUE+1」の初動6千枚(6位)よりアップしています。

さらにロングヒット盤では結束バンド「結束バンド」は今週3位から7位にダウン。CD販売数は8位から12位にダウン。ただし、ダウンロード数は先週から変わらず1位をキープしています。これで10週連続のベスト10ヒットとなっています。

今週のHot Albumsは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2023年3月 1日 (水)

今週も男性アイドルが1位獲得

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

ここ最近、男性アイドルグループが目立ちますが、今週も1位は男性アイドルグループが獲得です。

今週1位を獲得したのはジャニーズ系。King&Prince「Life goes on」が獲得。CD販売数1位、ラジオオンエア数12位、You Tube再生回数4位。オリコン週間シングルランキングでは初動売上103万2千枚で1位初登場。前作「ツキヨミ」の初動79万2千枚(1位)よりアップ。今年5月22日をもってメンバーのうち3人の脱退が予定されていますが、それに向けて売上が上昇している模様です。

2位は先週3位のOfficial髭男dism「Subtitle」がワンランクアップ。ストリーミング数は今週で19週連続の1位獲得。一方、ダウンロード数は7位から8位、YouTube再生回数も5位から6位と全体的には下落傾向に。これで20週連続のベスト10&ベスト3ヒットとなっています。

3位はハロプロ系女性アイドルグループつばきファクトリー「間違いじゃない 泣いたりしない」がランクイン。CD販売数3位、ダウンロード数16位、ラジオオンエア数44位。オリコンでは初動売上7万7千枚で3位初登場。前作「アドレナリン・ダメ」の初動7万1千枚(1位)よりアップしています。

続いて4位以下の初登場曲ですが、まず4位に女性声優アイドルグループ=LOVE「この空がトリガー」がランクイン。CD販売数2位、ラジオオンエア数98位。オリコンでは初動売上16万枚で2位初登場。前作「Be Selfish」の初動14万3千枚(1位)からアップ。

次にロングヒット曲ですが、Vaundy「怪獣の花唄」が今週、8週目のベスト10ヒットを記録しています。昨年の紅白で歌われて話題となったこの曲は、1月11日付チャートで3位にランクイン。その後は4位もしくは5位をキープし続け、今週、8週目のベスト10ヒットとなりました。特にストリーミング数が今週3位を記録。ダウンロード数は14位、YouTube再生回数は15位と奮いませんが、まだまだロングヒットは続きそうです。

米津玄師「KICK BACK」は今週、ワンランクダウンの6位。これで20週連続のベスト10ヒットとなりました。先週4位にダウンしたストリーミング数は3位に再びアップ。ただダウンロード数は14位から17位、YouTube再生回数も7位から8位とダウン傾向になっています。

7位には10-FEET「第ゼロ感」がワンランクダウン。ただし、ダウンロード数は5位から4位にアップ。ストリーミング数も先週と変わらず5位をキープ。一方、YouTube再生回数は11位から14位にダウン。これで12週連続のベスト10ヒットとなりました。

さらにしぶといTani Yuuki「W / X / Y」は8位から10位にダウンしたものの、今週もベスト10をキープ。ダウンロード数は16位から32位に大幅ダウン。YouTube再生回数も15位から18位にダウンしていますが、ストリーミング数だけ7位から6位にアップしています。これで通算40週目のベスト10ヒットとなりました。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

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