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2023年2月20日 (月)

バラエティー富んだ作風が大きな魅力

Title:Sequana
Musician:Souad Massi

今回もまた、2022年に各種メディアで年間ベストに選ばれたアルバムのうち、チェックが漏れていたアルバムを後追いで聴いた1枚。今回もまた、ミュージックマガジン誌ワールドミュージック部門で6位を獲得したアルバム。アルジェリア出身、ベルベル人のシンガーソングライター、Souad Massi(スアド・マッシ)の通算10枚目となるオリジナルアルバム。彼女はもともと、政治色の強いロックバンドに参加していたそうですが、保守派による脅迫を受け国を離れ、フランスのパリに移住したそうです。

ベルベル人といえば、「砂漠のブルース」と呼ばれ、日本でも人気のあるマリのバンド、Tinariwenはベルベル人系のトゥアレグ族によるバンド。アルジェリア出身のシンガーソングライターということで、当然、似たようなタイプの音楽を想像するのですが、しかし、アルバムがスタートするとはじまる楽曲にはちょっと驚くのではないでしょうか。1曲目「Dessine-moi Un Pays」はしんみりギターのアルペジオからスタート。さらにフランス語のボーカルがのる哀愁たっぷりのバラード。むしろパリ在住ということでシャンソンとの親和性の高さも感じられるようなムーディーな曲調となっています。

と思えば2曲目「Une Seule Etoile」も哀愁たっぷりのムーディーなナンバーなのですが、パーカッションはラテン風。また1曲目とは違ったタイプの曲を聴かせてくれます。そして3曲目「Mirage」はトライバルなギターとパーカッションのサウンドにのせて勇壮な雰囲気で歌い上げる楽曲。これこそむしろ「砂漠のブルース」との共通点も感じられる楽曲になっており、彼女のプロフィールから「期待」されるような楽曲になっています。

この後も非常にバラエティーに富んだ音楽性を聴かせてくれるのがこのアルバムの大きな特徴。「Dib El Raba」はフォーキーで爽やかなポップソングに仕上がっていますし、「Ciao Bello」も途中からパーカッションが入った軽快なナンバーになっていますし、タイトルチューンである「Sequana」も爽やかなフォークソングに仕上がっており、メランコリックなメロが大きなインパクトとなっています。

さらに「Twam」に至っては、ガレージロック風の楽曲になっており、ここまでのアコースティックテイストの作品から大きく変化し、驚かされます。もっとも彼女の出自はロックバンドなだけに、こういった曲調は彼女にとっては自然なのかもしれませんが。

そんなバラエティーに富んだアルバムでともすればバラバラの音楽性といった印象も受けてしまいそうな作品なのですが、実際、アルバムを通して聴いてもそんな印象は受けません。その大きな要因がやはり全体としてメロディーの良さを感じさせる歌モノでまとめているという点がではないでしょうか。メランコリックなメロが胸に響いてくるのですが、特に魅力的に感じたのが「Ch'ta」で、メランコリックで爽やかなメロディーが強いインパクトを持っており、メロディーメイカーとしての彼女の魅力を存分に感じます。

そしてアルバム全体でどこか感じるトライバルな要素も楽曲に統一感を持たせているように感じます。例えばフォーキーな作風の「Dib El Raba」も後半になるとトライバルなビートが入ってくるなど、彼女の出自からくる音楽的要素が要所要所に感じられ、アルバムに統一感を与えているほか、楽曲全体の大きな魅力にもなっていたように感じます。

年間ベストに選ばれるのも納得の傑作アルバムで、彼女のアルバムははじめて聴いたのですが、すっかりその世界に魅了されてしまいました。アフリカ系の音楽が好きな方ならもちろん、バラエティー富んだ作風とインパクトあるメロディーラインはおそらく多くの方がはまるのではないでしょうか。非常に魅力的な1枚でした。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

Người Phụ Tình Tôi/Như Quỳnh

Nguoi

こちらもミュージックマガジン誌ワールドミュージック部門で4位を獲得した1枚。アメリカ在住のベトナム人シンガーによる作品で、ベトナム戦争以前の曲を歌った作品だそうです。楽曲は哀愁感たっぷりの歌を感情たっぷりに歌い上げる作品で、日本のムード歌謡にも通じる1枚。加えて、エキゾチックな要素が我々日本人にとっても新鮮味があり、魅力的な1枚に仕上がっていました。

評価:★★★★

Timbuktu/Oumou Sangare

こちらも同じく、ミュージックマガジン誌のワールドミュージック部門で5位を獲得した作品。マリのワスル音楽を聴かせる女性シンガー。ワスルとは、マリの中でニジェール川以南の地域で、そこに古くから伝わる音楽を歌う彼女。郷愁感も強く感じる、哀愁たっぷりに聴かせる歌声が大きな魅力だが、一方ではトライバルなリズム、ロックの要素も取り入れたアグレッシブなサウンドも大きな魅力。

評価:★★★★★

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