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2023年2月13日 (月)

最近ではネットでの活動も話題に

Title:Kohmi30th
Musician:広瀬香美

1993年に「ロマンスの神様」がアルペンのCMソングとして起用され大ヒットを記録。その後も毎年、スキーシーズンに放映されるアルペンのCMソングに彼女の楽曲が起用され、ヒットを記録し、その影響もあり「冬の女王」なる言い方をされたこともあるシンガーソングライターの広瀬香美。2000年代以降はスキー人気が下火となると同時に彼女の人気も下火になっていったのですが、ここ最近、彼女のYouTubeチャンネルにアップされたカバー動画が話題となったり、「ロマンスの神様」の振り付け動画がTikTokで話題となり「TikTok2022上半期トレンド大賞」を受賞したりと、一部、ネットで大きな話題となりました。

本作はそんな彼女のデビュー30周年を記念してリリースされたベストアルバム。人気投票に基づいて選曲されており、通常盤は上位10曲と新曲1曲、初回盤は3枚組となり、上位30曲と新曲1曲が収録されています。彼女の代表曲とも言える大ヒット曲「ロマンスの神様」「promise」「ゲレンデがとけるほど恋したい」などは上位10曲で通常盤に収録されているのですが、同じくヒットした「ストロボ」「幸せをつかみたい」「ドラマティックに恋して」などはベスト10に入ってきておらず、微妙に通常盤だけではヒット曲を網羅していないのが、初心者にとっては辛い部分ではあったりします。

また、彼女の曲がヒットしていたリアルタイム時点から強く感じていたのですが、広瀬香美は本当に自己顕示欲の強いミュージシャンだな、ということを感じます。まずはその歌が、非常に複雑な歌いにくい展開をしていたり、これでもかというほど歌い上げるようなボーカルスタイルとなっていたり、とにかくテクニックを見せつけようとするような曲が多い・・・。ただ正直、彼女の歌って、テクニックとしては非常に巧いボーカリストではあるのですが、特別に声量があるわけでもなく、微妙な表現力に富んだボーカリストという訳でもなく、決して「上手い」ボーカリストとは思えません。それだけにこれでもかというほどテクニックを見せつける楽曲とのギャップに少々違和感を覚えてしなう点は否めません。

歌詞にしても非常に自分に自信があるような歌詞が多く、基本的には失恋の歌は皆無。誰かを好きになれば、その相手も自分に応えてくれる・・・といった感じのラブソングが多い印象があり、そんな歌詞の世界観を聴いていても、本当に自分に自信があるんだな、ということを強く感じます。広瀬香美がヒットを記録したのはバブル崩壊以降なのですが、バブルなイメージのある「スキー」のCMソングというイメージと、このとにかく前向きな自己顕示欲の強さが、バブル期の女性のイメージと重なってしまって、どこか広瀬香美にはバブル期の空気を感じてしまいます。

ただ、個人的に広瀬香美で一番の魅力であり、かつその才能を感じさせるのは、歌唱力でもなく歌詞でもなく、やはりメロディーラインの良さに尽きるように感じます。私が彼女のことをはじめて知ったのはデビュー曲「愛があれば大丈夫」なのですが、一度聴いたら一発で忘れられないようなフックの聴いたメロディーラインは見事。「ロマンスの神様」以降、アルペンのCMソングでヒットを飛ばすのですが、その理由もやはりアルペンのCMがよく出来ていたから・・・というのもあるのでしょうが、わずか15秒というCMの中に、しっかりと印象を残すようなフックに効いたメロディーラインをしっかりと作ることが出来たから、という点が大きいのではないでしょうか。

今回のアルバムも初回盤だと3枚組というフルボリュームの中、最後まで飽きることなく一気に聴き切れたのは、そんなメロディーの良さが大きな理由だったと思います。一時期はアルペンのCMソング以外はさっぱり売れない、という時期が続いていたのですが、それでもアルペンのCMソングとして5年間、ヒット曲を飛ばし続けていた点、やはりCMで一発で耳に残る、そのメロディーのインパクトが大きかったのでしょう。

久しぶりに彼女のヒット曲を聴いたのですが、非常に懐かしさを感じつつ、広瀬香美の魅力も存分に感じられたベストアルバム。自己顕示欲の強さが鼻につく部分も正直否めないのですが、その点を差し引いても魅力的な内容だったと思います。ネットでの活動で話題となってはじめて彼女のことを知ったような世代の方も是非、要チェックのベスト盤でした。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

THE DEBUT/SKY-HI

ラッパーとしても活躍するSKY-HIの6枚目となるオリジナルアルバム。HIP HOPとしてのアルバムというよりも、ラップを取り入れつつ、全体的にはポップ志向の強いアルバムで、変にラッパーとしての気張りみたいなものがなく、自由に音楽を楽しんでいるような印象も受けるアルバム。ある意味、そのままの彼をあらわした最初のアルバムだからこそ、デビュー作ではないのに「THE DEBUT」というタイトルをつけたのでしょうか?

評価:★★★★

SKY-HI 過去の作品
FREE TOKYO
JAPRISON
Say Hello to My Minions 2(SKY-HI×SALU)
SKY-HI's THE BEST
八面六臂

Adjusted/LOW IQ 01

もともとパンクバンドSUPER STUPIDのベーシストとして活躍し、1999年からはソロ活動を続けるLOW IQ 01の新作。疾走感あるパンクロックを聴かせてくれ、曲によってはスカ風やハードコア風の曲もありつつ、全体的には比較的シンプルでメロディアスな曲調で楽しませてくれます。メロディーラインは至ってポップでメロディアス。難しいこと抜きにして楽しませてくれる作品です。

評価:★★★★

LOW IQ 01 過去の作品
MASTER LOW FOR...
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アルバムレビュー(邦楽)2023年」カテゴリの記事

コメント

どうしてTiktokで広瀬香美の曲がウケたかなんとなくわかった気がしました
Tiktokっていう短い尺の中でも印象に残りやすいメロディのインパクト、前向きで自己顕示欲の強い歌詞がTiktokで特に踊る側と共鳴しやすいんですね

私は彼女がヒットした頃の世代ではないですが、ご本人が自己顕示欲強いのはYoutubeを見れば言わずもがな…w

投稿: 亮 | 2023年2月14日 (火) 18時21分

>亮さん
短いフレーズの強度は半端ないですからね、彼女の楽曲。TikTokみたいなメディアと相性よかったのかもしれません。
しかし、自己顕示欲が常人より強い人の集まりの音楽界の中でも彼女の自己顕示欲はずば抜けてますよね・・・。

投稿: ゆういち | 2023年6月 8日 (木) 23時48分

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