「伝説のバンド」の16年ぶりの新譜
Title:The End of Yesterday
Musician:ELLEGARDEN
今や、半ば「伝説のバンド」的扱いになっているELLEGARDENが、ついに約16年ぶりとなるニューアルバムをリリースしました。ELLEGARDENといえば、the HIATUSやMONOEYESなどで活躍している細美武士が組み、彼の名前が最初に広まったバンド。一躍人気を獲得しましたが、2008年にバンドは活動休止となりました。ただ、活動休止後の細美武士の活躍はご存じの通り。さらにギターの生形真一はNothing's Carved In Stoneでこれまた人気を博し、ドラムスの高橋宏貴もTHE PREDATORSなどで活躍と、活動休止後のメンバーの活躍も目立ちます。
そんなメンバーそれぞれのソロでの活躍もあり、徐々に「伝説化」していったELLEGARDENですが、2018年に活動を再開。当初はライブでの活動のみだったのですが、昨年、久しぶりに新曲がリリースされ、さらに待望となるニューアルバムのリリース。2006年にリリースされた「ELEVEN FIRE CRACKERS」から実に16年ぶりとなるニューアルバムとなりました。
ELLEGARDENといえば、デビュー初期は比較的イギリス寄りのギターロック路線、その後は徐々にUS寄りのパンクロックにシフトしていったというイメージがあります。久々となった今回のアルバムは、基本的には解散前の路線の延長線上といった感じ。特にアメリカのエモコア、メロディアスパンクバンドあたりと親和性の強そうな、洋楽テイストも強いメロディアスな楽曲を分厚いバンドサウンドの上で聴かせてくれています。
今回のアルバムも全11曲、方向性として統一感がありますが、逆に言うと、バリエーションという意味ではちょっと乏しいものも感じます。ただ、その点を差し引いても40分というアルバムの長さもちょうどよく、分厚いバンドサウンドにポップでメロディアスな歌が心地よく、途中、まったくダレることなく最後まで一気に楽しめます。
全体的には洋楽テイストの強いアルバムなのですが、ポップなメロディーはどこかメランコリックさも加味されて、ウェットな歌謡曲的な要素も感じます。この手のメランコリックさはエモコア系バンドに共通する部分ではあるものの、特に彼らの場合はそんなメロディーが私たちの耳にもピッタリとマッチして心地よく流れてきます。
また歌詞は全英語詞と全日本語詞の曲が混じった構成に。こういうタイプのバンドは多いのですが、ただ、この手のバンドはよく、英語詞の曲はカッコいいけど、日本語曲は急に平凡なJ-POPになってしまって今一つ…というケースが少なくないのですが、彼らに関してはこの両者の出来にほとんど差がありません。この点はエルレの実力であり、またバンドの大きな魅力なのでしょうし、このアルバムの大きな特徴のひとつとなっています。それだけメロディーラインが魅力的でしっかりしているという証拠でしょう。
似たようなタイプの曲が多い、とはいえ、英語詞と日本語詞の別もありますし、より哀愁感のました「ダークファンタジー」やヘヴィーなギターリフが特徴的でよりヘヴィネスさを増した「Firestarter Song」、疾走感のあるギターロックの「10am」など、もちろんいろいろなタイプの曲も顔を覗かせます。ただ、全体的に無理に楽曲のバリエーションをつけるよりも、エルレらしい演りたい曲を演りたいように演奏しているという印象も強く、久しぶりのアルバムではあるものの変な気負いのようなものはなく、自由に楽しく作り上げたアルバムといった印象を受ける1枚でした。
今後はエルレも継続的に活動を続けるのでしょうか。メンバーそれぞれ他のバンドと兼務しているだけに活動は大変そうですが、それでもこれからの活躍も楽しみになってきます。久々に聴いたエルレのアルバムでしたが、その魅力を存分に感じられた作品でした。
評価:★★★★★
ELLEGARDEN 過去の作品
ELLEGARDEN BEST(1999~2008)
ほかに聴いたアルバム
MAGNETIC/木村カエラ
木村カエラの新作は、AIとの共作「MAGNETIC」、SANABAGUNが参加した「井の頭DAYS」、GEZANのマヒトゥ・ザ・ピーポーとのコラボ曲「Color Me」など様々なミュージシャンとコラボを行った作品。ラテンからラップ、エレクトロ、ギターロックなど様々な要素を詰め込んだ楽しいポップスアルバムに仕上がっており、最初から最後まで楽しめる作品になっています。様々なミュージシャンとコラボし、いろいろな音楽性を詰め込んでも、いい意味で肩の力が抜けた楽しいポップスアルバムに仕上げてくるのが彼女らしいところ。人気面で少々落ち着いた彼女ですが、そのアルバムの魅力は変わりありませんでした。
評価:★★★★
木村カエラ 過去の作品
+1
HOCUS POCUS
5years
8EIGHT8
Sync
ROCK
10years
MIETA
PUNKY
¿WHO?
いちご
ZIG ZAG
KAELA presents on-line LIVE 2020 “NEVERLAND”
ukabubaku/パスピエ
前々作「synonym」リリースが2020年12月9日、前作「ニュイ」リリースが2021年12月8日、そして本作リリースが2022年12月7日と、ちょうど1年マイナス1日のリリース間隔でアルバムをリリースしているパスピエ。これにどういう意味があるのか、いまひとつわかりかねるのですが・・・。ただ、アルバムの作風としてはいつも通りといった感じで、シンセのサウンドを主軸にしつつ、幻想的な曲があったり、メロディアスな曲があったり、アバンギャルドな曲があったりとバリエーションを富んで聴かせます。ただ、そんなバリエーションを含めて、良くも悪くもいつものパスピエといった印象も受けるアルバム。もうちょっとぶっとんでもおもしろいと思うのですが。
評価:★★★★
パスピエ 過去の作品
ONOMIMONO
演出家出演
幕の内ISM
娑婆ラバ
&DNA
OTONARIさん
ネオンと虎
more humor
synonym
ニュイ
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