懐かしい気持ちになる1枚
Title:Late Developers
Musician:Belle and Sebastian
昨年5月、実に純然たるオリジナルアルバムとしては約7年ぶりという新作をリリースしたベルセバ。今度は逆に、前作からわずか7か月。早くもニューアルバムがリリースされました。前作のアルバムは、ここ最近の彼らの作品ではベストとも言うだけの作品に仕上がっていただけに、今、バンドとしての勢いがある、ということでしょう。
その前作では彼ららしいギターポップの楽曲を軸にしつつ、バラエティー富んだ作風が大きな特徴となっていました。今回のアルバムでも「I Don't Know What You See In Me」でエレクトロサウンドを取り入れるなど、バリエーションは感じさせます。ただ、前作よりも全体的に彼ららしいギターポップ路線でまとまっている作品に仕上がっていました。それよりも今回のアルバムは聴いていて非常になつかしさを感じさせる曲が目立ったように感じます。
まずアルバムの1曲目「Juliet Naked」はいきなりマイナーコードの哀愁感たっぷりのイントロからスタート。こちらは60年代あたりのレトロポップの雰囲気を感じさせます。「Will I Tell You A Secret」もアコギでフォーキーに聴かせる楽曲でなつかしさを感じさせます。ギターロック路線の「So In The Moment」もどこか漂う70年代的な空気感になつかしさを感じさせます。
そしてなにより前述のエレクトロチューン「I Don't Know WHat You See In Me」は、まさに80年代テイストのあふれる作品。続く「Do You Follow」もシンセのサウンドを取り入れて、こちらも80年代的。ラストの「When The Cynics Stare Back From The Wall」、さらにタイトルチューンでもある「Late Developers」はいずれもベルセバらしい、牧歌的な明るさを感じるメロディアスなナンバーで締めくくられていました。
彼ららしい暖かさを感じるギターポップに、懐かしさを感じる今回の作品。もちろん楽曲からは70年代や80年代的な要素を感じさせるのですが、それ以上に彼らの書くメロディーラインの普遍的な暖かさに、昔、どこかで聴いたような、そんなノスタルジックな気持ちにさせる要素が入っているのでしょう。
前作からわずか7か月というスパンにかかわらず、前作同様、非常に魅力的な充実作に仕上がっており、現在のバンドの良好な状態を感じることが出来る傑作に仕上がっていました。聴いていてほっと暖かい気持ちになる1枚。広いリスナー層にお勧めできるアルバムです。
評価:★★★★★
Belle and Sebastian 過去の作品
Write About Love(ライト・アバウト・ラヴ~愛の手紙~)
Girls in Peacetime Want To Dance
How To Solve Our Human Problems
Days of The Bagnold Summer
What To Look For In Summer
A Bit of Previous
ほかに聴いたアルバム
Bob Corritore&Friends:You Shocked Me/Bob Corritore
ブルース・パーピストのボブ・コリトーが、彼の盟友とセッションを行った曲を集めたアルバム。前半は軽快なギターサウンドも目立つ、ロックンロール寄りのブルースが、後半は比較的王道とも言えるブルース路線の曲が並びます。他にもソウル風の作品もあったり、バラエティー豊かな曲調が魅力的。最後まで魅力的なブルースソングの並ぶアルバムでした。
評価:★★★★★
Amdjer/Lucibela
このアルバムも、2022年ベストアルバムを後追いで聴いた1枚。ミュージックマガジン誌ワールドミュージック部門で年間9位を獲得した、カーボ・ヴェルデの女性ボーカリストの作品。哀愁たっぷりのメロディーラインをしっかり聴かせてくれる1枚で、そこに加わるパーカッションのリズムが独特の色合いを加えています。
評価:★★★★★
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