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2023年2月

2023年2月28日 (火)

原点回帰?

Title:メトロパルス
Musician:CAPSULE

Perfumeやきゃりーぱみゅぱみゅのプロデューサーとして、今やすっかりその名前を知らない人のいないプロデューサーとなった中田ヤスタカ。一時期に比べてPerfumeやきゃりーぱみゅぱみゅの人気が落ち着いてきたり、また、彼自身、あまり積極的に新たなミュージシャンのプロデュース業を手掛ける訳ではないため、一時期に比べると、その名前を聞く機会は減りましたが、昨年はかのAdoに提供した「新時代」が大ヒットを記録。その実力をまた知らしめる結果となりました。

そんな中田ヤスタカがメンバーとして参加しているユニットがCAPSULE。もともと中田ヤスタカの名前が知られる前の1997年から活動を行っているだけに、なにげに結成25年を誇るベテランユニットだったりします。中田ヤスタカ自身が参加しているということもあり、他のプロデュース業と異なり、特に彼がプロデューサーとして成功した後は、彼の演りたい曲をこのユニットで行う、という実験的なスタイルを取るユニットになっていました。

ここ最近は中田ヤスタカのソロとしてアルバムをリリースしていたりして、オリジナルアルバムとしては実に約7年10ヶ月ぶりとなるのが本作。一時期はEDM路線を取り、こしじまとしこのボーカルもひとつの「音」のような扱いのアルバムも目立っていましたが、今回のアルバムはちょっと懐かしさを感じさせる彼女のボーカルも前に押し出した「歌モノ」のエレクトロアルバムに仕上がっていました。

1曲目「ひかりのディスコ」からして、タイトルどおりのディスコチューンなのですが、サウンドからはラウンジ的な要素も感じられます。続く「ギヴ・ミー・ア・ライド」「フューチャー・ウェイヴ」も力強いエレクトロビートがベースとなりつつ、メロディー主導の歌モノ。スペーシーでレトロフューチャー的な作風が耳に残ります。

続く「スタート」もハンドクラップにエレクトロサウンドがちょっと懐かしさを感じる作品になっていまうし、「ワンダーランド」も一昔前のAORを彷彿とさせる楽曲。「シーサイド・ドリームス」もエレクトロサウンドがちょっと80年代っぽさを感じさせます。ラストの「トゥー・マイ・ワールド」もちょっとチープさを感じさせるエレクトロサウンドが懐古的に感じる曲に仕上がっていました。

既に知る人ぞ知る的な話ですが、このCAPSULE。デビュー当初はラウンジの要素を多く取り入れた、完全にピチカート・ファイヴのフォロワー的なユニットでした。もちろんその後、中田ヤスタカは独自のサウンドを構築していったのはご存じの通りですが、今回のアルバム、ラウンジの要素が入っていたり、レトロフューチャー的な要素が入っていたりと、ここらへん、初期のCASPULEを彷彿とさせる部分も感じさせる作品に仕上がっていました。

もちろん、ヘヴィーなエレクトロサウンドが軸となっており、もっとラウンジ色が強く、エレクトロ色は薄めだった初期の彼らの作品とは異なります。ただ、サウンドの方向性としてはどこか原点回帰的な印象も受けるアルバムに仕上がっていました。初期CAPSULEの時に感じた、中田ヤスタカの音楽的原点が反映されたアルバムになっていたのかもしれません。

様々な作品のプロデュースを手掛ける中でのリリースとなり、挑戦的な作品となっていたここ数作のCAPSULEの作品とは異なり、「挑戦」という肩肘はったような要素が抜けた、でも中田ヤスタカが演りたいんだろうなぁ、という音楽で構成された作品になっていました。そういう意味では目新しさという点はちょっと薄いものの、ただ純粋なポップアルバムとして非常に聴きやすいアルバムになっていたと思います。中田ヤスタカの音楽的趣向がより現れたような新作でした。

評価:★★★★★

CAPSULE 過去の作品
FLASH BACK
MORE!MORE!MORE!
FLASH BEST
PLAYER
WORLD OF FANTASY
STEREO WORXXX
rewind BEST-1(2012→2006)
rewind BEST-2(2005→2001)

CAPS LOCK
WAVE RUNNER


ほかに聴いたアルバム

退廃惑星/ROCKETMAN

お笑い芸人のふかわりょうのミュージシャンとしての名義ROCKETMANとして、約6年ぶりにリリースしたニューアルバム。「退廃惑星」というタイトルとは裏腹に、MICOやトミタ栞といった女性ボーカル、さらにはボーカロイドまで取り入れた優しい女性ボーカルを前に押し出したエレクトロポップの作品が目立ちます。目新しさことありませんが、リスナーにとっては非常に心地よいポップミュージックが流れる、いい意味で壺をついた作品になっていました。

評価:★★★★

RCOKETMAN(ロケットマン) 過去の作品
thank you for the music!
恋ロマンティック!!

ohashiTrio collaboration best -off White-/大橋トリオ

大橋トリオがいろいろなミュージシャンとコラボを行った曲を集めたベストアルバム。ただ、コラボが入ったとしても良くも悪くもいつも通りの大橋トリオの良質なポップソングが並びます。ある意味、あまり癖が強すぎないため、どんなミュージシャンとのコラボもはまりやすいのかも。そういう意味では彼らしさを感じるベストアルバムになっていました。

評価:★★★★

大橋トリオ 過去の作品
A BIRD
I Got Rhythm?
NEWOLD
FACEBOOKII
L
R

FAKE BOOK III
White
plugged
MAGIC
大橋トリオ
PARODY
10(TEN)
Blue
STEREO
植物男子ベランダー ENDING SONGS
植物男子ベランダーSEASON2 ENDING SONGS
THUNDERBIRD
This is music too
NEW WORLD
ohashiTrio best Too

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2023年2月27日 (月)

懐かしい気持ちになる1枚

Title:Late Developers
Musician:Belle and Sebastian

昨年5月、実に純然たるオリジナルアルバムとしては約7年ぶりという新作をリリースしたベルセバ。今度は逆に、前作からわずか7か月。早くもニューアルバムがリリースされました。前作のアルバムは、ここ最近の彼らの作品ではベストとも言うだけの作品に仕上がっていただけに、今、バンドとしての勢いがある、ということでしょう。

その前作では彼ららしいギターポップの楽曲を軸にしつつ、バラエティー富んだ作風が大きな特徴となっていました。今回のアルバムでも「I Don't Know What You See In Me」でエレクトロサウンドを取り入れるなど、バリエーションは感じさせます。ただ、前作よりも全体的に彼ららしいギターポップ路線でまとまっている作品に仕上がっていました。それよりも今回のアルバムは聴いていて非常になつかしさを感じさせる曲が目立ったように感じます。

まずアルバムの1曲目「Juliet Naked」はいきなりマイナーコードの哀愁感たっぷりのイントロからスタート。こちらは60年代あたりのレトロポップの雰囲気を感じさせます。「Will I Tell You A Secret」もアコギでフォーキーに聴かせる楽曲でなつかしさを感じさせます。ギターロック路線の「So In The Moment」もどこか漂う70年代的な空気感になつかしさを感じさせます。

そしてなにより前述のエレクトロチューン「I Don't Know WHat You See In Me」は、まさに80年代テイストのあふれる作品。続く「Do You Follow」もシンセのサウンドを取り入れて、こちらも80年代的。ラストの「When The Cynics Stare Back From The Wall」、さらにタイトルチューンでもある「Late Developers」はいずれもベルセバらしい、牧歌的な明るさを感じるメロディアスなナンバーで締めくくられていました。

彼ららしい暖かさを感じるギターポップに、懐かしさを感じる今回の作品。もちろん楽曲からは70年代や80年代的な要素を感じさせるのですが、それ以上に彼らの書くメロディーラインの普遍的な暖かさに、昔、どこかで聴いたような、そんなノスタルジックな気持ちにさせる要素が入っているのでしょう。

前作からわずか7か月というスパンにかかわらず、前作同様、非常に魅力的な充実作に仕上がっており、現在のバンドの良好な状態を感じることが出来る傑作に仕上がっていました。聴いていてほっと暖かい気持ちになる1枚。広いリスナー層にお勧めできるアルバムです。

評価:★★★★★

Belle and Sebastian 過去の作品
Write About Love(ライト・アバウト・ラヴ~愛の手紙~)
Girls in Peacetime Want To Dance
How To Solve Our Human Problems
Days of The Bagnold Summer
What To Look For In Summer
A Bit of Previous


ほかに聴いたアルバム

Bob Corritore&Friends:You Shocked Me/Bob Corritore

ブルース・パーピストのボブ・コリトーが、彼の盟友とセッションを行った曲を集めたアルバム。前半は軽快なギターサウンドも目立つ、ロックンロール寄りのブルースが、後半は比較的王道とも言えるブルース路線の曲が並びます。他にもソウル風の作品もあったり、バラエティー豊かな曲調が魅力的。最後まで魅力的なブルースソングの並ぶアルバムでした。

評価:★★★★★

Amdjer/Lucibela

このアルバムも、2022年ベストアルバムを後追いで聴いた1枚。ミュージックマガジン誌ワールドミュージック部門で年間9位を獲得した、カーボ・ヴェルデの女性ボーカリストの作品。哀愁たっぷりのメロディーラインをしっかり聴かせてくれる1枚で、そこに加わるパーカッションのリズムが独特の色合いを加えています。

評価:★★★★★

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2023年2月26日 (日)

ロックンローラーのイギー復活!

Title:Every Loser
Musician:IGGY POP

ここ最近、大物ミュージシャンの訃報が目立ちます。今年に入ってたった2か月にも関わらず、かのジェフ・ベックをはじめ、EW&Fのフレッド・ホワイト、デヴィッド・クロスビー、テレヴィジョンのトム・ヴァーレイン、バート・バカラック、さらに先日もデ・ラ・ソウルのトゥルーゴイ・ザ・ダヴの訃報も飛び込んできましたし、日本でも年明けに高橋幸宏の訃報が飛び込んできたほか、鮎川誠、ムーンライダーズの岡田徹、そしてつい先日もハイスタの恒岡章の急逝というショッキングなニュースが飛び込んできました。

ただ、これは「異常事態」というよりも、ロック全盛期でポピュラーミュージックがビジネスとして急成長を遂げた1960年代、70年代から50~60年を経て、当時、20代だった若者が、70、80代になり、寿命を全うした、というケースが増えたから、ということでしょう。実際、前述のミュージシャンたちも恒岡章こそまだ51歳という若さだったのですが、他のミュージシャンたちはほぼ70代や80代。大往生ではありませんが、少なくとも早世という年齢ではありません。残念ながら今後もこの傾向は続いていくでしょう。

一方では70歳を過ぎてもなお、現役でバリバリ活躍するミュージシャンも少なくありません。ローリング・ストーンズも、チャーリー・ワッツこそ鬼籍に入ってしまったものの残ったメンバーはバリバリの現役。ビートルズも残ったメンバーは2人になってしまいましたが、ポールもリンゴも現役のミュージシャンとして精力的な活動を続けています。そして今回紹介するIggy Pop。ご存じザ・ストゥージーズのメンバーであり、過激なパフォーマンスで知られた彼も、現在75歳。しかし、バリバリの現役活動を続けています。

特に今回のアルバムは非常にヘヴィーなロックチューンを聴かせてくれており、齢75歳にして、まだまだ20代に負けないくらいの若々しさを感じる作品になっていました。1曲目「Frenzy」のイントロからヘヴィーなギターサウンドでスタートし、現役のパンクバンド顔負けの力強いボーカルを聴かせてくれます。続く「Strung Out Johnny」もヘヴィーなロックチューン。ただこちらは、年齢の積み重ねを感じる渋みのあるボーカルが魅力的で、逆に、この年齢だからこそ出せる「味」を感じます。

その後も軽快なロックンロールチューン「Modern Day Ripoff」や疾走感あるタイトル通りのパンクチューン「Neo Punk」、力強いギターロックにシャフト気味のボーカルを聴かせる「All The Way Down」、さらにラストの「The Regency」も力強いギターロックに仕上がっており、最後の最後まで年齢を感じさせない力強いロックナンバーを聴かせてくれます。

その反面、中盤では「Morning Show」のようなミディアムチューンなナンバーをムーディーに聴かせてくれたり、インターリュード扱いですが、「The News For Andy」ではメランコリックなピアノの音色にのせて、渋い声で語りを聴かせてくれたりと要所要所にいい意味で年齢を感じさせる楽曲も聴かせてくれています。

イギーとしてはコンスタントに新作は作っているものの、前作「Free」はアンビエント的な作風。その前はUnderworldとのコラボ作があり、さらにソロとしての前々作「POST POP DEPRESSION」もおとなしい印象の作品でした。そういう意味では本格的なロックアルバムは久しぶり。さらにここ数作の彼の作品から、すっかりベテランとして枯れてしまったという印象すら受けていた彼ですが、いやいや、ロッカーとして全く衰えていなかったということをあらためて実感できたアルバムに仕上がっていました。

75歳という年齢を感じさせないパンキッシュな作品は、10代、20代という若い世代にも十分アピールできそうな内容だったと思います。一方ではいい意味での年齢を感じる渋みのある作品もあり、そういう意味では若手ミュージシャンでは絶対に達成できない境地にある作品でもあったと思います。文句なしの傑作アルバムで、年間ベストクラスの作品だったと思います。まだまだ現役の活動が続きそうなイギー。どうか、末永くお元気で!!

評価:★★★★★

IGGY POP 過去の作品
POST POP DEPRESSION
Teatime Dub Encounters(Underworld&Iggy Pop)
Free


ほかに聴いたアルバム

Sahara Koyo/Marmoucha Orchestra featuring Mehdi Nassouli

Saharakoyo

まだ続いています。2022年各種メディアでベストアルバムとしてセレクトされたアルバムで聴き漏らしていた作品を後追いで聴いた1枚。今回もミュージックマガジン誌ワールドミュージック部門で年間8位を獲得したアルバム。アフリカはモロッコで聴かせるグナワ音楽の作品で、イスラエル出身のピアニスト率いるオーケストラが、モロッコの弦楽器であるゲンブリの奏者を迎えての1枚。アフロビートなどを取り入れたトライバルな要素も強い作品ながらも一方ではジャズや管弦楽の要素も加えるなど、西洋音楽的な要素も多分に加えた作品。ほどよいトライバルさと爽やかさが融合された心地よい作品に仕上がっています。

評価:★★★★★

No Soul,No Blues/Stan Mosley

主にアメリカの黒人社会の音楽興行、チタリン・サーキットで活動をしており、知る人ぞ知る的存在だったソウルミュージシャン、Stan Moleyのニューアルバム。楽曲自体は昔ながらのソウルミュージックといったイメージなのですが、パワフルなボーカルがすごい!御年70歳だそうですが、そんな年齢を感じさせないパワフルさと、逆に年齢ゆえの深みのある表現力を持つボーカルに圧倒されるアルバムでした。

評価:★★★★

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2023年2月25日 (土)

「アフリカ」らしさに現代的な要素も加味

Title:N'Djila Wa Mudjimu
Musician:Lady Aicha&Pisko Cranes Original Fulu Mziki of Kinsasha

今回もまた、昨年、各種メディアで年間ベストとして選ばれていたものの、聴き逃していた作品を後追いで聴いた1枚。今回は、またミュージックマガジン誌ワールドミュージック部門で10位を獲得した作品です。

さて、「アフリカ音楽」と一言で言って、どんな音楽を想像されますでしょうか。おそらく、アフロビートのようなポリリズムを用いた強烈なパーカッションが鳴り響く音楽を想像されるのではないでしょうか。もちろん、「アフリカ音楽」と言っても、そのジャンルは多種多様にわたっています。地中海沿岸の地域では、むしろアラブ系の音楽に近いですし、サハラ砂漠ではご存じ、「砂漠のブルース」と呼ばれるようなブルースに近い雰囲気の音楽が聴けます。西アフリカの沿岸では、ハイライフのようなジャズの影響を受けたあか抜けたポピュラーミュージックもあったりと、アフリカ各地で様々なタイプの音楽を聴くことが出来ます。

ただ、あえてある種の偏見も加味した上で言ってしまうのならば、今回紹介するこのアルバムは、実に「アフリカ」らしい音楽を聴かせてくれます。楽曲はほとんど強烈なビートのパーカッションのリズムが主導して、シンプルなサウンドを展開するスタイル。そこに、ある種の呪術的な要素すら感じる男女の掛け合いが重なります。非常に「アフリカらしい」と言えるサウンドではないでしょうか。

このアルバムは、もともとコンゴ・キンシャサのスラム街で結成されたバンド、Fulu Mizuikiの中心メンバーであるPisco Craneと、彼らのストリートパフォーマンスに影響を受けたファッションデザイナーによるLady Aishaによるユニットだとか。ジャケット写真の奇妙なコシュチュームはそのデザインによるものでしょうか。

そんなユニットによる本作は、前述の通り、非常にトライバルな要素の強い、アグレッシブなリズムを中心とする楽曲を聴かせてくれます・・・が、一方でただただ伝統的なアフリカ音楽というだけではなく、微妙に現代的な要素を取り入れている点がユニークであったりします。例えば、アグレッシブなリズムトラックは、パーカッションだけではなく、電子音楽の要素も取り入れ、インダストリアル的な要素も感じられます。

他にも「Mutangila」のようなシンプルなリズムにエレクトロの要素を加味したようなトランシーな作品もありますし、「Two Seven」のようなノイジーなサウンドを取り入れてきている曲もあります。また「Kraut」は力強いシャウトを聴かせてくれ、どこかパンキッシュな要素も感じさせます。

そんな現代的な要素を加味しつつ、ただアルバム全体としては、実にアフリカらしさを感じさせるアグレッシブなサウンドが耳に残るアルバム。間違いなく、その力強いリズムに聴いていてワクワクさせられるのではないでしょうか。毎年、ミューマガ誌のワールドミュージック部門でベスト10に入ったアルバムは一通りチェックしているのですが、個人的にはこのアルバムが一番良かったように思います。いい意味でアフリカの音楽を聴いたという満足感を覚える1枚でした。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

Sultan/Alune Wade

こちらも上と同様、ミュージックマガジン誌ワールドミュージック部門で年間7位に選ばれた作品。セネガル出身のベーシストによるアルバムで、こちらもある意味、アフリカらしさを感じるトライバルなリズムが大きな特徴となっていますが、一方でロックやジャズなどの要素も取込、いかにもなジャケット写真と裏腹に、意外とあか抜けた印象も受ける作品に。いい意味でワールドミュージックの枠にとらわれない、聴きやすさを感じる作品でした。

評価:★★★★★

Black Panther: Wakanda Forever - Music From and Inspired By

映画「ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー」の劇中歌や映画からインスパイアされた曲を集めたオムニバスアルバム。今回は特にRihannaが久々の新曲をリリースしたということでも話題になっています。全体的にはアフリカ系のミュージシャンが多く参加しており、トライバルな要素も強いアルバムに。とはいえ、基本的にハリウッド映画から派生したアルバムだなけに、全体的にはしっかりとアメリカの音楽としてコーティングされた感じが、今回紹介したほか2つのワールドミュージックのアルバムとは大きく異なる点。もっとも、それはそれで、アメリカとアフリカの音楽の融合として楽しむことが出来るのですが。

評価:★★★★★

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2023年2月24日 (金)

ベテランバンドの底力

Title:新世界
Musician:MUCC

2022年に結成25周年を迎えたヴィジュアル系バンドMUCC。前作「惡」はアルバムとして初のベスト10ヒットを記録するなど、ここに来てバンドの人気が上がり調子になりつつありますが、そんな中、リリースされたちょうど2年ぶりとなるニューアルバムが本作となります。

そんな彼らの新作ですが、実にJ-POPらしいバンドだな、ということを強く印象に残りました。「J-POPらしい」と書くと、「良くも悪くも」という枕詞がつきそうで、必ずしもポジティブな表現にならないかと思いますが、このアルバムに関しては、確かに「良くも悪くも」という部分もあるのですが、どちらかというとポジティブな要素でこのような表現を使わせてもらいました。

バンドとして基本的にハードコアをベースとしたヘヴィーなサウンド。メロディーラインは(こちらは良くも悪くも)ヴィジュアル系らしいメランコリックで耽美的な世界を感じさせるもの。ここらへんはいかにも、といった印象を受けます。実際、アルバムの冒頭を飾る「星に願いを」も、続く「懺把乱」も、ヘヴィーなバンドサウンドを前に押し出した作品となっています。

ただ、J-POPらしいと言ったのは、このようなサウンドをベースとしつつ、様々な音楽的な要素を取り込み、なおかつポップにまとめているという点。ダビーな雰囲気の「パーフェクトサークル」やファンキーな「HACK」、ピアノでムーディーにまとめる「COLOR」に、最後に聴かせる「WORLD」は郷愁感たっぷりのメロディーが印象に残る楽曲に仕上げています。

ここらへん、しっかりリスナーの壺をつきつつ、最後まで決して飽きさせません。メランコリックなメロディーラインはいわゆるヴィジュアル系のそれであり、抵抗感のある人もいるかもしれませんが、それを差し引いても、もし彼らが90年代のヴィジュアル系全盛期にデビューしていたら、もっと大人気のバンドになっていたんじゃないか、ということを感じます。今回のニューアルバムは、そんな彼らの魅力をしっかり詰め込んだ、25周年の記念アルバムらしい内容になっていました。

評価:★★★★

で、このアルバムにおさめきれなかった作品が、ミニアルバムとしてリリースされました。

Title:新世界 別巻
Musician:MUCC

Bekkan 

むしろバリエーションの多さという観点では、こちらの方に軍配があがりそうなミニアルバム。「猿轡」はラップを取り入れてミクスチャー風に仕上げていますし、「別世界」はドリーミーなサウンドを聴かせる内容に。「HOTEL LeMMON TREE」はホーンセッションが入ってムーディーでジャジーな軽快なナンバーになっていますし、「終の行方」はピアノバラードでまとめています。

確かにこのバリエーションの多さは、「新世界」本体に入れてしまうとアルバム全体がバラバラになりそうですし、そのため、アルバム収録曲からはみ出てしまった、という理由は納得がいきます。ただ一方で、こうやって「別巻」としてリリースされたのは、そのままボツにするのは惜しいくらいの楽曲の出来だったからでしょう。実際、その理由も痛いほどわかる、MUCCの幅広い音楽性がわかる楽曲が並んでいます。

個人的には、むしろ「新世界」本編によりこちらの方がより魅力的だったように感じます。なんとなく、本編以上に楽曲に自由度があり、彼らが純粋に音楽を楽しんでいるような、そんなアルバムにも感じました。

結成25周年といっても、ベテランとして停滞せずに、むしろ勢いの増した感のある彼ら。その人気は今後、さらに高まりそうです。

評価:★★★★★

MUCC 過去の作品
志恩
球体
カルマ
シャングリラ
THE END OF THE WORLD
T.R.E.N.D.Y.-Paradise from 1997-
脈拍
BEST OF MUCC II
カップリング・ベストII

壊れたピアノとリビングデッド

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2023年2月23日 (木)

今週も男性アイドルグループが1位2位に

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週も男性アイドルグループが上位に並ぶチャートになりました。

まず1位初登場はジャニーズ系男性アイドルグループKAT-TUN「Fantasia」。約1年ぶりのニューアルバム。CD販売数1位、ダウンロード数2位。オリコン週間アルバムランキングでは初動売上9万6千枚で1位初登場。前作「Honey」の10万4千枚(1位)からダウンしています。

2位は韓国の男性アイドルグループ。NCT127「Ay-Yo」。CD販売数2位。先週と変わらない順位をキープしています。

3位は結束バンド「結束バンド」が先週の4位からランクアップ。CD販売数8位、ダウンロード数1位。4週ぶりにベスト3返り咲き。これで9週連続のベスト10ヒットとなりました。

続いて4位以下初登場組ですが、まずは4位にグレープ「グレープセンセーション」がランクイン。新しいアイドルグループか何かか??と思いきや、1970年代にさだまさしと吉田政美が組んでいたフォークデュオが、レコードデビュー50周年を記念し、なんと47年ぶりにリリースしたオリジナルアルバム。CD販売数3位、ダウンロード数34位。さだまさしは今でもベスト10に顔を覗かせるので、ベスト10ヒットも不思議ではありませんが、50年近く前のグループの50年近くスパンをあけたオリジナルアルバムが、いきなりベスト10入りを記録できるあたり、市場が停滞しているように感じてしまって複雑な気持ちにも。もっとも、ビートルズやストーンズも普通にアルバムがベスト10に入ってきているので、それと同じといえば同じなのですが。オリコンでは初動売上8千枚で4位初登場。

5位には、こちらも男性アイドルグループOnlyOneOf「chrOme arts」がランクイン。日本盤のオリジナルアルバムとしてはこれがデビュー作となる6曲入りのミニアルバム。CD販売数4位。オリコンでは初動売上8千枚で5位初登場。

6位初登場は家入レオ「Naked」。CD販売数5位、ダウンロード数10位。途中、ベスト盤のリリースを挟み、オリジナルとしては約2年9か月ぶりとなるニューアルバム。オリコンでは初動売上6千枚で7位初登場。直近作はベスト盤「10th Anniversary Best」で同作の初動売上9千枚(4位)からはダウン。オリジナルアルバムとしての前作「Answer」の初動5千枚(8位)からは若干アップしています。

8位には上原ひろみ「BLUE GIANT オリジナル・サウンドトラック」がランクイン。大人気のジャズ漫画で2月に劇場化した「BLUE GIANT」の音楽を上原ひろみが手掛け、また劇中音楽の演奏にも参加。本作はそのサントラ盤となります。CD販売数11位、ダウンロード数4位。オリコンでは初動売上4千枚で10位初登場。前作は上原ひろみ ザ・ピアノ・クインテット名義でリリースした「シルヴァー・ライニング・スイート」で、同作の初動7千枚(9位)よりはダウンしています。

初登場最後は10位に藤井風「LOVE ALL COVER ALL」がランクイン。ダウンロード数3位。彼が昨年3月にリリースしたアルバム「LOVE ALL SERVE ALL」の初回盤に付属してきたカバーアルバムを、1年を経て配信リリースしたもの。配信限定ながらも見事ベスト10入りを記録しました。

今週のHot Albumsは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2023年2月22日 (水)

日本人アイドル対決

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週は珍しくK-POPではない、日本人アイドルどおしが1位2位に並んでいます。

Boom

まず1位にランクインしたのはBE:FIRSTの配信限定シングル「Boom Boom Back」。ダウンロード数、ラジオオンエア数、YouTube再生回数で1位、ストリーミング数で2位を獲得し、総合順位で見事1位を獲得しています。BE:FIRSTはSKY-HIが実施したオーディション番組「THE FIRST」から登場した男性アイドルグループ。昨年末の紅白にも出演しています。

一方、2位に初登場したのが櫻坂46「桜月」で、CD販売数は1位でしたが、ダウンロード数9位、ストリーミング数29位、ラジオオンエア数14位で総合順位は2位に留まっています。オリコン週間シングルランキングでは初動売上34万8千枚で1位初登場。前作「五月雨よ」の初動39万3千枚(1位)よりダウンしています。

そんな訳で1位2位と日本のアイドルグループが並びましたが、典型的なのはその「売り方」。BE:FIRSTは配信限定ということもあり、ダウンロード、ストリーミング、YouTubeとネット系で売ってきているのに対して、櫻坂46はCDが売上の中心。その結果、BE:FIRSTに軍配が上がっているあたり、ビルボードらしい結果になっていますが、旧態依然とした櫻坂46のような売り方もそろそろ終わりに近づいているような印象を受けます。それとも、楽曲が一般のリスナー層に対してヒットしているかなんて関係なく、一部の固定ファンにCDを売りつけて、利益を上げれれば問題ない、というスタンスなのでしょうか。

3位にはOfficial髭男dism「Subtitle」が、その2曲に押し出される形でワンランクダウン。ダウンロード数は4位から7位に、YouTube再生回数も3位から5位にダウン。ただし、ストリーミング数は今週も1位をキープしており、これで18週連続。またこれで、19週連続のベスト10&ベスト3ヒットとなっています。一方、先週までベスト10をキープしていた「ホワイトノイズ」は今週14位に陥落。こちらは残念ながらロングヒットとはなりませんでした。

続いて4位以下ですが、今週は4位以下で初登場はゼロ。一方、ベスト10返り咲きとして韓国の女性アイドルグループNewJeans「Ditto」が先週の12位から10位にランクアップ。2週ぶりのベスト10返り咲きとなっています。

次にロングヒット曲ですが、まず米津玄師「KICK BACK」は今週6位から5位にアップ。これでベスト10ヒットは連続19週となりましたが、17週連続で2位をキープしてきたストリーミング数は今週4位にダウン。ダウンロード数も7位から14位、YouTube再生回数も6位から7位といずれもダウンしています。

10-FEET「第ゼロ感」は7位から6位にアップ。ただしこちらもダウンロード数は3位から5位、ストリーミング数も4位から5位、YouTube再生回数も8位から11位といずれもダウンしています。こちらはこれで11週連続のベスト10ヒットとなりました。

さらにTani Yuuki「W / X / Y」が今週10位から8位にランクアップ。こちらはストリーミング数が6位から7位、YouTube再生回数も14位から15位とダウンしていますが、ダウンロード数だけ26位から16位と大幅アップしています。これで通算39週目のベスト10ヒットとなりました。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

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2023年2月21日 (火)

サウンド面がさらに進化

Title:GAMA
Musician:ゆるふわギャング

Gama

ゆるふわギャング単独名義の純粋なオリジナルアルバムとしては、実に約4年ぶりとなる新作。実は昨年6月にリリースされていたのですが、リアルタイムではチェックが漏れてしまっており、遅ればせながら久々の新作をチェックしました。

ゆるふわギャングは実生活でも恋人どおし(という書き方はいまでもOKなんですよね?)のラッパー、Ryugo IshidaとNENEと、プロデューサーAutomaticによるユニット。トラップを取り入れつつ、独特の酩酊感あるサウンドが特徴的なHIP HOPユニット。ゆるふわギャング単独名義となる「Mars Ice House」「Mars Ice House Ⅱ」はいずれも独特のサウンドが魅力的で、私もリアルタイムで聴いてすっかり彼らの世界観に魅了されました。

そして今回の新作に関していえば、このサウンドの独自性をさらにつき進めた感のあるアルバムに仕上がっていました。全体的な印象としては純粋なトラップというよりも、もっとエレクトロ路線にシフトしたのが本作の大きな特徴。1曲目の「INTRO」からして、細かいリズムをベースとしながらもエレクトロサウンドのドリーミーな音が楽曲全体をコーティングしています。

その後も「E-CAN-Z」では、彼ららしい酩酊感もあるエレクトロサウンドでちょっとコミカルに聴かせてくれますし、「LAV」などもドリーミーなエレクトロサウンドが魅力的。アルバム全体としてトラップ的なビートを入れつつもエレクトロのサウンドが幻想感を作り出している、独特の作風が大きな魅力となっています。

このエレクトロ路線で一番特徴的なのは「Step」でスペーシーなサウンドが繰り広げられるこの曲は、なんとあのナカコー作曲による作品。そういわれると往年のスーパーカーを彷彿とさせる路線の曲にも感じられます。彼らのエレクトロ路線が顕著に感じさせる作品になっています。

また、他にも「Drug」ではノイジーなビートが展開されたり、「Sorayama Shoes」ではホーンセッションを入れて哀愁感あるトラックが印象的だったり、酩酊感を覚えるドリーミーな路線を軸にしつつバリエーションもあるトラックを最後まで楽しませてくれます。またダウナーな「Amethyst」のようなトラップの王道を行くような曲も展開されています。

一方で、「Mars Ice House」では大きな特徴となっていた、北関東のヤンキー的な不良の日常という歌詞の世界は、「Ⅱ」に引き続き今回も希薄。全体的に抽象的な歌詞が多く、ここらへん、以前のようなリリックよりもトラックに主軸を置いていることも感じます。もっとも今回のアルバムに関しては、このトラックの独自性が非常に強く、むしろ抽象的な歌詞の方がサウンドを邪魔せずにすっきりと収まっているようにも感じました。

ちょっとチェックが遅くなってしまったのですが、今回のアルバムも申し分ない傑作に仕上がっていたと思います。またサウンド面ではさらに独自の進化を遂げた作品になっていたと思います。まだまだ成長を続ける彼ら。これからの活躍からも目が離せなさそうです。

評価:★★★★★

ゆるふわギャング 過去の作品
Mars Ice House
Mars Ice House II
CIRCUS CIRCUS(ゆるふわギャング&Ryan Hemsworth)


ほかに聴いたアルバム

BLOODIEST/聖飢魔Ⅱ

80年代から90年代にかけて一世を風靡したヘヴィーメタルバンド、聖飢魔Ⅱ。1999年の解散後もしばしば再結成してライブを行っていたり、なによりボーカルのデーモン閣下のソロでの活躍もあり、リアルタイムで彼らの活躍を知らない人でもご存じの方は多いのではないでしょうか。解散後も再結成時のミサ(=ライブ)の模様を収録したミサ教典(=ライブアルバム)のリリースはあったのですが、純然たるオリジナル作品としての大教典(=アルバム)としては、実に23年ぶりとなる作品となるそうです。

本編の方は、正統派ともいえるヘヴィーメタルといった印象。目新しさはありませんが、逆にファンにとっては期待通りの作品といった感じではないでしょうか。ベテランの彼ららしい安定した仕事ぶりを楽しむことが出来ます。ただ、ユニークに感じたのは初回盤についてきた「地獄のBONUS TRACKS」なる付属盤。再結成以降に発表した作品をまとめたのですが、ハードロック色が強かったり、曲によってはブルースからの影響も感じるなど、意外なほど幅広い彼らの音楽性を感じます。その実力を強く感じる内容になっていました。

次のオリジナルアルバムはいつになるのかわかりませんが、おそらく今後も断続的に再結成して活動を続けていくんだろうなぁ。ライブの評判もいいみたいなので、一度見てみたいのですが・・・。次回の再結成時には・・・。

評価:★★★★

聖飢魔Ⅱ 過去の作品
XXX-THE ULTIMATE WORST-

ブギウギ ワンダー☆レビュー/スターダストレビュー

スタレビの初期のナンバーにホーンセッションを取り入れてブギウギ調にまとめた企画盤的なミニアルバム。ブギウギといっても戦前のブルースではなく、笠木シズ子の「東京ブギウギ」につながるような音楽性が特徴的。ホーンセッションで非常に明るいポップソングにまとめられており、素直にウキウキ楽しめそうな音楽に。彼らのライブでも盛り上がりそう。

評価:★★★★

スターダストレビュー 過去の作品
31
ALWAYS
BLUE STARDUST
RED STARDUST

太陽のめぐみ
B.O.N.D
Stage Bright~A Cappella & Acoustic Live~
SHOUT
スタ☆レビ-LIVE&STUDIO-
還暦少年
STARDUST REVUE 楽園音楽祭 2018 in モリコロパーク
スターダスト☆レビュー ライブツアー「還暦少年」
年中模索
STARDUST REVUE「楽園音楽祭 2019 大阪城音楽堂」
Mt.FUJI 楽園音楽祭2021 40th Anniv.スターダスト☆レビュー Singles/62 in ステラシアター

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2023年2月20日 (月)

バラエティー富んだ作風が大きな魅力

Title:Sequana
Musician:Souad Massi

今回もまた、2022年に各種メディアで年間ベストに選ばれたアルバムのうち、チェックが漏れていたアルバムを後追いで聴いた1枚。今回もまた、ミュージックマガジン誌ワールドミュージック部門で6位を獲得したアルバム。アルジェリア出身、ベルベル人のシンガーソングライター、Souad Massi(スアド・マッシ)の通算10枚目となるオリジナルアルバム。彼女はもともと、政治色の強いロックバンドに参加していたそうですが、保守派による脅迫を受け国を離れ、フランスのパリに移住したそうです。

ベルベル人といえば、「砂漠のブルース」と呼ばれ、日本でも人気のあるマリのバンド、Tinariwenはベルベル人系のトゥアレグ族によるバンド。アルジェリア出身のシンガーソングライターということで、当然、似たようなタイプの音楽を想像するのですが、しかし、アルバムがスタートするとはじまる楽曲にはちょっと驚くのではないでしょうか。1曲目「Dessine-moi Un Pays」はしんみりギターのアルペジオからスタート。さらにフランス語のボーカルがのる哀愁たっぷりのバラード。むしろパリ在住ということでシャンソンとの親和性の高さも感じられるようなムーディーな曲調となっています。

と思えば2曲目「Une Seule Etoile」も哀愁たっぷりのムーディーなナンバーなのですが、パーカッションはラテン風。また1曲目とは違ったタイプの曲を聴かせてくれます。そして3曲目「Mirage」はトライバルなギターとパーカッションのサウンドにのせて勇壮な雰囲気で歌い上げる楽曲。これこそむしろ「砂漠のブルース」との共通点も感じられる楽曲になっており、彼女のプロフィールから「期待」されるような楽曲になっています。

この後も非常にバラエティーに富んだ音楽性を聴かせてくれるのがこのアルバムの大きな特徴。「Dib El Raba」はフォーキーで爽やかなポップソングに仕上がっていますし、「Ciao Bello」も途中からパーカッションが入った軽快なナンバーになっていますし、タイトルチューンである「Sequana」も爽やかなフォークソングに仕上がっており、メランコリックなメロが大きなインパクトとなっています。

さらに「Twam」に至っては、ガレージロック風の楽曲になっており、ここまでのアコースティックテイストの作品から大きく変化し、驚かされます。もっとも彼女の出自はロックバンドなだけに、こういった曲調は彼女にとっては自然なのかもしれませんが。

そんなバラエティーに富んだアルバムでともすればバラバラの音楽性といった印象も受けてしまいそうな作品なのですが、実際、アルバムを通して聴いてもそんな印象は受けません。その大きな要因がやはり全体としてメロディーの良さを感じさせる歌モノでまとめているという点がではないでしょうか。メランコリックなメロが胸に響いてくるのですが、特に魅力的に感じたのが「Ch'ta」で、メランコリックで爽やかなメロディーが強いインパクトを持っており、メロディーメイカーとしての彼女の魅力を存分に感じます。

そしてアルバム全体でどこか感じるトライバルな要素も楽曲に統一感を持たせているように感じます。例えばフォーキーな作風の「Dib El Raba」も後半になるとトライバルなビートが入ってくるなど、彼女の出自からくる音楽的要素が要所要所に感じられ、アルバムに統一感を与えているほか、楽曲全体の大きな魅力にもなっていたように感じます。

年間ベストに選ばれるのも納得の傑作アルバムで、彼女のアルバムははじめて聴いたのですが、すっかりその世界に魅了されてしまいました。アフリカ系の音楽が好きな方ならもちろん、バラエティー富んだ作風とインパクトあるメロディーラインはおそらく多くの方がはまるのではないでしょうか。非常に魅力的な1枚でした。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

Người Phụ Tình Tôi/Như Quỳnh

Nguoi

こちらもミュージックマガジン誌ワールドミュージック部門で4位を獲得した1枚。アメリカ在住のベトナム人シンガーによる作品で、ベトナム戦争以前の曲を歌った作品だそうです。楽曲は哀愁感たっぷりの歌を感情たっぷりに歌い上げる作品で、日本のムード歌謡にも通じる1枚。加えて、エキゾチックな要素が我々日本人にとっても新鮮味があり、魅力的な1枚に仕上がっていました。

評価:★★★★

Timbuktu/Oumou Sangare

こちらも同じく、ミュージックマガジン誌のワールドミュージック部門で5位を獲得した作品。マリのワスル音楽を聴かせる女性シンガー。ワスルとは、マリの中でニジェール川以南の地域で、そこに古くから伝わる音楽を歌う彼女。郷愁感も強く感じる、哀愁たっぷりに聴かせる歌声が大きな魅力だが、一方ではトライバルなリズム、ロックの要素も取り入れたアグレッシブなサウンドも大きな魅力。

評価:★★★★★

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2023年2月19日 (日)

4部作最終章

Title:SZNZ:Winter
Musician:WEEZER

2022年、季節の節目にあわせて4枚のEPシリーズ「SZNZ」をリリースし続けた、アメリカのパワーポップバンドWEEZER。春分の日に「SZNZ:Spring」、夏至の日に「SZNZ:Summer」、秋分の日に「SZNZ:Autumn」とリリースし、12月21日に「SZNZ:Winter」をリリースしました。一応、日本では冬至は12月22日なのですが、世界標準時では冬至は12月21日なんですね。日本人にとっては、ひょっとしたら1日早いサプライズリリースとなったかもしれません。

そんな「SZNZ」シリーズの第4弾となる本作。いままでの作品はいずれもWEEZERらしさを感じる分厚いバンドサウンドにキュートなメロディーが乗っかかるというWEEZERの王道路線ともいうべき作品が続いていましたが、そういう観点で言えば今回のアルバムも間違いなくWEEZERの王道を行くようなメロディアスなパワーポップの曲が並んでいました。

冒頭を飾る「I Want A Dog」などはまさにWEEZERらしい分厚いギターロックをバックにミディアムテンポのちょっとメランコリックでキュートなメロが乗った楽曲。続く「lambic Pentameter」も同じくメランコックなメロが印象的なギターロックの楽曲に仕上がっています。「Basketball」もノイジーなギターサウンドをバックにメロディアスに聴かせるロックチューンに仕上がっています。

また、今回のシリーズの大きな特徴としてヴィヴァルディの「四季」にインスパイアさえた作品ということで、いままでのアルバムの中でもヴィヴァルディの「四季」からのフレーズが散りばめられてきました。ただ、前作「Autumn」で「四季」の中の「冬」をつかってしまったためか、今回はネタ切れ(?)。ただ、そんな中でクラシックのフレーズを使ってきたのが「Sheraton Commander」で、ヴィヴァルディと同じバロック期の作曲家、アルビノーニの「弦楽とオルガンのためのアダージョ ト短調」が使われており、ダイナミックなサウンドを聴かせてくれます。

その後も3拍子で軽快に聴かせる「Dark Enough to See the Stars」に、軽快なギターロック「The One That Got Away」と続き、ラストの「The Deep and Dreamless Sleep」も彼ららしい分厚いサウンドにキュートなメロのパワーポップ。最後までWEEZERらしい曲が並び、このアルバムは幕を下ろします。

いままでの3枚と同様、よくも悪くも彼ららしいメロディアスなパワーポップを聴かせる作品に。いい意味でリスナーが期待するようなWEEZER像を演じており、しっかりと壺をおさえたアルバムに仕上がっていました。これで4枚に及ぶプロジェクトを終了された彼ら。本作も7曲21分という短さですし、どのアルバムもミニアルバムなのですが、結果として4枚合わせると全28曲1時間半という、結構なボリュームのアルバムを1枚リリースした、ということになります。4枚ともいいアルバムでしたし、ここ最近、比較的良質なアルバムが続いている彼らなのでバンドとしての状態は良いのでしょう。とにかくWEEZERを聴いた!という満足感にひたれるアルバムでした。

評価:★★★★★

WEEZER 過去の作品
WEEZER(Red Album)
RADITUDE
HURLEY
DEATH TO FALSE METAL
Everything Will Be Alright in the End
WEEZER(White Album)
Pacific Daydream
Weezer(Teal Album)
Weezer(Black Album)
OK HUMAN
Van Weezer
SZNZ:SPRING
SZNZ:SUMMER
SZNZ:Autumn


ほかに聴いたアルバム

Pa'lla Voy/Marc Anthony

こちらは昨年の年間ベストのうち聴き漏れていたアルバムを後追いで聴いた1枚。本作はミュージックマガジン誌ラテン部門で1位を獲得した、アメリカで活躍するサルサ系ラテン歌手によるニューアルバム。リズミカルなパーカッションと哀愁たっぷりのメロディーが魅力的。サルサのアルバムのようですが、軽快な歌はポピュラリティーも高く、普通のポップアルバムとしても楽しめそうなアルバムになっていました。

評価:★★★★

QVVJFA?/Baco Exu do Blues

Qvvjfa

こちらも年間ベストを後追いで聴いた1枚。こちらは同じくミュージックマガジン誌のブラジル部門で1位を獲得した、ブラジルはバイーア州出身のラッパーによるアルバムだそうです。ところどころエキゾチックさを感じさせつつも、全体的にはメロウでムーディーに聴かせるトラックが印象的。「ブラジル」という括りにとどまらず、純粋にHIP HOPのアルバムとして魅力的な1枚となっていました。

評価:★★★★★

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2023年2月18日 (土)

「伝説のバンド」の16年ぶりの新譜

Title:The End of Yesterday
Musician:ELLEGARDEN

今や、半ば「伝説のバンド」的扱いになっているELLEGARDENが、ついに約16年ぶりとなるニューアルバムをリリースしました。ELLEGARDENといえば、the HIATUSやMONOEYESなどで活躍している細美武士が組み、彼の名前が最初に広まったバンド。一躍人気を獲得しましたが、2008年にバンドは活動休止となりました。ただ、活動休止後の細美武士の活躍はご存じの通り。さらにギターの生形真一はNothing's Carved In Stoneでこれまた人気を博し、ドラムスの高橋宏貴もTHE PREDATORSなどで活躍と、活動休止後のメンバーの活躍も目立ちます。

そんなメンバーそれぞれのソロでの活躍もあり、徐々に「伝説化」していったELLEGARDENですが、2018年に活動を再開。当初はライブでの活動のみだったのですが、昨年、久しぶりに新曲がリリースされ、さらに待望となるニューアルバムのリリース。2006年にリリースされた「ELEVEN FIRE CRACKERS」から実に16年ぶりとなるニューアルバムとなりました。

ELLEGARDENといえば、デビュー初期は比較的イギリス寄りのギターロック路線、その後は徐々にUS寄りのパンクロックにシフトしていったというイメージがあります。久々となった今回のアルバムは、基本的には解散前の路線の延長線上といった感じ。特にアメリカのエモコア、メロディアスパンクバンドあたりと親和性の強そうな、洋楽テイストも強いメロディアスな楽曲を分厚いバンドサウンドの上で聴かせてくれています。

今回のアルバムも全11曲、方向性として統一感がありますが、逆に言うと、バリエーションという意味ではちょっと乏しいものも感じます。ただ、その点を差し引いても40分というアルバムの長さもちょうどよく、分厚いバンドサウンドにポップでメロディアスな歌が心地よく、途中、まったくダレることなく最後まで一気に楽しめます。

全体的には洋楽テイストの強いアルバムなのですが、ポップなメロディーはどこかメランコリックさも加味されて、ウェットな歌謡曲的な要素も感じます。この手のメランコリックさはエモコア系バンドに共通する部分ではあるものの、特に彼らの場合はそんなメロディーが私たちの耳にもピッタリとマッチして心地よく流れてきます。

また歌詞は全英語詞と全日本語詞の曲が混じった構成に。こういうタイプのバンドは多いのですが、ただ、この手のバンドはよく、英語詞の曲はカッコいいけど、日本語曲は急に平凡なJ-POPになってしまって今一つ…というケースが少なくないのですが、彼らに関してはこの両者の出来にほとんど差がありません。この点はエルレの実力であり、またバンドの大きな魅力なのでしょうし、このアルバムの大きな特徴のひとつとなっています。それだけメロディーラインが魅力的でしっかりしているという証拠でしょう。

似たようなタイプの曲が多い、とはいえ、英語詞と日本語詞の別もありますし、より哀愁感のました「ダークファンタジー」やヘヴィーなギターリフが特徴的でよりヘヴィネスさを増した「Firestarter Song」、疾走感のあるギターロックの「10am」など、もちろんいろいろなタイプの曲も顔を覗かせます。ただ、全体的に無理に楽曲のバリエーションをつけるよりも、エルレらしい演りたい曲を演りたいように演奏しているという印象も強く、久しぶりのアルバムではあるものの変な気負いのようなものはなく、自由に楽しく作り上げたアルバムといった印象を受ける1枚でした。

今後はエルレも継続的に活動を続けるのでしょうか。メンバーそれぞれ他のバンドと兼務しているだけに活動は大変そうですが、それでもこれからの活躍も楽しみになってきます。久々に聴いたエルレのアルバムでしたが、その魅力を存分に感じられた作品でした。

評価:★★★★★

ELLEGARDEN 過去の作品
ELLEGARDEN BEST(1999~2008)


ほかに聴いたアルバム

MAGNETIC/木村カエラ

木村カエラの新作は、AIとの共作「MAGNETIC」、SANABAGUNが参加した「井の頭DAYS」、GEZANのマヒトゥ・ザ・ピーポーとのコラボ曲「Color Me」など様々なミュージシャンとコラボを行った作品。ラテンからラップ、エレクトロ、ギターロックなど様々な要素を詰め込んだ楽しいポップスアルバムに仕上がっており、最初から最後まで楽しめる作品になっています。様々なミュージシャンとコラボし、いろいろな音楽性を詰め込んでも、いい意味で肩の力が抜けた楽しいポップスアルバムに仕上げてくるのが彼女らしいところ。人気面で少々落ち着いた彼女ですが、そのアルバムの魅力は変わりありませんでした。

評価:★★★★

木村カエラ 過去の作品
+1
HOCUS POCUS
5years
8EIGHT8
Sync
ROCK
10years
MIETA
PUNKY
¿WHO?
いちご
ZIG ZAG
KAELA presents on-line LIVE 2020 “NEVERLAND”

ukabubaku/パスピエ

前々作「synonym」リリースが2020年12月9日、前作「ニュイ」リリースが2021年12月8日、そして本作リリースが2022年12月7日と、ちょうど1年マイナス1日のリリース間隔でアルバムをリリースしているパスピエ。これにどういう意味があるのか、いまひとつわかりかねるのですが・・・。ただ、アルバムの作風としてはいつも通りといった感じで、シンセのサウンドを主軸にしつつ、幻想的な曲があったり、メロディアスな曲があったり、アバンギャルドな曲があったりとバリエーションを富んで聴かせます。ただ、そんなバリエーションを含めて、良くも悪くもいつものパスピエといった印象も受けるアルバム。もうちょっとぶっとんでもおもしろいと思うのですが。

評価:★★★★

パスピエ 過去の作品
ONOMIMONO
演出家出演
幕の内ISM
娑婆ラバ
&DNA
OTONARIさん
ネオンと虎
more humor
synonym
ニュイ

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2023年2月17日 (金)

J-POPをめぐる「物語」

今日はまた、最近読んだ音楽関連の書籍の紹介です。

今回紹介するのは、音楽評論家の佐々木敦による「増補・決定版 ニッポンの音楽」。もともと2014年に講談社新書から発売されたものを、その後の音楽シーンの情勢を加味した上で、あらたに文庫本という形態でリリースされた本で、音楽評論家の佐々木敦が日本のポップスシーンについて総括的に分析した1冊です。

同書の大きな特徴として、各章に一組(一人)の代表的なミュージシャンを登場させ、そのミュージシャンを中心とした「物語」として日本のポップスシーンの歴史を語っている、という点でしょう。最初ははっぴいえんどからスタートし、YMO、フリッパーズ・ギター、ピチカート・ファイヴ、小室哲哉、そして中田ヤスタカと続いていきます。「はじめに」でこの登場人物たちの「言動や振る舞いに記述の視点を思い切って収斂されることで、ひとつの『物語=歴史』として『ニッポンの音楽』は展開していきます」と記載しています。

その「ニッポンの音楽」をめぐる物語の中で、彼は「外」と「内」に関するかかわり方についてスポットをあてています。端的に言えば洋楽からの影響をどう取り込むのか、という点なのですが、「外」と「内」に距離があり明確に区別されていたはっぴいえんどやYMOの時代から、「外」と「内」の区分にほとんど意味をもたらさなくなった中田ヤスタカの時代までの変容をしっかりと分析しています。

正直言って、物語の登場人物を絞ったというのは、かなり大胆な試みのように感じます。実際、ミュージシャンの偏りについては批判も多いみたいで、文庫本のあとがきではそのような批判についても触れています。ただ、「はじめに」を読めばわかるように、著者はあえて登場するミュージシャンを絞り込んで記載をしていることは明確ですし、このような批判はさすがに読者の読解力のなさを疑わせるレベルだと思います。また、著者の描く「ニッポンの音楽」の物語の中、確かにこの登場人物については各時代を象徴する存在であり、取り上げるのは自然であるように感じます。

ただ、その上であえて言ってしまえば、最近になればなるほど、この「物語」に違和感が生じてしまっているのも事実だと思います。例えば、ゼロ年代の主人公として中田ヤスタカを登場させています。確かに2014年の時点においてPerfumeやきゃりーぱみゅぱみゅのヒットで、彼がいわば小室哲哉に続くような時代の寵児、とみられていた時期がありました。ただ、2022年の今となると、結局中田ヤスタカは、一時期の小室哲哉や小林武史のようにチャートを席巻するようなことはありませんでした。これは中田ヤスタカ自身、必要以上にプロデューサー業で手を広げず、一時の小室系みたいに時代のあだ花として消費されることを回避しようとしたようにも感じます。しかし、今となってはゼロ年代を中田ヤスタカ一人に象徴させるのは、かなり難しいようにも感じます。

その違和感は今回の文庫本化にあたって追加された「ボーナストラック」でより強く感じます。ここで様々な登場人物を取り上げていますが、著者の描く「ニッポンの音楽」の物語の中でピンと来るようなミュージシャンはいません。星野源を登場させていますが、正直、ちょっと違和感がありますし、折坂悠太も登場させていますが、「日本的な要素と、海外の先端的な音作りが巧みにミックス」というのはその通りなのですが、物語の行きつく先が、日本的な音楽と洋楽の融合、というのはあまりにも陳腐すぎます。さらに2022年の時点に物語であるにも関わらず、コロナ禍の影響を無視しているのにも違和感もあります。

これは著者の描く物語が日本の「外」と「内」というものを軸としているため、2020年代という今の時代においては、それが意味をなさなくなってきているから、ではないでしょうか。それにも関わらず、いままでの物語の延長線上に2020年代を語ろうとしているからこそ、違和感を覚えてしまうのではないでしょうか。著者の描く物語は2000年代、いや90年代で既に幕を閉じていたようにも感じます。

とはいえ、そんな違和感を含みながらも、一つの物語として非常に興味深く「ニッポンの音楽」を描いている1冊だと思います。著者も意識しているように、これはひとつの見方であり、偏っている部分はある点は否定できません。そのため、純粋に日本のポピュラーミュージックの歴史を知ろうとした場合、この1冊だけに頼るのは非常に危険であることは間違いありません。ただ、その点を加味した上でひとつの「物語」として読んだ場合、なるほど著者の見方も「ニッポンの音楽」の中で間違いなくひとつの核だったんだろうなぁ、とは思います。

そういう意味で非常に興味深く読むことが出来ましたし、また改めて勉強にもなった1冊でした。J-POPの歴史を知るためのひとつのとっかかりとしてはちょうどよい1冊だと思います。

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2023年2月16日 (木)

こちらもアイドル系が目立つチャート

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

こちらもアイドルグループが目立つチャートとなっています。

まず1位初登場はOCTPATH「Showcase」。韓国のオーディション番組「PRODUCE 101」シリーズの日本版、「PRODUCE 101 JAPAN SEASON 2」の練習生によって構成された男性アイドルグループ。本作がデビューアルバムとなります。CD販売数1位、ダウンロード数6位。オリコン週間アルバムランキングでも初動売上3万8千枚を売り上げて、1位初登場となっています。

2位は韓国の男性アイドルグループNCT127「Ay-Yo」がCDリリースの影響で先週の26位からランクアップし、ベスト10入り。昨年9月にリリースしたアルバム「2 Baddies」に新曲の表題曲を加えて再リリースした、いわゆる「リパッケージアルバム」。CD販売数2位、ダウンロード数62位。オリコンでは初動売上1万9千枚で2位初登場。直近作は本作の「元」となっているアルバム「2 Baddies」で、同作の初動9万枚(2位)よりダウンしています。

3位は「FINAL FANTASY XIV:ENDWALER - EP3」。「ファイナルファンタジーXIV:暁月のフィナーレ」の最新アップデートパッチ「天の祝祭、地の鳴動」に使用された曲を収録した配信限定のサントラ盤。ダウンロード数で1位を獲得し、総合順位でもベスト3入りを果たしています。

続いて4位以下の初登場盤ですが、まず5位にゴールデンボンバー「COMPACT DISC」がランクイン。CD販売数3位、ダウンロード数7位。約3年3か月ぶりとちょっと久々となるニューアルバム。人を食ったような、ただ配信全盛の今では意味深なタイトルが彼ららしい感じがします。オリコンでは初動売上8千枚で3位初登場。前作「もう紅白に出してくれない」の初動2万1千枚(4位)よりダウン。ただ、この間、メンバーの鬼龍院翔と歌広場淳の女性問題が報道され、イメージ的にかなり打撃を受けていただけに、久々のアルバムながらも思ったよりは持ちこたえたな、という印象は受けました。

初登場最後は10位。GLAY「UNITY ROOTS&FAMILY,AWAY Anthology」。CD販売数7位。2002年にリリースしたアルバムの復刻版。オリコンでは初動売上6千枚で6位初登場。直近作はオリジナルアルバムの「FREEDOM ONLY」で同作の初動3万枚(1位)よりダウン。復刻版としては前作「ONE LOVE Anthology」(9位)から初動売上は横バイ。

一方、ロングヒット盤では結束バンド「結束バンド」が4位にランクイン。これで8週目のベスト10ヒットとなり、ロングヒットを続けています。

今週のHot Albumsは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2023年2月15日 (水)

アイドル系が目立つチャート

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週のHot100はアイドル系が目立つチャートとなりました。

まず今週の1位は、韓国の男性アイドルグループSEVENTEENの別働ユニットBSS(SEVENTEEN)のデビューシングル「Fighting(feat.Lee Young Ji)」がランクイン。CD販売数は3位でしたが、ダウンロード数9位、ストリーミング数13位、You Tube再生回数7位で、総合順位は1位獲得。オリコン週間シングルランキングでは、同曲が収録されている「SECOND WIND」が初動売上5万4千枚で3位に初登場しています。

一方、3位にも韓国の男性アイドルグループNCT DREAM「Best Friend Ever」がランクイン。CD販売数はこちらが1位を獲得しましたが、ダウンロード数54位、You Tube再生回数90位、そのほかのチャートは圏外となり、総合順位は3位に留まっています。オリコンでも初動売上18万2千枚で1位初登場しています。

日本のアイドル勢は、AKB48の姉妹グループ、HKT48「君はもっとできる」は4位に初登場。こちらはCD販売数2位以外すべてランク圏外。相変わらずCD売上のみに焦点を置いているAKB系らしい結果となっています。オリコンでは初動売上12万8千枚で2位初登場。前作「ビーサンはなぜなくなるのか?」の初動12万7千枚(1位)より微増。

そしてこれらアイドル系に挟まれつつ、先週と変わらず2位をキープしたのがOfficial髭男dism「Subtitle」。ストリーミング数は17週連続1位。ダウンロード数は3位から4位にダウンしたものの、You Tube再生回数は変わらず3位をキープしています。これで18週連続のベスト10ヒット&ベスト3ヒットとなりました。また「ホワイトノイズ」は先週からワンランクダウンながらも8位とベスト10をキープ。今週も2曲同時ランクインとなっています。

続いて4位以下初登場ですが、今週はHKT48のほか、もう1曲初登場が。9位に由薫「星月夜」が初登場。ストリーミング数は45位、YouTube再生回数は72位と奮いませんが、ラジオオンエア数4位、ダウンロード数は1位を記録し、総合順位でベスト10入りです。彼女は、これで「ゆうか」と呼ばせるシンガーソングライター。2019年にGYAOとアミューズの合同オーディション「NEW CINEMA PROJECT」で審査員特別賞を受賞し、デビューしています。本作はデビュー後、6作目となる配信限定シングル。テレビ朝日系ドラマ「星降る夜に」の主題歌に起用され、今回、ヒットにつながりました。ダウンロード数で高い順位を見せているものの、ストリーミング、YouTubeの順位が伸びていない点、ドラマを見た視聴者がダウンロードで購入しているものの、それ以外の層にはまだ広まっていないということなのでしょう。今後のヒットは、どれだけドラマ視聴者以外の層に波及するかにかかっていそうです。

さらに今週、返り咲き組としてTani Yuuki「W / X / Y」が10位にランクアップ。3週ぶりのベスト10返り咲きを記録しています。これでベスト10ヒットは通算38週目となりました。

他のロングヒット組では、まず米津玄師「KICK BACK」が4位から6位にダウンしています。ただし、ストリーミング数は17週連続で2位をキープ。ダウンロード数は10位から7位、You Tube再生回数も7位から6位にアップしており、むしろ全体的には上り基調。初登場組に追い落とされる形でランクを下げましたが、来週以降の巻き返しも期待でしそうです。これでベスト10ヒットは連続18週目に。

10-FEET「第ゼロ感」は6位から7位にワンランクダウン。ダウンロード数は2位から3位にダウン。ただストリーミング数が6位から4位、YouTube再生回数も12位から8位にアップし、いずれも最高位を更新しています。いままで「スラムダンク」世代で、比較的年齢層も高いと思われる映画を見ていた層がダウンロードで購入していたのが、徐々に、その他のリスナー層に波及してきたように思われます。順位的にはダウンしてしまいましたが、来週以降の巻き返しも期待できそう。これで10週連続のベスト10ヒットとなります。

一方、先週までベスト10ヒットをキープしていたAdo「新時代(ウタ from ONE PIECE FILM RED)」は今週13位にダウン。ついにベスト10ヒットから姿を消しました。ベスト10ヒットは34週連続でストップです。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

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2023年2月14日 (火)

どす黒いトラックがカッコいい!

Title:Cheat Codes
Musician:Danger Mouse & Black Thought

今回紹介するアルバムもまた、昨年の各種メディアの年間ベストアルバムの中で聴きもらしていたアルバムを後追いで聴いた1枚。今回はまた、メディアの年間ベストアルバムを集計して順位化したサイトAOTY 2022の上位にランクインした曲の中で未聴となっていた作品で、16位にランクインしていたDanger Mouse&Black Thought名義によるアルバム「Cheat Codes」です。

Danger Mouseはゴリラズやレッチリなどのプロデュースでも知られるアメリカの音楽プロデューサー。かつてGnarls Barkleyとしての活動も話題となりましたし、グラミー賞の受賞も6回にも及ぶなど、その実力は知れ渡っています。一方、Black Thoughtはご存じThe RootsのMC。この2人が組んだアルバムを遅ればせながらチェックしてみました。

これがまた、個人的に壺にはまりまくりなかなりカッコいいHIP HOPのアルバムに仕上がっていました。HIP HOP・・・と言っても、いわば「今風」な作品ではなく、むしろその逆。トラックに関しては昔ながらのソウルやファンクの要素を存分に取り入れた内容になっており、かなりレトロな雰囲気を醸し出しつつ、一方ではグルーヴィーなサウンドが非常にカッコよさを感じさせるアルバムになっています。

1曲目「Sometimes」もいきなり力強いソウルボーカルの歌声をサンプリングしてソウルフルに聴かせるトラックからスタート。否応なくアルバム全体の方向性を示唆する楽曲となっています。ファンキーなリズムがカッコいいのが「No Gold Teeth」でブリブリに聴かせるファンキーなベースラインのループがとにかく耳を惹きます。

「Belize」も同じくホーンの入った哀愁感たっぷりのトラックが耳を惹くのですが、こちらもゆっくりとビートを刻むグルーヴィーなベースラインが印象的。「Idential Deaths」も同じく哀愁感たっぷりのトラックで悲しげに聴かせるラップが印象的ですが、こちらもヘヴィーなベースラインがグルーヴを醸し出しています。

後半で印象的なのは「Strangers」でA$AP RockyとRun The Jewelsという豪華なゲストが魅力的。こちらもちょっとオールドスクール的な雰囲気を醸し出し、どこかレトロ調なサウンドに懐かしさを覚えつつ、グルーヴィーなリズムがカッコよさを感じさせる楽曲に。さらにラストを締めくくる「Saltwater」「Violas and Lupitas」は60年代的なレトロを感じさせるムーディーなトラックとなっており、最後までムーディーな雰囲気たっぷりにアルバムを締めくくっています。

アルバム全体としてはソウルやファンクの要素を多分に取り込みながら、レトロな懐かしさを感じさせるトラックが印象的。どす黒くゴリゴリと聴かせるグルーヴ感が非常にカッコよく、レトロといっても古臭さみたいな要素はゼロ。各種メディアの年間ベストで上位に食い込んでくるのも納得の傑作アルバムに仕上がっていました。こういうスタイルは、いかにもThe RootsのBlack Thoughtらしい、といった印象も受けるのですが・・・。ソウルやファンクとHIP HOPをうまく融合させた聴きごたえのある1枚でした。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

Preacher's Daughter/Ethel Cain

Ethel-cain-preachers-daughter

こちらもAOTY 2022の上位にランクインした曲の中で未聴となっていた作品で19位にランクインした、アメリカのシンガーソングライターによるデビューアルバム。バンドサウンドをダイナミックに聴かせつつ、ピアノの音色も入れて荘厳な雰囲気でメランコリックな歌を聴かせる、独特な音楽性が魅力的な作品。間違いなく独特の個性を持ったミュージシャンで、デビュー作でこの内容という点、これからの活躍に期待できそう。ただ一方、アルバムとしては似たような雰囲気の曲も多く、もうちょっとバリエーションも欲しかったような気もします。

評価:★★★★

Proti Volta/Yiannis Dionysiou

Yiannis-dionysiou

こちらも2022年年間ベストを後追いで聴いた1枚。こちらは「ミュージックマガジン誌」ワールドミュージック部門で3位を獲得した作品。キプロスはリソマール出身の32歳になるシンガーソングライターのデビュー作。マケドニア大学音楽科学芸術学部に入学し、その後、同大学で講師なども務めるなど、正統派な「音楽家」だそうです。ラテンの要素も加えた哀愁感たっぷりの曲を、感情豊かなボーカルで歌い上げる作品。ある意味、まさに楽曲的にも「正統派」といった感じで、その歌声に聴きほれるアルバムでした。

評価:★★★★

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2023年2月13日 (月)

最近ではネットでの活動も話題に

Title:Kohmi30th
Musician:広瀬香美

1993年に「ロマンスの神様」がアルペンのCMソングとして起用され大ヒットを記録。その後も毎年、スキーシーズンに放映されるアルペンのCMソングに彼女の楽曲が起用され、ヒットを記録し、その影響もあり「冬の女王」なる言い方をされたこともあるシンガーソングライターの広瀬香美。2000年代以降はスキー人気が下火となると同時に彼女の人気も下火になっていったのですが、ここ最近、彼女のYouTubeチャンネルにアップされたカバー動画が話題となったり、「ロマンスの神様」の振り付け動画がTikTokで話題となり「TikTok2022上半期トレンド大賞」を受賞したりと、一部、ネットで大きな話題となりました。

本作はそんな彼女のデビュー30周年を記念してリリースされたベストアルバム。人気投票に基づいて選曲されており、通常盤は上位10曲と新曲1曲、初回盤は3枚組となり、上位30曲と新曲1曲が収録されています。彼女の代表曲とも言える大ヒット曲「ロマンスの神様」「promise」「ゲレンデがとけるほど恋したい」などは上位10曲で通常盤に収録されているのですが、同じくヒットした「ストロボ」「幸せをつかみたい」「ドラマティックに恋して」などはベスト10に入ってきておらず、微妙に通常盤だけではヒット曲を網羅していないのが、初心者にとっては辛い部分ではあったりします。

また、彼女の曲がヒットしていたリアルタイム時点から強く感じていたのですが、広瀬香美は本当に自己顕示欲の強いミュージシャンだな、ということを感じます。まずはその歌が、非常に複雑な歌いにくい展開をしていたり、これでもかというほど歌い上げるようなボーカルスタイルとなっていたり、とにかくテクニックを見せつけようとするような曲が多い・・・。ただ正直、彼女の歌って、テクニックとしては非常に巧いボーカリストではあるのですが、特別に声量があるわけでもなく、微妙な表現力に富んだボーカリストという訳でもなく、決して「上手い」ボーカリストとは思えません。それだけにこれでもかというほどテクニックを見せつける楽曲とのギャップに少々違和感を覚えてしなう点は否めません。

歌詞にしても非常に自分に自信があるような歌詞が多く、基本的には失恋の歌は皆無。誰かを好きになれば、その相手も自分に応えてくれる・・・といった感じのラブソングが多い印象があり、そんな歌詞の世界観を聴いていても、本当に自分に自信があるんだな、ということを強く感じます。広瀬香美がヒットを記録したのはバブル崩壊以降なのですが、バブルなイメージのある「スキー」のCMソングというイメージと、このとにかく前向きな自己顕示欲の強さが、バブル期の女性のイメージと重なってしまって、どこか広瀬香美にはバブル期の空気を感じてしまいます。

ただ、個人的に広瀬香美で一番の魅力であり、かつその才能を感じさせるのは、歌唱力でもなく歌詞でもなく、やはりメロディーラインの良さに尽きるように感じます。私が彼女のことをはじめて知ったのはデビュー曲「愛があれば大丈夫」なのですが、一度聴いたら一発で忘れられないようなフックの聴いたメロディーラインは見事。「ロマンスの神様」以降、アルペンのCMソングでヒットを飛ばすのですが、その理由もやはりアルペンのCMがよく出来ていたから・・・というのもあるのでしょうが、わずか15秒というCMの中に、しっかりと印象を残すようなフックに効いたメロディーラインをしっかりと作ることが出来たから、という点が大きいのではないでしょうか。

今回のアルバムも初回盤だと3枚組というフルボリュームの中、最後まで飽きることなく一気に聴き切れたのは、そんなメロディーの良さが大きな理由だったと思います。一時期はアルペンのCMソング以外はさっぱり売れない、という時期が続いていたのですが、それでもアルペンのCMソングとして5年間、ヒット曲を飛ばし続けていた点、やはりCMで一発で耳に残る、そのメロディーのインパクトが大きかったのでしょう。

久しぶりに彼女のヒット曲を聴いたのですが、非常に懐かしさを感じつつ、広瀬香美の魅力も存分に感じられたベストアルバム。自己顕示欲の強さが鼻につく部分も正直否めないのですが、その点を差し引いても魅力的な内容だったと思います。ネットでの活動で話題となってはじめて彼女のことを知ったような世代の方も是非、要チェックのベスト盤でした。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

THE DEBUT/SKY-HI

ラッパーとしても活躍するSKY-HIの6枚目となるオリジナルアルバム。HIP HOPとしてのアルバムというよりも、ラップを取り入れつつ、全体的にはポップ志向の強いアルバムで、変にラッパーとしての気張りみたいなものがなく、自由に音楽を楽しんでいるような印象も受けるアルバム。ある意味、そのままの彼をあらわした最初のアルバムだからこそ、デビュー作ではないのに「THE DEBUT」というタイトルをつけたのでしょうか?

評価:★★★★

SKY-HI 過去の作品
FREE TOKYO
JAPRISON
Say Hello to My Minions 2(SKY-HI×SALU)
SKY-HI's THE BEST
八面六臂

Adjusted/LOW IQ 01

もともとパンクバンドSUPER STUPIDのベーシストとして活躍し、1999年からはソロ活動を続けるLOW IQ 01の新作。疾走感あるパンクロックを聴かせてくれ、曲によってはスカ風やハードコア風の曲もありつつ、全体的には比較的シンプルでメロディアスな曲調で楽しませてくれます。メロディーラインは至ってポップでメロディアス。難しいこと抜きにして楽しませてくれる作品です。

評価:★★★★

LOW IQ 01 過去の作品
MASTER LOW FOR...
Stories Noticed


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2023年2月12日 (日)

よりポップス寄りに

Title:アンサンブル・プレイ
Musician:Creepy Nuts

最近、すっかり日本の音楽シーンに定着したHIP HOP。お茶の間レベルで慣れ親しまれてはじめているといっても過言ではありません。その過程において、昔ならば「セルアウト」として忌み嫌われていたポップ色の強いHIP HOPグループもすんなりと受け入れられている感じがします。そんなポップ色の強い作品をリリースしながらも、HIP HOPシーンの中からも一定以上の評価を受けているユニットの代表格といえば彼ら、Creepy Nutsでしょう。売上という側面でも本作はビルボードチャートで3を獲得し、大ヒットを記録するなど、人気の面でも確実にその地位を築いてきています。

おそらく、KICK THE CAN CREWやRIP SLYMEがブレイクしてきたころなら、間違いなく彼らも「セルアウトしたユニット」として「ディス」の対象となっていただろうなぁ、ということを感じます。そんなことを思ったのは今回のアルバムがまた、よりポップ寄りの作品だったから。どの曲もフックの効いたメロディーの歌が配されている曲がメイン、聴いていてあまりHIP HOPのアルバムを聴いたといった印象は受けませんでした。

特に「Outro」の前、一応、アルバム本編のラストという扱いとなっている「ばかまじめ」はゲストとしてYOASOBIの2人が参加。幾田りらもボーカルを取るナンバーとなっており、イメージ的には完全に「J-POP」。爽快なナンバーでインパクトも満載なのですが、これが最後の方に配されているだけに、聴き終わった後、HIP HOPという印象は受けません。

さらに「フロント9番」も、女性視線から綴った哀愁感たっぷりの曲で、ウェット感のある歌詞やメロが流れており、はっきり言えば完全に歌謡曲。それが悪いという訳ではなく、むしろ曲としてはよく出来ているのですが、HIP HOPという印象が希薄となる大きな要因となっています。

リズミカルでダイナミックなトラックの「2way nice guy」やダークな打ち込みのビートが印象的な「dawn」、AOR風の「ロスタイム」など、今回のアルバムも器用にバラエティーのある楽曲を聴かせてくれます。ただ、HIP HOP風と言えるのは「Madman」くらいで、やはり全体的にポップ寄りという印象を強く受けます。

ポップのアルバムとして非常によくできた作品なのは間違いありませんし、素直に最後まで楽しめるアルバムだったと思います。ただ一方で、新鮮味があるかと言われれば若干微妙な感はありますし、もうちょっと「HIP HOP」を聴きたかったかも、という印象も同時に受けました。そういう意味では評価が難しいアルバムのような印象を受けるのですが・・・ただ、そんなこと関係なく、ただ楽しめればOK、というのがあるべきスタンスなのかもしれませんね。

評価:★★★★

Creepy Nuts 過去の作品
クリープショー
かつて天才だった俺たちへ
Case


ほかに聴いたアルバム

コリンズ/10-FEET

同作にも収録されている「第ゼロ感」が映画「THE FIRST SLAM DUNK」のエンディングテーマに起用されて大ヒットを記録している10-FEET。本作ではDisc2として「THE FIRST SLAM DUNK」の劇中歌を収録しているなど、大ヒット中の映画に沿ったアルバムとなっています。とはいうものの、基本的な路線は以前と変わらず。力強くヘヴィーなバンドサウンドにメランコリックさを感じさせるメロディーラインが特徴的。「123456789101112」のように歌詞が数を数えるだけ、というユニークな曲やアコギメインで爽快に聴かせる「おしえて」、沖縄民謡的な要素を入れた「深海魚」など楽曲にバリエーションも加えて、スラムダンクで入ってきた新たなリスナーにもアピールできるような聴き答えのある作品に仕上げていました。

評価:★★★★

10-FEET 過去の作品
VANDALIZE
Life is sweet
thread
Re:6-feat
6-feat 2

10-FEET入り口の10曲
Fin
10-feat

不出来/tricot

Hudeki 

メジャー4枚目となるtricotのニューアルバム。ヘヴィーなバンドサウンドをサイケ気味に聴かせるそのスタイルは非常にカッコよく、惹きつけられるものがあるのですが、メロディーラインが弱いという弱点はそのまま…。今回もアルバム2枚組で、そのうち1枚はインストという点にサウンドへのこだわりもよくわかりますし、そんなこだわりもわかる実力もあると思うのですが。アルバムをリリースする毎にランキング的には落ちている点が気に係るのですが、その理由もなんとなくわかってしまったりして。

評価:★★★★

tricot 過去の作品
A.N.D.
3
真っ黒
10
上出来

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2023年2月11日 (土)

タイの伝統音楽と西洋音楽の融合

Title:Thong-Lor Cowboy
Musician:Rasmee

Rasmee

今回も2022年に各種メディアでベストアルバムとして紹介されたアルバムのうち、チェックが漏れていたアルバムを後追いで聴いた1枚。今回はまた、ミュージックマガジン誌ワールド・ミュージック部門で2位を獲得したアルバム。その時の紹介文によると、「タイのモーラム系女性シンガーが、米ニューオリンズのプロデューサーを迎えて新世代タイ音楽を提示した4枚目」だそうです。紹介文だけ読んでも、いまひとつピンと来ませんが・・・(^^;;

まず「モーラム」というのはWikipediaによると「ラオスやイーサーン(タイ東北部)などにおける ラーオ族の伝統音楽」だそうで、「独特のリズムとケーン(笛の一種)による主旋律、裏返って途切れそうなボーカルを特徴」とするそうです。

ただ、今回聴いたこの作品では、正直なところ「裏返って途切れそうなボーカル」といった感じはありません。伸びやかでこぶしの聴いたボーカルが特徴的。ハイトーン気味ではあるものの、「裏返って途切れそう」といった印象はなく、むしろ力強さを感じさせるボーカルが魅力的に感じます。また、サウンドの方は正直なところ、ケーンの音色なのかどうかいまひとつ判別しがたいのですが、比較的シンセによる打ち込みのリズムが多く、現代的な要素を強く感じさせます。ただ、打ち込みを用いた独特のリズムも大きな特徴となっており、微妙なチープさも相まって、独自のサウンドを作り上げています。

また、全体的に感じさせるエキゾチックな雰囲気も大きな魅力的で、1曲目の「Indigo」などはまさに伸びやかなボーカルとマッチして感じさせるエキゾチックな要素が大きな魅力に。続く「How Don Ta」もダイナミックなシンセを導入しつつも、エキゾチックな雰囲気を醸し出しています。後半も「Lam Duan」では、ストリングス系の音色に独特のリズム、さらにこぶしを聴いたボーカルで醸し出すエキゾチックな楽曲が大きな魅力。モーラムという音楽のジャンルを他に聴いたことがないので詳しくは論評できませんが、まさにトライバルな空気感満載のサウンドに心地よさを感じます。

一方では、トライバルな要素だけではなく、意外とあか抜けた感も覚えるのが大きな魅力で、例えばタイトルチューン「Thong-Lor Cowboy」など、シンセのサウンドはムーディーでソウルからの影響も感じさせますし、終盤の「Lullaby」もドリーミーなシンセにどこか垢ぬけた雰囲気を感じます。ここらへんの都会的な要素はニューオリンズのプロデューサー、サーシャ・マサコフスキーの影響かもしれません。ジャズ系のミュージシャンにようで、この2曲を含む、全体的にどこかソウルやジャズの要素を感じさせるサウンドも大きな特徴となっていました。

そんな訳で、モーラムというタイの伝統音楽と、ソウルやジャズといった西洋系のポップスを上手く融合させた1枚。哀愁たっぷりのメロは日本人の琴線に触れそうにも感じさせますし、いい意味で幅広いリスナー層にアピールできそうな作品だと思います。年間ベストで上位に食い込むのも納得の1枚でした。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

In These Times/Makaya McCraven

こちらも年間ベストアルバムを後追いで聴いた作品。「ミュージックマガジン誌」ジャズ部門年間1位のアルバム。シカゴを拠点に活動するドラマー兼プロデューサーによる最新作で、「ビート・サイエンティスト」という異名を持つミュージシャンだそうです。その異名にふさわしく、サックスやホーン、ハープなど多彩な楽器の音色を折り重ねて美しくメロディアスに聴かせる楽曲が魅力的。どちらかというと映画音楽っぽい印象も受けたのですが、バラエティー富んだ展開の楽しめる1枚でした。

評価:★★★★

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2023年2月10日 (金)

シンプルに楽しめるポップアルバム

Title:Harry's House
Musician:Harry Styles

今回もまた、2022年に各種メディアでベストアルバムに選ばれたものの聴き逃していた作品を後追いで聴いた1枚。今回は、2022年のベストアルバムを集計してランキング化したAOTY2022で18位にランクインしたHarry Stylesの「Harry's House」。Harry Stylesはご存じの通り、イギリスのアイドルグループ、ワン・ダイレクションの元メンバー。アイドルのポップスアルバムかぁ・・・と正直なところ、偏見交じりに聴き始めたのですが、ただ、これが素直に、非常に楽しいポップスアルバムに仕上がっていました。

まず1曲目、楽曲タイトルからして日本になじみがあるような「Music For a Sushi Restaurant」からして軽快なリズムと爽快なシンセの入った明るいポップチューンからスタート。ちょっと80年代っぽい雰囲気がまた楽しい、純粋にワクワクするようなポップチューンからスタートしています。日本人なら、このタイトルでこういう曲は作らなかっただろうなぁ・・・。

「As It Was」もニューウェーヴ風のシンセでリズミカルながらもメランコリックなメロディーラインが印象的な楽曲。「Little Freak」はちょっとカントリーっぽい雰囲気も感じる郷愁感あふれるメロディーがこれまた耳に残りますし、アコギを爪弾きながら聴かせる「Matilda」も切ないメロディーラインが心に響いてくるナンバー。楽曲の後半に流れるメランコリックなピアノがまた印象的です。

中盤、そんなしんみりとしたナンバーを聴かせつつ、後半にかけては再びテンポのよいポップチューンが続きます。これまたニューウェーヴ風のリズミカルな「Cinema」から、ホーンセッションが軽快な「Daydreaming」はやはりどこか80年代っぽいなつかしさが魅力的。さらにちょっとドリーミーながらも軽快なポップチューンの「Satellite」へと続きます。

最後はアコギの音色をバックに美しいハーモニーを聴かせる「Boyfriends」から、これまたメランコリックに聴かせる「Love Of My Life」で締めくくり。全体的にはニューウェーヴ風のシンセを取り入れつつ、メランコリックな歌を挟みつつも、純粋にポップな歌を楽しめるナンバーが並ぶアルバムに仕上がっていました。

正直目新しさは特にないのですが、それ以前に聴いていて素直に楽しめるポップチューンが並ぶ作品に。アイドルポップスみたいなわかりやすい派手さもなく、誠実にポップに向き合った作品と言ってもいいアルバムだったと思います。ちなみに「Harry's House」というタイトルは細野晴臣の名盤「Hosono House」から取ったそうで、日本人にとってもうれしいところですし、細野晴臣って、そんなに海外でも評価されているんだ・・・とあらためて実感しました。間違いなく比較的万人にお勧めできるポップアルバムでした。

評価:★★★★★

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2023年2月 9日 (木)

今週も男性アイドルグループが上位に

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週も男性アイドルグループが上位にランクインです。

まず1位を獲得したのがスターダストプロモーション所属の4人組男性アイドルグループDISH//「TRIANGLE」。CD販売数1位、ダウンロード数15位。オリコン週間アルバムランキングでも2万3千枚を売り上げて、見事1位獲得となりました。直近作はコンピレーションアルバム「青」で、同作の初動5千枚(12位)よりアップ。オリジナルアルバムとしての前作「X」の初動3万6千枚(4位)からはダウンしています。

2位は女性シンガーソングライターUru「コントラスト」が初登場。CD販売数3位、ダウンロード数2位。自身3枚目となるオリジナルアルバム。オリコンでは初動売上1万5千枚で4位に留まっています。前作「オリオンブルー」の初動1万7千枚から少しダウン。

3位も男性アイドルグループ。こちらはK-POP勢でSEVENTEEN「DREAM」が先週の2位からワンランクダウンの3位をキープ。こちらは通算9週目のベスト10ヒット&通算6週目のベスト3ヒットとなっています。

続いて4位以下の初登場盤です。まず7位にYUKI「パレードが続くなら」がランクイン。CD販売数5位、ダウンロード数6位。ソロデビュー20周年の締めくくりとなる11枚目のアルバム。ソロデビュー20年ということはジュディマリが解散してから、もう20年も経つのかぁ・・・。オリコンでは初動売上1万1千枚で7位初登場。直近作はEP盤の「Bump&Grind」で、同作の初動4千枚(14位)からはアップ。オリジナルアルバムとしての前作「Terminal」の初動1万6千枚(2位)からはダウンしています。

8位には「ポケモンTVアニメ主題歌 BEST OF BEST OF BEST 1997-2023」がランクイン。CD販売数8位、ダウンロード数9位。1997年のアニメスタート時から現在までのすべてのオープニングテーマとエンディングテーマを網羅した、全8枚組という豪華なベスト盤。オリコンでも初動売上1万枚で8位ランクイン。8枚組で定価4,980円は比較的お得な感はありますが、それでもこれだけの売上を見せるあたり、根強いポケモン人気を感じます。

最後9位には「Paradox Live - Road to Legend - Consolation Match"SHOWDOWN"」がランクイン。CD販売数7位、ダウンロード数40位。アニメキャラによるHIP HOPのプロジェクト「Paradix Live」で使用された楽曲を集めたアルバム。オリコンでは初動売上8千枚で10位にランクインです。

今週の初登場組は以上。一方、ロングヒット組では先週、再ランクインしたAdo「狂言」は今週は一気に40位までダウンしています。

今週のHot Albumsは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2023年2月 8日 (水)

あのダンスグループが1位

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週1位は人気のダンスグループの久々となるCDシングルが1位獲得です。

今週の1位は三代目J Soul Brothers from EXILE TRIBE「STARS」が獲得。CD販売数1位、ダウンロード数6位、ストリーミング数37位、ラジオオンエア数3位、YouTube再生回数17位を獲得。オリコン週間シングルランキングでも初動売上10万3千枚を売り上げて1位初登場。前作「JSB IN BLACK」以来、1年4か月ぶりとちょっと久々となるシングル。前作「JSB IN BLACK」の初動6万8千枚(2位)よりアップしています。

2位はOfficial髭男dism「Subtitle」が先週と同順位をキープ。ストリーミング数は16週連続1位、ダウンロード数及びYouTube再生回数も先週と変わらず3位をキープしています。これで17週連続のベスト10ヒット&ベスト3ヒットとなりました。ちなみに「ホワイトノイズ」も先週と変わらず7位をキープ。今週も2曲同時ランクインを記録しています。

3位は先週1位を獲得した韓国の女性アイドルグループLE SSERAFIM「FEARLESS」が先週から2ダウンランクながらもベスト3をキープしています。

続いて4位以下ですが、今週は初登場曲は1位の1曲のみ。ロングヒット曲ですが、まずはヒゲダンとデッドヒートを繰り広げている米津玄師「KICK BACK」は今週4位にダウン。ベスト3ヒットは連続16週でストップです。また、ダウンロード数は6位から10位、YouTube再生回数も6位から7位にダウンという結果に。ただし、ストリーミング数は16週連続の2位をキープ。ベスト10ヒットは連続17週に伸ばしています。

10-FEET「第ゼロ感」は今週も6位をキープ。ダウンロード数は1位から2位にダウン、ラジオオンエア数も7位から19位にダウンしていますが、ストリーミング数は7位から6位に、YouTube再生回数も15位から12位にアップ。これで9週連続のベスト10ヒットとなりました。

Ado「新時代(ウタ from ONE PIECE FILM RED)」は今週9位から8位にワンランクアップ。ただ、ダウンロード数は15位から17位、ストリーミング数は9位から10位、YouTube再生回数も18位から19位にダウン。全体的には下落傾向となっています。これでベスト10ヒットは34週連続に。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

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2023年2月 7日 (火)

アフロビートをベースに様々な音楽の要素も

Title:Yorba Odyssey
Musician:Adedeji

今回紹介するのは、毎年恒例、前年度の年間ベストアルバムのうち、聴き逃した曲を後追いでチェックした1枚。本作はミュージック・マガジン誌の2022年年間ベストワールドミュージック部門で1位を獲得した作品です。ナイジェリアのギタリストであり、シンガーソングライターでもあるAdedejiの3枚目となるアルバム。彼のアルバムを聴いたのは前作「Afreekanism」に続き2作目となります。

そんな本作はまず1曲目「Oruku」で特にアフリカの音楽が好きならば間違いなく壺をつかれそう。ホーンセッションを入れつつパーカッションが軽快なリズムを刻むファンキーな作品は、いかにもアフリカ的なトライバルな楽曲。9分弱という長尺で繰り広げられるトランシーなリズムにまずは魅了されること間違いありません。

ただ彼の作品でユニークなのは、そんなトライバルな要素を多く入れつつ、一方では様々な音楽的要素を加味した、どこかあか抜けた都会的な要素も感じさせる点でした。そんな雰囲気は2曲目「Olomo Ki Lo」で早くも感じさせます。こちらもトライバルなリズムを軽快に聴かせつつ、一方、バックに流れるシンセのサウンドにフュージョン的な要素を感じさせます。3曲目「Ojeje」もファンクの要素を取り入れているなど、様々な音楽からの影響を垣間見せます。

中盤も「Lagos Blues」ではゴスペル的な女性コーラスを取り入れつつ、伸びやかなボーカルで歌い上げるソウル風のナンバー。「Ololufe Mi」も軽快であか抜けた感じのポップチューンに仕上がっていますし、ラストを締めくくる「Tales of Agege」も非常に爽快な作風に仕上げています。

もちろん一方ではトライバルなアフロビートの影響も強く、後半でも「Gbanja」のような10分を超えるような曲もあり、こちらもシンセのサウンドを取り入れ、どこか都会的に感じさせつつもトランシーなリズムが心地よい楽曲に仕上がっています。

前作「Afreekanism」ではどちらかというとジャズの要素が強かったのですが、今回はジャズよりもアフロビートの要素がより強く、最後まで軽快なリズムに惹かれるアルバムに仕上がっていました。アフリカ的な要素と西洋音楽の要素がほどよいバランスで楽しませてくれる作品に。確かにワールドミュージック部門年間1位というのも納得の傑作アルバムでした。

評価:★★★★★

Adedeji 過去の作品
Afreekanism


ほかに聴いたアルバム

age/sex/location /Ari Lennox

こちらも各種メディアのベストアルバムを後追いで聴いた1枚。こちらはミュージックマガジン誌R&B/ソウル/ブルース部門で1位を獲得した、アメリカの女性R&Bシンガーのアルバム。これが2枚目のアルバムとなります。比較的シンプルなサウンドでメロウに聴かせるボーカルが心地よいネオソウル風の作品。感情たっぷりに聴かせる歌声が心地よい傑作アルバム。まだまだ売上的にはブレイク前といった感じですが、今後、一気に注目をあつめそうな予感のする作品でした。

評価:★★★★★

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2023年2月 6日 (月)

2022年年間ベストアルバム(邦楽編)その2

昨日から引き続き、私的ベストアルバム邦楽編。今日は5位から1位の紹介です。

5位 Betsu No Jikan/岡田拓郎

聴いた当時の感想は、こちら

2010年代前半に大きな評判を呼んだバンド、森は生きているのメンバーによる2枚目のソロアルバム。全編「歌モノ」のポップだった前作とは対照的にインストのアルバムに。全編、ジャズ色の強いアルバムになっていながらも、同時に様々な音楽がコラージュ的にちりばめられている実験性の高い作品になっています。ただ、同時にポピュラリティーのあるメロディーラインが確実に流れており、実験性とポピュラリティーを両立させた傑作に仕上がっていました。

4位 物語のように/坂本慎太郎

聴いた当時の感想は、こちら

アルバムをリリースする毎にシーンに衝撃を与えるような傑作をリリースし続けている坂本慎太郎の約6年ぶりとなるニューアルバム。最小限にまとめられたサウンドに歌謡曲やハワイアン、トロピカルなムードも加味したメロディーラインというスタイルはいままでの彼と同様。さらに今回のアルバムは歌詞の世界もメロディーラインもわかりやすさが増した感じがします。いままで以上にポピュラリティーが増した作品は今回ももちろん傑作に。さらに広い層にアピールできそうな作品になっていました。

3位 ネオン/水曜日のカンパネラ

聴いた当時の感想は、こちら

まさかのコムアイ脱退&詩羽の2代目ボーカリスト就任となった水曜日のカンパネラ。バンドの顔とも言えるボーカリスト変更で心配されたのですが、これが今や詩羽なしじゃ水カンが成り立たない、と感じさせるほどのはまりようになっています。コムアイ時代の水カンの魅力も残しつつ、詩羽のボーカルとして全く新しいスタイルも同時に提案している作品に仕上がっており、水カンがさらなる進化を遂げたように感じさせます。まずはEP盤ですが、来るべきフルアルバムも楽しみになってくる傑作でした。

2位 Long Voyage/七尾旅人

聴いた当時の感想は、こちら

東日本大震災の時の義援金プロジェクトやコロナ禍でのフードレスキューの活動など、以前から社会派な活動も目立つ七尾旅人。今回の新作はいままで以上に社会と強くリンクした作品に仕上がっており、コロナ禍での人々の描写や在日差別、さらには外国人差別などにも踏み込む作品になっています。そんな歌詞の主張を前面に押し出すためか、メロディーやサウンドは比較的シンプルな内容に。それだけに七尾旅人の包容力ある歌声が心に響いてくる作品になっています。まさに今の時代だからこそ生み出された傑作アルバムでした。

1位 BADモード/宇多田ヒカル

聴いた当時の感想は、こちら

2022年の年間1位は文句なしにこの作品でしょう。ここ最近、シンガーソングライターとしてのある種のすごみを感じるようになってきた宇多田ヒカルのニューアルバム。歌謡曲的な要素も感じる日本人の琴線に触れそうなメロディーを書きつつ、サウンド的には海外のポップスシーンとダイレクトにリンクしている作品を作り上げています。なんとPitchforkの年間ベストで31位にランクインしてくるなど世界水準で高い評価を得ている本作。名実共に2022年の日本のポップシーンを代表するアルバムと言えるでしょう。

そんな訳で、洋楽もそうでしたが邦楽に関しても傑作が揃った充実した1年となった2022年。特に1位宇多田ヒカル、2位七尾旅人の2枚は文句なしに頭1つ出ていた感がありますし、3位の水曜日のカンパネラも、次のフルアルバムでは再び年間1位獲得か??というほどの充実ぶりを感じさせます。

あらためて1位から10位を並べると・・・

1位 BADモード/宇多田ヒカル
2位 Long Voyage/七尾旅人
3位 ネオン/水曜日のカンパネラ
4位 物語のように/坂本慎太郎
5位 Betsu No Jikan/岡田拓郎
6位 正気じゃいられない/マハラージャン
7位 Muddy comedy/山中さわお
8位 七号線ロストボーイズ/amazarashi
9位 Awakening:Sleeping/MASS OF THE FERMENTING DREGS
10位 DOKI DOKI/サニーデイサービス

他のベスト盤候補としては・・・

NIA/中村佳穂
OVERHEAT49/百々和宏
アダプト/サカナクション
レキシチ/レキシ
笑い死に/般若
春火燎原/春ねむり
クモヨ島/幾何学模様
ALONE/OMSB
SOFTLY/山下達郎
HOWL/ROTH BART BARON
SONGS/スカート
Les Mise blue/syrup16g

あらためて充実ぶりを感じさせる2022年の音楽シーン。この勢いが今年も続けばいいのですが。今年もたくさんの素晴らしいアルバムに出会えますように!

ちなみに過去のベストアルバムは

2007年 年間1 
2008年 年間1  上半期
2009年 年間1  上半期
2010年 年間1  上半期
2011年 年間1  上半期
2012年 年間1  上半期
2013年 年間1  上半期
2014年 年間1  上半期
2015年 年間1  上半期
2016年 年間1  上半期
2017年 年間1  上半期
2018年 年間1  上半期
2019年 年間1  上半期
2020年 年間1  
上半期
2021年 年間1  上半期
2022年 上半期

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2023年2月 5日 (日)

2022年年間ベストアルバム(邦楽編)その1

おととい、昨日に引き続き、年間私的ベストアルバム、今日明日は邦楽編です。

10位 DOKI DOKI/サニーデイ・サービス

聴いた当時の感想は、こちら

ここ数年、勢いのある傑作アルバムのリリースが続くサニーデイですが、またしても傑作アルバムのリリースです。今回のアルバムは比較的シンプルで、かつロックテイストの強いアルバム。曲によってはオルタナ系インディーロックバンドの色合いすら感じさせる曲も見受けられます。また、メンバー3人が並んだにこやかな雰囲気のジャケット写真も印象的。バンドとしての関係性の良さも感じさせます。サニーデイの勢いはまだまだ続きそうです。

9位 Awakening:Sleeping/MASS OF THE FERMENTING DREGS

聴いた当時の感想は、こちら

約4年ぶりというから、若干久しぶりとなるマスドレの新作。もともとダイナミックなバンドサウンドが持ち味だった3ピースバンドの彼女たちですが、今回のアルバムではまさにそんな迫力あるバンドサウンドが躍動感を込めて展開される内容に。さらに爽やかさとメランコリックさを感じさせるメロディーラインも大きな魅力に。加えて、録音状態も非常に良く、抜けのあるサウンドに奥行も感じられて、聴いていて気持ちよさを感じます。3ピースバンドの魅力をこれでもかというほど感じられる作品でした。

8位 七号線ロストボーイズ/amazarashi

聴いた当時の感想は、こちら

青森出身の彼らは、以前から比較的、生まれ故郷である地方に立脚したような歌詞の作品をリリースしてきましたが、今回のアルバムも「七号線」というタイトル自体が青森を走る国道七号線から取られたように、彼らのふるさとをテーマとした作品になっていました。そんな地方に住む人たちの現状を描いた今回の作品は、原点回帰ともとれるような作品に。叙情たっぷりのメロはもちろん、その歌詞の世界にグッと胸をつかまれる傑作に仕上がっています。

7位 Muddy comedy/山中さわお

ライブ活動は継続的に行っているものの、作品の発表という観点では「活動休止」状態のthe pillows。一方で山中さわおソロとしては勢いのある作品を作り続けており、本作もバンドサウンドを前面に押し出した楽曲はthe pillowsと重なる部分も。また、なによりも歌詞の世界がthe pillows以上にthe pillowsらしい、まさに山中さわお色を前面に出した、ソロらしい作品に仕上がっていました。確かに、これだけ充実した作品をソロでつくっちゃうと、ソロでの作品づくりを優先しちゃうよなぁ・・・。そんなことも感じてしまう傑作アルバムでした。

6位 正気じゃいられない/マハラージャン

聴いた当時の感想は、こちら

ターバンを巻いたそのルックスといい、「マハラージャン」という名前といい、キャラ立ちしまくりのミュージシャン。そんな彼の新作は、そんなマハラージャンというキャラクターに全く負けないだけの「キャラ立ち」しまくりの曲のつまったアルバムに。軽快なポップチューンからハードロック、AOR、ファンク、ディスコチューンなど多彩な音楽性とユニークさを感じさせる歌詞の世界が楽しいアルバムに仕上がっていました。もちろんメロディーラインのインパクトも十分。音楽的にも文句なしに傑作と言える作品でした。

明日は5位から1位!

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2023年2月 4日 (土)

2022年年間ベストアルバム(洋楽編)その2

昨日に引き続き、私的年間ベストアルバム洋楽編。本日は5位から1位までの紹介です。

5位 Carry Me Home/Mavis Staples&Levon Helm

聴いた当時の感想は、こちら

齢80歳を超えた今でも精力的に活動を続けるMavis Staples。本作は、The Bandのドラマー、リヴォン・ヘルムと録音した作品で、もともとは2011年に完成していたのですがお蔵入り。ようやく昨年リリースできた作品でした。結果としてヘルムの遺作となってしまった本作ですが、ヘルムのドラムプレイはさることながら、とにかくメイヴィスの力強く感情のこもったボーカルが魅力的な傑作に。レジェンド同士の共演に、最初から最後まで耳の離せない傑作アルバムに仕上がっていました。

4位 Blue Rev/Alvvays

聴いた当時の感想は、こちら

個人的に大好きなバンドにTEENAGE FANCLUBというイギリスのバンドがいるのですが、このバンドのフォロワーも個人的な壺にはまりまくりのバンドが多く、このカナダを拠点に活動するインディーポップバンドAlvvaysもそんなバンドの一組。このアルバムも、特に前半はTFCの影響を顕著に感じるドリーミーでポップな作品に。一方後半は、シンセを取り入れたり、さらにパンキッシュな作風になったりとバラエティーも豊富に。個人的に壺にはまりまくった1枚というだけではなく、ギターロックの作品としても文句なしの傑作アルバムに仕上がっていました。

3位 Boat Songs/MJ Lenderman

Boatsong

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アメリカのシューゲイザー系インディーロックバンドWEDNESDAYでギタリストとして活躍しているJake Lendermanによるソロプロジェクト。本作もまさにシューゲイザー直系のアルバムですが、同時にカントリーロックやブルースロックなど、70年代のロックからの影響を強く感じさせる作品。80年代インディーロックと70年代ロックを等距離で取り込んだサウンドが、実に個性的な作品で、2020年代の今となって、逆に新鮮味を感じさせる傑作アルバムとなっていました。

2位 Being Funny in a Foreign Language/The 1975 (邦題 外国語での言葉遊び)

聴いた当時の感想は、こちら

アルバムをリリースする毎に傑作をリリースし続けるイギリスのロックバンドThe 1975。5作連続全英チャート1位を獲得するなど、名実ともにイギリスを代表するバンドとなっている彼らですが、今回の作品も文句なしの傑作アルバムに。バラエティーに富んでいた前作と比べると、本作は、彼らの主軸とも言える80年代ポップスからの影響を受けた作品を軸としつつ、メロディアスなポップチューンを聴かせてくれる統一感のある内容に仕上がっていました。

1位 RENAISSANCE/Beyonce

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今年の洋楽アルバム1位は文句のつけようのなく本作でしょう!ジャケット写真からして、まさに「女王の貫録」を感じさせる内容になっていますが、作品の内容自体もダンスミュージックを軸としつつ、バラエティーに富ませた内容に。今のミュージックシーンにほどよくリンクさせつつ、一方では彼女のボーカリストとしての魅力をフルに発揮するソウルフルな楽曲も聴かせてくれるという、こちらもまさに「女王の貫録」を感じさせる楽曲に。彼女の圧倒的な実力を感じさせてくれる文句なしの傑作でした。

そんな訳で、今年の1位はBeyonce!各種メディアでも同作を1位に選んでいるメディアが圧倒的でしたが、文句のつけようのない2022年を代表するアルバムでした。この1位と2位のThe 1975の2枚は、今年のアルバムの中で頭ひとつ出ていたように感じます。

あらためてベスト10を振り返ると・・・

1位 RENAISSANCE/Beyonce
2位 Being Funny in a Foreign Language(邦題 外国語での言葉遊び)/The 1975
3位 Boat Songs/MJ Lenderman
4位 Blue Rev/Alvvays
5位 Carry Me Home/Mavis Staples&Levon Helm
6位 Glitch Princess/yeule
7位 Topical Dancer/Charlotte Adigery&Bolis Pupul
8位 Florist/Florist
9位 Skinty Fia/Fountaines D.C.
10位 Quality Over Opinion/Louis Cole

ほかの年間ベスト候補作として・・・

CAPRISONGS/FKA Twigs
LAUREL HILL/Mitski
Dragon New Warm Mountain I Believe in You/Big Thief
MOTOMAMI/ROSALIA 
sore thumb/Oso Oso 
Diaspora Problems/Soul Glo
Fear Of The Dawn/Jack White
WHO CARES?/Rex Orange County
We/Arcade Fire
Mr. Morale & the Big Steppers/Kendrick Lamar
A Light For Attracting Attention/The Smile
Ugly Season/Perfume Genius
Hold The Girl/Rina Sawayama
Fossora/Bjork
Endure/Special Interest
And in the Darkness, Hearts Aglow/Weyes Blood

ずらりと並びましたが、どのアルバムもベスト10に勝るとも劣らない傑作揃いで、全体的に傑作の多い1年だったように感じます。ここ3年間、豊作揃いの年が続いており、シーン全体の充実ぶりが感じられます。この傾向、今年も続いてほしいものです!

2007年 年間
2008年 年間 上半期
2009年 年間 上半期
2010年 年間 上半期
2011年 年間 上半期
2012年 年間 上半期
2013年 年間 上半期
2014年 年間 上半期
2015年 年間 上半期
2016年 年間 上半期
2017年 年間 上半期
2018年 年間1  上半期
2019年 年間1  上半期
2020年 年間1  上半期
2021年 年間1  上半期
2022年 上半期

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2023年2月 3日 (金)

2022年年間ベストアルバム(洋楽編)その1

毎年恒例の年間私的ベストアルバムの紹介です。洋楽邦楽それぞれ、2日間ずつにわたって紹介します。

10位 Quality Over Opinion/Louis Cole

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ロサンゼルスを拠点に活動するドラマーであり、シンガーソングライター、プロデューサーとしても活動しているルイス・コールの新作。当サイトでもアルバム毎に紹介しているThundercatの盟友でもあり、昨年のThundercatでのライブにもサポートメンバーとして参加していますが、自身のアルバムも傑作に仕上がっていました。ジャズの方向性が強いThundercatと比べると、ポップス寄りの作風ながらも、AOR調の曲やエレクトロポップ、さらにはプログレ的なナンバーまで幅広い作風が大きな特徴。珠玉のポップスアルバムに仕上がっていました。

9位 Skinty Fia/Fontaines D.C.

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彼らの母国、アイルランドのアイデンティティを意識的に前面に押し出したFontaines D.C.の新作。本作で全英チャート1位を獲得するなど、人気上昇中で、本作も非常に高い評価を受けています。ヘヴィーでノイジーなバンドサウンドを前に押しつつ、ローファイ気味なサウンドを聴かせてくれており、本作ではより、メランコリックなメロディーラインをより前面に押し出したことにより、リスナーとして素直に耳を惹く作品に仕上がっています。バンドとしてさらにワンランク高い水準のサウンドを聴かせてくれる作品です。

8位 Florist/Florist

聴いた当時の感想は、こちら

ニューヨークはブルックリンを拠点に活動するインディーロックバンドの4作目となるアルバム。「お花屋さん」というバンド名の通り、暖かさを感じさせるフォーキーでアコースティックなサウンドのバンド・・・かと思いきや、微妙にサイケデリックな要素が加わっている点が非常にユニークで、音楽的な奥行きを感じさせます。フォーキーで聴きやすいポップなメロを感じさせつつも、ドリームポップやサイケ的な音楽性も加わった非常にユニークな楽曲が魅力的。バンドとしての独自性を感じさせる傑作でした。

7位 Topical Dancer/Charlotte Adigery&Bolis Pupul

聴いた当時の感想は、こちら

マカオ出身のプロデューサー、Bolis Pupulとベルギーのシンガー、Charlotte Adigeryとのユニットによるデビュー作。シンプルでエッジの効いたエレクトロビートと、メロウさとポップさを兼ね備えた女性ボーカルによる「歌」という組み合わせが魅力的。マカオとベルギーのミュージシャンの組み合わせに、無国籍的な要素を感じつつ、一方でいい意味で耳ざわりのよいダンスポップがメインとなり、ポピュラリティーも強く感じる作品になっていました。

6位 Glitch Princess/yeule

聴いた当時の感想は、こちら

シンガポール出身の女性シンガーソングライター、ナット・チミエルのソロプロジェクトyeuleによる2枚目となるアルバム。ひょっとして初音ミクを意識したのか?と思われるようなジャケット写真ですが、yeuleという名前もFFXIIIのキャラからの引用らしく、日本人にもなじみがありおう。ドリーミーでダイナミックなサウンドを用いつつ、メロディーラインは至ってポップでキュートですらある点が魅力的。シューゲイザーやドリームポップが好きなら文句なしにはまりそうな作風になっていました。

そんな訳で10位から6位までの紹介。明日は洋楽編5位から1位の紹介です!

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2023年2月 2日 (木)

韓国系男性アイドルグループが1位2位

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

Hot100では韓国の女性アイドルグループが目立ちましたが、こちらは韓国の男性アイドルグループのアルバムが1位2位に並びました。

まず1位は韓国の男性アイドルグループTOMORROW×TOGETHER「The Name Chapter:TEMPTATION」がランクイン。CD販売数1位、ダウンロード数7位。韓国盤のミニアルバムとなります。オリコン週間アルバムランキングでも初動売上18万4千枚で1位初登場。前作「Minisode 2: Thursday's Child」の初動15万枚からアップしています。

2位には同じく韓国の男性アイドルグループSEVENTEEN「DREAM」が17位から2位にアップ。3週ぶりのベスト10返り咲きとなりました。再びのベスト10ヒットになっている理由は不明なのですが、彼らと香取慎吾が組んだ楽曲「BETTING」が草彅剛主演のドラマ「罠の戦争」の主題歌になり、話題となっている影響でしょうか。オリコンでも4万2千枚を売り上げて3位にランクインしています。これで通算8週目のベスト10ヒットとなりました。

3位にはMISIAのベスト盤「MISIA THE GREAT HOPE BEST」がランクイン。デビュー25周年を記念した3枚組のベストアルバムとなり、同じくオールタイムベストとしては15周年記念でリリースされた2013年の「MISIA Super Best Records-15th Celebration-」以来のリリースとなります。CD販売数3位、ダウンロード数4位。オリコンでは初動売上4万4千枚で2位初登場。直近のオリジナルアルバム「HELLO LOVE」の初動1万6千枚(5位)からアップ。ベスト盤としての前作「MISIA Super Best Records-15th Celebration-」の初動6万4千枚(1位)からもダウン。ただ、CDをめぐる環境が大きく変化したここ10年で、かつ収録曲の多くが前作と被る中、初動売上が2万枚程度しか減らしていないあたり、なにげに根強い人気を感じさせます。

続いて4位以下の初登場盤です。まず4位に星街すいせい「Specter」がランクイン。CD販売数4位、ダウンロード数1位。バーチャルYouTuberのアイドルだそうです。オリコンでは初動売上3万2千枚で4位初登場。前作「Still Still Stellar」の初動1万6千枚(6位)よりアップしています。

6位には浜崎あゆみ「Remeber you」が初登場。実に約6年6か月ぶりのニューアルバムなのですが、いままでの彼女の人気を考えると、見るも無残な結果といった感じになっています。CD販売数6位、ダウンロード数8位。オリコンでは初動売上1万1千枚で6位初登場。オリジナルアルバムとしての前作「M(A)DE IN JAPAN」の初動3万枚(2位)から大きくダウン。直近作のバラードベスト「A BALLADS 2」の初動1万1千枚(3位)からは横ばい。6年のブランクもあると、音楽配信をめぐる状況も大きく変化していることから単純比較は出来ないのですが、ただ、前作までほぼ毎年アルバムをリリースしていた彼女が、これだけリリーススパンを開けたというのは、この低落ぶりを気が付かれないためではないか??とすら邪推してしまうほどです。

8位には男性アイドルグループ原因は自分にある。「無限の終わり」がランクイン。CD販売数7位。オリコンでは初動売上9千枚で7位初登場。前作「虚像と実像」の初動5千枚(7位)からアップしています。

一方、今週はベスト10圏外からの返り咲き組も。今週9位にAdo「狂言」が先週の29位から大きくアップし、ベスト10入り。昨年5月11日付チャート以来のベスト10返り咲きとなりました。特にCD販売数が45位から9位に大幅アップしているのですが、これは先日、アナログ盤がリリースされた影響で、オリコンでも5千枚を売り上げて10位にランクインしています。Adoのリスナー層でもアナログ盤を聴く人がこんなに多いんですね・・・。これで通算11週目のベスト10ヒットとなります。

今週のHot Albumsは以上!チャート評はまた来週の水曜日に。

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2023年2月 1日 (水)

紅白出演が話題に

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週1位は紅白出演で話題となったグループです。

今週、1位を獲得したのは韓国の女性アイドルグループLE SSERAFIMの日本でのデビューシングル「FEARLESS」。以前、配信のみで昨年の5月11日付及び18日付チャートで9位を記録していますが、このたび、CDがリリースされ、CD販売数がランキングに加算。ベスト10返り咲きを果たしました。オリコン週間シングルランキングでも初動売上22万2千枚で1位に初登場しています。

2位にはOfficial髭男dism「Subtitle」が今週、1位陥落。とはいえ、ストリーミング数は15週連続の1位。ダウンロード数も4位から3位にアップ、You Tube再生回数も3位をキープと勢いは衰えていません。これで16週連続のベスト10ヒット&ベスト3ヒットとなります。またヒゲダンは「ホワイトノイズ」も7位にランクインし、2曲同時ランクイン。ただこちらはストリーミング数14位、You Tube再生回数も27位に留まっており、「Subtitle」ほどの勢いは感じられません。

米津玄師「KICK BACK」も同じくワンランクダウンの3位。こちらもストリーミング数は15週連続の2位、ダウンロード数も7位から6位にアップ、You Tube再生回数も先週から変わらず6位という結果になっています。こちらも16週連続のベスト10&ベスト3ヒットとなりました。

続いて4位以下の初登場曲ですが、まず韓国の女性アイドルグループTWICE「MOONLIGHT SUNRISE」が先週の20位からランクアップし、5位にランクイン。ダウンロード数10位、ストリーミング数5位、ラジオオンエア数17位、You Tube再生回数2位。

今週はもう1組、韓国の女性アイドルグループNewJeansの配信シングル「Ditto」が先週の11位からワンランクアップして10位にランクイン。ストリーミング数4位、ダウンロード数51位、ラジオオンエア数22位、You Tube再生回数26位。

一方、ロングヒット曲ですが、まず10-FEET「第ゼロ感」が今週6位にランクイン。8週目のベスト10ヒットとなりました。大ヒット中の映画「THE FIRST SLAM DUNK」のエンディングテーマとして話題の本作。ベスト10初登場の9位から派手なランクアクションは見せていませんが、ベスト10にとどまり続けています。特にダウンロード数では1位を獲得。ストリーミング数7位、ラジオオンエア数7位、You Tube再生回数15位といずれのチャートでもランク上位に食い込んできています。

Ado「新時代(ウタ from ONE PIECE FILM RED)」は今週8位から9位にダウン。ダウンロード数は14位から15位、ストリーミング数は7位から9位、You Tube再生回数も13位から18位。カラオケ歌唱回数こそ5位をキープしていますが、全体的に下落傾向が続いており、ここまでか・・・といった感があります。今週で33週連続のベスト10ヒットに。

また先週までのロングヒット組みではTani Yuuki「W / X / Y」は11位に、SEKAI NO OWARI「Habit」は13位にダウン。どちらもベスト10ヒットは通算37週、通算23週でストップとなりました。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

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