« 非常に強い主張を感じる新作 | トップページ | 80年代のマイケルのすごさがわかる »

2023年1月 5日 (木)

重厚なロックオペラ

Title:ATUM-actⅠ
Musician:The Smashing Pumpkins

スマパンがまた壮大なプロジェクトをスタートさせました。もともと、彼らの代表作とも言える「メロンコリーそして終りのない悲しみ」も2枚組2時間に及ぶ大作だったり、その後リリースした「マシーナ」も2部作だったり、さらに2009年にはじめた「Teargarden by Kaleidyscope」では、全44曲を1曲毎にダウンロードリリースしていくというプロジェクトだったり(最後は尻すぼみになり、まとめてEPをリリースして終わらせてしまいましたが・・・)と、良くも悪くも重厚長大気味の彼らでしたが、今回は全3部作からなるロックオペラをリリース。本作は、その第1幕となります。

全3幕からなるこのプロジェクトは、今後、1月31日に第2幕が、4月23日に第3幕がリリースされ、それと同時に全3枚組のCDもリリースされるそうです。さらにこの収録曲を、毎週1曲ずつビリー・コーガンみずから「Thirty-Three with William Patrick Corgan」で解説を行っています。もちろん英語のため聴いていないのですが、1曲毎に解説が1時間超にも及ぶボリューム量なだけに、その世界観もかなり多岐にわたっているようで、彼らの過去の作品「メロンコリー」や「マシーナ」にもつながっているとか。ここらへんも良くも悪くも彼ららしい過剰ぶりを感じさせます。

さすがに現時点で情報がすべて英語であるため、この壮大なロックオペラの世界観を把握しているわけではありませんが、ただ、それでもやはりスマパンらしいメランコリックさを内包した美メロとも言えるメロディーラインが大きな魅力。このプロジェクトのオープニングとも言える「ATUM」に続く「Butterfly Suite」は、スペーシーなエレクトロサウンドやダイナミックなサウンドをバックに、ポップでメロディアスな歌を楽しませてくれますし、続く「The Good in Goodbye」もノイジーでダイナミックなギターリフをバックに展開されるメロディアスでポップな歌は、スマパンが好きなら間違いなく壺に入りそうです。

さらにその後もダイナミックでヘヴィーなバンドサウンドにメランコリックな美メロがスマパンらしい「Steps in Time」やメロディーと同期している哀愁たっぷりのギターリフがインパクトある「Beyond the Vale」など、メランコリックな歌がインパクトたっぷりで耳に残ります。終盤にはコミカルなサウンドで軽快なポップを聴かせる「Hooray!」なんていう曲もあったりして、最後までスマパンらしいポップなメロを楽しめるアルバムとなっていました。

ただ、一方サウンドについてはちょっと物足りないというか、悪い意味でベタさを感じる展開に。今回のロックオペラ、宇宙を舞台にしているようで、そのためスペーシーなエレクトロサウンドを積極的に取り込んでいるのですが、このサウンドがちょっとチープな印象を受けてしまいいます。ある意味、このベタさも聴きやすさを覚える要素のひとつとは言えるのですが、聴いていてあまりおもしろみは感じさせません。

全体的にダイナミックな味付けもちょっと大味さを感じてしまいますし、わかりやすいといえばわかりやすいのですが、全体的にロックオペラという重厚なコンセプトに反して、サウンドに感じてはちょっと重厚さが足りない感じも。スマパンとして目新しい要素も感じませんでしたし、物足りない印象は否めませんでした。

そんな訳でスマパンらしい魅力はしっかりと感じさせるものの、全体的な出来としてはちょっと物足りなさも感じる作品になっていました。もっとも、良くも悪くもベタな作風ではあるので、これはこれで楽しめる作品ではあると思うのですが・・・。今後、第2幕、第3幕と徐々に全体像があきらかにされる作品なだけに、今後の展開に期待しましょう。

評価:★★★★

The Smashing Pumpkins 過去の作品
Teargarden by Kaleidyscope
OCEANIA
(邦題 オセアニア~海洋の彼方)
Monuments to an Elegy
SHINY AND OH SO BRIGHT,VOL.1/LP:NO PAST.NO FUTURE.NO SUN.
CYR


ほかに聴いたアルバム

Only The Strong Survive/Bruce Springsteen

ブルース・スプリングスティーンの最新作は、彼のルーツ、ソウルミュージックのカバーアルバム。正直なところ、彼がこのようなソウルミュージックのカバーをリリースするというのはちょっと意外な感じもしますが、比較的、原曲にも忠実なカバーに仕上がっており、彼のソウルに対する敬意も感じる作品に仕上がっています。その一方、そのパワフルなボーカルはブルース・スプリングスティーンそのまま。ある意味、しっかりと彼らしいアルバムに仕上がっていました。

評価:★★★★

BRUCE SPRINGSTEEN 過去の作品
Working On A Dream
WRECKING BALL
High Hopes
1980/11/05 Tempe,AZ
Western Stars
Letter to You

HH5/CEO Trayle

Ceo

不気味なジャケット写真が妙に印象に残る本作は、ニューヨークはブロンクス出身のラッパー、CEO Trayleのニューアルバム。全編トラップの本作は、ジャケット写真の通りの不気味さと、同時にメランコリックさを感じる作風が印象的。そのジャケット写真を含めて妙に耳に残るインパクトさが魅力的な反面、アルバム通じて似たようなタイプの曲が多く、ちょっとワンパターンさも感じてしまいました。

評価:★★★★

|

« 非常に強い主張を感じる新作 | トップページ | 80年代のマイケルのすごさがわかる »

アルバムレビュー(洋楽)2023年」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 非常に強い主張を感じる新作 | トップページ | 80年代のマイケルのすごさがわかる »