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2023年1月 4日 (水)

非常に強い主張を感じる新作

Title:MUSIC,DANCE&LOVE
Musician:ORIGINAL LOVE

先日、毎年恒例の今年の漢字が発表されました。今年の漢字は「戦」。現在も進行中のロシアとウクライナの戦争が今年の漢字の大きな要因となっています。いまだに続くこの戦争。現在の社会情勢として、大国が他の国を簡単に侵略することは出来ないという事実が示された一方、あきらかにロシアに非がある侵略戦争でありながらも、世界的にロシア批判一本にまとまらないどころか、日本国内でも喧嘩両成敗的にウクライナを批判する向きが一部でみられることは、非常に残念に感じると共に、現在社会の難しさを感じさせます。

音楽界においても、そんな中、もうちょっと反戦的な状況が広がってもよいようにも感じられるのですが、戦争開始直後に、U2のボーノとエッジがウクライナの地下鉄駅でパフォーマンスを披露するなど、一部で動きが見られたのですが、残念ながらその後大きくは広がっていないような印象を受けます。日本でも海外でもお気楽なアイドルポップスが蔓延する中で、小難しい反戦歌は受け入れがたい状況になっているのでしょうか。

そんな中、明確に侵略戦争に対してノーをつきつけて大きな話題となったのがORIGINAL LOVEのこのニューアルバム。特に1曲目はそのままストレートに「侵略」

「何度でもはっきりと大声でアピールしよう
この侵略戦争をストップしろと
何度でも繰り返し諦めずアピールしよう
この侵略戦争は大罪であると」
(「侵略」より 作詞 田島貴男)

と、かなりストレートな言葉で侵略戦争を非難しています。またラストを飾る「ソウルがある」でも

「人生はゲームだと疑わないキング達よ
勝ちと負けだけがあると疑わない者達よ

お前達の事情で そのスイッチを ゲームをするように押すな
ミサイルを撃つな ミサイルが落ちたそこには

ソウルがある
ソウルが血を流している
愛が生きている
愛が叫び声を上げている」
(「ソウルがある」より 作詞 田島貴男)

と、これまたストレートに反戦を訴えています。正直、そのメッセージにはギミック的な要素をほとんど用いず、あまりにもストレート。ただ、それだけ田島貴男本人が、今回の戦争に対してその主張を訴えたかったのでしょう。普段、社会的なメッセージをさほど多く発するようなミュージシャンではないだけに、彼の主張はかなり強く響いてきます。他にもタイトルチューンである「Music,Dance&Love」でも「音楽を奪うことはできない/どんな圧力がかかっても」と強いメッセージ性を感じさせます。

正直言うと、今回のアルバム、ORIGINAL LOVEの作品として傑作かと言われると、若干微妙な面はあります。ファンキーな「フェイバリット」、ジャジーな「ソングライン」、ソウルナンバーの「忘れな草」や、タイトル通りのソウルバラード「ソウルがある」など、ブラックミュージックの要素を多分に入れた作風が特徴的で、クオリティー的には間違いなく一定水準以上のものは感じさせます。

ただ一方で、楽曲的に目新しさは感じさせず、メロディーラインのインパクトも今一つ。歌詞に主張は後に残るものの、楽曲自体の印象はちょっと薄くなってしまいました。「接吻」「Dreams」という過去のセルフカバーが2曲も含まれている点を考えても、楽曲をそろえきれなかったのではないでしょうか。

というよりも、むしろ反戦を訴えるがために、あえて急いでリリースした向きも感じられます。彼の声が本調子でなかったため、リリースが延期されたものの、当初のリリース予定が9月と、なるべく早くリリースに急ごうとした点からも、彼がいかに反戦のメッセージを早く、はっきりと伝えたかったかがわかります。

そんなこともあり、アルバム自体の評価は4つと傑作には至らなかったとは思うのですが、その強いメッセージに、1つ追加で。そのメッセージはともすればORIGINAL LOVEらしからぬ無骨ささえ感じるのですが、それゆえに強く心に響いてくる、そんな作品でした。

評価:★★★★★

ORIGINAL LOVE 過去の作品
白熱
エレクトリックセクシー
ラヴァーマン
プラチナムベスト ORIGINAL LOVE~CANYON YEARS SINGLES&MORE
blesss you!
Flowers bloom, Birds tweet, Wind blows & Moon shining


ほかに聴いたアルバム

5B2H/花*花

2010年の再結成後、比較的コンスタントな活動を続ける女性デゥオ花*花の約1年4か月ぶりとなるミニアルバム。前作はコロナ禍の中で「あの人に会いに行きたい」がテーマだったのですが、今回はその真逆の「帰る場所」がテーマとなっている作品。とはいえ、全体的には花*花らしさに大きな違いはなく、彼女たちのブラックミュージックからの影響を強く感じるソウルバラードの「Shenandoah」からスタート。その後は彼女たちらしい、アコギやピアノなどを取り入れつつ、暖かい雰囲気のポップスを聴かせてくれます。派手さはありませんが、聴いていて心が温まる、そんな1枚でした。

評価:★★★★

花*花 過去の作品
2×20
ゴー・トゥー・アール・フォーティーファイブ

すずめの戸締まり/RADWIMPS/陣内一真

新海誠監督によるアニメ映画「すずめの戸締まり」のサントラ盤。大ヒットした「君の名は。」「天気の子」に続き、今回も音楽はRADWIMPSが担当したのですが、本作では作曲家の陣内一真との共作という形になりました。劇伴曲はオーケストラアレンジでダイナミックな作風の曲が多く、全体的には良くも悪くも映画音楽らしい映画音楽といった印象を受けます。今回、主題歌「すずめ」では女性ボーカリストの十明が参加しているのですが、曲の雰囲気にピッタリマッチ。下手したら野田洋次郎ボーカルよりも曲にマッチしていたかも・・・。

評価:★★★★

RADWIMPS 過去の作品
アルトコロニーの定理
絶対絶命
×と○と罰と
ME SO SHE LOOSE(味噌汁's)
君の名は。
人間開花
Human Bloom Tour 2017
ANTI ANTI GENERATION
天気の子
天気の子 complete version
夏のせいep
2+0+2+1+3+1+1= 10 years 10 songs
FOREVER DAZE
余命10年~Original Soundtrack~

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