歌謡ロック?
Title:Highway X
Musician:B'z
昨年の紅白歌合戦。史上2番目に低い視聴率に終わり、さらにいろいろなことを言われつつも、結局、はじまる前も終わった後も話題に上ることが多い時点で、まだまだ注目度の高いコンテンツということを認識しつつ、そんな中、Twitterでバズった2つのコメントがありました。
しかし昨日の紅白を見ていると、「ロック」が完全に昔の「演歌」のポジションに来たなということが分かる。少し前ならそれは自嘲や危機感だったが、もはや単なる事実として。
— ぼのぼの (@masato009) January 1, 2023
まず1つ目が、先日もチラッと紹介しましたが、「ロック」が昔の「演歌」のポジションに来た、という指摘。
日本のロックに低音は必要なかったことを再確認
— WAJIMA Yusuke (@yskwjm) December 31, 2022
そしてもう1つが、日本のロックにおける低音軽視という指摘でした。
で、この2つの指摘を読んでまず感じたのが「それってB'zのことじゃん!」という印象でした。「ロック」が昔の「演歌」のポジションに来た、という意味では、良くも悪くも様式美的なロックを演奏している点、歌謡曲を様式化した演歌と同じようなポジショニングを感じさせますし、ボーカルとギターだけというユニットは完全に低音軽視。海外ではほとんどお目にかかりません。
約3年ぶりとなるB'zのアルバムも、良くも悪くもいつものB'zといった印象を受けるアルバム。ただ、そんな中でも今回のアルバムは特に良くも悪くも非常に歌謡曲的なアルバムになっていたような印象を受けました。アルバムの冒頭「SLEEPLESS」はいきなりエッジの効いたギターサウンドからスタート。非常にダイナミックなサウンドからスタートし、実にロック的な要素の強い作品になっています。続く「Hard Rain Love」もギターサウンド主導のロック的な作品になっており、「お、すごいカッコいいじゃん!」といった印象からスタートします。
ただ、序盤に非常にロック的な作風でスタートしても、その後、一気にJ-POP的、あるいは歌謡曲的な「ベタさ」を感じさせる作風にシフトしてしまうのがB'zのアルバムの特徴で、続く「COMEBACK -愛しき破片-」はビックリするほどの歌謡曲調なメロディーの哀愁感たっぷりの曲調に。「YES YES YES」もJ-POPらしいメロと歌詞の曲となっていますし、タイトル曲である「Highway X」もベタな歌謡曲的な作風となっています。
この傾向は以前からB'zの作品に共通するものの、今回のアルバムは特にこの歌謡曲的な方向性が強く、良くも悪くも「歌謡ロック」というイメージが強くついているアルバムになっていました。もっとも今どき、歌謡曲だからダメ・・・とは思いませんが、彼らの場合、桑田佳祐みたいに積極的に歌謡曲の要素を取り入れているというよりも、結果として歌謡曲になってしまった、といった印象が・・・。その結果、ベタで安直に哀愁感を誘うよう抒情的なメロディーラインという歌謡曲の「悪い」部分が出てしまっているようにも感じました。
前作「NEW LOVE」も楽曲のインパクトは薄めだったのですが、今回のアルバムも悪い作品ではないのかもしれませんが、ちょっと印象が弱いアルバムに仕上がっていたような感じがします。もうちょっとゴリゴリのハードロック路線でもいいと思うのですが・・・ファン層的に、歌謡曲的な路線を望むような人が多い年齢層になってしまったということでしょうか。
評価:★★★★
B'z 過去の作品
ACTION
B'z The Best "ULTRA Pleasure"
B'z The Best "ULTRA Treasure"
MAGIC
C'mon
B'z-EP
B'z The Best XXV 1988-1998
B'z The Best XXV 1999-2012
EPIC DAY
DINOSAUR
NEW LOVE
FRIENDSIII
ほかに聴いたアルバム
ToMoYo covers~原田知世オフィシャル・カバー・アルバム
原田知世デビュー40周年を記念してリリースされた、初のオフィシャル・カバー・アルバム。本作では土岐麻子や堀込泰行、キセルなどといったミュージシャンが彼女の曲をカバー。原田知世といえば、最初はアイドル歌手としてデビューし、その後、90年代後半には「ロマンス」のスマッシュヒットなどでスウェディッシュ・ポップも挑戦。ボーカリストとしても評価を得たのですが、今回のアルバムは、そんな頃の作品はもちろん、初期のアイドルポップもカバー。ただ、アレンジの方向性としては、全体的に90年代後半以降の彼女のスタンスを踏襲するようなアコースティックなアレンジがメインとなっています。
そんな訳で、全体的にアコースティックで暖かい雰囲気のポップソングが並ぶカバーとなっており、カバーアルバムとして統一感もあり魅力的な内容に仕上がっているのですが、そんな中でも特に素晴らしかったのがキセルがカバーした「くちなしの丘」。キセルらしい脱力感あるサウンドでしんみり聴かせる作品で、完全にキセルの曲として自分のものとしています。原曲の魅力もさることながら、キセルの魅力もあらためて感じるカバーに仕上がっていました。他も良質なポップソングが並ぶ本作。原田知世のファンはもちろん、参加ミュージシャンのファンも文句なしにお勧めのカバーアルバムでした。
評価:★★★★★
COVER JUNGLE 2/T字路s
6月にリリースしたカバーアルバムから5カ月。T字路sの2枚目となるカバーアルバムが早くもリリースされました。本作でも「あの鐘を鳴らすのはあなた」「かもめはかもめ」のような歌謡曲から、高田渡の「生活の柄」や斉藤和義の「空に星が綺麗」、真心ブラザーズの「荒川土手」など幅広いジャンルをカバー。今回異色なのは、T字路sの曲を出囃子として使っているという縁から、お笑いユニットオズワルドの畠中悠が作詞作曲を手掛けた「コンビニエンスマン」もカバーしています。前作同様、ボーカル伊東妙子の力強いボーカルが印象的。レトロテイストなサウンドも加わり、完全にT字路sの色に染めあげているカバーに仕上がっており、そのボーカルの力強さもあり、耳に残るカバーアルバムとなっていました。
評価:★★★★★
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