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2023年1月17日 (火)

昭和のレア・グルーヴ企画拡大版 その6

前回に引き続き、「Groovin'昭和アーカイヴス」の紹介。今回がシリーズ最終回となります。

Title:GROOVIN'昭和アーカイヴス 14 魅惑の男性シンガーvol.3

さて、こちらはタイトル通り、男性ボーカルの曲をまとめた第3弾。歌謡曲的な曲がメインとなりますがバリエーションのある作品が並んでいます。

特に珍曲で耳を惹くのが吉幾三の「おじさんサンバ」で、おじさんの悲哀を悲しいまでに歌った曲。曲中にいろいろな固有名詞が出てくるのですが、同曲がリリースされた1985年には、おじさんが好きだったものの代表格だったんでしょうね・・・。ただ、歌の中で「おじさんは42」とうたわれるけど、この時、吉幾三はまだ33歳なんですよね。どういう気持ちで歌ってたんだろう・・・。

また間寛平が、間寛平&ボーイフレンド名義で歌う「ゲイボーイブルース」も珍曲。これ、今だったら絶対リリースできなかったでしょうね・・・。珍曲ではないのですが、音楽評論家で昨年亡くなった松村雄策がミュージシャンとしてリリースした曲も収録。彼の独特の文体が結構好きだったんですが、ミュージシャンとしてもパンキッシュなロックを披露しており、なかなかカッコいい作品になっていました。

ただ全体的にはジョー山中「あしたのジョー2のテーマ - 明日への叫び」やジョニー吉長「孤独の叫び」のように、泥臭さ、男臭さを感じる曲が並んだアルバムになっており、いかにも「男性シンガー」ともいえる曲が並ぶ作品に。これだけ泥臭い曲は今の時代なかなかリリースしにくいのかもしれませんが、そういう意味でも時代を感じさせる1枚になっていました。

評価:★★★★

Title:GROOVIN'昭和アーカイヴス 15 魅惑の女性シンガーvol.3

第14弾が男性シンガー編ならば、当然、第15弾は女性シンガー編。こちらも男性シンガー編と同様にバラエティーのある聴きごたえのある曲が並んでいました。

まずコミカルな珍曲と言う意味では、昨年亡くなったあき竹城が歌っていた「年上かもめ」で、山形弁で歌われるかなりあくの強い楽曲になっており、かなりユニーク。詩織の「メゲメゲ・ルンバ」はNHK「みんなのうた」で流れていた曲らしいのですが、コミカルな物語調の歌詞が楽しいキッズソングになっています。またマッハ文朱の「ソウル見ちゃった」も、意外な事実を覗き見ちゃったことをうたうコミカルな歌詞が楽しい楽曲になっています。

また文句なしにカッコいい曲といえば李礼仙の「ジュクに風が吹く」でムーディーに聴かせるスモーキーなボーカルが文句なしにカッコいい楽曲。いかにも歌謡曲的な曲なのですが、逆に歌謡曲のカッコいい側面を感じさせる曲になっています。

ただ、Vol.1,2の紹介の時も書いたのですが、いかにも男性視点から「都合の良い女性像」を女性に歌わせるような曲も少なくなく、時代とはいえ今聴くと、ちょっと厳しいなぁ、と感じる曲も見受けられました。典型的なのが桜たまこの「おじさんルンバ」で、前述の「おじさんサンバ」と対になるような曲。女性視点からおじさんに恋するような描写はあまりにもあざとい・・・。さらに酷いのが、歌謡曲のスタンダードナンバーではあるのですが、奥村チヨの「恋の奴隷」で、これって男性のDVを完全に肯定している歌詞ですよね・・・。時代性を差し引いても、さすがにひいてしまいます・・・。

また、ちょっと違う視点で閉口したのがCONNYの「愛のゆくえ~ WHAT'S GOING ON」。こちらマーヴィン・ゲイの「WHAT'S GOING ON」の日本語カバーなのですが、反戦歌の原曲の意味を全く無視したラブソングになっています。原曲の意味を多少変えるようなカバーでも仕方ない部分はあるのですが、この曲に対するマーヴィン・ゲイの思い入れを考えると、このカバーはあまりにもひどくないですか?おそらく、今なら訴訟が起こされそうな気すらします。「都合の良い女性像」と合わせて、歌謡曲の「悪い部分」を見たような気がします。

そんな感じで、歌謡曲のカッコよさを感じさせると同時に、歌謡曲の悪い部分も凝縮されたようなオムニバスになっており、そういう意味ではいかにも日本歌謡曲の象徴ともいえる作品と言えるかもしれません。シリーズ最後を締めくくる作品ですが、いかにも歌謡曲的な作品となっていました。

評価:★★★★


ほかに聴いたアルバム

2022 LIVE AT SENDAI,FUKUOKA,OSAKA/佐野元春&THE COYOTE BAND

Sanolive

昨年実施された、佐野元春&THE COYOTE BANDのツアー「WHERE ARE YOU NOW」から福岡、仙台、大阪公演の8曲を収録した最新ライブアルバム。昨年の紅白歌合戦に初出場した彼。同世代のミュージシャンと組んだユニットの一員として出演したのですが、正直、一番現役感を覚えたのは彼だったように思います。そんな佐野元春のライブアルバムは、今なお強く感じられる現役感さながらに、ベテランらしい安定感も同居させた作品に。ただ、非常に残念なのは複数公演からたった8曲のピックアップだったという点。是非、1本の公演をフルにおさめたようなライブアルバムを聴きたいのですが。

評価:★★★★

佐野元春 過去の作品
ベリー・ベスト・オブ・佐野元春 ソウルボーイへの伝言
月と専制君主
ZOOEY
BLOOD MOON
MANIJU
自由の岸辺(佐野元春&THE HOBO KING BAND)
或る秋の日
MOTOHARU SANO GREATEST SONGS COLLECTION 1980-2004
THE ESSENTIAL TRACKS MOTOHARU SANO & THE COYOTE BAND 2005 - 2020(佐野元春&THE COYOTE BAND)
ENTERTAINMENT!(佐野元春&THE COYOTE BAND)
今、何処(佐野元春&THE COYOTE BAND)

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