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2023年1月23日 (月)

ロックなサニーデイ

Title:DOKI DOKI
Musician:サニーデイ・サービス

サニーデイ・サービスとしてもソロでも傑作アルバムをリリースし続ける曽我部恵一。ここに来て、脂ののりまくった状況をキープしていますが、フルアルバムとして約2年8か月ぶりとなるニューアルバムも、その状況を維持した傑作アルバムに仕上がっていました。サニーデイとしては2018年にメンバーの丸山晴茂が逝去するなど、困難な状況も待ち受けていましたが、今回のアルバム、ジャケット写真がとても印象的。自然な表情でにこやかにたたずむ3人の姿からは、バンドとしてもとてもいい状況であることが垣間見れます。

今回のアルバムも、そんな晴れやかなジャケット写真が象徴するかのような、さわやかな作品に仕上がっています。冒頭を飾る「風船讃歌」はそんなアルバムを象徴するような1曲。サニーデイらしいフォークロックでメロディアスな曲で、初夏を思い起こすようなさわやかな風景描写も印象的な暖かいラブソングに仕上がっています。

ただ、原点回帰的でフォークロックの色合いが強かった前作と比べると、1曲目こそ彼ららしいフォークロックのアルバムになっていますが、作品全体としては、むしろロック志向の強い、バンドサウンドを全面に押し出したアルバムになっていました。3曲目「ノー・ペンギン」はかなりダイナミックなバンドサウンドを聴かせてくれますし、さらに象徴的なのが続く「Goo」でギターサウンドを前面に押し出し、シューゲイザーからの影響も顕著に感じるオルタナ系のギターロック。出だしのイントロはPIXIESを彷彿とさせますし、タイトルからして、ひょっとしてSonic Youthの代表作からとっているのでしょうか?

「メキシコの花嫁」もメロこそフォーキーですが、非常に力強いビートを聴かせてくれる楽曲ですし、「ロンリー・プラネット・フォーエバー」も彼らの原点ともいえるフォーキーなメロですが、力強いバンドサウンドが流れており、ロックテイストの強い作品に。「海辺のレストラン」も軽快なギターロックのナンバー。ちょっとノスタルジックでオールドスタイルなサマーロックに仕上がっており、爽やかなテイストの流れるこのアルバムにふさわしい作品になっています。さらに「こわれそう」もテンポのよいギターロックで、彼らとしては珍しい、かなりパンキッシュな作品に仕上がっています。

しかしラストを飾る「家を出ることの難しさ」はアコースティックギターの流れる、こちらもサニーデイの王道ともいえるフォークロックのナンバー。分厚いバンドサウンドは流れており、やはりロックテイストは強めの作品ながらも、最初と最後は実にサニーデイらしい作品で締めくくっているところに構成の妙を感じさせますし、まさサニーデイを聴いたという満足感を強く感じさせる流れとなっていました。

ポップなメロディーラインと力強い分厚いバンドサウンド、さらにはサニーデイらしいちょっと切ないメロディーラインに(冬にリリースされた作品なのに)初夏を彷彿とさせる爽やかな歌詞も加わり、タイトル通り、聴いていて楽しくなる、「DOKI DOKI」させてくれる傑作に仕上がっていました。今回も文句なしに年間ベスト候補とも言える傑作アルバム。サニーデイの勢いはまだまだ止まらなさそうです。

評価:★★★★★

サニーデイ・サービス 過去の作品
本日は晴天なり
サニーディ・サービス BEST 1995-2000
Sunny
DANCE TO YOU
桜 super love

Popcorn Ballads
Popcorn Ballads(完全版)
the CITY
DANCE TO THE POPCORN CITY
the SEA
サニーデイ・サービスBEST 1995-2018
いいね!
もっといいね!
冷し中華EP


ほかに聴いたアルバム

サニーボトル/Saucy Dog

Sunnybottol

「シンデレラボーイ」が大ヒットを記録し、昨年の紅白にも初出場を果たしたロックバンドの6枚目となるミニアルバム。基本的にはその「シンデレラボーイ」と、同曲も収録された前作「レイジーサンデー」から変わらないスタイルで、シンプルなギターロックに、恋人の日常を描いたウェットなラブソングがメイン。メランコリックなメロといい歌詞の世界観といい、良くも悪くも昔ながら歌謡曲に連なるような作風が特徴的。似たタイプの曲が多いだけに、マンネリ気味になりそうなのが気になるのですが、一方で、しっかりとした日常や心理状況の描写が耳を惹くだけに、「シンデレラボーイ」に続くヒットも期待できそう。

評価:★★★★

Saucy Dog 過去の作品
レイジーサンデー

夜の庭/畠山美由紀&藤本一馬

Yorunoniwa

畠山美由紀がorange pekoeのギタリスト、藤本一馬と組んでリリースしたアルバム。"orange pekoe"…久しぶりに聞いた名前ですが、基本的に作詞は畠山美由紀が、作曲は藤本一馬が組んだ作品になっているのですが、彼女の包容力ある優しいボーカルと、藤本一馬の哀愁感たっぷりのメロディーラインがピッタリとマッチ。実に息の合った作品に仕上がっています。orange pekoeとしての活動もいいのですが、このコンビでも、コンスタントに活動してほしいなぁ。

評価:★★★★★

畠山美由紀 過去の作品
わたしのうた(畠山美由紀withASA-CHANG&ブルーハッツ)
わが美しき故郷よ
rain falls
Wayfarer

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