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2023年1月

2023年1月31日 (火)

宇宙から来た3人組

Title:地球ノミナサンコンニチハ 〜LOVE JETS ANTHOLOGY〜
Musician:LOVE JETS

「2002年、突如飛来した異星人がロックンロールで地球人との交信を試みた。PURAHA、PYE-RON、PRINCIPALの3人から成るユニットLOVE JETS。」というコンセプトでスタートしたスリーピースバンド、LOVE JETS。メンバーそれぞれ、「忌野清志郎、KANAME(元COSA NOSTRA etc.)、阿部耕作(元コレクターズetc.)ではないか?と言われたが真相は未だ謎とされている。」そうですが、要するに、忌野清志郎の別働的バンドなのですが、このたび、忌野清志郎のデビュー50周年記念企画の「番外編」として同作がリリース。PYE-RON、PRINCIPAL立会の下で制作されたそうです。

LOVE JETSについては今回、完全に聴くのははじめて。忌野清志郎関連の作品は、当時から一通りはチェックしていたとは思うのですが、なぜか本作はチェックから漏れていました・・・。ただ、当時はラフィータフィー名義での作品があったり、ミツキヨとしての活動があったり、脂ののって積極的な活動を行っていた時期で、いかにも「企画モノ」的な雰囲気だった本作は、なんとなくスルーしていたのでしょうか。今となっては全く覚えていないのですが。

ただ、今回あらためて聴くと、とにかく非常に楽しいポップチューンがつまっており、素直にわくわくしながら聴けるような作品が並んでいました。オープニングを挟んで事実上の1曲目である「LOVE JETSのテーマ」から、シンセでちょっとスペーシーさを出しつつ、基本的には軽快でポップなギターロック。「SPACE DISCO」もLOVE JETS風のディスコチューンになっており、ちょっとコミカルながらもダンサナブルなリズムが楽しめる曲に。同じく「POP PEOPLE POP」もリズミカルでポップなダンスチューンに仕上がっており、忌野清志郎のソロ作ともちょっと違った作風に仕上げています。

忌野清志郎としての作品は、ソウルやブルースの影響を強く受けたような作品が目立つのに対して、LOVE JETSとしての作品については、ブラックミュージックからの影響を前に押し出した作品があまりない、という点も大きな特徴でしょうか。「青い星」などはビートルズっぽさを感じますし、「シスター・アンドロメダ」もサイケな作風ながらも、こちらもビートルズからの影響を感じます。

また、そのほかにも神楽的な要素を取り入れた「UFO神社」や、Disc2に収録されたレアトラック集には、「UFO神社」のスカバージョンやラテン風の「コスモポリターナ DEMOver.」なども収録。全体的に企画モノユニットらしい、自由な遊び心と、そんな自由さに起因した挑戦心を感じさせる作品になっています。そんな遊び心や挑戦心を含めて、ワクワクする楽しいアルバムに仕上がっていました。

ちなみに楽曲の間には、LOVE JETSとしてのインタビューも収録。LOVE JETSのコンセプトに従った回答がユニークなのですが、微妙にグダグダな感じもまたユーモラスな内容に。そんなグダグダなインタビューを含めて、聴きどころが多く、非常に楽しい作品となっていました。

リアルタイムでスルーしていたのは、今となってはもったいなかったなぁ・・・と思うのですが、こういう遊び心あふれる楽しいポップアルバムも易々とつくってしまう忌野清志郎の実力をあらためて感じさせるアルバムになっていました。ワクワクするようなポップソングを素直に楽しみたいのなら、文句なしにお勧めの作品です。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

風色のしおり/熊木杏里

ちょうど2年ぶりとなるニューアルバム。コロナ禍がはじまって間もなかった前作では、コロナを真正面からとらえたような作品が特徴的でしたが、続く本作は「ここにある今日」という楽曲からスタートしている点も象徴的に、いつも通りに今の自分を描いたアルバムに回帰。全体的にアコギやピアノでフォーキーに聴かせる作風は、派手さこそありませんが、いつもの熊木杏里というイメージを強く受けるアルバムになっていました。これといった特徴は薄かったような気もするのですが、派手さはなく、シンプルながらも暖かさのある作風が彼女らしいともいえる作品になっていました。

評価:★★★★

熊木杏里 過去の作品
ひとヒナタ
はなよりほかに
風と凪
and...life
光の通り道

飾りのない明日
群青の日々
殺風景~15th Anniversary Edition~
人と時
熊木杏里 LIVE “ホントのライブベスト版 15th篇" ~An's Choice~
なにが心にあればいい?

United/ビッケブランカ

4曲入りのEP盤。爽やかでメロディアスな「This Kiss」、ピアノバラードの「魔法のアト」、メランコリックなミディアムチューン「Changes」に、ボイスチェンジャーを使ってコミカルな「Treasure」と、四曲四様にビッケブランカの魅力を伝えてくれる魅力的な内容に。2021年11月に行われたLINE CUBE SHIBUYAでのライブ録音がボーナストラック的についてくるのですが、こちらもベスト盤的な選曲が魅力的。どちらもビッケブランカの魅力をしっかり感じれる内容になっていました。

評価:★★★★★

ビッケブランカ 過去の作品
FEARLESS
wizard
Devil
HEY
BYE
FATE
BEST ALBUM SUPERVILLAIN

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2023年1月30日 (月)

シンプルだがしっかりと心に響く

Title:Big Time
Musician:Angel Olsen

毎年、12月頃に発表される各種メディアの年間アルバムベスト10。ランキングを眺めて、チェックが漏れていた作品を遅ればせながら聴いてみるのが私の毎年の恒例なのですが、今回紹介するのはそんなアルバムの1枚。年間ベスト10の参考として各種メディアの年間ベスト10をまとめたサイト「AOTY 2022」のランキングを使用させていただいています。

といっても実は今年、珍しいことに1位から10位までのアルバムは既にチェック済。あらためてチェックした今回のアルバムは14位にランクインした1枚。アメリカの女性シンガー、Angel Olsenのニューアルバム。前作「All Mirrors」も高い評価を受け、当サイトでも紹介していたのですが、本作はリアルタイムでは聴いておらず、遅ればせながらこのタイミングでチェックしました。

基本的にアルバムは、全編メロディアスでフォーキーなポップソングがメイン。アコギやピアノなどを用いたアコースティックなサウンドがメインとなっており、彼女の包容力のある歌声とマッチして、シンプルながらも暖かさを感じる楽曲が並びます。前作「All Mirrors」ではエレクトロサウンドを取り入れていたりしたのですが、今回のアルバムはフォーキーな作品がメイン。ある意味、奇をてらわない楽曲が主軸となっています。

アルバムとしてはまず1曲目「All The Good Times」が魅力的。ちょっとけだるさを感じさせつつも郷愁感のあるメロディーとサウンドがっ胸に響くような楽曲で、後半はホーンセッションも入り、どこか感じる祝祭色あるサウンドも印象に残ります。続くタイトルチューン「Big Time」は、まさにフォークソングの王道を行くような作品になっており、3拍子のリズムでしんみり聴かせる歌は、郷愁感あふれる作品に。シンプルながらもインパクトも十分な楽曲になっています。

中盤で印象に残るのが「All The Flowers」でしょう。静かなストリングスやピアノの音色をバックに、ファルセット気味で切なく歌い上げるボーカルが印象に残る作品。メロディーラインも非常に切なく、しんみりと聴かせる作品になっています。

終盤には「Go Home」のような、ピアノやストリングスで分厚いサウンドを聴かせつつ、力強く歌い上げるようなダイナミズムを感じさせるような曲も登場したりして、アルバムにバリエーションを加えています。これに続く「Through The Fires」も同じく分厚いストリングスでスケール感を覚えるような作品に。比較的、シンプルな楽曲が並ぶ今回のアルバムの中で、一つの山場となっていました。

ラスト「Chasing The Sun」もピアノとストリングスをバックに、彼女の力強いボーカルでしっかりと聴かせる作品に。その歌声が大きな印象を残しつつ、アルバムは幕を下ろします。

全体的にフォーキーな作風でシンプルな楽曲が並ぶ作品なのですが、バリエーションをまじえながらもインパクトあるメロディーラインも魅力的な作品になっている今回のアルバム。決して派手さはありませんが、しっかりと心に響いてくるようなそんなアルバムに仕上がっていました。年間ベストレベルの傑作というのも納得な1枚。シンプルなポップソングを聴きたいのならば、文句なしにお勧めの作品です。

評価:★★★★★

Angle Olsen 過去の作品
All Mirors


ほかに聴いたアルバム

King’s Disease III/Nas

Kd3

グラミー賞を受賞した2020年のアルバム「King's Disease」から続く3枚目のアルバムとなるNasの最新作。正直、作品としての目新しさはあまりありませんが、ピアノが入ったリズミカルなトラックからトラップ、さらにはジャジーなトラックまでバラエティー富んだ作品で、その力強いラップも加わり、最後まで楽しめるアルバムに。レジェンドラッパーらしい、安定感のある作品に仕上がっていました。

評価:★★★★

NAS 過去の作品
Untitled
Distant Relatives(Nas&Damian Marley)
Life Is Good
Nasir
King's Disease
King's Disease II

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2023年1月29日 (日)

バラエティーに富んだ23曲

Title:SOS
Musician:SZA

Szasos

本作が2作目となるアメリカのシンガーソングライター、SZA(シザ)のニューアルバム。2017年にリリースされた前作「Ctrl」は各種メディアで軒並みベストアルバムに選ばれて大きな話題となりました。それに続く本作も、文句なしの傑作アルバムに。再び大きな注目を集めるとともに、売上的にも全米ビルボードチャートで見事1位を獲得。人気面でも大きな飛躍を遂げた1枚となりました。

ちょっとけだるさを感じさせるボーカルスタイルは前作から同様。全体を流れる、いい意味で聴きやすさを感じるメロディアスでポップな方向性も前作同様。そしてそんな中で感じるのは、非常にバラエティーに富んだ今回のアルバムの方向性でした。

今回のアルバムは、なんといっても全23曲、1時間超というボリューミーな内容も大きな特徴。そんな中で様々なバラエティーに富んだ曲調が大きな特徴となっています。1曲目はいきなりタイトルチューンである「SOS」からスタート。ちょっとレトロな雰囲気を感じさせるソウルチューンで、このレトロな要素を取り入れている点は前作「Ctrl」からの続きを感じさせます。ただ、タイトルチューンでありながらも、アルバムを象徴する感じではない点がおもしろいところで・・・。

続く「Kill Bill」はむしろソウルテイストは薄めのポップチューンになっているのがユニークな感じ。かと思えば「Low」はトラップ的なリズムにのせつつメランコリックに歌う、いかにも今風な楽曲に仕上げていますし、「Blind」はアコースティックなサウンドにのせてゆっくりと歌う、彼女の「歌」を聴かせる楽曲に仕上がっています。

バラエティー富んだ展開はまだまだ続きます。「Gone Girl」はエレクトロのトラックに載せてしんみり歌い上げるR&B風の楽曲になっていますし、「Ghost in the Machine」はPhoebe Bridgersをゲストに迎えた、これまたR&Bというよりはむしろインディーポップのテイストも感じさせるドリーミーな作品に。さらに「F2F」はギターサウンドを入れてダイナミックな楽曲に仕上げていますし、「Conceited」はエレクトロトラックを全面的に取り入れた作風に仕上げています。

個人的にアルバムの中で耳を惹いたのが「Open Arms」でアコギをベースとしつつ、しんみり清涼感もって歌い上げる切ない歌が非常に印象に残る作品。ゲストのTravis Scottの切ないラップもまた印象に残る作品になっています。

そんな感じで全23曲。R&Bやソウルを基本軸としつつも、必ずしもジャンルにとらわれない幅広くバラエティー富んだ音楽性が大きな魅力で、その幅の広さに彼女の実力を感じさせる作品となっていました。前作に引き続き本作も文句なしの傑作だったと思います。ただ一方で、ちょっと時間が長く、また曲数も多かったため、ちょっとまとまりを欠いた感もあったのが若干のマイナスだったかな。もっとも、その点を差し引いても文句なしの出来栄えだったと思います。実力、人気面ともに、今後のシーンを引っ張っていきそうな予感のする、そんな作品でした。

評価:★★★★★

SZA 過去の作品
Ctrl


ほかに聴いたアルバム

I Don't Give a Fuck About This Rap Shit,Imma Just Drop Until I Don't Feel Like It Anymore/$ilkMoney

Silkmoney

ラップグループDivine Councilの一員であり、ローリング・ストーン誌が選ぶ2016年の「10 New Artists You Need to Know」にも選ばれたラッパーによる約2年半ぶりのニューアルバム。全体的にどこか不穏な空気感を醸し出しつつ、メランコリックさを感じさせるトラックが印象に残る作品に。さらに非常に力強くテンポのよいラップも耳に残るアルバムになっていました。

評価:★★★★

hugo/Loyle Carner

前作「Not Waving, but Drowning」も大きな注目を集めたイギリスはサウスロンドン出身のラッパーによる3枚目のアルバム。彼の人柄も感じられるような、ジャズやソウルの要素を取り込んだ暖かい雰囲気のトラックが魅力的だったのですが、本作もその方向性は同様。ただ前作ではゆっくりと語るようなラップだったに対して、今回はもうちょっとアップテンポなスタイルにシフト。前作との違いを打ち出している感じはします。ただ、メロウなトラックはいい意味でHIP HOPの枠組みにとらわれないアピールポイントを持ったアルバムとなっており、最後まで楽しめる傑作となっていました。

評価:★★★★★

Loyle Carner 過去の作品
Not Waving, but Drowning

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2023年1月28日 (土)

ロックバンド系が目立つ

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

すいません、諸般の事情により2日遅れのアルバムチャート更新です。

まず今週1位はback number「ユーモア」が獲得です。CD販売数及びダウンロード数で共に1位獲得。昨年の紅白に出演するなど、高い人気を誇る彼らの約3年9ヶ月ぶりとなるニューアルバムとなります。オリコン週間アルバムランキングでも初動売上14万枚で1位初登場。ただし前作「MAGIC」の初動16万5千枚からは若干のダウンとなりました。

2位は結束バンド「結束バンド」がワンランクダウンながらもベスト3をキープ。3位にはザ・クロマニヨンズ「MOUNTAIN BANANA」が初登場です。CD販売数2位。バンドの方針として配信は行われていないため、CD売上のみでのベスト3入り。オリコンでは初動売上1万6千枚で2位初登場。結成16年目となるベテランバンドの彼らですが、オリコン2位はアルバムではここに来て最高位更新となります。前作「SIX KICKS ROCK&ROLL」の初動1万1千枚(3位)からもアップ。

今週はベスト3に2組のロックバンドが初登場していますが、ベスト4以下でもロックバンドのアルバムの初登場が目立ちました。まず6位にヘヴィメタルバンド陰陽座「龍凰童子」がランクイン。CD販売数7位、ダウンロード数8位。オリコンでは初動売上7千枚で6位初登場。前作「覇道明王」の初動8千枚(11位)から若干のダウンとなりました。

さらに10位にはManeskin「Rush!」がランクイン。CD販売数11位、ダウンロード数7位。イタリアのロックバンドである彼らは2021年にユーロビジョンソングコンテストで優勝し大きな注目を集め、前作「Teatro d'ira:Vol.1」が日本でも話題に。さらに昨年にはサマーソニックに出演し、そのパフォーマンスも大きな話題を呼びました。オリコンでも本作は初動売上5千枚を売り上げて、見事ベスト10入り。今後、日本での人気もますます高まりそうです。

他には・・・まず4位に坂本龍一「12」がランクイン。CD販売数3位、ダウンロード数6位。現在、癌療養中の彼が、闘病生活の中、日記を書くように制作した作品の中から12曲を選んで収録したアルバム。約6年ぶりとなる新作が見事ベスト10入りとなりました。坂本龍一といえば、YMO時代の盟友でもあった高橋幸宏が先日、逝去というショッキングなニュースが飛び込んできました。坂本龍一も現在もまだ闘病中ですが、教授には少しでも長生きしてほしいものです・・・。オリコンでも初動売上1万1千枚を記録し、3位初登場と見事ベスト3入り。前作「async」の初動4千枚(20位)からも大きくアップしています。

7位にはSawanoHiroyuki[nZk] 「V」が初登場。ドラマやアニメなどの劇伴作品を多く手がける澤野弘之のボーカルプロジェクトの5枚目となるアルバム。CD販売数8位、ダウンロード数3位。オリコンでは初動売上4千枚で9位初登場。前作「iv」の初動5千枚(9位)より微減。

8位初登場は水木一郎「アニソンデビュー50周年記念ベスト『絶唱-Z Show-』」。昨年12月に74歳でこの世を去った、水木一郎のタイトル通り、アニソンを集めたベストアルバム。アニソン界の帝王と呼ばれた彼の、アニメソングや特撮系ソングの代表曲を集めたベストアルバムとなります。CD販売数6位。オリコンでは初動売上7千枚で7位初登場。

初登場最後は9位にNovel Core「iCoN」がランクイン。SKY-HI主宰のレーベル「BMSG」の初のミュージシャンとしてメジャーデビューを果たしたラッパーによる1st EP。CD販売数10位、ダウンロード数5位。オリコンでは初動売上4千枚で11位初登場となりました。

今週のHot Albumsは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2023年1月27日 (金)

極上のポップアルバム

Title:SONGS
Musician:スカート

シンガーソングライター、澤部渡のメジャー4枚目となるオリジナルアルバム。毎回、シンプルで上質なポップスソングを聴かせてくれる彼。今回の作品は「SONGS」という非常にシンプルなタイトルがついた今回のアルバムですが、その単純なタイトルがある意味、自信の表れとも言える非常に良質な楽曲が並ぶ、極上のポップアルバムに仕上がっていました。

アルバムはまずピアノが入って、爽やかながらも切なさも感じられる「十月(いちおう捨てるけどとっておく)」からスタート。続く「駆ける」もバンドサウンドを前面に持ってきていますが、切ないメロディーラインが魅力的な楽曲。比較的ロックテイストの強いサウンドからスタートし、ダイナミズムも感じさせる出だしとなっています。

それに続く「ODDTAXI」はメロウなサウンドを聴かせるAORテイストの強い楽曲にシフト。ゲストラッパーとしてPUNPEEも参加し、ちょっとけだるさを感じさせるラップも聴かせてくれます。

個人的に今回のアルバムでお気に入りが中盤の「標識の影・鉄塔の影」で、メロディアスでちょっと切なさも感じさせるギターポップの作品。歌詞もノスタルジックな風景描写となっていて、決して派手な作品ではありませんが、強く印象に残ります。また「Aを弾け」もモータウン風の軽快なビートを聴かせる明るいギターポップのナンバーで、こちらも印象に残る軽快なポップソングになっています。

本作の中でちょっとユニークなのが「私が夢からさめたら」でしょうか。メランコリックなメロディーが印象的なAORチューンに仕上がっており、女性目線の歌詞も併せて、ちょっと歌謡曲寄りの作風になっているのが特徴的。続く「背を撃つ風」もピアノが入って爽快でメロディアスなギターポップ。途中に入る女性コーラスも印象的です。

終盤も、ノスタルジックな歌詞とメロが印象的な「しるしをたどる」も耳を惹きますし、ミディアムチューンの「窓辺にて」も切ないメロディーラインが印象的。ラストを締めくくる「海岸線再訪」も切ないメロとピアノが印象に残るギターポップの作品となっていました。

ほどよくインパクトがあるギターサウンドを軸としつつ、AORの要素も取り入れたバラエティー富んだポップソングが特徴的。全体的に切なさを感じさせるメロディーラインとなっており、決して派手なサビを持っているわけではないのですが、しっかりと印象に残るメロディーを書いてくるあたりに、メロディーメイカーとしての実力を感じさせます。アルバム毎に最高傑作を更新している感もあり、今回のアルバムもオリジナルアルバムとしての前作「トワイライト」を上回る傑作に仕上がっていました。ポップス好きには文句なしにお勧めの1枚です。

評価:★★★★★

スカート 過去の作品
CALL
20/20
トワイライト
アナザー・ストーリー


ほかに聴いたアルバム

今回はここで、人気上昇中のラッパー、PUNPEEの2枚のEP盤を紹介

The Sofakingdom/PUNPEE

Punpee1

まずは5曲入りのEP「The Sofakingdom」。

Return of The Sofakingdom/PUNPEE

Punpee2 

そして同作の「付録」的位置づけとなる、同じく5曲入りEP「Return of The Sofakingdom」。実は、「Return of~」のリリースで、「The Sofakingdom」がリリースされていたことを遅ればせながら気が付き、「The Sofakingdom」は2020年のリリースながらも遅ればせながら聴いてみました。どちらも力強いビートをバックに、ラップというよりもメランコリックなメロディーが印象に残るポップテイストの強いアルバムに。「The Sofakingdom」ではKREVAや、実の弟である5lackが「Return of~」では漢 a.k.a. GAMIが、といった感じで豪華なゲストも魅力的。ただ、「The Sofakingdom」以上に「Return of~」の方がバラエティーに富んだ作風になっており、メロディーのインパクトも強化。「付録」的位置づけながらも、「Return of~」の方が本家を上回るような出来だったような・・・?

評価:
The Sofakingdom ★★★★
Return of The Sofakingdom ★★★★★

PUNPEE 過去の作品
MODERN TIMES
MODERN TIMES-Commentary-
焦年時代(PUNPEE&BIM)

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2023年1月26日 (木)

今、もっとも注目される女性シンガー

Rina Sawayama Hold The Girl Tour 2023

会場 ダイアモンドホール 日時 2023年1月17日(火)19:00~

Rina1

今、間違いなく世界で最も注目を集めているシンガーの一人、Rina Sawayama。ご存じの通り、新潟県出身の日本人である彼女は、幼少期よりロンドンに移住。現在はロンドンを拠点に活動を続けています。その彼女の最新作「HOLD THE GIRL」はなんと全英チャートで3位にランクインという快挙を達成。さらに昨年のサマソニに初来日し、ようやく日本でも注目を集めるようになりました。そして今回、初となるジャパンツアーを実施。名古屋でもライブを行うということで、もちろんチケットを確保し、彼女のライブにかけつけました。

会場はダイアモンドホール。キャパ1,000人のライブハウスとしてはそれなりの大きさの箱なのですが、彼女の人気を考えると、これだけの「狭さ」の会場で見れる機会、今後、そうそうないのではないでしょうか。会場は、そんな彼女の初来日公演を目撃しようと、ほぼ満員のファンで埋め尽くされていました。

会場には比較的19時ギリギリに到着。開演は19時となっているものの、外タレの場合、スタートが30分や、下手したら1時間近く伸びるのも当たり前。そのため、のんびりと構えていたのですが・・・なんと、19時ほぼピッタリにライブはスタート。ここらへん、時間に律儀な「日本人」らしい、ということでしょうか?

Rina2

ライブはアルバム「Hold The Girl」の1曲目でもある「Minor Feelings」からスタート。続いてアルバムのタイトルチューンの「Hold The Girl」へと続きます。写真のように、非常にスレンダーな良いスタイルで、キレのあるダンスパフォーマンスを繰り広げながらのステージ。陳腐な言い方かもしれませんが、非常にかっこよいパフォーマンスでした。ステージはサポートメンバーとしてギタリストとドラムが1人ずつ。さらにダンサーが2人くわわり、全5名でのステージパフォーマンスになっていました。

で、2曲終わった後にMCに入ったのですが、MCは流ちょうな日本語でのMC。まあ、当たり前といえば当たり前なのですが、4歳の時からロンドン在住なだけに、ひょっとしたら日本語はしゃべれないのかも?と思っていたのですが、そこはさすがです。

その後は「Hurricanes」「Your Age」「Imagining」と最新アルバムからのナンバーが続き、会場は盛り上がります。さらに「今、いろいろとむかつくことがあるけど、その怒りを音楽でぶつけていきましょう」というMCから「STFU!」に。メタル風のダイナミックでヘヴィーなバンドサウンドが非常にカッコいい曲で、この日もライブの中でもっともロッキンなパフォーマンスを聴かせてくれます。同じくロック色の強い「Frankenstein」と続き、会場は盛り上がっていきます。

Rina3

その後も「Holy(Til You Let Me Go)」「Bad Friend」と最新アルバムからの曲が続くと、メンバーはみな、会場から一度立ち去り、リナとギタリストの2人のみがステージ上に残ります(上の写真参照)。ここで再びちょっと長めのMCで、「みんなのことありのままに受け入れてくれる人をみつけてください」という話。さらには携帯のライトをつけて、というお願いとともに、ギタリストはアコギをかかえ、リナは椅子にすわってしんみり「Send My Love to John」を披露。ここまで比較的アップテンポな曲が続きましたが、一転、しんみり聴かせるナンバーに会場のファンもその歌声に聴き入ります。会場では、みんなが携帯のライトをかざしつつのステージとなり、携帯ライトの光が会場を包み込みました。

終盤は一転、「Forgiveness」さらには「Cherry」とアップテンポなナンバーに。「Cherry」では、会場の最前列でLGBTの象徴であるレインボーフラッグを振っているファンがいたようで、彼女がそのレインボーフラッグを受け取り、歌いながらステージ上で振り回していました。彼女は先日のサマソニでもLGBTQについてMCを行い、ちょっとした話題となりましたが、まさに彼女らしいパフォーマンスを見せてくれました。

さらに個人的にもライブで聴きたかった「Comme des garcons(Like the Boys)」へ。リズミカルなダンスチューンがやはり生で聴くとカッコいい!そして「XS」へと続き、本編は一度、締めくくりとなりました。

Rina4

もちろん、すぐに盛大なアンコールへ。やがて再びメンバーが登場すると、最後はアルバムの代表曲ともいえる「This Hell」へ。彼女自身、2人のダンサーと共にダンスを披露するパフォーマンスで、そのカッコよさを見せつけてくれました。アップテンポなこの曲で会場のテンションは最高潮に達しつつ、ステージは幕を下ろしました。

ライブは1時間15分。正直言って、予想していたより短かった・・・。もうちょっと聴きたかったなぁ、というのも正直な感想です。ただ、パフォーマンスは文句なしにカッコよく、最初から最後まで終始惹きつけられたパフォーマンスでした。スタジアムレベルでも惹きつけられるようなパフォーマンスで、それをこのキャパで見れたというのは、本当に貴重な体験をしたように思います。

日本人にもなじみやすいような、わかりやすいサビのある曲も多く、J-POPからの影響も感じる彼女。ただ、途中のMCや、レインボーフラッグを振るパフォーマンスなど、社会派なMCやパフォーマンスも目立ち、ここらへんはJ-POPのミュージシャンにはない感覚のようにも感じました。

そんな訳で、ちょっと短かったのですが、参加してよかったと心から思う、素晴らしいパフォーマンスでした。まだまだ彼女の躍進は続きそう。次に彼女のステージを見るときはきっともっと大きなアリーナクラスの会場が必要になりそう。今後の彼女の活躍からも目が離せなさそうです。

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2023年1月25日 (水)

8週連続1位獲得!

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

見事、8週連続の1位獲得となりました。

Subtilte

今週1位はOfficial髭男dism「Subtitle」が獲得。これで8週連続の1位獲得となりました。1位獲得はこれで通算13週目となり、これはHot100では史上最多総合首位獲得記録となるそうです。ストリーミング数は14週連続で1位。ダウンロード数は先週から変わらず4位、You Tube再生回数は2位から3位にダウン。これで15週連続のベスト10ヒット&ベスト3ヒットとなりました。

ヒゲダンは先週、ベスト10に初登場した「ホワイトノイズ」が今週も5位をキープ。ただ、「ミックスナッツ」は12位にダウン。今週は2曲同時ランクインとなりました。

そしてそんなヒゲダンとデッドヒートを繰り広げている米津玄師「KICK BACK」は今週3位から2位にアップ。こちらもストリーミング数は14週連続の2位。ダウンロード数も10位から7位にアップ。ただし、You Tube再生回数は5位から6位にダウンとしています。これで15週連続のベスト10ヒット&ベスト3ヒットとなりました。

初登場組の最高位は3位初登場のKinki Kids「The Story of Us」。CD販売数1位、ラジオオンエア数11位でしたが、その他はランク圏外となり、総合順位は3位に留まっています。オリコン週間シングルランキングでは初動売上17万3千枚で1位初登場。前作「Amazing Love」の初動23万5千枚(1位)よりダウンしています。

続いて4位以下の初登場曲ですが、今週は4位以下には初登場曲はゼロ。ただ一方、ベスト10返り咲きが1曲ありました。それが今週、15位から7位にアップしたback number「アイラヴユー」。昨年11月2日付チャート以来、12週ぶりのベスト10返り咲きとなっています。今週、彼らのアルバム「ユーモア」がリリースされたので、その影響でしょう。特にストリーミング数が12位から5位にアップしたほか、ラジオオンエア数が13位から2位に大きくアップしています。

さらにTani Yuuki「W / X / Y」が11位から10位にランクアップし、再びベスト10入り。ストリーミング数は5位から8位にダウンしましたが、ダウンロード数は16位から12位、You Tube再生回数も18位から16位にアップ。これで通算37週目のベスト10ヒットとなりました。

そのほか、ロングヒット曲ではAdo「新時代(ウタ from ONE PIECE FILM RED)」が先週から2ランクダウンの8位にランクイン。ダウンロード数は9位から14位、ストリーミング数も4位から5位、カラオケ歌唱回数も2位から5位と全体的に下落傾向が続いています。これでベスト10ヒットは32週連続に。

SEKAI NO OWARI「Habit」は今週も9位をキープ。ただ、こちらもダウンロード数は6位から11位、ストリーミング数も8位から9位、You Tube再生回数も6位から8位とダウン傾向が続いています。ベスト10ヒットはこれで通算23週目。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

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2023年1月24日 (火)

ラストアルバム

Title:.jp
Musician:bonobos

2001年に結成し、2003年にメジャーデビュー。レゲエを軸とした独特のサウンドで大きな注目を集めましたが、ここ最近は若干活動は低迷。ライブを中心とした活動を続けていたものの、残念ながら今年3月のライブを最後に解散することを発表。本作がラストのオリジナルアルバムとなります。

さてそんな彼らはオリジナルアルバムとして前作となる「23区」でジャズやソウルの要素を多く取り入れたシティポップ路線にシフト。その後リリースされたEP盤「FOLK CITY FOLK ep」でもその路線を維持していましたが、今回のアルバムも基本的にその方向性を踏襲したアルバムになっていました。本作の冒頭を飾る「永久彗星短歌水」もホーンセッションとスペーシーなエレクトロを取り入れつつ、ファンキーなリズムで聴かせるソウルテイストの強い作品。「YES」もピアノを取り入れつつ、ジャジーなサウンドが特徴的ですし、「電波塔」もメロウなAORナンバーに仕上げています。

そんな中、今回のアルバムで特徴的とも言える点が2つあり、まず1点目はスペーシーな作風であるという点。タイトルからして「永久彗星短歌水」なんていう、若干意味不明な単語の羅列ながらも「宇宙」的な曲名の作品からスタートしますし、その後中盤にも「おかえり矮星ちゃん」なんていう曲も登場。こちらもエレクトロジャズの要素の強い作品になっています。さらにサウンド的にも「KEDAMONO」などもスペーシーなシンセの音が流れるフュージョン風の作品になっていたり、エレクトロベースな作品がスペーシーな雰囲気を醸し出している曲が目立ちました。

そしてもう1点がアルバム全体としてホーンセッションを取り入れた賑やかな作風になっている点でした。1曲目「永久彗星短歌水」もそうですし、続く「Not LOVE」もホーンにエレクトロサウンドも加わった賑やかな楽曲。前述の「KEDAMONO」もホーンセッションで賑やかなアレンジになっていますし、「アルペジオ」も同様にホーンセッションを入れて賑やかで明るいナンバーとなっています。

このスペーシーなサウンドもそうですし、またホーンセッションを取り入れたサウンドも同様ですが、結果としてアルバム全体として賑やかでちょっと聴いた感じだと祝祭色すら感じさせる作風に仕上がっている今回の作品。このアルバムがラストという事実からすると、ある意味、真逆とも言える方向性とも言えるかもしれません。ただ、そんなサウンドを取り入れながらも、メロディーラインを含め、どこかメランコリックで哀しげな雰囲気も感じる点もあり、ある意味、bonobosらしいラストアルバムと言えるかもしれません。

最後の最後まで傑作アルバムをリリースしてきた彼ら。これが最後というのは本当に残念に感じますが、オリジナルアルバムとして完成に6年以上の月日を要したことを考えると、やはりやりたいことはやりつくした感もあるのかもしれません。今後はメンバーの新たな活躍を祈りつつ、本当にいいバンドだったなぁ、ということをあらためて実感したラストアルバムでした。

評価:★★★★★

bonobos 過去の作品
Pastrama-best of bonobos-
オリハルコン日和
ULTRA
HYPER FOLK
23区
FOLK CITY FOLK.ep


ほかに聴いたアルバム

AGE OF LOVE/Hump Back

3ピースガールズバンドHump Backの新作は彼女たち初となる5曲入りのEP盤。短い内容ながらも、彼女たちらしい力強くパンキッシュなギターロックが並ぶ作品に。いかにも若者らしい青春讃歌的な歌詞は、むしろもっと上の世代の共感も受けそうな、どこか70年代フォークからの繋がっりすら感じられる哀愁感も漂います。5曲ながらも彼女たちの魅力がしっかり伝わる作品でした。

評価:★★★★★

Hump Back 過去の作品
人間なのさ
大阪城ホール単独公演”拝啓、少年少女たちよ”
ACHATTER

A Tribute to Ryuichi Sakamoto - To the Moon and Back

現在、がん治療で療養中の坂本龍一。昨年末には配信限定のピアノコンサートも実施し話題となりました。そんな彼の生誕70周年を記念してリリースされたトリビュートアルバム。さすがに世界的な評価を受ける教授だけに参加したメンバーも豪華。THUNDERCATやDEVONTE HYNES、日本からもコーネリアスや大友良英も参加。さらに元JAPANのDavid Sylvianも10年ぶりにその歌声を披露して話題となっています。そんな彼らが手掛ける曲は全体的に静かな雰囲気の中で、エレクトロサウンドを奏でる実験的なナンバー。それぞれの個性もしっかりと発揮しており、坂本龍一の原曲の良さを生かしつつも、それぞれの個性をアピールしたトリビュートになっていました。

評価:★★★★★

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2023年1月23日 (月)

ロックなサニーデイ

Title:DOKI DOKI
Musician:サニーデイ・サービス

サニーデイ・サービスとしてもソロでも傑作アルバムをリリースし続ける曽我部恵一。ここに来て、脂ののりまくった状況をキープしていますが、フルアルバムとして約2年8か月ぶりとなるニューアルバムも、その状況を維持した傑作アルバムに仕上がっていました。サニーデイとしては2018年にメンバーの丸山晴茂が逝去するなど、困難な状況も待ち受けていましたが、今回のアルバム、ジャケット写真がとても印象的。自然な表情でにこやかにたたずむ3人の姿からは、バンドとしてもとてもいい状況であることが垣間見れます。

今回のアルバムも、そんな晴れやかなジャケット写真が象徴するかのような、さわやかな作品に仕上がっています。冒頭を飾る「風船讃歌」はそんなアルバムを象徴するような1曲。サニーデイらしいフォークロックでメロディアスな曲で、初夏を思い起こすようなさわやかな風景描写も印象的な暖かいラブソングに仕上がっています。

ただ、原点回帰的でフォークロックの色合いが強かった前作と比べると、1曲目こそ彼ららしいフォークロックのアルバムになっていますが、作品全体としては、むしろロック志向の強い、バンドサウンドを全面に押し出したアルバムになっていました。3曲目「ノー・ペンギン」はかなりダイナミックなバンドサウンドを聴かせてくれますし、さらに象徴的なのが続く「Goo」でギターサウンドを前面に押し出し、シューゲイザーからの影響も顕著に感じるオルタナ系のギターロック。出だしのイントロはPIXIESを彷彿とさせますし、タイトルからして、ひょっとしてSonic Youthの代表作からとっているのでしょうか?

「メキシコの花嫁」もメロこそフォーキーですが、非常に力強いビートを聴かせてくれる楽曲ですし、「ロンリー・プラネット・フォーエバー」も彼らの原点ともいえるフォーキーなメロですが、力強いバンドサウンドが流れており、ロックテイストの強い作品に。「海辺のレストラン」も軽快なギターロックのナンバー。ちょっとノスタルジックでオールドスタイルなサマーロックに仕上がっており、爽やかなテイストの流れるこのアルバムにふさわしい作品になっています。さらに「こわれそう」もテンポのよいギターロックで、彼らとしては珍しい、かなりパンキッシュな作品に仕上がっています。

しかしラストを飾る「家を出ることの難しさ」はアコースティックギターの流れる、こちらもサニーデイの王道ともいえるフォークロックのナンバー。分厚いバンドサウンドは流れており、やはりロックテイストは強めの作品ながらも、最初と最後は実にサニーデイらしい作品で締めくくっているところに構成の妙を感じさせますし、まさサニーデイを聴いたという満足感を強く感じさせる流れとなっていました。

ポップなメロディーラインと力強い分厚いバンドサウンド、さらにはサニーデイらしいちょっと切ないメロディーラインに(冬にリリースされた作品なのに)初夏を彷彿とさせる爽やかな歌詞も加わり、タイトル通り、聴いていて楽しくなる、「DOKI DOKI」させてくれる傑作に仕上がっていました。今回も文句なしに年間ベスト候補とも言える傑作アルバム。サニーデイの勢いはまだまだ止まらなさそうです。

評価:★★★★★

サニーデイ・サービス 過去の作品
本日は晴天なり
サニーディ・サービス BEST 1995-2000
Sunny
DANCE TO YOU
桜 super love

Popcorn Ballads
Popcorn Ballads(完全版)
the CITY
DANCE TO THE POPCORN CITY
the SEA
サニーデイ・サービスBEST 1995-2018
いいね!
もっといいね!
冷し中華EP


ほかに聴いたアルバム

サニーボトル/Saucy Dog

Sunnybottol

「シンデレラボーイ」が大ヒットを記録し、昨年の紅白にも初出場を果たしたロックバンドの6枚目となるミニアルバム。基本的にはその「シンデレラボーイ」と、同曲も収録された前作「レイジーサンデー」から変わらないスタイルで、シンプルなギターロックに、恋人の日常を描いたウェットなラブソングがメイン。メランコリックなメロといい歌詞の世界観といい、良くも悪くも昔ながら歌謡曲に連なるような作風が特徴的。似たタイプの曲が多いだけに、マンネリ気味になりそうなのが気になるのですが、一方で、しっかりとした日常や心理状況の描写が耳を惹くだけに、「シンデレラボーイ」に続くヒットも期待できそう。

評価:★★★★

Saucy Dog 過去の作品
レイジーサンデー

夜の庭/畠山美由紀&藤本一馬

Yorunoniwa

畠山美由紀がorange pekoeのギタリスト、藤本一馬と組んでリリースしたアルバム。"orange pekoe"…久しぶりに聞いた名前ですが、基本的に作詞は畠山美由紀が、作曲は藤本一馬が組んだ作品になっているのですが、彼女の包容力ある優しいボーカルと、藤本一馬の哀愁感たっぷりのメロディーラインがピッタリとマッチ。実に息の合った作品に仕上がっています。orange pekoeとしての活動もいいのですが、このコンビでも、コンスタントに活動してほしいなぁ。

評価:★★★★★

畠山美由紀 過去の作品
わたしのうた(畠山美由紀withASA-CHANG&ブルーハッツ)
わが美しき故郷よ
rain falls
Wayfarer

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2023年1月22日 (日)

SSWとしての魅力を存分に感じる

ある時はミュージカル風なステージを披露し、リスナーの度肝を抜いたり、ある時はいきなりアイドルグループを結成したり。さらにある時はライブの参加者全員がメンバーというプロジェクト「TOWN」をスタートさせたりと、毎回、奇抜なコンセプトでリスナーを驚かせる清竜人。前作「REIWA」は正統派歌謡曲路線と、またユニークなコンセプトを披露したのですが、純粋なオリジナルアルバムとして3年半ぶりとなる今回のオリジナルアルバムは、かなり豪華なリリース形態が目につきます。なんとCD3枚+Blu-ray+DVDという全5枚組というリリース形態。オリジナルアルバム「FEMALE」のほか、Blu-rayには本人が監督・主演した映画「IF I STAY OUT OF LIFE...?」が収録。さらにそのサントラ盤がCDとしてついて、ライブ映像のDVDと、2020年に配信限定でリリースしたカバーアルバム「COVER」のCD盤が付属された全5枚組という構成。ただ、残念ながら完全生産限定12,000円というフルボリュームまでは手は出せず、別途、単体で配信リリースされたアルバム「FEMALE」をチェック。また、リアルタイムでは聴き逃していたアルバム「COVER」もはじめてチェックしてみました。

Title:FEMALE
Musician:清竜人

まずこちらが3年半ぶりにリリースされたオリジナルアルバム。ファルセット気味なボーカルで伸びやかに聴かせるシティポップ風の作品がメイン。奇抜なコンセプトが前面に押し出した作品が続いていた彼ですが、今回のアルバムはともすれば2010年にリリースした「WORLD」以来となる、「正統派」とも言えるポップのアルバムになっています。

メランコリックに歌い上げる「フェアウェル・キス」もまさに清竜人らしいラブソングに仕上がっていますし、特に秀逸なのが、本人が主演・監督した映画の主題歌にもなっている「If I stay out of life…?」で、エレピでループするトラックをバックにLeo Uchidaのラップを聴かせつつ、彼のメランコリックな歌が重なるスタイルが非常にカッコいいHIP HOP風のチューンに。

微妙に長いタイトルが印象的な「愛が目の前に現れても僕はきっと気付かず通り過ぎてしまう」人間不信に陥りつつも、どこか愛を信じようとする歌詞が印象的。さらに、「離れられない」は美しいウインターバラードに仕上がっており、メロディーメイカーとしての彼の才能も感じられます。ラストを飾る「いない」も非常に切ない歌詞とメロが印象に残るバラードナンバーとなっており、こちらも清竜人の名前を一気に知らしめた名曲「痛いよ」を彷彿させるような作品となっています。

久しぶりに清竜人の本領をいかんなく発揮した、と思われるアルバムになっており、彼の魅力の存分につまった、SSWとしての実力をこれでもかというほど発揮した作品に仕上がっていました。いつもの奇抜なコンセプト重視のアルバムも、彼らしいですし、彼としてはああいうアルバムを作りたいのでしょうが、やはりこういったアルバムもコンスタントにリリースしてほしいなぁ、とは感じてしまうのですが・・・。SSWとしての清竜人の魅力をあらためて実感したアルバムでした。

評価:★★★★★

Title:COVER
Musician:清竜人

Kiyoshi_cover

で、こちらが遅ればせながら聴いてみたセルフカバーアルバム。もともとは2020年に配信限定でリリースしたアルバムで、彼がアイドルや女性声優に提供した楽曲を彼があらためてセルフカバーした作品となっています。

セルフカバーは彼がピアノ1本で弾き語るスタイルで、装飾的な部分は一切なし。純粋に歌詞とメロディーのみを聴かせるという、楽曲を「裸」の状態にして聴かせるセルフカバーとなっており、それだけ「アイドル」というギミックを一切なしにして楽曲のコアな部分にスポットをあてようとするセルフカバーと言えるかもしれません。

そのためあらためてメロディーラインを聴くと、そのメロディーメイカーとしての清竜人の才能をこれでもかというほど感じることが出来ます。シンプルながらもしっかりとインパクトも兼ね備えたメロディーラインは、ピアノ1本での弾き語りというスタイルでもしっかりと耳に残ります。キラキラしたアイドルポップスというギミックに隠されがちですが、実にしっかりとしたメロディーを持った楽曲であることをあらためて実感できます。

ただ、正直なところ、歌詞に関してはいかにもアイドルアイドルした内容に聴いていて違和感を覚えました・・・・・・というよりも、アイドルとしてのコンセプトにしっかりと沿った、アイドルらしい歌詞をしっかりと書いてくるあたり、こちらも清竜人の才能を感じることが出来るのですが、ある意味、男性が女性に持っているような妄想とも言える幻想をそのまま押し付けて歌わせるような歌詞に非常に違和感を覚えてしまいます。もちろん、これは清竜人のせいではなく、性別関係なくアイドルポップスがいずれも持っている特徴で、この点が私がアイドルに全くはまれない大きな要素の一つなのですが、今回のセルフカバーで歌詞とメロがより強調されたがゆえに、違和感をより強く抱いてしまいました。

もちろん清竜人としては、アイドルのコンセプトにしっかり応えた作品を提供している訳で、その部分を含めて彼の才能と言えるのでしょう。もっとも、いかにも女性アイドルが歌いそうな歌詞を、男性の彼がそのまま歌っている点、違和感を覚える部分もあり、その違和感がユニークでインパクトにもなっているのですが。歌詞とメロのみを強調したカバーに仕上がっているだけに、メロディーラインの秀逸さと同時に、アイドルポップに感じる違和感を同時に覚えるセルフカバーに仕上がっていました。

評価:★★★★

清竜人 過去の作品
WORLD
MUSIC
WORK
BEST
WIFE(清竜人25)
TOWN(清竜人TOWN)
REIWA


ほかに聴いたアルバム

Off Course 1982・6・30 武道館コンサート40th Anniversary/オフコース

かつて小田和正が所属し、70年代から80年代にかけて一世を風靡したバンド、オフコースが、1982年に実施した10日間連続武道館コンサート。そのうち6月30日の音源を収録したライブアルバムが本作。「言葉にできない」の途中で感極まって歌詞が出てこなくなるのは、あまりに曲の内容とマッチしすぎていてわざと?と思ってしまうくらい。オフコースといえばもちろんリアルタイムでは知らないのですが、どちらかというと、今の小田和正と同様のフォーキーなバンドというイメージがあるのですが、「のがすなチャンスを」では意外と力強いジャム演奏を披露したりと、ロックバンドとしての側面があったこともはじめて気が付かされました。ファンならチェックしておきたい貴重な音源でしょう。

評価:★★★★

オフコース 過去の作品
OFF COURSE BEST"ever"

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2023年1月21日 (土)

お正月らしい(?)アコースティックセッション

THE BAWDIES THE HAPPY NEW YEAR ACOUSTIC SESSION 2023~話して、笑って、歌って、福来て!~

会場 名古屋市千種文化小劇場 日時 2023年1月13日(金)19:00~

徐々に正常ベースに戻りつつあるライブシーン。そんな中、2023年最初に足を運んだのが、THE BAWDIESのライブでした。彼らのステージは何度か見たことあるのですが、ワンマンライブは初!ただ、タイトル通り「ACOUSTIC SESSION」という特別な形態でのステージ。場所も千種文化小劇場という、普通のライブよりも小劇団のステージなどがよく行われるような会場でのライブとなりました。

The-bawdies_acoustic

この日のライブはソールドアウト。ただ、会場はキャパ250名程度のかなり小さい会場で、円形の舞台を客席が囲むセンターステージという形態になっていました。そのため、ステージまでの距離がかなり近い!文字通り、手を伸ばせばメンバーに触れそうなくらいの距離で、まずそのステージとの近さに興奮してしまいました。

そして、開演時間になると間もなくメンバー4人が登場。お正月らしい筝曲をBGMにメンバーが2人と2人にわかれて整列しながら登場。メンバーがステージにあがると、ステージ上には折り畳み式の傘と紙風船が置いてあり、お正月らしく(?)傘をつかって風船回しに挑戦。さらに、ROYがけん玉に挑戦し、こちらは見事に成功すると、全員、おもむろにそれぞれの楽器のある場所に座り、ライブがスタートとなりました。

冒頭は「LEMONADE」からスタート。アコースティック形式でのステージということで、しんみりと聴かせる曲ばかりになるのか、とも思ったのですが、これが冒頭から全く予想はずれで、彼ららしい、アグレッシブなロックンロールからスタート。

最初に2曲ほど演奏して、トークのコーナーへ。この日はサブタイトルで「話して」と書いてある通り、MCコーナーもたっぷり時間がとってあるようで、事前にネットを通じて、この日、来場したファンから質問事項を募集。その中からセレクトしてメンバーが答えるという形式となっていました。もっとも、質問に答えるような形をとっていながらも、本人たちが語りたい内容を語っているような感も否めなかったのですが・・・まずはトークとして「ヤクルト1000」が話題に。ROYがはまっていてみんなに勧めまくっているとかで、この日のトークでも効用を語りつつ、勧めまくっていました。

その後は新年らしい「A NEW DAY IS COMIN'」などを披露しつつ、「新年といえば『光』ですよね」という微妙にわかるようなわからないような会話から「HAPPY RAYS」へと進んでいきました。

さらにトークのコーナーへ。ここでは「好きなお酒の飲み方は」なんて質問でROYが全くお酒が飲めない話をしたり、ウインタースポーツのネタからテレビのスポーツバラエティー「サスケ」の話になったりもしました。また、今回のライブに来る途中、MARCYが、浜松のサービスエリアで食事をしていた時に、すぐそばにTHE BAWDIESの「HAPPY RAYS」のTシャツを着ている人に遭遇。MARCYだと全く気が付かれなかった話をしたのですが、「ひょっとして、今日来ているかも・・・」という話から客席に聞いてみると、なんと該当する本人がいました!ちょっとしたサプライズ。でも、まさかそんなところにバンドのメンバーがいるとは思いませんもんね・・・。

その後は「THE SEVEN SEA」から、ジェイムス・ブラウンの「Try Me」のカバーへ。こちらはROYがおなじみの濁声でおもいっきりシャウトしつつ、カッコいいファンクナンバーを聴かせてくれます。

さらに「IT'S TOO LATE」でアコースティックながらも会場全体で盛り上がり、「LET'S GO BACK」へ。そしてサム・クックの「Twistin'The Night Away」のカバーへ。こちらもかなり泥臭い雰囲気のカバーになっていて、非常にカッコいい!!ラストは「Twistin' Annie」で締めくくり。ライブ本編は幕を下ろしました。

最後はTAXMANが法被を着て登場。全員で「わっしょい!」の掛け声で思いっきり万歳をして盛り上がります。最後は全員で写真撮影。円形の観客席のため、パノラマ機能をつかいつつの撮影となり、締めくくり。全1時間半のステージとなりました。

この日は特別形態のアコースティックでのライブ。そのため、若干、パフォーマンスとしては物足りなさも感じてしまうのかなぁ、なんて危惧もあったのですが、とんでもない!アコースティックでも彼ららしいロックンロールやソウルの魂を存分に感じられる非常にカッコいいパフォーマンスを見せてくれました。たった250名程度というキャパの狭さもあって、メンバーから至近距離で楽しめ、会場の一体感もあり、予想以上に楽しめたステージでした。

ちょっと残念だったのがステージがわずか1時間半程度と予想以上に短かった点。そのため、披露した楽曲も10数曲程度と予想よりも少なかったのは残念・・・。正直、もうちょっと演ってほしかったなぁ、というのが率直な感想です。ただ、そういった点を差し引いても、予想以上に楽しめたステージ。トークも楽しかったし、あっという間の1時間半でした。次回は是非とも通常のバンド形式でのワンマンライブに参加したいなぁ。

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2023年1月20日 (金)

歌謡ロック?

Title:Highway X
Musician:B'z

昨年の紅白歌合戦。史上2番目に低い視聴率に終わり、さらにいろいろなことを言われつつも、結局、はじまる前も終わった後も話題に上ることが多い時点で、まだまだ注目度の高いコンテンツということを認識しつつ、そんな中、Twitterでバズった2つのコメントがありました。

まず1つ目が、先日もチラッと紹介しましたが、「ロック」が昔の「演歌」のポジションに来た、という指摘。

そしてもう1つが、日本のロックにおける低音軽視という指摘でした。

で、この2つの指摘を読んでまず感じたのが「それってB'zのことじゃん!」という印象でした。「ロック」が昔の「演歌」のポジションに来た、という意味では、良くも悪くも様式美的なロックを演奏している点、歌謡曲を様式化した演歌と同じようなポジショニングを感じさせますし、ボーカルとギターだけというユニットは完全に低音軽視。海外ではほとんどお目にかかりません。

約3年ぶりとなるB'zのアルバムも、良くも悪くもいつものB'zといった印象を受けるアルバム。ただ、そんな中でも今回のアルバムは特に良くも悪くも非常に歌謡曲的なアルバムになっていたような印象を受けました。アルバムの冒頭「SLEEPLESS」はいきなりエッジの効いたギターサウンドからスタート。非常にダイナミックなサウンドからスタートし、実にロック的な要素の強い作品になっています。続く「Hard Rain Love」もギターサウンド主導のロック的な作品になっており、「お、すごいカッコいいじゃん!」といった印象からスタートします。

ただ、序盤に非常にロック的な作風でスタートしても、その後、一気にJ-POP的、あるいは歌謡曲的な「ベタさ」を感じさせる作風にシフトしてしまうのがB'zのアルバムの特徴で、続く「COMEBACK -愛しき破片-」はビックリするほどの歌謡曲調なメロディーの哀愁感たっぷりの曲調に。「YES YES YES」もJ-POPらしいメロと歌詞の曲となっていますし、タイトル曲である「Highway X」もベタな歌謡曲的な作風となっています。

この傾向は以前からB'zの作品に共通するものの、今回のアルバムは特にこの歌謡曲的な方向性が強く、良くも悪くも「歌謡ロック」というイメージが強くついているアルバムになっていました。もっとも今どき、歌謡曲だからダメ・・・とは思いませんが、彼らの場合、桑田佳祐みたいに積極的に歌謡曲の要素を取り入れているというよりも、結果として歌謡曲になってしまった、といった印象が・・・。その結果、ベタで安直に哀愁感を誘うよう抒情的なメロディーラインという歌謡曲の「悪い」部分が出てしまっているようにも感じました。

前作「NEW LOVE」も楽曲のインパクトは薄めだったのですが、今回のアルバムも悪い作品ではないのかもしれませんが、ちょっと印象が弱いアルバムに仕上がっていたような感じがします。もうちょっとゴリゴリのハードロック路線でもいいと思うのですが・・・ファン層的に、歌謡曲的な路線を望むような人が多い年齢層になってしまったということでしょうか。

評価:★★★★

B'z 過去の作品
ACTION
B'z The Best "ULTRA Pleasure"
B'z The Best "ULTRA Treasure"
MAGIC
C'mon
B'z-EP
B'z The Best XXV 1988-1998
B'z The Best XXV 1999-2012

EPIC DAY
DINOSAUR
NEW LOVE
FRIENDSIII


ほかに聴いたアルバム

ToMoYo covers~原田知世オフィシャル・カバー・アルバム

原田知世デビュー40周年を記念してリリースされた、初のオフィシャル・カバー・アルバム。本作では土岐麻子や堀込泰行、キセルなどといったミュージシャンが彼女の曲をカバー。原田知世といえば、最初はアイドル歌手としてデビューし、その後、90年代後半には「ロマンス」のスマッシュヒットなどでスウェディッシュ・ポップも挑戦。ボーカリストとしても評価を得たのですが、今回のアルバムは、そんな頃の作品はもちろん、初期のアイドルポップもカバー。ただ、アレンジの方向性としては、全体的に90年代後半以降の彼女のスタンスを踏襲するようなアコースティックなアレンジがメインとなっています。

そんな訳で、全体的にアコースティックで暖かい雰囲気のポップソングが並ぶカバーとなっており、カバーアルバムとして統一感もあり魅力的な内容に仕上がっているのですが、そんな中でも特に素晴らしかったのがキセルがカバーした「くちなしの丘」。キセルらしい脱力感あるサウンドでしんみり聴かせる作品で、完全にキセルの曲として自分のものとしています。原曲の魅力もさることながら、キセルの魅力もあらためて感じるカバーに仕上がっていました。他も良質なポップソングが並ぶ本作。原田知世のファンはもちろん、参加ミュージシャンのファンも文句なしにお勧めのカバーアルバムでした。

評価:★★★★★

COVER JUNGLE 2/T字路s

6月にリリースしたカバーアルバムから5カ月。T字路sの2枚目となるカバーアルバムが早くもリリースされました。本作でも「あの鐘を鳴らすのはあなた」「かもめはかもめ」のような歌謡曲から、高田渡の「生活の柄」や斉藤和義の「空に星が綺麗」、真心ブラザーズの「荒川土手」など幅広いジャンルをカバー。今回異色なのは、T字路sの曲を出囃子として使っているという縁から、お笑いユニットオズワルドの畠中悠が作詞作曲を手掛けた「コンビニエンスマン」もカバーしています。前作同様、ボーカル伊東妙子の力強いボーカルが印象的。レトロテイストなサウンドも加わり、完全にT字路sの色に染めあげているカバーに仕上がっており、そのボーカルの力強さもあり、耳に残るカバーアルバムとなっていました。

評価:★★★★★

T字路s 過去の作品
PIT VIPER BLUES
BRAND NEW CARAVAN
COVER JUNGLE 1

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2023年1月19日 (木)

男性アイドルグループが目立つ

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

2週ぶりの1位返り咲きとなりました。

今週1位には結束バンド「結束バンド」が先週の2位からワンランクアップ。2週ぶり2度目の1位獲得となりました。CD販売数は3位から2位にアップ。ダウンロード数で4週連続1位を獲得し、総合順位も1位獲得となりました。

2位はSixTONES「声」がワンランクダウンながらもベスト3をキープ。さらに3位には韓国の男性アイドルグループASTROのメンバーMoonbin&Sanhaによる「Incense」がベスト10初登場。CD販売数3位。オリコン週間アルバムランキングでは初動売上1万4千枚で2位初登場。前作「REFUGE」の初動9千枚(11位)からアップしています。

2位3位と男性アイドルグループが並びましたが、今週は男性アイドルグループが目立つチャートになりました。ほかに5位にはWayV「Phantom」がベスト10初登場。CD販売数5位。韓国の男性アイドルグループNCTから派生したグループですが、中国を拠点に置くグループだそうです。オリコンでは初動売上9千枚で4位初登場。前作「Kick Back」の初動1千枚(35位)からアップしています。

ほかにもロングヒット組でSnow Man「Snow Labo. S2」が今週も先週から変わらずの10位をキープ。これで通算12週目のベスト10ヒットとなりました。

そのほかベスト10初登場組は6位に椎名林檎「百薬の長」がランクイン。CD販売数6位、ダウンロード数22位。彼女初のリミックスアルバム。アルバムについてくるグッズが「ヘルプマーク」そっくりということで批判を浴び、その結果、内容を変更。販売も延期になっていましたが、ようやくリリースとなりました。オリコンでは初動売上6千枚で8位初登場。直近作でありベスト盤である「ニュートンの林檎~初めてのベスト盤~」の初動9万7千枚(1位)より大きくダウン。もともとリミックスアルバムだったので、売上的に大きくダウンするのは想定内なのですが、少なからずグッズ騒動の影響はあったのでしょう。ただ、椎名林檎本人はいまだにこの騒動に関してコメントしていません。正直なところ、一言「すいません」を言えば済むだけの話だと思うのですが、本人の関与も否定した結果、ミュージシャンとしてのイメージもダウン。どうも「謝ったら負け」的な発想になっているのがすごく残念ですし、彼女の廻りに「素直に謝ればよい」的なアドバイスを行うスタッフすらいないという状況が垣間見れて、ある意味、椎名林檎が「裸の王様」状態であることが発覚してしまい、非常に残念な気持ちになりました。彼女や彼女の廻りのスタッフが何を守ろうとしているのか、いまひとつ見えてこない騒動でした。

7位には主にアニソンを中心に活躍している藍井エイル「KALEIDOSCOPE」がランクイン。CD販売数10位、ダウンロード数10位。先日、体調不良のため活動休止となることが発表された彼女。いままでも何度か体調不良による活動休止があったみたいで、健康面が気になります。どうか、無理はされないように・・・。オリコンでは初動売上5千枚で8位初登場。前作「FRAGMENT」の初動1万4千枚(5位)からダウンしています。

9位には女性アイドルグループiLiFE!「アイライフスターターパック」がランクイン。CD販売数7位。オリコンでは初動売上7千枚で7位初登場。

さらに今週はベスト10返り咲きも。8位にあいみょん「瞳へ落ちるよレコード」が先週の45位からランクアップ。昨年9月21日付チャート以来のベスト10返り咲きとなりました。これはアナログ盤がリリースされた影響で、CD販売数(・・・ってアナログの売上ですが)が49位から9位に大きくアップ。オリコンでも7千枚を売り上げて6位にランクインしています。

今週のベスト10は以上。一方、今週は初登場盤に追い出される形でロングヒット盤が陥落しています。まずAdo「ウタの歌 ONE PIECE FILM RED」は4位から11位に大きくダウン。ベスト10ヒットは通算20週でストップ。また松任谷由実「ユーミン万歳!~松任谷由実50周年記念ベストアルバム~」も6位から13位にダウン。ベスト10ヒットはこちらは通算13週でストップとなりました。

今週のHot Albumsは以上。チャート表はまた来週の水曜日に!

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2023年1月18日 (水)

ヒゲダンの活躍

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

これで7週連続の1位獲得となりました。

Subtilte

Official髭男dism「Subtitle」が今週も1位獲得。これで7週連続の1位、ストリーミング数は13週連続の1位獲得となります。You Tube再生回数も3位から2位にアップ。一方、ダウンロード数は2位から4位にダウンしています。これで14週連続のベスト10ヒット&ベスト3ヒットとなりました。

ヒゲダンは今週も「ミックスナッツ」がベスト10入り。8位から10位にダウンしたものの、通算34週連続ベスト10ヒットとなりました。さらに今週は彼らの新曲「ホワイトノイズ」が初登場で5位にランクイン。なんと、今週はヒゲダンの曲が3曲同時ランクインという快挙を達成しました。「ホワイトノイズ」はテレビアニメ「東京リベンジャーズ」オープニングテーマ。ダウンロード数は本作が1位を獲得。ストリーミング数25位、ラジオオンエア数3位、You Tube再生回数8位。ストリーミング数がまだ少々低い順位となっていますが、今後、ランク上昇してくるのでしょうか。

2位初登場はLIL LEAGUE from EXILE TRIBE「Hunter」。これがデビュー作となるEXILEの弟分的なダンスグループ。CD販売数は2位、ラジオオンエア数で1位を獲得。ダウンロード数は97位、ストリーミング数やYou Tube再生回数は圏外となり、総合順位はこの位置に。オリコン週間シングルランキングでは初動売上8万2千枚で1位初登場となっています。

3位には米津玄師「KICK BACK」がワンランクダウンながらもベスト3をキープ。ストリーミング数は13週連続の2位、You Tube再生回数も6位から5位にランクアップ。一方、ダウンロード数は6位から10位、CD販売数も11位から16位にダウンしています。ただし、これで14週連続のベスト10ヒット&ベスト3ヒットとなりました。

続いて4位以下の初登場曲ですが、今週の初登場曲はあと1曲のみ。7位に秋元康プロデュースによるアニメキャラによる声優アイドルグループ22/7「神様だって決められない」が獲得。CD販売数は1位を獲得しましたが、ラジオオンエア数で25位、それ以外のランクは圏外となり総合順位はこの位置に。オリコンでは初動売上5万9千枚で2位初登場。前作「曇り空の向こうは晴れている」の初動5万8千枚(2位)からほぼ横バイ。

一方、今週のロングヒット曲ですが、まずAdo「新時代(ウタ from ONE PIECE FILM RED)」は4位から6位にダウン。ダウンロード数は5位から9位、You Tube再生回数も9位から13位、カラオケ歌唱回数も1位から2位にダウン。一方、ストリーミング数は今週も4位をキープ。これでベスト10ヒットを31週連続まで伸ばしています。

さらにSEKAI NO OWARI「Habit」も5位から9位にダウンしたもののベスト10をキープ。ダウンロード数は3位から6位、ストリーミング数は5位から8位、You Tube再生回数は4位から6位と全体的にダウン傾向。ただ、こちらもベスト10ヒットを通算22週に伸ばしています。

一方でTani Yuuki「W / X / Y」は今週9位から11位にダウン。ベスト10ヒットは通算36週で再びストップとなりました。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

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2023年1月17日 (火)

昭和のレア・グルーヴ企画拡大版 その6

前回に引き続き、「Groovin'昭和アーカイヴス」の紹介。今回がシリーズ最終回となります。

Title:GROOVIN'昭和アーカイヴス 14 魅惑の男性シンガーvol.3

さて、こちらはタイトル通り、男性ボーカルの曲をまとめた第3弾。歌謡曲的な曲がメインとなりますがバリエーションのある作品が並んでいます。

特に珍曲で耳を惹くのが吉幾三の「おじさんサンバ」で、おじさんの悲哀を悲しいまでに歌った曲。曲中にいろいろな固有名詞が出てくるのですが、同曲がリリースされた1985年には、おじさんが好きだったものの代表格だったんでしょうね・・・。ただ、歌の中で「おじさんは42」とうたわれるけど、この時、吉幾三はまだ33歳なんですよね。どういう気持ちで歌ってたんだろう・・・。

また間寛平が、間寛平&ボーイフレンド名義で歌う「ゲイボーイブルース」も珍曲。これ、今だったら絶対リリースできなかったでしょうね・・・。珍曲ではないのですが、音楽評論家で昨年亡くなった松村雄策がミュージシャンとしてリリースした曲も収録。彼の独特の文体が結構好きだったんですが、ミュージシャンとしてもパンキッシュなロックを披露しており、なかなかカッコいい作品になっていました。

ただ全体的にはジョー山中「あしたのジョー2のテーマ - 明日への叫び」やジョニー吉長「孤独の叫び」のように、泥臭さ、男臭さを感じる曲が並んだアルバムになっており、いかにも「男性シンガー」ともいえる曲が並ぶ作品に。これだけ泥臭い曲は今の時代なかなかリリースしにくいのかもしれませんが、そういう意味でも時代を感じさせる1枚になっていました。

評価:★★★★

Title:GROOVIN'昭和アーカイヴス 15 魅惑の女性シンガーvol.3

第14弾が男性シンガー編ならば、当然、第15弾は女性シンガー編。こちらも男性シンガー編と同様にバラエティーのある聴きごたえのある曲が並んでいました。

まずコミカルな珍曲と言う意味では、昨年亡くなったあき竹城が歌っていた「年上かもめ」で、山形弁で歌われるかなりあくの強い楽曲になっており、かなりユニーク。詩織の「メゲメゲ・ルンバ」はNHK「みんなのうた」で流れていた曲らしいのですが、コミカルな物語調の歌詞が楽しいキッズソングになっています。またマッハ文朱の「ソウル見ちゃった」も、意外な事実を覗き見ちゃったことをうたうコミカルな歌詞が楽しい楽曲になっています。

また文句なしにカッコいい曲といえば李礼仙の「ジュクに風が吹く」でムーディーに聴かせるスモーキーなボーカルが文句なしにカッコいい楽曲。いかにも歌謡曲的な曲なのですが、逆に歌謡曲のカッコいい側面を感じさせる曲になっています。

ただ、Vol.1,2の紹介の時も書いたのですが、いかにも男性視点から「都合の良い女性像」を女性に歌わせるような曲も少なくなく、時代とはいえ今聴くと、ちょっと厳しいなぁ、と感じる曲も見受けられました。典型的なのが桜たまこの「おじさんルンバ」で、前述の「おじさんサンバ」と対になるような曲。女性視点からおじさんに恋するような描写はあまりにもあざとい・・・。さらに酷いのが、歌謡曲のスタンダードナンバーではあるのですが、奥村チヨの「恋の奴隷」で、これって男性のDVを完全に肯定している歌詞ですよね・・・。時代性を差し引いても、さすがにひいてしまいます・・・。

また、ちょっと違う視点で閉口したのがCONNYの「愛のゆくえ~ WHAT'S GOING ON」。こちらマーヴィン・ゲイの「WHAT'S GOING ON」の日本語カバーなのですが、反戦歌の原曲の意味を全く無視したラブソングになっています。原曲の意味を多少変えるようなカバーでも仕方ない部分はあるのですが、この曲に対するマーヴィン・ゲイの思い入れを考えると、このカバーはあまりにもひどくないですか?おそらく、今なら訴訟が起こされそうな気すらします。「都合の良い女性像」と合わせて、歌謡曲の「悪い部分」を見たような気がします。

そんな感じで、歌謡曲のカッコよさを感じさせると同時に、歌謡曲の悪い部分も凝縮されたようなオムニバスになっており、そういう意味ではいかにも日本歌謡曲の象徴ともいえる作品と言えるかもしれません。シリーズ最後を締めくくる作品ですが、いかにも歌謡曲的な作品となっていました。

評価:★★★★


ほかに聴いたアルバム

2022 LIVE AT SENDAI,FUKUOKA,OSAKA/佐野元春&THE COYOTE BAND

Sanolive

昨年実施された、佐野元春&THE COYOTE BANDのツアー「WHERE ARE YOU NOW」から福岡、仙台、大阪公演の8曲を収録した最新ライブアルバム。昨年の紅白歌合戦に初出場した彼。同世代のミュージシャンと組んだユニットの一員として出演したのですが、正直、一番現役感を覚えたのは彼だったように思います。そんな佐野元春のライブアルバムは、今なお強く感じられる現役感さながらに、ベテランらしい安定感も同居させた作品に。ただ、非常に残念なのは複数公演からたった8曲のピックアップだったという点。是非、1本の公演をフルにおさめたようなライブアルバムを聴きたいのですが。

評価:★★★★

佐野元春 過去の作品
ベリー・ベスト・オブ・佐野元春 ソウルボーイへの伝言
月と専制君主
ZOOEY
BLOOD MOON
MANIJU
自由の岸辺(佐野元春&THE HOBO KING BAND)
或る秋の日
MOTOHARU SANO GREATEST SONGS COLLECTION 1980-2004
THE ESSENTIAL TRACKS MOTOHARU SANO & THE COYOTE BAND 2005 - 2020(佐野元春&THE COYOTE BAND)
ENTERTAINMENT!(佐野元春&THE COYOTE BAND)
今、何処(佐野元春&THE COYOTE BAND)

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2023年1月16日 (月)

昭和のレア・グルーヴ企画拡大版 その5

徳間ジャパンコミュニケーションズが原盤を所有する昭和のレア音源を集めたオムニバスアルバム企画「GROOVIN'昭和アーカイヴス」シリーズ。昨年10月に第1弾であるVol.1からVol.5を、12月のVo.6からVol.10まで紹介しましたが、今回から2回にわけて、第3弾のVol.11からVol.15までを紹介します。

Title:GROOVIN'昭和アーカイヴス 11 パンクロック

Showa

好みの問題、というのも若干あることは否定しませんが、ただ全シリーズ15枚の中で一番よかったのがこちら。タイトル通り、日本の、それも黎明期のパンクロックが収録されたナンバーです。日本のロックというと80年代のBOOWYの登場や、80年代後半からのバンドブームを経て、良くも悪くもヒットシーンに定着し、現在に至っては歌謡曲的な立ち位置まで、あえて書けば「堕落」してしまう訳ですが、ここに収められている曲は日本のパンクロックが世間的にまだまだ認められていない時代の曲。ジャケット写真にあるような「不良の音楽」的ないい意味でのやばさに満ちた作品が並びます。

特に1曲目に収録されているザ・スターリンの「ロマンチスト」は日本ロックシーンに残るスタンダードナンバー。「吐き気がするほどロマンチックだぜ」というインパクトたっぷりのサビのフレーズは、この時期のパンクの立ち位置について否応なく描ききっています。その後もTHE STAR CLUBやあぶらだこ、アレルギー、FRICTIONといった日本の黎明期のパンクバンドがズラリ。レーベルの括りはあるものの、日本パンクロックの黎明期を知るには最適なオムニバスとなっていました。

評価:★★★★★

Title:GROOVIN'昭和アーカイヴス 12 ニューウェイヴ

ユニークさといえばこちらのアルバムも負けてはいません。タイトル通り、ニューウェイヴの楽曲を並べた1枚。元祖ニューウェイヴスカバンドといわれる(らしい)ビジネスや、ここでも紹介したことがある、元ピチカート・ファイヴの野宮真貴がピチカート結成前に組んでいたバンド、ポータブルロックの曲、海外でも支持を集めるP-MODELなど、こちらも注目のミュージシャンの曲がズラリと並んでおり、80年代の日本のニューウェイヴシーンを知るには最適なアルバムとなっています。

そんな中でも特にユニークなのは、野宮真貴の「100パーセント妖怪CAT」で、あのゲゲゲの鬼太郎の猫娘のテーマ曲というレア曲。アイドルポップ風の作品になっており、猫娘って昔からああいう扱いされていたんだ・・・ということを感じます。また、かっこよかったのがガールズバンドの先駆けともいわれるゼルダの「ソナタ815」で、アングラっぽい雰囲気のサイケロックに独特のやばさを感じさせます。いまでも活動を続けるカーネーションのデビューシングル「夜の煙突」も時代を先駆けるような力強いオルタナロック風のナンバーで、こちら1984年の楽曲なのですが、この時代にこういう音を出していたという事実に驚かされます。

時代を超えて、今聴いてもかっこよさや斬新さすら感じさせるナンバーから、逆に時代を感じさせるようなユニークな曲まで並ぶアルバムになっており、ニューウェイヴと一言で言っても、その幅の広さを感じさせました。しかし、どうでもいいのですが、ビジネスやらShampooやらゼルダやらカーネーションやらニューウェイヴ系のバンドって、その単語だけで検索してもミュージシャンを検索しずらいグループが多いのは偶然??

評価:★★★★★

Title:GROOVIN'昭和アーカイヴス 13 オルタナティヴ・フォーク&ロック

こちらは主にフォークの作品のうち、どちらかというと王道の四畳半フォークとは一線を画するような曲が並ぶ作品。一方、「オルタナティヴ・ロック」となっていますが、一般的にイメージされるようなオルタナ系のロックは収録されていません・・・。

特に前半は、フォークの名曲が並ぶような構成。ここでも何度か取り上げた高田渡に(「自衛隊に入ろう」も収録されています)、泣き叫ぶようなボーカルが印象的な友川かずき、また、今でも多くのミュージシャンに影響を与えている友部正人の哀愁感たっぷりの楽曲にも耳を惹きつけらます。さらに中盤も茶木みやこや真芽正恵といった知る人ぞ知る的な女性フォークシンガーの曲が並んでいます。

一方後半はロック・・・というよりはAORのイメージが強い曲が並びます。こちらも知る人ぞ知る的なバンドの銀河鉄道の曲はそんなAORテイストの強い曲。さらには喜納昌吉&チャンプルーズ「ハイサイおじさん」も。ご存じ沖縄民謡の代表曲としてスタンダードナンバー化していますので、ご存じの方も多いでしょう。最後は、ご存じムーンライダーズの鈴木慶一が結成したはちみつぱいの曲で締めくくられています。

こちらもバリエーションが多く、フォークの名曲が並ぶ聴きごたえのあるオムニバスに。少々時代を感じさせるような曲もありましたが、それを差し引いても十二分に楽しめるオムニバスアルバムでした。

評価:★★★★

GROOVIN'昭和!シリーズ 過去の作品
GROOVIN' 昭和!1~こまっちゃうナ
GROOVIN'昭和!2~ベッドにばかりいるの
GROOVIN'昭和!3~恋のサイケデリック
GROOVIN'昭和4~自衛隊に入ろう
GROOVIN'昭和5~ぐでんぐでん
GROOVIN'昭和!6~東京ディスコ・ナイト
GROOVIN'昭和!7~ロマンチスト
GROOVIN'昭和アーカイヴス 1 シティ・ポップ&メロウ・サウンド
GROOVIN'昭和アーカイヴス 2 オン・ザ・ロックス
GROOVIN'昭和アーカイヴス 3 ファンク&ブルース
GROOVIN'昭和アーカイヴス 4 歌謡ディスコ&ソウル
GROOVIN'昭和アーカイヴス 5 ロックンロール80's
GROOVIN'昭和アーカイヴス 6 カルトGSコレクション
GROOVIN'昭和アーカイヴス7 魅惑の男性シンガーvol.1
GROOVIN'昭和アーカイヴス8 魅惑の男性シンガーvol.2
GROOVIN'昭和アーカイヴス9 魅惑の女性シンガーvol.1
GROOVIN'昭和アーカイヴス10 魅惑の女性シンガーvol.2

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2023年1月15日 (日)

いつも何処かで流れてきた桑田佳祐の音楽

Title:いつも何処かで
Musician:桑田佳祐

桑田佳祐がソロデビュー35周年を記念してリリースしたベストアルバム。ただ、桑田佳祐は1992年の「フロム イエスタデイ」以来、ちょうど10年毎にベストアルバムをリリースしており、本作は2012年にリリースした「I LOVE YOU-now&forever-」以来、ちょうど10年ぶり4枚目となるベストアルバム。若干、乱発気味の気配はありますが・・・ただ、ここ10年は、サザンはアルバム1枚をリリースしただけで、活動休止とまではいかないものの休みがちな状態。一方、ソロとしては積極的な活動を続けているので、ベストアルバムのリリースとしてはおかしな状況ではない、のかもしれません。

ただ、今回のベストアルバムは純粋なソロとしてのオールタイムベストというよりは、コンセプトに沿ったセレクションアルバム的な内容になっている印象を受けます。タイトルに合わせて「『いつも何処かで』歌い続けてきた桑田佳祐の35年間の歩み」を凝縮したアルバムとアナウンスされていますが、いつも何処かで流れているような、末永く歌い継がれる楽曲をセレクトしたようなアルバムになっています。

そのようなコンセプトに基づいて曲をセレクトした影響も大きいのでしょう。今回のベストアルバムを聴いて全体的に感じたのは、歌謡曲のテイストが非常に強い内容になった、というイメージでした。冒頭を飾る「若い広場」はまさに歌謡曲テイストの強い作品。1曲目中盤の「JOURNEY」「Soulコブラツイスト~魂の悶絶」などメランコリックな曲調からも歌謡曲的な要素も感じられますし、シングル曲として大ヒットを記録した「月」も和風な曲調に仕上げていますし、「現代東京奇譚」などは完全に歌謡曲の曲調になっています。

もっとも、サザンとしても初期から歌謡曲的な作品は多くリリースしていますし、桑田佳祐自身も歌謡曲からの影響を公言しているなど、別に彼の曲に歌謡曲テイストな部分が多くても何ら不思議ではありません。ただ、今回のベスト盤は、他にも哀愁ただようAORの「誰かの風の跡」など、メランコリックに聴かせる作品や「明日へのマーチ」「ダーリン」のようなノスタルジックにあふれた作品が目立ちました。おそらくこれは「いつも何処かで」というアルバムコンセプトに沿ったセレクトが行われた影響なのでしょう。さらに彼も66歳となった今、彼の嗜好が歌謡曲よりにシフトした、とこともあるのかもしれません。実際、直近のミニアルバム「ごはん味噌汁海苔お漬物卵焼き feat. 梅干し」も歌謡曲テイストが強い作風となっていました。

もちろん、本作の中でもカントリー風の「鏡」やオールドスタイルのロックンロールナンバー「ROCK AND ROLL HERO」、ある意味、非常に彼らしいともいえるエロ歌詞がさく裂する「EARLY IN THE MORNING~旅立ちの朝~」など作品もしっかりと並んでおり、当たり前ですが彼らしい幅広い音楽性もしっかりと聴かせてくれています。そういう意味で単なる「歌謡曲歌手」ではないという点はこのベスト盤でもはっきりとあらわれていました。

ただ、90年代から2000年代にかけては全く出演しなかった紅白に昨年も出演し、さらには寸劇まで行うなど、桑田佳祐も良くも悪くもそういう立ち位置のミュージシャンになったんだなぁ、という印象を受けます。それで披露されて今回のベストアルバムにも収録されている「時代遅れのRock'n'Roll Band」なども自虐的なタイトルはさることながら、内容的にも歌謡曲化されたようなロックというイメージも否定できず。今年の紅白の後に「今のロックは昔の演歌みたいな立ち位置になった」的な論が盛り上がりましたが、その論についてはすべてが同意できる意見ではないものの、今の桑田佳祐の立ち位置を見ると、なんとなく言いたいことはわかるな、という印象も受けてしまいます。

ただし、だからといってこのベストアルバムがダメだった、というわけではもちろんなく、稀代のポップミュージシャンとしての桑田佳祐の実力を存分に感じさせる作品で、間違いなく珠玉のポップスの連続だったと思います。文句なしでおすすめのベストアルバムなのは間違いありません。とはいえ、少々保守的に進んでいる最近の桑田佳祐を見ると、そろそろもうちょっと尖った彼の姿も見てみたい、そんな気もしたアルバムでした。

評価:★★★★★

桑田佳祐 過去の作品
MUSICMAN
I LOVE YOU-now&forever-
がらくた
ごはん味噌汁海苔お漬物卵焼き feat. 梅干し


ほかに聴いたアルバム

E-SIDE 2/YOASOBI

Eside2

YOASOBIの曲を全英語詞でリメイクした配信限定のミニアルバム第2弾。特に洋楽テイストも強いミュージシャンでもないために、若干、なぜわざわざ英語に?という気はしないこともないのですが、あらためて聴くとやはりメロディーラインのインパクトの強さは大きな魅力。特に英語詞にすることで、よりメロディーラインに意識がクローズアップされ、そのメロディーの強度が際立ちます。ただ一方、サウンドは相変わらずチープで、物足りなさも感じてしまう部分も・・・。ここらへん、悪い意味でいかにも「J-POP的」な感じが気になってしまいます。

評価:★★★★

YOASOBI 過去の作品
THE BOOK
E-SIDE
THE BOOK 2

Gesu Sped Up/ゲスの極み乙女

Gesuspedup

ゲスの極み乙女の8曲入り配信限定のEP盤。現在、USを中心に話題となっているSped Upという手法を使った作品だそうで、原曲をそのままに曲の速さだけを早くした音源。ただ、ネット上で検索をかけても確かにSped Upバージョンの作品が海外でリリースされているそうなのですが、そこまで「話題」となっているのかはかなり不明・・・。正直、本当に原曲のピッチをあげているだけの作品で、別にわざわざEPとして別にリリースしなくても、PC上の再生ソフトでいくらでも勝手にSped Upバージョンなんてつくれそうな気がするのですが。また、原曲のスピードをあげたところで、新たな発見もあるわけではなく、聴いても感想としては「ふーん」以外感想が思い浮かばない・・・。USではやっているのならおもしろい企画だとは思うのですが、Sped Upという手法自体が、一時的な流行で終わってしまうような感じも・・・。

評価:★★★

ゲスの極み乙女。 過去の作品
踊れないなら、ゲスになってしまえよ
みんなノーマル
魅力がすごいよ
両成敗
達磨林檎
好きなら問わない
ストリーミング、CD、レコード

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2023年1月14日 (土)

コロナ禍に孤独を描く

Title:Les Misé blue
Musician:syrup16g

2021年11月。本編すべてが新曲というライブという意欲的な試みを行ったsyrup16g。約5年ぶりという、かなり久々の新譜となった本作は、そんな意欲的なライブからピックアップされた12曲に、今回書き下ろされた2曲が加わった全14曲というアルバム。ライブでの披露を経てリリースという、彼らとしてはかなり力の入ったニューアルバムとなっています。

基本的にサウンドは、実にsyrup16g的とも言えるオルタナティヴ・ロック。ただ、その中でも前半は比較的バリエーションの多い展開に。1曲目「I Will Come(before new dawn)」は、いきなりヘヴィーなサウンドでゆっくりとスタートしており、彼らの曲の中でも特にヘヴィネスさを感じさせる作風に。一方、続く「明かりを灯せ」「Alone In Lonely」などはドリーミーな作風が特徴的。「Dinosaur」は比較的軽快なサウンドが特徴となっています。

一方、後半に関しては「In My Hurts Again」「In The Air,In The Error」などギターノイズを前面に押し出したシューゲイザーからの影響も感じるギターロックが並びます。ここらへん、syrup16gらしさを特に感じさせる展開になっており、聴いていて素直に心地よさも感じます。全体的には、いかにもsyrup16gらしい、ある意味、リスナーにとっては期待通りとも言うべき作品が並んでおり、聴いていて素直にその世界を楽しめる内容になっていたと思います。

そして今回のアルバムでいつも以上に印象に残ったのがその歌詞。今回の歌詞については明確にコロナ禍の今が反映されています。syrup16gといえば、アイロニックに現実をシビアに切り刻むような歌詞が大きな魅力ですが今回については、現在を反映した歌詞がゆえに、特に歌詞が強く印象に残りました。

その中でも「In The Air,In The Error」では

妖星なんてあてにならない
Freedom I'm freedom」
(「In The Air,In The Error」より 作詞 Takashi Igarashi)

なんて歌詞がいきなり飛び込んできます。この「妖星」という言葉、どうしてもコロナ禍の中でよく聞いた、PCR検査や抗原検査の「陽性」を彷彿とさせてしまいますし、おそらくそういう意図なのでしょう。若干、「コロナにかかってもどうでもいいじゃん」みたいなニュアンスにとられかねない歌詞なのが気になりますが、ただ、コロナ禍でも自由に生きることを忘れないという、彼らの決意も感じさせます。

さらに、やはりコロナ禍の中、人と人とのつながりが希薄になってしまったという影響も大きいのでしょう。「孤独」をテーマとした歌詞が目立ちます。「Don't Think Twice(It's not over)」では

「未来永劫 天涯孤独な 予定はない」
(「Don't Think Twide(It's not over)」より 作詞 Takashi Igarashi)

と、かなりストレートな現状描写がインパクト。さらに続く楽曲は、そのままズバリ「Alone In Lonely」ですし、「In My Hurts Again」でも

「大気圏の中で暮らしている
何処に居ても宇宙服を着ている

会話らしきものを交わしている
対峙を避ける無関心がルール」
(「In My Hurts Again」より 作詞 Takashi Igarashi)

と、隠喩ながらもどこか人と人とのつながりが希薄なっているような現代社会を皮肉めいて描いた歌詞が印象的。また、どこかコロナ禍の中での現状を描写したようにも読み取れます。

そんな五十嵐隆の書く歌詞は、孤独という事象を、時にはアイロニックに描写しつつも、決して否定はせずに、淡々と描いているようにも感じます。しかし、アルバムのタイトルチューンであり、最後を飾る「Les Misé blue」では

「ひとりの世界は
ひとりじゃないから

ひとりの世界は
仲間がいっぱい」
(「Les Misé blue」より 作詞 Takashi Igarashi)

と、むしろ孤独な人たちへエールを送っているようにも感じます。アルバムの途中では孤独な現状をそのまま切り取りながら、ラストにこのような歌詞の曲を入れてくるあたりに、聴き終わった後にある種の暖かさを感じさせる締めくくりになっていました。

そんな訳で、いつもに増してその歌詞が印象に残る作品に。そんな作品だからこそ、逆にsyrup16gの王道とも言えるサウンドが、歌詞を変に邪魔せず、ピッタリとマッチしたようにも感じます。ただ、ひとつだけちょっと気にかかった点が。それはボーカル五十嵐隆の声。正直、全体的にちょっと声の張りがなく、声が出ていなかったような印象が・・・。その点だけがちょっと気にかかりました。

もっとも、アルバム全体としての出来は文句なしの傑作で、2022年の年間ベスト候補に入ってくるほどの出来栄えだったようにも思います。既に結成から25年が経過したベテランバンドとなった彼ら。しかし、そのバンドとしての勢いはまだまだ止まらなさそうです。

評価:★★★★★

Syrup16g 過去の作品
Syrup16g
Hurt
Kranke
darc
delaidback


ほかに聴いたアルバム

THIS SUMMER FESTIVAL 2022 (Live at 東京国際フォーラム ホールA 2022.4.28)/[Alexandros]

This-summer

タイトル通り、昨年4月に東京国際フォーラムで行われた[Alexandros]のライブイベント「THIS SUMMER FESTIVAL」の模様を収録した、配信限定のライブアルバム。全体的にダイナミックなバンドサウンドを聴かせてくれる楽曲の連続で、彼らのよりカッコいい側面が抽出されたようなライブパフォーマンスに仕上がっています。全8曲33分という長さも、あっさりとしていて気軽に楽しめる長さですし、広い層に聴いてほしい作品です。

評価:★★★★★

[Alexandros] 過去の作品
Schwarzenegger([Champagne])
ALXD
EXIST!
Sleepless in Brooklyn
Bedroom Joule
Where's My History?
But wait. Cats?

Strides Remixes/小袋成彬

 Strides

2021年にリリースされた彼のアルバム「Strides」。当初は配信限定でのリリースだったのですが、その後、2022年にCD化。その際、CD盤にのみリミックスCDが付属されていたのですが、今回、そのリミックスCDが配信リリースとなりました。ただちょっとややこしいことに、そのうち2曲は配信音源で再録。そのため音源をすべて抑えるには、CD、配信両方とも聴かなくてはいけないというちょっとめんどくさいことになっています。まあ、よっぽどのマニアじゃない限り、そこまで抑えようとはしないでしょうが。

リミックスとしては、基本的にエレクトロベースのトラックに、原曲のメロウな歌がのっかかる形でのリミックス。彼のボーカルがベースとして流れているだけに、原曲から大きくイメージを変えるものではありません。その点は彼のボーカリストとしての実力も感じることが出来るリミックスと言えるかもしれません。どちらかというとファン向けアイテムといった感じですが、「Strides」が気に入ったらチェックしても損はない作品かと。

評価:★★★★

小袋成彬 過去の作品
分離派の夏
Piercing
Strides

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2023年1月13日 (金)

今週はジャニーズ系

今週のHot Albums(2023年1月11日付)

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今週のHot Albumsはジャニーズ系アイドルグループが1位獲得

今週1位はSixTONES「声」が獲得。CD販売数1位。ちょうど1年ぶり3枚目となるアルバム。ここ3年連続、正月明けほぼ初日のアルバムリリースが恒例となっています。初動売上51万7千枚は前作「CITY」の初動47万枚からアップ。

2位は結束バンド「結束バンド」がワンランクダウンながらもベスト3をキープ。ダウンロード数は先週から変わらず1位となっています。3位も先週2位のNCT DREAM「Candy」がワンランクダウンながらもベスト3をキープしています。

続いて4位以下ですが、今週、初登場盤は1位のみ。ただ、ベスト10返り咲きは1枚あり、それが先週の11位から8位にアップした桑田佳祐のベストアルバム「いつも何処かで」。CD販売数が15位から9位にアップし、3週ぶりのベスト10返り咲きとなりました。

またロングヒット組としては、まずAdo「ウタの歌 ONE PIECE FILM RED」が先週の5位から4位にアップ。これでベスト10ヒットは通算20週となりました。先週に引き続き、紅白をはじめとする年末の歌番組の影響が大きい模様。ダウンロード数は3位から2位、CD販売数も14位から10位にアップしています。ちなみに紅白出場組といえば、Hot100で大きくランクアップしたVaundyもアルバム「strobo」が今週、55位から12位に大きくアップしており、来週以降のベスト10入りをうかがう位置となってきています。

松任谷由実「ユーミン万歳!~松任谷由実50周年記念ベストアルバム~」は先週に引き続き6位をキープ。こちらも紅白出演組で、荒井由実時代の彼女のデゥオという趣向を凝らしていましたが、思ったほど話題になっていないような。CD販売数は7位から8位、ダウンロード数も6位から4位にダウン。

Snow Man「Snow Labo.S2」も今週は4位から10位にダウンしていますがベスト10をキープ。こちらも通算11週目のベスト10ヒットとなっています。

今週のHot Albumsは以上。次回からは通常更新(だと思う)ので、次回は来週の水曜日に!

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2023年1月12日 (木)

Vaundyの躍進

今週のHot100(2023年1月11日付)

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正月休暇の影響で昨日から引き続きヒットチャートの更新となります。今回の集計対象は1月2日から8日。特に紅白歌合戦の影響が強く反映されたチャートとなっています。

その顕著たる例がVaundy。紅白でのパフォーマンスも大きな話題となりましたが、その時に歌った「怪獣の花唄」が先週の27位から大きくランクアップし、今週、3位にランクイン。初のベスト10入りとなりました。ダウンロード数は圏外から1位に一気にアップ。ストリーミング数も26位から3位に、You Tube再生回数も38位から7位、ラジオオンエア数が89位から47位、カラオケ歌唱回数も24位から11位といずれも大きくランクアップしています。ちなみに同じく紅白で歌ったVaundyプロデュースによるmilet&Aimer&幾田りらの「おもかげ」も今週、20位にランクアップしています。

Subtilte

そして1位2位はヒゲダンと米津のデッドヒートが続いています。1位は今週もOfficial髭男dism「Subtitle」が獲得。これで6週連続の1位となりました。ストリーミング数は12週連続で1位を獲得。ただし、ダウンロード数はVaundyの影響で2位に。You Tube再生回数も2位から3位にダウンしています。これで13週連続のベスト10ヒット&ベスト3ヒットとなりました。「ミックスナッツ」は5位から8位にダウン。今週もヒゲダンは2曲同時ランクイン。「ミックスナッツ」は通算33週目のベスト10ヒットとなりました。

一方、米津玄師「KICK BACK」は今週も2位。ストリーミング数が12週連続の2位に。ただしこちらもダウンロード数は5位から6位、You Tube再生回数は3位から6位、CD販売数も10位から11位と全体的には若干のダウンとなっています。ただし、こちらも13週連続のベスト10ヒット&ベスト3ヒットとなっています。

続いて4位以下の初登場曲ですが、今週は1曲のみ。7位に韓国の女性アイドルグループNewJeans「OMG」がランクイン。本作がデビューシングルとなります。CD販売数は2位でしたが、ダウンロード数31位、ストリーミング数20位、ラジオオンエア数18位、You Tube再生回数8位で総合順位はこの位置に。オリコン週間シングルランキングでは初動売上2万枚で2位初登場。

次にロングヒット曲ですが、まず紅白出演でも話題となったAdo「新時代(ウタ from ONE PIECE FILM RED)」ですが、今週は3位から4位にダウン。ダウンロード数は3位から5位、You Tube再生回数は7位から9位とダウン。ただ、ストリーミング数は先週から変わらず4位。カラオケ歌唱回数は11週ぶりの1位返り咲きとなっています。

同じく紅白出演組ではSEKAI NO OWARI「Habit」が4位からワンランクダウンの5位をキープ。こちらはダウンロード数こそ2位から3位に下がりましたが、ストリーミング数は10位から5位、You Tube再生回数も6位から4位、カラオケ歌唱回数も50位から26位と大きくアップ。レコ大や紅白の影響が反映された結果となっています。これで通算21週目のベスト10ヒットになりました。

また紅白出演組ではありませんが、Tani Yuuki「W / X / Y」は7位から9位にダウンしているものの今週もベスト10ヒットをキープ。これで通算36週目のベスト10ヒットとなりました。

一方で、先週ベスト10に返り咲いたなとり「Overdose」は今週12位に再びダウン。ベスト10返り咲きは1週で終わっています。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

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2023年1月11日 (水)

今年はじめてのアルバムチャート

今週のHot Albums(2023年1月4日付)

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今年最初のヒットチャートは最近話題のアニメ関連のアルバムでした。

1位には結束バンド「結束バンド」が先週の6位からCDの売上を加えた影響でランクアップ。初の1位となりました。CD販売数及びダウンロード数1位。オリコン週間アルバムランキングでも初動売上7万2千枚で1位初登場。テレビアニメ「ぼっち・ざ・ろっく!」に登場するバンドによるデビューアルバム。「極度の人見知りで陰キャな少女・後藤ひとりが伊地知虹夏、山田リョウ、喜多郁代の3人と出会い≪結束バンド≫で活動を始める。個性的なメンバーとともに成長していく日常をバンド・ライブハウスを舞台に描いた」ということで設定的には面白そうなので原作の漫画を読んでみたのですが・・・正直なところ、ストーリーよりもいかに「美少女キャラクター」を前に押し出すかを主眼としたような内容で、厳しいなぁ、というのが率直な感想。「美少女キャラ」や派生する「CD」で売っていこうというビジネス的スタンスが見え隠れしてしまうのがなんとも・・・。

2位には韓国の男性アイドルグループNCT CRAM「Candy」がベスト10初登場。アイドルグループNCTからの派生グループによるEP盤。CD販売数2位、ダウンロード数は圏外。オリコンでは売上枚数3万枚で、発売日の都合上、先週からランクアップし、2週目にしてベスト10入りです。

3位初登場は「HiGH&LOW THE WORST BEST ALBUM」。「WORST」なのか「BEST」なのかわかりにくいのですが、主にLDHの男性グループが登場する映画「HiGH&LOW THE WORST」と「HiGH&LOW THE WORST X」の楽曲をセレクトしたベストアルバム。GENERATIONSやDOBERMAN INFINITY、THE RAMPAGEなどLDHの男性グループの楽曲が並びます。CD販売数3位、ダウンロード数7位。オリコンでは初動売上1万7千枚で3位初登場。

続いて4位以下の初登場盤ですが、まず7位に韓国の男性アイドルグループSUPER JUNIOR「The Road:Celebration」がランクイン。韓国盤のアルバムで、CD販売数5位、ダウンロード数圏外。オリコンでは、こちらも発売日の都合上、先週からランクアップし、売上枚数6千枚で12位にランクインしています。

もう1枚。10位に「『ウマ娘 プリティーダービー』WINNING LOVE 09」が初登場。CD販売数11位、ダウンロード数13位。アプリゲーム「ウマ娘 プリディーダービー」に収録された曲をまとめたサントラ盤。オリコンでは初動売上7千枚で7位初登場。同シリーズの前作「『ウマ娘 プリティーダービー』WINNING LIVE 08」(5位)から横バイ。

一方、今週は年末の音楽番組の影響もあり、ベスト10返り咲き組も目立ちました。まず5位にAdo「ウタの歌 ONE PIECE FILM RED」が先週に12位からランクアップし3週ぶりにベスト10返り咲き。ダウンロード数が4位から3位に、CD販売数も21位から14位にアップ。これで通算19週目のベスト10ヒットとなりました。

ジャニーズ系アイドルグループSnow Man「Snow Labo.S2」も先週の15位から4位に。こちらは6週ぶりのベスト10返り咲き。CD販売数が15位から4位に大幅アップ。こちらもこれで通算10週目のベスト10ヒットとなりました。

さらに韓国の男性アイドルグループSEVENTEEN「DREAM」も先週の33位から9位にランクアップし、3週ぶりのベスト10返り咲き。CD販売数は29位から6位に、ダウンロード数も圏外から90位にランクアップ。先日のレコード大賞で特別国際音楽賞を受賞し、番組にも出演した影響でしょう。

またロングヒット組では松任谷由実「ユーミン万歳!~松任谷由実50周年記念ベストアルバム~」が9位から6位にアップ。CD販売数が10位から7位、ダウンロード数も6位から4位にアップ。これで通算12週目のベスト10ヒットとなりました。

今週のHot Albumsは以上。今年はどんなヒット曲、ヒットアルバムが登場するのでしょうか?

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2023年1月10日 (火)

2023年はじめてのチャート

今週のHot100(2023年1月4日付)

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

2023年はじめてのヒットチャート。ビルボードの更新のタイミングにより、通常の水曜日(1月4日)更新ではなく、週明けの1月10日更新となりました。

Subtilte

そして今週もヒゲダンと米津のデッドヒートが続きます。まず1位は今週もOfficial髭男dism「Subtitle」が獲得。これで5週連続の1位となりました。ストリーミング数は11週連続、ダウンロード数は5週連続の1位を獲得。さらにラジオオンエア数も初の1位を獲得。You Tube再生回数も4週連続の2位。これで12週連続のベスト10ヒット&ベスト3ヒットとなりました。そして「ミックスナッツ」も6位から5位にアップし、今週もヒゲダンは2曲同時ランクイン。「ミックスナッツ」は通算32週目のベスト10ヒットとなりました。

2位は米津玄師「KICK BACK」が3週連続の2位を獲得。こちらもストリーミング数が11週連続の2位、You Tube再生回数も4週連続の3位となりました。さらにCD販売数も14位から10位にアップしています。これでこちらも12週連続のベスト10&ベスト3ヒットとなりました。

そして3位にはAdo「新時代(ウタ from ONE PIECE FILM RED)」が先週の4位からランクアップ。昨年の10月12日付チャート以来12週ぶりのベスト3返り咲き。ストリーミング数が4位から3位、ダウンロード数5位から3位、You Tube再生回数10位から7位、カラオケ歌唱回数4位から2位、ラジオオンエア数26位から6位といずれもアップ。紅白をはじめ年末の歌番組への出演が相次ぎ、ランクアップの大きな要因となっています。これで29週連続ベスト10ヒット、通算11週目のベスト3ヒットとなりました。

続いて4位以下ですが、今週は初登場曲はゼロ。一方、ベスト10圏外からの返り咲き曲が目立ちました。まずレコード大賞を受賞し話題となったSEKAI NO OWARI「Habit」が15位から4位にランクアップ。9月28日付チャート以来のベスト10返り咲きとなりました。ダウンロード数が13位から2位に大幅アップ。ストリーミング数も20位から10位に、You Tube再生回数も9位から6位に、ラジオオンエア数に至っては圏外から9位に一気にアップ。これで通算20週目のベスト10ヒットとなります。

8位にMrs.GREEN APPLE「ダンスホール」が先週の13位からアップ。昨年8月17日付チャート以来のベスト10返り咲き。こちらもダウンロード数が17位から9位、ストリーミング数が13位から7位、You Tube再生回数が17位から14位といずれもアップしています。「Habit」同様、ダンス動画が話題になったこの曲は、年末の音楽番組への出演効果もあり、再度人気が上昇してきている模様です。

さらになとり「Overdose」が先週の11位から9位にランクアップ。こちらは2週ぶりのベスト10返り咲き。通算14週目のベスト10ヒットを記録しています。

一方、ロングヒット曲としてはTani Yuuki「W / X / Y」が10位から7位にランクアップ。こちらも通算35週目のベスト10ヒットとなりました。

今週のHot100は以上。来週はさらに紅白出演組のランクアップが期待できそう。明日は同じく1月4日付のHot Albums!

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2023年1月 9日 (月)

前作よりも分厚いサウンドでドリーミーに

Title:And in the Darkness, Hearts Aglow
Musician:Weyes Blood

前作「Titanic Rising」が大きな話題を呼んで、一躍注目を集めたアメリカはカリフォルニア州サンタモニカ出身の女性シンガーソングライター、ナタリー・メーリングのソロプロジェクト、ワイズ・ブラッドの約3年7ヶ月ぶりとなるニューアルバム。前作は、各種メディアにも非常に高い評価を得て、2019年の年間ベストに軒並み、上位にランクイン。いままでほとんど無名のミュージシャンのようでしたが、その名前を一気に知らしめました。

楽曲は、清涼感ある美しいボーカルでゆっくり聴かせるフォーキーで暖かい楽曲がメイン。今回のアルバムでも1曲目「It's Not Just Me,It's Everybody」は、まさにそんな彼女らしい、ピアノで聴かせるフォーキーな楽曲でスタート。その暖かさを感じさせるサウンドとメロディーラインは、聴いているこちらがほっこりと安心させられます。

ただ、2曲目以降は、フォーキーな作風と美しいメロディーラインはそのままなのですが、分厚いサウンドでダイナミックさを感じさせる楽曲が並びます。「Children of the Empire」は爽快でメロディアスな歌がメインながらもストリングスのサウンドを重厚に聴かせてくれますし、続く「Grapevine」も、最初はアコギで静かにスタートしつつ、中盤からストリングスやコーラスライン、バンドサウンドなどが加わり、重厚なサウンドが楽曲を美しく彩ります。

その後も、荘厳さを感じさせるミディアムチューン「God Turn Me Into a Flower」や打ち込みのリズムが印象的な「Twin Flame」などバラエティー富んだ展開を聴かせつつ、終盤の「The Worst Is Done」は再びシンプルなサウンドで爽やかなメロディーラインを聴かせるフォーキーなポップチューンに。ただ、この曲を含むアルバム全体としてメロディーラインは至って人懐っこく、いい意味で広い層に受け入れられそうなポピュラリティーを感じます。音楽マニア受けが先行しており、売上的にはまだまだな彼女ですが、今後の十分なヒットも見込める予感もします。

ラストの「A Givin Thing」も、まさにこのアルバムのラストを飾るにふさわしい、ピアノと重厚なコーラス、シンセのサウンドという分厚いサウンドをバックに、彼女の美しい歌声でしんみりメロディアスに歌い上げる楽曲。ドリーミーさを感じさせるサウンドも魅力的で、思わず聴き入ってしまう楽曲に仕上げています。

そんな感じで前作以上に重厚なサウンドでドリーミーに聴かせるサウンドが特徴的な本作。ただ、フォーキーで暖かい雰囲気とメロディアスな美しいメロディーラインはそのままで、その歌声に聴き惚れるという点では前作と全く同様なアルバムと言えるでしょう。前作に引き続き、年間ベストレベルの傑作アルバムであることは間違いないと思います。今回も大きな注目をあつめている本作。彼女の活躍はまだまだ続きそうです。

評価:★★★★★

Weyes Blood 過去の作品
Titanic Rising


ほかに聴いたアルバム

Los Angeles Forum - April 26, 1969/The Jimi Hendrix Experience

タイトル通り、1969年4月26日にロサンジェルス・フォーラムという屋外競技場で行われたライブの模様を収録したライブ盤。The Jimi Hendrix Experience名義の3枚のアルバムをリリースした後のパフォーマンスである一方、6月にはノエル・レディングがバンドを脱退しており、決してバンドとしていい状況ではなかったことを伺わせますが、パフォーマンスとしてはそんなことは微塵も感じさせない、迫力あるパフォーマンスが楽しめます。特に当時、ロサンジェルス・フォーラムのようなアリーナでのライブパフォーマンス黎明期ということもあったのですが、それでも録音状態は良く、ジミヘンのギターパフォーマンスに酔いしれることの出来るライブ盤になっていました。

評価:★★★★★

Jimi Hendrix 過去の作品
VALLEYS OF NEPTUNE
People,Hell And Angels
MIAMI POP FESTIVAL(THE JIMI HENDRIX EXPERIENCE)
BOTH SIDES OF THE SKY
Live in Maui

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2023年1月 8日 (日)

多くの豪華ミュージシャンがゲストで参加

Title:The Blues Don't Lie
Musician:Buddy Guy

数多くのロックミュージシャンに影響を与えてきたブルース。"The blues is the roots; everything else is the fruits."と語ったのは、ブルース界の裏番長ことウィリー・ディクソンですが、現在では残念ながら決して活気に満ちたジャンルではなく、ブルースの巨匠と言われるミュージシャンたちのほとんどが鬼籍に入ってしまいました。そんな中、ブルース界最後のリビング・レジェンドとも言えるのが彼、Buddy Guy。なんと、現在、御年86歳!それでもコンスタントに活動を続け、なんと4年ぶりとなるニューアルバムをリリースしてきました。

そんな彼のニューアルバムは、まさにリビング・レジェンドというその経歴を裏付けるがごとく、様々なミュージシャンたちがゲストとして参加しているのが特徴的です。彼と並び、おなじく最後のリビング・レジェンドとも言えるボビー・ラッシュや、あのエルヴィス・コステロにジェイムス・テイラー。また同じく大御所のソウルミュージシャン、メイヴィス・ステイプルズなど、豪華なゲストが多く参加しており、いかに多くのミュージシャンたちが彼を慕っているのかわかります。

そして肝心の内容の方ですが、アルバムの冒頭を飾る「I Let My Guitar Do The Talking」から、いきなり力強いギターをギュインギュインと聴かせてくれ、80代半ばにして現役のブルースギタリストであることを力いっぱい主張しています。さらに続くタイトルチューン「Blues Don't Lie」では、こちらも80代半ばとは思えないような声量があり、艶のあるボーカルを存分に聴かせてくれます。現役のブルースシンガーとして衰えは全く感じさせません。

その後も「Backdoor Scratchin」では非常に力強いパワフルなギターの演奏を聴かせてくれたり、ビートルズのカバー「I've Got a Feeling」もシャウト気味の力強いボーカルを聴かせてくれたりと、その衰えのなさに驚かされます。本編ラストとなる「King Bee」もギター1本で聴かせるミディアムブルースで、静かに聴かせるボーカルは、ともすれば歌い上げるタイプの曲以上に、ボーカリストとしての力量が試されるのですが、こちらについても聴いていて不安定さを全く感じさせず、しっかりとその歌声を聴かせてくれます。

さらにゲストのパフォーマンスも大きな魅力。メイヴィス・ステイプルズがそのボーカルを聴かせる「We Go Back」は、こちらも80歳を超えても今なお衰えを感じさせない、彼女の感情たっぷりのパワフルな歌声が耳を惹きます。エルヴィス・コステロが参加した「Symptoms Of Love」はコステロらしさも垣間見れるロッキンなナンバーですが、こちらも力強いサウンドが非常に魅力的な作品となっています。

正直なところ、楽曲自体は王道のブルース路線といった感じで目新しさは全くありませんし、新たな挑戦みたいな部分はほとんどありません。ただ、若干ボーカルに不安定さを感じ、寄る年波も感じてしまった前作に比べると、本作ではボーカルの安定感が増して、むしろ若返った印象すら受けてしまいます。86歳にしてこれだけのアルバムをリリースできること自体、驚いてしまいます。

さすがに大規模なツアーからの引退は宣言しているそうで、もう日本で彼のパフォーマンスを見るのは難しいのでしょうが、でも、これだけの現役感があれば、まだ次のアルバムも期待できちゃいそう・・・。なにより現役で活動を続けているという事実自体うれしいので、評価は下のような評価で。あまりご無理なさらずに、でもいつまでもお元気で!!

評価:★★★★★

Buddy Guy 過去の作品
LIVING PROOF
Live at Legends
RHYTHM&BLUES
THE BLUES IS ALIVE AND WELL

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2023年1月 7日 (土)

思いのこもったライブパフォーマンス

Title:Live At Yankee Stadium
Musician:Billy Joel

昨年、ソロデビュー50周年を迎えたBilly Joel。それを記念し、昨年、フィルムコンサート「ビリー・ジョエル:ライヴ・アット・ヤンキー・スタジアム」が日程限定で劇場公開されました。こちらは1990年6月23日、24日にニューヨークはヤンキースタジアムで行われたスタジアムライブの模様を収録したもの。2008年に閉場した旧ヤンキー・スタジアムの長い歴史の中で、初となるロックのライブだったとか。そしてその後にリリースされたのが本作。CD2枚+DVD1枚という今回のアルバムは、CDではそのヤンキースタジアムでのライブから22曲を収録。DVDはそのフィルムコンサートをそのまま収録した内容となっています。

さて、Billy Joelのライブ盤というと、率直に言ってしまって「またか」という印象も受けてしまいます。主に80年代に圧倒的な人気を得て、現在でも多くのファンをかかえるBilly Joel。ただ、現在ではポピュラーミュージシャンとして新曲のリリースはストップ。ライブの方はコンスタントに実施している「現役」のミュージシャンではあるものの、新作のリリースが望めないような状況である一方、熱烈なファンをいまだに多く抱えるがゆえに、多くのライブアルバムが企画され、リリースされている状況。何年か毎にライブアルバムがコンスタントにリリースされている状況です。

ただ、もっともライブ盤としてはどれも高いクオリティーを保っているのは間違いありません。ロックミュージシャンというよりも、やはりポップスのミュージシャンとしての側面の強い彼は、ロックバンドのような、緊迫感あるパフォーマンスでバンドとしての一瞬の奇跡を聴かせるというよりは、卒なく高いパフォーマンスを維持している感も強いため、ライブアルバムもベスト盤のような感覚で楽しむことが出来ます。今回のライブアルバムに関しても、選曲はほぼベスト盤のような内容。そのため、ビリーの新たなベストアルバム的な感覚で、その良質なポップソングを楽しむことが出来ました。

一方、DVDに収録されているフィルムコンサートの方は、一応、ドキュメンタリー的なテイストは取っているものの、基本的にはライブ映像をそのまま収録されているような内容。その当時のパフォーマンスをそのまま体験できるような映像となっていました。私は映画館でこの映像を見ることが出来なかったのですが、映画館だったら、まるでその現場にいるような感覚で楽しめたんだろうなぁ、とあらためて残念に感じました。

また、そのドキュメンタリー部分では、彼の今回のライブに対する意気込みを知ることが出来ます。ニューヨーク出身の彼にとってヤンキー・スタジアムは自分のふるさとのスタジアムであり、それだけに思い入れの深い場所。このライブに対する力の入れようを感じさせるインタビューも強く印象に残りました。

そんな訳で、彼としては非常に力の入ったパフォーマンスでBilly Joelの魅力をあらためて感じることが出来るライブアルバム。DVDの映像を含めて、聴きごたえ、見ごたえのあるライブ盤に仕上がっていました。ちなみに今回のライブですが、以前、VHSとDVDでリリースされたことがあるそうですが、その時は12曲のみの抜粋版だったそうで、今回のライブ盤では「完全版」をうたっています。ただ、今回のライブ盤も演奏された全22曲を収録したものの、2日間のパフォーマンスからの抜粋。2日間のパフォーマンスのすべてを収録されたものではありません。なんとなく、また何年か後に、2日間のパフォーマンスのすべてを収録した、本当の意味での「完全版」がリリースされそう。それはそれで楽しみではあるのですが。

評価:★★★★★

BILLY JOEL 過去の作品
LIVE AT SHEA STADIUM
She's Always a Woman to Me:Lovesongs
A Matter of Trust: The Bridge to Russia
Live Through the Years
JAPANSESE SINGLES COLLECTION-GREATEST HITS-

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2023年1月 6日 (金)

80年代のマイケルのすごさがわかる

Title:Thriller 40
Musician:Michael Jackson

80年代に一世を風靡し、「キング・オブ・ポップ」と称され、全売上枚数の総数は4億枚を超えているというマイケル・ジャクソン。日本でも圧倒的な知名度を誇るシンガーなだけに、いまさら説明する必要はないでしょう。そんな輝かしい業績を誇る彼ですが、そんな中でも最も売れた、彼を代表するアルバムと言えば間違いなく1982年にリリースされたアルバム「スリラー」でしょう。発売から現在に至るまで7,000万枚という驚異的な売上を記録して「史上最も売れたアルバム」とされる本作。日本でもミリオンセラーを記録するなど、大ヒットを記録しました。

本作は、そんなポップス史上に残るアルバムのリリースから40年を経てリリースされた記念盤。2008年には25周年記念盤がリリースされており、本作が「記念盤」としてリリースされるのは、それ以来2度目となります。25周年記念盤は当サイトでも取り上げているのですが、それからもう15年も経ってしまったんだ・・・月日が経つことの速さにあらためて驚いてしまいます・・・。

そんなこともあって久しぶりに「スリラー」を聴いたのですが、まさにインパクトの塊というのが率直な感想。すべての曲がフックの効きまくったサビを持っており、メロディーラインは一度聴いたら忘れられないようなインパクトを持っています。またさらに言えば、ある種、わかりやすいポップであるということに、何ら疑いを持っておらず突き進んでいるというのも大きな特徴のように感じます。自分の音楽に対して圧倒的な自信を持ち、さらには輝かしい未来に対しても無条件で信じているような・・・そんなキラキラするような明るさをこのアルバムからは感じることが出来ます。

今回の40周年記念盤では、CDでは全2枚組となり、Disc2では「スリラー」の収録曲として検討された曲のデモ音源などが収録されています。そんな中でも特に興味深いのが「スリラー」のタイトルチューンであり、これまた大ヒットした「Thriller」の原曲の「Starlight」なる曲。もともと「Thriller」は「Starlight」という曲で作成されたそうですが、もっと怖い雰囲気を出してほしいという要望から「Thriller」という歌詞に書き換えられたのだとか。確かにポップな曲調でありながらも、歌詞から醸し出す怖い雰囲気がちょうどよいスパイスになっているからこそ、同曲は大ヒットをおさめたのでしょうね。

他にも「Human Nature」に取って代わられてしまった「Carousel」や、YMOのカバー曲で、候補曲だったものの「スリラー」に収録されなかった「Behind The Mask」、さらにファンキーでリズミカルなエレクトロチューン「Sunset Driver」など、落選曲もインパクト十分で、この曲だけを集めても十分1枚、大ヒットアルバムを生み出せそうな感じすらあります。それだけその当時、マイケルの勢いはすさまじかったということを物語っています。

ちなみに配信ではさらに14曲も追加。フィジカルよりも配信の方が曲数が充実しているという点が今どきらしいのですが・・・こちらは「スリラー」収録曲もデモ音源やリミックス音源などで、貴重度としてはCDのDisc2に比べると劣るのですが、それでも聴きごたえのある内容。CD盤を購入しても、配信部分のみ別途、ストリーミングで聴くことが出来る・・・ということなのでしょうか。

さて、ご存じと思いますが、このアルバムで頂点を極めたマイケルですが、90年代以降はスキャンダルにまみれてしまい徐々に活動が停滞してしまいます。さらに本格的な活動再開を発表した矢先の2009年に、50歳という若さで急逝という悲劇が訪れてしまいます。彼の死後は評価が再び高まりますが、2019年に彼の性的虐待を告発したドキュメンタリー映画が公表されて話題となったのは記憶に新しいところ。コンプライアンス、特に子供への性的虐待について、より厳しくなってきた昨今なだけに、このドキュメンタリー映画で一時はマイケルがポップスの世界から抹殺されてしまうのではないか、という危惧も生まれたのですが、ドキュメンタリーの内容自体に確固たる証拠もなかったことから、この40周年記念盤のリリースに象徴されるように、最悪の事態は免れたようです。

あらためて80年代のマイケルのすごさを実感できた40周年記念盤。これだけのモンスターはもうポップスシーンには登場しないんでしょうね。今聴いても全く輝きが衰えていないインパクトの塊の1枚。そのポップな世界に酔いしれる作品でした。

評価:★★★★★

MICHAEL JACKSON 過去の作品
Thriller(25th Anniversary Edition)
MICHAEL JACKSON'S THIS IS IT
KING OF POP
MICHAEL
XCAPE


ほかに聴いたアルバム

Song of Salvation/Dream Unending

ドゥームメタルバンドの1stアルバム・・・というよりも、それぞれ別のデスメタルバンドで活動していたDerrick VellaとJustin DeToreによるユニットらしいです。メタルということでともすれば敬遠しがちなのですが、ただこのバンドの特徴としてメランコリックなサウンドにデス声が重なるという独特なスタイル。ヘヴィーなサウンドの中に美しさが同居するという独特のサウンドで、その絶妙なバランス感に耳が惹きつけられます。メタルを普段聴かないようなリスナー層でも、そのサウンドを楽しむことが出来る作品です。

評価:★★★★★

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2023年1月 5日 (木)

重厚なロックオペラ

Title:ATUM-actⅠ
Musician:The Smashing Pumpkins

スマパンがまた壮大なプロジェクトをスタートさせました。もともと、彼らの代表作とも言える「メロンコリーそして終りのない悲しみ」も2枚組2時間に及ぶ大作だったり、その後リリースした「マシーナ」も2部作だったり、さらに2009年にはじめた「Teargarden by Kaleidyscope」では、全44曲を1曲毎にダウンロードリリースしていくというプロジェクトだったり(最後は尻すぼみになり、まとめてEPをリリースして終わらせてしまいましたが・・・)と、良くも悪くも重厚長大気味の彼らでしたが、今回は全3部作からなるロックオペラをリリース。本作は、その第1幕となります。

全3幕からなるこのプロジェクトは、今後、1月31日に第2幕が、4月23日に第3幕がリリースされ、それと同時に全3枚組のCDもリリースされるそうです。さらにこの収録曲を、毎週1曲ずつビリー・コーガンみずから「Thirty-Three with William Patrick Corgan」で解説を行っています。もちろん英語のため聴いていないのですが、1曲毎に解説が1時間超にも及ぶボリューム量なだけに、その世界観もかなり多岐にわたっているようで、彼らの過去の作品「メロンコリー」や「マシーナ」にもつながっているとか。ここらへんも良くも悪くも彼ららしい過剰ぶりを感じさせます。

さすがに現時点で情報がすべて英語であるため、この壮大なロックオペラの世界観を把握しているわけではありませんが、ただ、それでもやはりスマパンらしいメランコリックさを内包した美メロとも言えるメロディーラインが大きな魅力。このプロジェクトのオープニングとも言える「ATUM」に続く「Butterfly Suite」は、スペーシーなエレクトロサウンドやダイナミックなサウンドをバックに、ポップでメロディアスな歌を楽しませてくれますし、続く「The Good in Goodbye」もノイジーでダイナミックなギターリフをバックに展開されるメロディアスでポップな歌は、スマパンが好きなら間違いなく壺に入りそうです。

さらにその後もダイナミックでヘヴィーなバンドサウンドにメランコリックな美メロがスマパンらしい「Steps in Time」やメロディーと同期している哀愁たっぷりのギターリフがインパクトある「Beyond the Vale」など、メランコリックな歌がインパクトたっぷりで耳に残ります。終盤にはコミカルなサウンドで軽快なポップを聴かせる「Hooray!」なんていう曲もあったりして、最後までスマパンらしいポップなメロを楽しめるアルバムとなっていました。

ただ、一方サウンドについてはちょっと物足りないというか、悪い意味でベタさを感じる展開に。今回のロックオペラ、宇宙を舞台にしているようで、そのためスペーシーなエレクトロサウンドを積極的に取り込んでいるのですが、このサウンドがちょっとチープな印象を受けてしまいいます。ある意味、このベタさも聴きやすさを覚える要素のひとつとは言えるのですが、聴いていてあまりおもしろみは感じさせません。

全体的にダイナミックな味付けもちょっと大味さを感じてしまいますし、わかりやすいといえばわかりやすいのですが、全体的にロックオペラという重厚なコンセプトに反して、サウンドに感じてはちょっと重厚さが足りない感じも。スマパンとして目新しい要素も感じませんでしたし、物足りない印象は否めませんでした。

そんな訳でスマパンらしい魅力はしっかりと感じさせるものの、全体的な出来としてはちょっと物足りなさも感じる作品になっていました。もっとも、良くも悪くもベタな作風ではあるので、これはこれで楽しめる作品ではあると思うのですが・・・。今後、第2幕、第3幕と徐々に全体像があきらかにされる作品なだけに、今後の展開に期待しましょう。

評価:★★★★

The Smashing Pumpkins 過去の作品
Teargarden by Kaleidyscope
OCEANIA
(邦題 オセアニア~海洋の彼方)
Monuments to an Elegy
SHINY AND OH SO BRIGHT,VOL.1/LP:NO PAST.NO FUTURE.NO SUN.
CYR


ほかに聴いたアルバム

Only The Strong Survive/Bruce Springsteen

ブルース・スプリングスティーンの最新作は、彼のルーツ、ソウルミュージックのカバーアルバム。正直なところ、彼がこのようなソウルミュージックのカバーをリリースするというのはちょっと意外な感じもしますが、比較的、原曲にも忠実なカバーに仕上がっており、彼のソウルに対する敬意も感じる作品に仕上がっています。その一方、そのパワフルなボーカルはブルース・スプリングスティーンそのまま。ある意味、しっかりと彼らしいアルバムに仕上がっていました。

評価:★★★★

BRUCE SPRINGSTEEN 過去の作品
Working On A Dream
WRECKING BALL
High Hopes
1980/11/05 Tempe,AZ
Western Stars
Letter to You

HH5/CEO Trayle

Ceo

不気味なジャケット写真が妙に印象に残る本作は、ニューヨークはブロンクス出身のラッパー、CEO Trayleのニューアルバム。全編トラップの本作は、ジャケット写真の通りの不気味さと、同時にメランコリックさを感じる作風が印象的。そのジャケット写真を含めて妙に耳に残るインパクトさが魅力的な反面、アルバム通じて似たようなタイプの曲が多く、ちょっとワンパターンさも感じてしまいました。

評価:★★★★

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2023年1月 4日 (水)

非常に強い主張を感じる新作

Title:MUSIC,DANCE&LOVE
Musician:ORIGINAL LOVE

先日、毎年恒例の今年の漢字が発表されました。今年の漢字は「戦」。現在も進行中のロシアとウクライナの戦争が今年の漢字の大きな要因となっています。いまだに続くこの戦争。現在の社会情勢として、大国が他の国を簡単に侵略することは出来ないという事実が示された一方、あきらかにロシアに非がある侵略戦争でありながらも、世界的にロシア批判一本にまとまらないどころか、日本国内でも喧嘩両成敗的にウクライナを批判する向きが一部でみられることは、非常に残念に感じると共に、現在社会の難しさを感じさせます。

音楽界においても、そんな中、もうちょっと反戦的な状況が広がってもよいようにも感じられるのですが、戦争開始直後に、U2のボーノとエッジがウクライナの地下鉄駅でパフォーマンスを披露するなど、一部で動きが見られたのですが、残念ながらその後大きくは広がっていないような印象を受けます。日本でも海外でもお気楽なアイドルポップスが蔓延する中で、小難しい反戦歌は受け入れがたい状況になっているのでしょうか。

そんな中、明確に侵略戦争に対してノーをつきつけて大きな話題となったのがORIGINAL LOVEのこのニューアルバム。特に1曲目はそのままストレートに「侵略」

「何度でもはっきりと大声でアピールしよう
この侵略戦争をストップしろと
何度でも繰り返し諦めずアピールしよう
この侵略戦争は大罪であると」
(「侵略」より 作詞 田島貴男)

と、かなりストレートな言葉で侵略戦争を非難しています。またラストを飾る「ソウルがある」でも

「人生はゲームだと疑わないキング達よ
勝ちと負けだけがあると疑わない者達よ

お前達の事情で そのスイッチを ゲームをするように押すな
ミサイルを撃つな ミサイルが落ちたそこには

ソウルがある
ソウルが血を流している
愛が生きている
愛が叫び声を上げている」
(「ソウルがある」より 作詞 田島貴男)

と、これまたストレートに反戦を訴えています。正直、そのメッセージにはギミック的な要素をほとんど用いず、あまりにもストレート。ただ、それだけ田島貴男本人が、今回の戦争に対してその主張を訴えたかったのでしょう。普段、社会的なメッセージをさほど多く発するようなミュージシャンではないだけに、彼の主張はかなり強く響いてきます。他にもタイトルチューンである「Music,Dance&Love」でも「音楽を奪うことはできない/どんな圧力がかかっても」と強いメッセージ性を感じさせます。

正直言うと、今回のアルバム、ORIGINAL LOVEの作品として傑作かと言われると、若干微妙な面はあります。ファンキーな「フェイバリット」、ジャジーな「ソングライン」、ソウルナンバーの「忘れな草」や、タイトル通りのソウルバラード「ソウルがある」など、ブラックミュージックの要素を多分に入れた作風が特徴的で、クオリティー的には間違いなく一定水準以上のものは感じさせます。

ただ一方で、楽曲的に目新しさは感じさせず、メロディーラインのインパクトも今一つ。歌詞に主張は後に残るものの、楽曲自体の印象はちょっと薄くなってしまいました。「接吻」「Dreams」という過去のセルフカバーが2曲も含まれている点を考えても、楽曲をそろえきれなかったのではないでしょうか。

というよりも、むしろ反戦を訴えるがために、あえて急いでリリースした向きも感じられます。彼の声が本調子でなかったため、リリースが延期されたものの、当初のリリース予定が9月と、なるべく早くリリースに急ごうとした点からも、彼がいかに反戦のメッセージを早く、はっきりと伝えたかったかがわかります。

そんなこともあり、アルバム自体の評価は4つと傑作には至らなかったとは思うのですが、その強いメッセージに、1つ追加で。そのメッセージはともすればORIGINAL LOVEらしからぬ無骨ささえ感じるのですが、それゆえに強く心に響いてくる、そんな作品でした。

評価:★★★★★

ORIGINAL LOVE 過去の作品
白熱
エレクトリックセクシー
ラヴァーマン
プラチナムベスト ORIGINAL LOVE~CANYON YEARS SINGLES&MORE
blesss you!
Flowers bloom, Birds tweet, Wind blows & Moon shining


ほかに聴いたアルバム

5B2H/花*花

2010年の再結成後、比較的コンスタントな活動を続ける女性デゥオ花*花の約1年4か月ぶりとなるミニアルバム。前作はコロナ禍の中で「あの人に会いに行きたい」がテーマだったのですが、今回はその真逆の「帰る場所」がテーマとなっている作品。とはいえ、全体的には花*花らしさに大きな違いはなく、彼女たちのブラックミュージックからの影響を強く感じるソウルバラードの「Shenandoah」からスタート。その後は彼女たちらしい、アコギやピアノなどを取り入れつつ、暖かい雰囲気のポップスを聴かせてくれます。派手さはありませんが、聴いていて心が温まる、そんな1枚でした。

評価:★★★★

花*花 過去の作品
2×20
ゴー・トゥー・アール・フォーティーファイブ

すずめの戸締まり/RADWIMPS/陣内一真

新海誠監督によるアニメ映画「すずめの戸締まり」のサントラ盤。大ヒットした「君の名は。」「天気の子」に続き、今回も音楽はRADWIMPSが担当したのですが、本作では作曲家の陣内一真との共作という形になりました。劇伴曲はオーケストラアレンジでダイナミックな作風の曲が多く、全体的には良くも悪くも映画音楽らしい映画音楽といった印象を受けます。今回、主題歌「すずめ」では女性ボーカリストの十明が参加しているのですが、曲の雰囲気にピッタリマッチ。下手したら野田洋次郎ボーカルよりも曲にマッチしていたかも・・・。

評価:★★★★

RADWIMPS 過去の作品
アルトコロニーの定理
絶対絶命
×と○と罰と
ME SO SHE LOOSE(味噌汁's)
君の名は。
人間開花
Human Bloom Tour 2017
ANTI ANTI GENERATION
天気の子
天気の子 complete version
夏のせいep
2+0+2+1+3+1+1= 10 years 10 songs
FOREVER DAZE
余命10年~Original Soundtrack~

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2023年1月 3日 (火)

KANの歌詞の魅力をあらためて実感

新年2発目の通常更新は、最近読んだ音楽関係の書籍の紹介です。

KANの歌詞を集めた「詩集」、「きらむの和歌詞」。先日行われたKANのライブの物販で購入した1冊。その時のライブレポートでもチラリと取り上げましたが、その後、無事(?)読み終わりましたので、今回は同書の感想となります。

基本的に今回のこの書籍は、簡単に書いてしまうと、彼が書いた歌詞が並べてあるだけ。そこにKAN自ら書いた、その歌詞の背景の説明などが書かれています。そのため本を読み進めるというのは、基本的にはKANの歌詞を読み進めるという形となります。もともとKANというミュージシャンは、その歌詞が魅力的で、かつ、しっかりとその歌詞を聴かせるスタイルの曲が多いだけに、今回あらためて歌詞を「本」という形で書いて、「これ、こんな歌詞だったのか!」なんていう驚きはありませんでした。

ただそれでも、あらためて彼の歌詞をこのような形で読み進めていくと、新たな発見も少なくありませんでした。抒情性ある歌詞が多いという印象もさることながら、ロマンチックな歌詞が多いということはあらためて強く実感します。また、彼の「知る人ぞ知る」的な名バラードである「1989(A Ballade of Bobby&Olivia)」も、歌詞を読むと、ビリー・ジョエルからの影響が歌詞の側面からも顕著であることを強く感じます。

また、今回のこの歌詞集の目玉とも言えるのがKANちゃん自身による歌詞の解説でしょう。あらためて、彼はこうやって歌詞を書いているんだ、この歌詞にはこういう背景があるんだ、ということを知ることができ、ファンならば間違いなく必読といえる内容となっています。その中で特に印象に残っているのが、彼の奥様への想いをのせた歌が非常に多いという点。KANちゃんが既婚者という事実はファンなら百も承知の話ですが、正直、ライブなどでは奥様の話をしたことがほとんど記憶にありません。ただ、この歌詞集では多くの曲の背景として奥様(「愛妻」と書かれています)とのエピソードが書かれており、当たり前といえば当たり前なのですが、奥様への愛情が歌詞に与えた影響の大きさをあらためて感じました。

ただ、そんなKANの歌詞集ですが、賛否両論があるのが、ほぼ彼の歌詞を並べただけの内容で税込3,000円というお値段。KAN自らの歌詞解説は確かに読み応えはあるものの、300ページある内容のうち30ページ程度で、ボリューム的にはちょっと物足りない点が否めません。率直な印象として、歌詞解説がこのボリュームでこの値段というのは高いかな、というのは感じてしまいます。

もっとも一方で、このKANによる歌詞解説自体はファンなら必読とも言えるないようで、3,000円という値段はともかく、まずはチェックしたい内容なのは間違いないでしょう。ファンであっても正直、ちょっとお高めという印象を受けてしまうようにも思うのですが、個人的にはファンとしての「お布施」的な意味も込めて買いました(笑)。

そんな訳で、正直なところファン以外にはお勧めするのはかなり厳しい1冊だと思います。これを買うくらいならば、KANのベスト盤を1枚買うことをお勧めします。なにげにKANの曲はサブスク解禁されていないようですし・・・。ただファンにとっては、読んでおきたい1冊だと思います。あえて「購入して損はない」とまでは言いませんが、お布施の意味を込めて・・・。1,500円くらいだったら、文句なしでお勧めできたのですが・・・。

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2023年1月 2日 (月)

なんと、今年で最後・・・(T T)

本年初の通常更新となります。例のよって、特に新年第1弾としてこれを選んだ訳ではありませんが、新年一発目にちょうどよいセレクトとなりました。

Title:2023-Classic Blues Artwork from the 1920s Calendar

毎年、当サイトでも紹介し、私の部屋の壁を飾ってきたブルースカレンダー。2013年版から買い続けてきて今年でちょうど10冊目になるのですが、非常に残念ながら今年で最後になってしまうそうです。私が買い始めてちょうど10年なのですが、このブルースカレンダー自体はちょうどこれで第20弾。ということは20年にわたって発行されてきたというだけにとても残念なのですが・・・。冒頭の説明文によると、ネットの普及で紙媒体のカレンダーが売れなくなってきたこと、またストリーミングの普及でCDで聴くというスタイルが失せつつあること、それが今回、発行終了となる要因ということで、時代の流れを感じてしまいます。とはいえ、やはりパッと見てわかる紙のカレンダーは部屋にひとつほしいところなので、来年からはどうしよう・・・。

そんな訳でラストとなってしまったブルースカレンダーですが、特典のCDの充実さは今年も変わりありません。毎年、戦前ブルースの貴重な音源を収録したオムニバスCDが付いてくる(というより、こちらが本体?)このブルースカレンダー。まず今回の注目株はJ.T."Funny Paper"Smithの「Old Rounder's Blues」。彼は「Spoonful」や「Killing Floor」でおなじみのかのハウリン・ウルフより先にハウリン・ウルフを名乗った「オリジナル・ハウリン・ウルフ」だとか。今回収録されたのは、そんな彼の初公開音源だそうです。ただ、「ハウリン・ウルフ」を名乗っていた割には、予想以上に爽やかさを感じるボーカル。別に唸り声をあげている感じもなく、ちょっとイメージとは異なったかも・・・。

さらにPlayboy Fullerなる人物の音源も今回の発掘音源。ネット上で探してもほとんど情報は出てこず、手元にあるブルースリスナーのバイブル的存在「ブルースCDガイド・ブック」にもその名前は登場していないという、かなりのレア度。比較的甲高いボーカルに、ピアノとギター、さらにブルースハープも交えたサウンドが特徴的。ギュンギュンとうねりをあげるギターもインパクトあるブルースを4曲も今回収録しています。

ただそれ以上に今回のアルバムで印象に残ったのは女性のブルースシンガーによる作品でした。まず3曲目にブルースの女帝、Bessie Smithの「Shipwreck Blues」が収録。かなりどすの効いた力強いボーカルが、他のブルースシンガーたちを圧倒する内容になっており、まさに「女帝」という異名にふさわしい、パワフルなパフォーマンスを聴かせてくれます。

また、こちらは「ブルースの母」と呼ばれるMa Rainyの「Big Boy Blues」も印象的。こちらはどちらかというと感情たっぷりに包み込むようなボーカルスタイルが魅力的。確かに、こちらは「母」と呼ぶにふさわしい包容力あるボーカルが魅力的。本作の中でもそのボーカルの魅力が際立った内容となっていました。

そんな訳で今回も全25曲1時間16分にも及ぶボリューミーな内容になった本作。これだけ魅力的な音源があるのにこれが最後というのはあまりにも残念なのですが・・・ただ、時代の流れには逆らえませんね。20年という長きにわたり、素晴らしい音源を世に送り出してくれて、ありがとうございました。しかし、本当に来年から部屋のカレンダー、どうしよう・・・?

評価:★★★★★

2013-Classic Blues Artwork from the 1920s Calendar
2014-Classic Blues Artwork from the 1920s Calendar
2015-Classic Blues Artwork from the 1920s Calendar
2016-Classic Blues Artwork from the 1920s Calendar
2017-Classic Blues Artwork from the 1920s Calendar
2018-Classic Blues Artwork from the 1920s Calendar
2019-Classic Blues Artwork from the 1920s Calendar
2020-Classic Blues Artwork from the 1920s Calendar
2021-Classic Blues Artwork from the 1920s Calendar
2022-Classic Blues Artwork from the 1920s Calender


ほかに聴いたアルバム

Pigments/Dawn Richard and Spencer Zahn

ニューオリンズ出身のシンガーソングライターで、女優、ダンサー、モデルさらにはアニメーターとしても活躍しているDawn Richardと、ニューヨークを拠点に活動するマルチ奏者、Spencer Zahnによるコラボ作。クラリネットやサックスを用いたサウンドで、ダウナーかつドリーミーな世界を構築。そこにDawn Richardのメロウなボーカルが入るスタイル。独特な世界が繰り広げられる作品になっています。

評価:★★★★

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2023年1月 1日 (日)

謹賀新年

新年、あけましておめでとうございます。今年も、当「ゆういちの音楽研究所」をよろしくお願いします。

今年も例によって年末は、家でダラダラ紅白を見ながら過ごしていました。純粋に音楽が好きだということはあるのですが、なんだかんだ言っても一番「無難」に楽しめる番組だと思います。

今年の紅白、出演者発表の時に「誰も知らない」という類のバッシング記事が目立ったように思います。K-POPのアイドルが多かった影響もあり、ネット右翼気味のヤフコメやTwitterあたりでバッシングが目立ち、それに乗っかかったネット記事も目立ったという影響もあるのでしょう。基本的にビルボードチャートを追っかけている私としては、人選に関しては至って順当という印象があります。この手の「紅白の初登場歌手は誰も知らない」というバッシング記事は、私が高校生の頃・・・30年以上前からあり、正直、風物詩的にはなっているのですが、それ以上に今年に関しては、むしろヤフコメやTwitterで投稿しているような世代が40代やむしろともすれば50代になり、今の音楽シーンに全くついていけない世代になってしまっている・・・という点が、今年ネット上のバッシングが目立った大きな要因ではないでしょうか。

結果として紅白を見ていると、できるだけ広い世代に支持を集めるような人選にしつつも、しっかりと今のヒットシーンも追いかけているような、NHKの努力の跡がうかがわせるような人選になったように思います。個人的には毎年紅白の人選に関しては、NHKは非常にがんばっているという印象を受けており、人選に関してバッシングしている側が、むしろ今の音楽シーンについて全くついていけていない、という印象を受けています。

ただ、そんな中でもちょっと残念なのは、出場者発表があった後に、五月雨的に発表される「特別枠」の発表。正直、back numberとか氷川きよしとか安全地帯とか、「特別枠」とする必要性があったんでしょうか??

あと、紅白の雑感的なことといえば・・・やはり一番すごかったのは玉置浩二のボーカルかなぁ。個人的には安全地帯も玉置浩二も特に好きなミュージシャンではないのですが、あの歌の上手さは他を圧倒していると思います。加山雄三は御年85歳であのパフォーマンスはすごいけど、やはりかなり不安定になっていて、これだけのクオリティーが保てないから引退を決意したんだろうなぁ、と感じます。一方、まったく変わっていない黒柳徹子(笑)。

Adoはホログラムの技術はすごい感じはしたのですが、録音音源っぽかったのがかなり残念な印象。せめてバックで生で歌って、最後に一言でもコメントを述べれば、かなり印象は変わったと思うのですが。あとThe Last Rockstarもかなり微妙・・・。あれで「世界を目指す」と言われても「世界をなめんな」としか言いようがない・・・。まあ、この手のバンドや企画を立ち上げては、ほっぽりだし続けているYOSHIKIなので、この後、アルバム1枚リリースできるのかも微妙なのでしょうが。

あと、福山雅治も鈴木雅之も篠原涼子も小室哲哉も工藤静香も桑田佳祐もみんな年を取ったよね。佐野元春だけはいまだに若々しさを感じるけども。そんなことを考えつつも、なんだかんだ言って楽しめた紅白でした。

それでは、今年もよろしくお願いします!

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