突如、5枚同時リリース!!
ここ最近、非常にハイペースなリリースを続けるイギリスの実験的ファンクロックバンドSAULT。そのメンバーはベールにつつまれていましたが、ここに来て、シンガーソングライターのCleo SolやラッパーのKid Sister、Little Simzなどのプロデュースも手掛けるDean "Inflo 1st" Josiahがメンバーだと反映してきています。そんな謎のユニットだった彼らですが、リリース形態もユニークで、2021年にリリースしたアルバム「Nine」は99日間のみストリーミング&ダウンロード可能というリリース形態に。さらに今年11月1日に、SAULTのTwitterに突如、こんなツイートがなされました。
Link in bio pic.twitter.com/03D8oQvoOc
— SAULT (@SaultGlobal) November 1, 2022
なんとリンク先から5日間のみアルバムがダウンロード可能という突然のアナウンス。さらにパスワードはこの文章の中から推測しなくてはいけないという、一種の「謎あてゲーム」的な要素も含まれたリリース形態。ちなみにパスワードは結構難しく、私もTwitter上でようやく探し当てることが出来、なんとかパスワードを解除することが出来ました(パスは"godislove"でした)。
さて、今回紹介するのは、そんな謎あてゲームの結果入手できた5枚のアルバム。ちなみに5日間のみのダウンロードでのリリースでしたが、現在は普通にストリーミングで聴くことが出来ます。
Title:11
Musician:SAULT
彼らのアルバムには数字のタイトルの曲が散見されますが、10月10日にリリースされたシングル曲「X」に続く形となるのが本作。1曲目「Glory」は非常にグルーヴィーでヘヴィーなベースラインからスタートし、アルバムへの期待を高めますが、途中からメロウな女性ボーカルが加わり、中盤には男性の説教(?)に合唱というスタイルが登場。ユニークな構成の作品に仕上がっています。
全体的には女性ボーカルによるポップな歌モノにヘヴィーなベースラインを中心としたファンキーなリズムが重なるという構成。実験性の高い彼らの作品の中では比較的ポップで聴きやすいという印象を受けます。特に「Together」はファンキーでリズミカル。ポップな女性ボーカルも加わり、どちらかというとちょっとレトロな雰囲気のするポップに。続く「Higher」も伸びやかなボーカルに爽快なエレピが入り、80年代あたりのブラコンを彷彿とさせるような楽曲に仕上がっています。
その後も「Envious」もメロウな女性ボーカルでしんみり聴かせるメランコリックでソウルなナンバー。「River」も同じくメロウなボーカルで静かに歌い上げるソウルバラード。ラストの「The Circle」もファンキーなベースラインをバックに清涼感ある美しい女性ボーカルでしんみり歌を聴かせる楽曲となっています。
そんな訳で彼らの作品の中では、特により「歌」にスポットをあてた作品。ただ一方ではSAULTの大きな魅力であるファンキーなリズムもしっかりと聴かせてくれており、しっかりとSAULTらしい壺も押さえられた作品になっています。そういう意味では彼らの最初の1枚としても最適の作品だったかも。いい意味で聴きやすさを感じた1枚でした。
評価:★★★★★
そして2作目・・・
Title:AⅡR
Musician:SAULT
今年4月にリリースされた「AⅠR」はいままでの彼らのイメージを覆すようなオーケストラアレンジによる作品でしたが、本作はいわばその第2弾とも言うべき作品。「AⅠR」と同じくオーケストラアレンジの作品が並んでいます。前回「AⅠR」の時はあまりの意外性にちょっと抵抗感も覚えた作品なのですが、さすがにこの全5枚というフルボリュームのアルバムの中では、どす黒いファンキーな作品の中の一服の清涼剤のような感覚を覚える作品になっていました。
ダイナミックなストリングスに伸びやかなコーラスラインも入れてスケール感を覚える作品は、クラッシックな交響楽というよりは、むしろ映画音楽のような感覚を覚える作品。1曲あたり5分程度という聴きやすさを感じる区切りもあり、作品としての複雑性もなく、あくまでもポピュラーミュージックの範疇に留まっている点も、映画音楽的な印象を覚える大きな要因でしょうか。大胆なオーケストラの導入という点に彼らの実験性を感じますが、一方で小難しさはなく、いい意味で聴きやすくポップにまとまっている作品に仕上がっていました。ちょっと薄味気味という印象は「AⅠR」同様ですが、全5枚同時リリースというボリュームの中では、その薄味さがちょうど心地よく感じるアルバムでした。
評価:★★★★★
Title:Earth
Musician:SAULT
全5枚のアルバムの中で、本作の最大の特徴はトライバルなリズム。オープニング的な1曲目に続く「The Lord's with Me」はトライバルなリズムとピアノの重なりが印象的なナンバー。ある意味、アフリカ的なリズムと、その対極にある、西洋音楽の典型的な楽器であるピアノを重ね合わせることにより、アフリカと西洋の融合を図っているような、そんな印象すら受ける作品になっています。
さらに「Valley of the Ocean」ではメロウな女性ボーカルにトライバルなリズムが力強く重なる楽曲。さらにもっともトライバルな要素が強かったのが「Soul Inside My Beautiful Imagination」で、パーカッションの力強いリズムにコールアンドレスポンスが重なる、まさにアフリカ音楽的な要素を色濃く入れた楽曲に仕上がっています。
もっともアルバムとしては一方で「Stronger」のようにピアノをバックにメロウな女性ボーカルで歌いあげるような曲もあったりと、バリエーションも感じさせる作品に。冒頭でも書いたように、まさにアフリカと西洋音楽の融合を意図したアルバムだったのかもしれません。SAULTの新たな魅力も感じさせる作品でした。
評価:★★★★★
あと2枚の紹介は次回に!
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