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2022年12月26日 (月)

タイアップ効果でよりポピュラリティーが増した作品

Title:HOWL
Musician:ROTH BART BARON

ここ5作連続、1年おきのリリースが続くなど精力的な活動が続く、現在は三船雅也のソロプロジェクトとなっているROTH BART BARONのニューアルバム。前作「無限のHAKU」も高い評価を受けたのですが、知名度も徐々に上げてきており、本作に収録されている「赤と青」は深夜ドラマとはいえ、TBS系ドラマ「階段下のゴッホ」のエンディングテーマというタイアップがつき、「KAZE」はJR東日本のCMソングとして起用されるなど、その名前を聴く機会が広がってきています。

エレクトロサウンドやピアノ、ストリングスなど多彩な楽器を取り入れたサウンドに三船雅也の魅力的なファルセットボイスを加えて幻想的な世界観を醸し出しているというスタンスは前作と同様。基本的には前作と同じ方向性を感じさせるROTH BART BARONらしいと言える作品となっています。ただ、様々な楽器を取り込んで多彩な色を作り上げていたという印象を受けた前作と比べると、今回のアルバムは音の多様性というよりは、むしろ、作風としてよりポピュラリティーを増したという方向性を強く感じる作品になっていました。

そもそも冒頭を飾る「月に吠える」からして、いきなりボーカルとして中村佳穂を起用しており、郷愁感あるメロディーラインに最近では映画「竜とそばかすの姫」で声優として起用されるなど、その「声」の魅力に注目をあつめている彼女の優しくも力強いボーカルが楽曲にインパクトあるポピュラリティーを与えていますし、続くJR東日本CMソングの「KAZE」は伸びやかなファルセットボイスを聴かせつつ、ポップで明るいメロディーラインにピアノにストリングス、ホーンも加えて祝祭感を覚える作風で、広いリスナー層が聴いていて気持ちよさを感じさせそう。

Disney+「すべて忘れてしまうから」ライヴ・エンディング曲というタイアップがついた「糸の惑星」もエレクトロサウンドでスペーシーな雰囲気を醸し出しつつ、ポップなメロを静かに歌い上げいますし、そしてドラマタイアップとなった「赤と青」も、三船雅也のファルセットボイスを魅力的に聴かせつつ、サビのメロディーラインにもインパクトを持たせつつ、ROTHの魅力を保ちながらもポップでインパクトある作風に仕上がっています。アルバムとしてポップなタイアップ曲を前半に配することによって、全体としても耳なじみあるポップなアルバムという印象を受ける作品となっています。

その後も「ONI」は疾走感ある、比較的スタンダードなギターロックに仕上がっており、ポピュラリティーがありますし、つくばみらい市シティープロモーション曲という公的なタイアップがついた「MIRAI」も、スケール感ある合唱を取り入れつつ、未来への希望を感じさせる、ある種のベタさを感じさせる作風になっています。

もっともただただポップである訳ではなく、これらの曲も様々な音を取り込んだ重厚なサウンドを聴かせてくれていますし、その他もタイトルチューンである「HOWL」では打ち込みのリズムに力強いバンドサウンドを加えてダイナミックな作風に仕上げていますし、「陽炎」も後半にノイズを取り入れて、幻想的でサイケな作風に仕上げるなど、バラエティー富んだ音楽性は本作でもしっかりと感じることが出来ます。

もともと前作もメランコリックでどこか懐かしいそのメロディーラインにしっかりとしたポピュラリティーを感じさせたのですが、今回のアルバムもそのポップというROTHの魅力が、タイアップ曲の効果により、より顕著になったように感じさせます。加えて、幻想的な作風と多彩な音楽性もしっかりと加味されており、ROTHの実力をしっかりと感じさせる作品に仕上がっていました。前作に引き続き本作も、文句なしに年間ベスト候補の1枚。徐々に注目があつまっている彼ですが、今後、さらなる注目を集めそうです。

評価:★★★★★

ROTH BART BARON 過去の作品
無限のHAKU


ほかに聴いたアルバム

Cocoon for the Golden Future/Fear,and Loathing in Las Vegas

約3年ぶりとなるニューアルバム。ハードコアなサウンドに疾走感あるエレクトロのトランシーなサウンドが加わるスタイルが独特のスタイルのバンド。インパクト満載の楽曲の連続で、素直に聴いていて気持ちよさを感じます。特に「Evolve Forward in Hazard」などは終始、軽快なエレクトロサウンドとヘヴィーなバンドサウンドとの対比がユニークで、彼ららしい作品と言えるでしょうか。正直言ってしまうと、インパクトだけを前面に押し出したようなトランシーなサウンドは大味という印象も受けてしまうのですが、ただ、サウンド的には聴いていて素直に気持ちよさを感じてしまいます。難しいこと抜きに楽しめる1枚でした。

評価:★★★★

Fear,and Loathing in Las Vegas 過去の作品
HYPERTOUGHNESS

WEAVER/WEAVER

来年2月の解散を発表した3ピースピアノポップバンドのラストアルバム。セルフタイトルにもなっているアルバムなのですが、ただ残念ながら彼らの持ち味のピアノよりもシンセが微妙に目立つような作品となっており、物足りなさは否めない感じ。ピアノを取り入れたポップソングというスタイルが好みなので毎作聴いている一方、ベタなメランコリックさを押し出したメロディーには若干食傷気味な部分もあるのですが、今回のアルバムはそんな中でも一番ピンと来ない作品だったかも。なんとなく、解散に至った理由もわからないでもない感じがしてしまった作品でした。

評価:★★★

WEAVER 過去の作品
Tapestry

新世界創造記・前編
新世界創造記・後編

ジュビレーション
Handmade
ID
Night Rainbow
流星コーリング
ID2

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