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2022年12月17日 (土)

話題作に続く注目の2作目

Title:Stumpwork
Musician:Dry Cleaning

デビューアルバム「New Long Leg」がいきなり全英チャートで4位を獲得。また各種メディアでも高い評価を受け、年間ベストに数多くランクインするなど注目を集めたイギリスのポストロックバンド、Dry Cleaning。そんな話題作から、わずか1年6ヶ月というスパンで早くもニューアルバムがリリースされました。デビューアルバムでいきなり注目を集めた彼女たちだけに、2枚目も注目の1枚だったのですが、この2枚目のアルバム、彼女たちが決して奇跡のアルバムをリリースしたような一発屋ではないことを証明する傑作に仕上がっていました。

楽曲の基本的な路線は前作と同様。オルタナ系のギターロックが流れる中、ボーカルは「歌」ではなく、淡々とポエトリーリーディングを行うようなスタイル。ある意味、楽曲パターンとしては前作と大きく変わっていません。ただ、決して「歌」がないスタイルでありつつも、意外とそのサウンドゆえにポップでメロディアスと感じてしまう点がDry Cleaningの不思議であり、かつ大きな魅力であったりします。

実際、1曲目「Anna Calls From The Arctic」から、ちょっと気だるい感じのギターサウンドがメランコリックでメロディーを奏でています。この気だるいサウンドにポエトリーリーディングもピッタリマッチ。続く「Kwenchy Kups」もまた、ポエトリーリーディングにピッタリマッチするような気だるい雰囲気のサウンドに、メロディアスさを感じる方も多いのではないでしょうか。

注番の「Driver's Story」「Hot Penny Day」はノイジーでヘヴィーなギターを力強く聴かせる楽曲。タイトルチューンの「Stumpwork」もメランコリックなギターサウンドが魅力的。ちょっとだけ「歌」らしきパートも登場したりして?さらに後半の「Conservation Hell」は疾走感あるサウンドが心地よいナンバー。さらにラストを飾る「Icebergs」はサイケなサウンドも加わるノイジーなナンバー。ちょっと不気味な様相を醸しつつ、アルバムは幕を下ろします。

前作もそうだったのですが、ちょっとメランコリックでローファイな雰囲気のオルタナ系のギターサウンドと、ポエトリーリーディング的なフローレンス・ショウのボーカルが絶妙にマッチ。歌がないにも関わらず、ポップという印象を抱く、不思議な、かつDry Cleaningしかもっていないような個性的な雰囲気を醸し出すアルバムに仕上がっています。そういう意味でも前作に引き続いての傑作ですし、前作が気に入った方なら、間違いなく気に入りそうなアルバムだと思います。

ただ一方では、やはりローファイ気味のギターサウンド+ポエトリーリーディングという組み合わせではどうしてもバリエーションに限りがありますし、正直、前作から考えて似たようなタイプの曲が多かった、というのも事実。新鮮味という意味では残念ながら前作は超えられなかった感があります。実際、アルバムの売上的にもベスト10入りした前作から反転、本作は全英チャート最高位11位と惜しくもベスト10入りを逃す結果になっており、前作は超えられなかったかな、という印象も受けます。

そういう意味では良くも悪くも今後の動向も気になるバンドですが・・・一方では11月に初の来日公演も行われ、日本での知名度も上がってきた模様。今後のさらなる知名度アップにも期待がかかります。今後の展開にも注目したいバンドなのは間違いないでしょう。要注目の1枚です。

評価:★★★★★

Dry Cleaning 過去の作品
New Long Leg


ほかに聴いたアルバム

( ) 20th Anniversary Edition/Sigur Ros

アイスランドのポストロックバンド、シガー・ロスが2002年にリリースし、グラミー賞へのノミネートも果たし話題となった名盤「( )」。今回、リリース20周年を記念し、リマスター盤がリリース。さらにDisc2としてBサイトや未発表のデモ音源も収録されています。同作についてはリアルタイムにも聴いているのですが、今聴いても美しいギターのホワイトノイズとメランコリックなメロディーラインがドリーミーで素晴らしい作品になっています。基本的にDisc2も本編の延長的な作品なので目新しさはありませんが、このアルバム自体、今聴いてもドリームポップの傑作として魅力的な作品。久々にシガー・ロスの魅力を堪能できたリマスター盤でした。

評価:★★★★★

Sigur Ros 過去の作品
Með Suð Í Eyrum Við Spilum Endalaust(残響)
valtari(ヴァルタリ~遠い鼓動)
KVEIKUR
Odin's Raven Magic

Here It Is: A Tribute to Leonard Cohen

1960年代から活躍し、数多くのヒット作を世に送り出したシンガーソングライター、レナード・コーエン。2016年に亡くなるまで生涯現役で活動を続けた彼ですが、本作はそんなレナード・コーエンに対するトリビュートアルバム。ノラ・ジョーンズ、イギーポップ、ピーター・ガブリエルなど、そうそうたるメンバーが参加しています。全体的にはスモーキーな雰囲気でムーディーに聴かせる「大人な」ポップが多いのですが、その中でも圧倒的だったのが「If It Be Your Will」をカバーしたMavis Staples。現在83歳の彼女は、今でも作品を発表し続け、さらに最近のアルバムでもその圧巻なボーカルを聴かせてくれるのですが、このカバーでもその圧倒的なボーカルを感情たっぷりに聴かせてくれており、アルバムの中でも格の違いすら感じさせる内容になっています。全体的に良質なカバーが揃っているのですが、メイヴィスのカバーを聴くだけでも価値のある1枚かと。

評価:★★★★

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