Thundercatの盟友によるニューアルバム
Title:Quality Over Opinion
Musician:Louis Cole
今回紹介するのはロサンゼルスを拠点に活動するドラマーであり、シンガーソングライター、プロデューサーとしても活動しているルイス・コールのニューアルバムです。今回、アルバムを聴くのもはじめてながら、彼の曲について聴くのもこれがはじめて・・・なのですが、ルイス・コールといえば、Thundercatの盟友として知られるドラマー。今年の来日公演でもThundercatと共に来日したことが話題となり、私もライブでそのプレイを既に体験済。そんな訳で、ルイス・コールについては、音源を聴くのはこれがはじめてでも、既にドラムプレイについてはライブを見たことがある、そんなミュージシャンとなります。
そんな訳で、Thudercatの盟友というイメージそのもの、楽曲の方向性としてはおそらくThundercatが好きなら間違いなく気に入りそうな楽曲になっています。さらに、ジャズの方向性が強いThundercatに比べると、よりポップスの方向性が強い、といった感じでしょうか。本作でもまず「Dead Inside Shuffle」は彼のハイトーンボイスを聴かせつつ、軽快で爽やかなポップチューンに。ドラムのリズムやギターサウンドにジャズ的な要素を感じつつも、全体的には爽やかなポップ寄りの作品に。続く「Not Needed Anymore」もアコースティックな様相の爽快なポップチューンに仕上がっています。
しかし、これがユニークなのが続く「Shallow Laughter」でガラッと雰囲気が変わる点。オーケストラアレンジと伸びやかなボーカルでしんみり聴かせるスケール感があって厳かな楽曲でグッと雰囲気が一転。かと思えばSam Gendelも参加した続く「Bitches」はプログレ的な要素も感じさせるダイナミックなバンドサウンドのインストナンバーに。そんな感じで、アルバムは次々と展開していきます。
ただ、基本的にはファルセットボーカルで美しくメロディアスな曲を聴かせるポップチューンが全体の軸になっています。その後もシンセを入れつつ暖かい雰囲気でメランコリックに聴かせる「Message」や、アコースティックギターで暖かく聴かせつつ、ファルセットボーカルの美しいボーカルが耳を惹く「Disappear」、女性ボーカリストのGenevieve Artadiを迎えてテンポよく軽快に聴かせるAOR風のポップチューン「Don't Care」など、いい意味で広い層にアピールできそうなメロディアスなポップチューンが目立ちます。
さらにエレクトロチューンを入れた軽快なダンスチューン「Planet X」、80年代を彷彿させるような軽快なエレクトロダンスポップ「Park Your Car on My Face」など、ちょっと懐かしさを感じさせるナンバーなどもあったりして、ここらへんも幅広い層が楽しめるポップチューンに仕上がっています。
一方で、途中、いきなり悲鳴が入り、後半一気にアバンギャルドに展開する「Let Me Snack」なんていうちょっと奇抜なつ実験的なナンバーがあったり、今風のジャズ的な音で疾走感ある展開となっている「Outer Moat Behavior」みたいな実験的な曲もあったりするため、ポップなメロという感覚で聴いていると、かなりビックリするような展開もあるかもしれません。ただ、アルバムの中でこれらの曲もちょうどよいインパクトになっているようにも感じました。
いろいろな音楽的要素を取り込んだ作品で、ルイス・コールの音楽的趣味の幅広さと、かつ音楽に対する自由度を感じさせるアルバム。バラエティー富んだ展開なゆえに、最後まで飽きることなく次の展開をワクワクしながら聴ける傑作になっており、今年のベスト盤候補とも言える作品だったと思います。ポップのアルバムとして広い層も楽しめそうな作品でした。
評価:★★★★★
ほかに聴いたアルバム
Laughing so Hard, it Hurts/Mavi
アメリカはノース・カロライナ出身のラッパーによるオリジナルアルバムとしては2枚目となるアルバム。日本では完全に無名なミュージシャンなのですが、1曲目「High John」でいきなり日本のアニメをサンプリングしているように聞こえたのですが、気のせいでしょうか?全体的にループするメロウなトラックをまずは聴かせるスタイルで、ラップ以上にこのトラックが聴いていて非常に気持ちよさを感じる作品。全16曲ながらも38分程度の長さというのも楽曲が次々展開していくのにはちょうどよく、この心地よいメロウなトラックに酔いしれることの出来るアルバムでした。
評価:★★★★★
Se Ve Desde Aqui/Mabe Fratti
メキシコで活動を行うチェロ奏者によるニューアルバム。ストリングスを主軸にシンセを加えたフリーキーなサウンドが特徴的。そこに伸びやかで清涼感がある女性ボーカルで、実験的ながらもどこか牧歌的だったりオーガニックだったりと、真逆な要素を感じさせるのがユニーク・・・ではあるのですが、このスタイル、ボーカルスタイルも含めて、終始どこかビョークが頭に浮かんできてしまうのが残念なところなのですが・・・。
評価:★★★★
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