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2022年12月

2022年12月31日 (土)

2022年ベストアルバム(暫定版)

第8波が猛威を奮うものの、徐々にコロナ禍がようやく終わりつつある2022年。来年あたりは、ようやくコロナが終わった年と言えそうな感じもします。今年もあと1時間を切りましたが、現時点での私的ベストアルバム暫定版です。

邦楽編

まず上半期のベスト5です。

1位 BADモード/宇多田ヒカル
2位 ネオン/水曜日のカンパネラ
3位 物語のように/坂本慎太郎
4位 Muddy comedy/山中さわお
5位 七号線ロストボーイズ/amazarashi

これに続く下期のベスト盤候補は・・・

Awakening:Sleeping/MASS OF THE FERMENTING DREGS
Betsu No Jikan/岡田拓郎
正気じゃいられない/マハラージャン
Long Voyage/七尾旅人
SOFTLY/山下達郎
HOWL/ROTH BART BARON

上期に引き続き、下期も豊作傾向が続き、今年1年通じて傑作アルバムが多かったように思います。コロナ禍も落ち着いてきて、いろいろな意味で制作活動にも制約がなくなってきたからでしょうか。ベスト10選びもかなり迷いそうです。

洋楽編

上半期のベスト5です。

1位 Boat Songs/MJ Lenderman
2位 Glitch Princess/yeule
3位 Topical Dancer/Charlotte Adigery&Bolis Pupul
4位 Skinty Fia/Fontaines D.C.
5位 sore thumb/Oso Oso

これに続く下期のベスト盤候補は・・・

Ugly Season/Perfume Genius
Carry Me Home/Mavis Staples&Levon Helm
Florist/Florist
RENAISSANCE/Beyonce
Hold The Girl/Rina Sawayama
Fossora/Bjork
Blue Rev/Alvvays
Being Funny in a Foreign Language(邦題 外国語での言葉遊び)/The 1975
Quality Over Opinion/Louis Cole
Endure/Special Interest

洋楽も豊作気味。特に上期に関しては、良作が多いものの頭ひとつ出たような傑作は少な目・・・という印象だったのですが、下期は出てきました、かなりの傑作が!さらに他にも良作ぞろいで、邦楽同様、ベスト10を選ぶのに迷いそうです。

ちなみに主要メディアの年間ベストを集計してリスト化したサイトがあります。
https://www.albumoftheyear.org/list/summary/2022/
20位までほぼすべてのアルバムは聴いているのですが、まだ未聴の作品もあるので、そちらはチェックしてみたいところです。

そんな訳で、邦楽洋楽ともに豊作だった2022年。来年もこの状況が続くことを願って。それでみなさん、よいお年を!

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2022年12月30日 (金)

2022年ライブまとめ

ようやく通常軌道になりつつあるライブシーン。まだまだ制約のある部分もありますが・・・恒例となるライブまとめです。

1/16(日) 冬のCHAIまつり2022(名古屋CLUB QUATTRO)
2/12(土) TM NETWORK How Do You Crash It?three(オンライン)
2/27(日) クイズ3年B組馬八先生(オンライン)
4/4(月) OKI DUB AINU BAND 東名京ワンマンツアー2022(TOKUZO)
5/18(水) Thundercat Japan Tour 2022(名古屋CLUB QUATTRO)
6/28(月) 小沢健二 So kakkoii 宇宙 Shows(名古屋国際会議場センチュリーホール)
7/8(金) レキシツアー2022 土偶サスペンス劇場~消えたレキシ男爵~(名古屋国際会議場センチュリーホール)
11/25(金) PIXIES JAPAN TOUR 2022(ダイアモンドホール)
12/2(金) ヤバイTシャツ屋さん 無観客スタジオワンマンライブ「無料だから許して!低画質!低音質!5曲だけライブ!!!2022」(オンライン)
12/6(木) black midi JAPAN TOUR 2022(THE BOTTOM LINE)
12/9(金) KAN BAND LIVE TOUR 2022【25歳】(Zepp Nagoya)
12/11(日) Ryuichi Sakamoto:Playing the Piano 2022(オンライン)

そんな訳で、今年も早いもので残り2日。コロナ禍はまだ続いてはいるものの、ライブシーンは徐々に平常営業に戻りつつあります。コロナ禍の中で一世を風靡したオンラインライブはある程度は残りそう・・・。ただ、今年見たオンラインライブはいずれもそうなのですが、どちらかというとライブの代替というよりも、通常のライブでは出来ない形式のパフォーマンスをスタジオで制作するために、というスタイル(もしくは通常のライブを、会場に来ていないリスナーに対して生配信する形)のみで残りそう。

そんなようやく生ライブがメインとなりつつある、今年のベスト3です。

3位 KAN@KAN BAND LIVE TOUR 2022【25歳】

ここ最近、弾き語りや弦楽四重奏とのコラボライブが続いていたので、気が付いたら久しぶりとなるKANのバンド形式のライブ。いつもと比べると、「作りこんだコント」的な要素は薄めだったのですが、それでもユニークなMCなどの連続で思いっきり笑わせ、一方で聴かせる部分はしっかりと聴かせるボリューム感たっぷりの3時間。あっという間に時間が過ぎていったステージでした。

2位 レキシ@レキシツアー2022 土偶サスペンス劇場~消えたレキシ男爵~

ある意味、凝ったコント的な要素が強いエンタテイメントなパフォーマンスという意味ではKANのライブと共通する部分が多いのですが・・・。こちらも文句なしで楽しかったレキシのライブ。こちらはオープニングの映像から最後のエンディングのオチまでしっかりと考え抜かれたライブとなっており、最初から最後まで終始盛り上がったステージでした。コロナ禍もネタにしてしまうあたりはさすが!

1位 CHAI@冬のCHAIまつり2022

以前から一度足を運んでみたかったCHAIのライブ。ようやく念願のパフォーマンスを見ることが出来ました。もともとライブパフォーマンスには高い評価のあった彼女たちですが、特にバンドでのパフォーマンスで、その演奏能力の高さに圧倒。バンドとしての底力を感じさせるステージに、改めて彼女たちの実力の高さを感じました。エレクトロ寄りのサウンドもカッコよかったのですが、やはりロックバンドとしての彼女たちの魅力は圧倒的だなぁ・・・。ツーマンライブだった影響でパフォーマンスの時間が予想していたより短かったのがすごく残念。次回は是非、ワンマンライブに足を運ばなくては。

そんな訳で、徐々にライブに足を運ぶ回数も平常モードになりつつある昨今。コロナ禍はまだ油断できないものの、来年も数多くのライブに足を運べそう。また、素晴らしいパフォーマンスに多く出会えますように。

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2022年12月29日 (木)

今年最後のヒットチャート

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今年最後のヒットチャートとなります。

まず1位初登場は6人組のYou Tuberグループ、すとぷりによる「Here We Go!!」がランクイン。CD販売数1位、ダウンロード数12位。オリコン週間アルバムランキングでも初動売上16万5千枚で1位初登場。前作「Strawberry Prince」の初動22万9千枚(1位)からダウンしています。

2位にはELLEGARDEN「The End of Yesterday」が初登場。CD販売数及びダウンロード数2位。現在、the HIATUS、MONOEYESでも活躍する細美武士が90年代後半から2000年代にかけて結成し、一世を風靡していたロックバンド。2008年に活動を休止したものの2018年に活動を再開していましたが、このたび、実に16年ぶりにリリースしたオリジナルアルバムが本作となります。オリコンでも初動売上5万3千枚で2位初登場。直近作は2008年にリリースしたベストアルバム「ELLEGARDEN BEST 1999-2008」で、同作の初動11万2千枚(2位)からダウン。16年前にリリースしたオリジナルアルバムとしての前作「ELEVEN FIRE CRAKERS」の初動21万5千枚(1位)からも大きくダウンしています。まあ、CDを巡る環境が全く変わってしまったので、仕方ない結果なのでしょうが。

3位には先週1位のINI「Awakening」が2ランクダウンながらもベスト3をキープしています。

続いて4位以下の初登場盤です。まず4位に叶「夜明かし」がランクイン。CD販売数4位、ダウンロード数32位。にじさんじ所属のバーチャルライバーによる2枚目のミニアルバム。オリコンでは初動売上2万3千枚で4位初登場。前作「flores」の初動2万2千枚(6位)から微増。

6位初登場は結束バンド「結束バンド」。テレビアニメ「ぼっち・ざ・ろっく!」に登場するバンドによるデビューアルバムで、12月28日CDリリース予定のアルバムからの先行配信。ダウンロード数で1位を獲得し、見事ベスト10初登場となりました。

7位には韓国の女性アイドルグループKARA「MOVE AGAIN-KARA 15TH ANNIVERSARY ALBUM」がランクイン。CD販売数6位、ダウンロード数19位。2016年に事実上の解散となってしまった彼女たちですが、このたび活動を再開。約7年ぶりの新作となりました。2019年にメンバーのク・ハラの自殺という衝撃的なニュースもあり、韓国芸能界の「闇」の部分もクローズアップされてしまった事態にもなりました。ただ、オリコンの初動売上1万4千枚の7位初登場は、前作「Girl's Story」の初動売上からほぼ横ばいという結果に(6位)。

8位には女性アイドルグループGirls2「Love Genic/Bye-Bye-Bye」が初登場。CD販売数7位。オリコンでは初動売上1万5千枚で6位初登場。前作「Shangri-la」の初動1万4千枚(3位)から微増。

最後10位には女性アイドルグループSUPER☆GiRLSのミニアルバム「超絶☆HAPPY~ミンナニサチアレ!!!!!~」がランクイン。CD販売数8位。オリコンでは初動売上1万枚で10位初登場。

今週の初登場盤は以上。一方、ロングヒット組では松任谷由実「ユーミン万歳!~松任谷由実50周年記念ベストアルバム~」が6位から9位にダウンしたもののベスト10をキープ。これで通算11週目のベスト10ヒットとなりました。

今週のHot Albumsは以上。次週の更新日は不明なのですが、おそらく1月6日あたりになるのかな?

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2022年12月28日 (水)

クリスマスソングがランクアップ

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今年最後のHot100は、最後までヒゲダンと米津のデッドヒートが続きました。

Subtilte

まず1位にはOfficial髭男dism「Subtitle」が、これで4週連続の1位を獲得。ストリーミング数は10週連続、ダウンロード数は4週連続の1位を獲得。You Tube再生回数も3週連続の3位。これで11週連続のベスト10ヒット&ベスト3ヒットとなりました。さらに「ミックスナッツ」も8位から6位にアップし、今週もヒゲダンは2曲同時ランクイン。「ミックスナッツ」は通算31週目のベスト10ヒットとなりました。

2位は米津玄師「KICK BACK」。こちらもストリーミング数は10週連続の2位、You Tube再生回数は3週連続の3位。さらにダウンロード数は3位から2位にアップし、こちらも11週連続のベスト10&ベスト3ヒットとなっています。これから年末年始と新曲のリリースが少なくなりますので、この2曲のロングヒットはまだまだ続きそうです。

そしてそれに続く3位にはモーニング娘。'22「Swing Swing Paradise」が初登場でランクイン。CD販売数1位、ダウンロード数24位、ラジオオンエア数33位。この曲は今週、唯一の初登場曲となります。オリコン週間シングルランキングでは初動売上9万7千枚で1位初登場。前作「Chu Chu Chu 僕らの未来」の初動10万枚(2位)より若干のダウンとなっています。

さて、今週のランキングは集計対象が12月19日~25日とクリスマスに重なるということもあり、クリスマスソングがランクインしてきています。まず5位にback number「クリスマスソング」が先週の15位からアップ。昨年の12月29日付チャート以来、実に1年ぶりのベスト10返り咲きとなっています。ちなみにこれで通算12週目のベスト10ヒット。山下達郎の「クリスマス・イブ」に代わる、あらたなJ-POPのクリスマスソングの定番となっています。

さらにMaraiah Carey「All I Want For Christmas Is You」(邦題「恋人たちのクリスマス」)が先週の32位から9位にランクアップ。こちらはマライア・キャリーが1994年にリリースしたクリスマスソング。当時はフジテレビ系ドラマ「29歳のクリスマス」の主題歌に採用されたこともあり、ミリオンセラーを記録するなど大ヒットを記録しています。ビルボードのHot100としては、これが初のベスト10ヒット。ちなみに本家アメリカのHot100でも今週、見事1位を獲得しています。

以下、今週のHot100では18位に優里「クリスマスイブ」、23位に山下達郎「クリスマス・イブ」、29位に桑田佳祐「白い恋人達」、37位にAriana Grande「Santa Tell Me」、44位にWham!「Last Chrsitmas」、49位にBoA「メリクリ」とクリスマスソングがズラリと並んでいます。ちなみに山下達郎の「クリスマス・イブ」の順位が微妙に低いのは、ストリーミング未解禁の影響でしょう。おそらく、ストリーミングが解禁されたら、ベスト10入りしてくるのでしょうが・・・この曲が解禁されることはおそらくないでしょうね・・・。

ちなみに本家アメリカのHot100のクリスマスソングのチャートインの傾向はさらにすさまじく、1位マライアに続く2位はBrenda Leeの1958年のナンバー「Rockin' Around The Christmas Tree」、3位はBobby Helmsの1957年のナンバー「Jingle Bell Rock」、4位にはBurl Ivesの1964年のナンバー「A Holly Jolly Christmas」、さらには5位にWham!「Last Christmas」、6位にAndy Williamsの1963年のナンバー「It's The Most Wonerful Time Of The Year」と6位までクリスマスソング、それもオールディーズがズラリと並んでいます。間違いなくストリーミングがチャートに反映されているからこそなのでしょうが、これだけ古い曲が聴かれ続けているという点に驚かされます。

さらに今週、ベスト10返り咲きとしてTani Yuuki「W / X / Y」が先週の11位から10位にランクアップ。2週ぶりのベスト10返り咲きで、これで通算34週目のベスト10ヒットとなりました。

そしてロングヒット曲としてはAdo「新時代(ウタ from ONE PIECE FILM RED)」が7位から4位に再びランクアップ。ストリーミング数が5位から4位にランクアップ。ダウンロード数も8位から5位にアップしています。年末の歌番組特番への出演が大きな影響を与えており、これでベスト10ヒットを28週連続に伸ばしています。今後「紅白」出演などが続きますので、さらにロングヒットやさらなるランクアップが期待できそうです。

一方、なとり「Overdose」は今週11位にランクダウン。ベスト10ヒットは13週連続でストップとなりました。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

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2022年12月27日 (火)

未来を見据えた30周年の締めくくり

Title:楽しいお仕事愛好会
Musician:ウルフルズ

今年、メジャーデビュー30周年を迎えたウルフルズ。昨年から今年にかけて、3枚のセルフカバーアルバムをリリースしてきましたが、その締めくくりとしてリリースされたのが30周年記念盤としての約3年ぶりとなるオリジナルアルバム。最近、2005年のシングル「暴れだす」がM-1のPVに使われて話題となった彼らですが、まだまだ現役バンドとしてのパワーを感じさせる作品となっています。

ウルフルズといえば、ソウルやブルースなどのブラックミュージックやルーツミュージックからの影響が強いバンドです。今回のアルバムも1曲目であり、リードトラックである「ツーベーコーベー」もまさにそんな彼らのルーツミュージックからの音楽的影響の強い作品。軽快なピアノにギュインギュインと力強く聴くきかせるにギターサウンド、さらにソウルフルなボーカルという、ルーツ志向のロックンロールナンバー。ユーモラスな歌詞も含めて、ウルフルズの真骨頂ともいえる楽曲となっています。

続く「よんでコールミー」はメランコリックで懐かしさを感じる楽曲にビートルズからの影響を強く感じさせますし、「踊れ」もパワフルなボーカルを聴かせるソウルフルな、いかにもウルフルズらしい楽曲。この前半に感じては、いかにもウルフルズらしい作品が並びます。また、タイトルチューンである「楽しいお仕事愛好会」は、ウルフルズとしての活動を振り返る歌詞が特徴的。途中、彼らの過去の楽曲タイトルがアルバムに織り込まれており、彼らのウルフルズに対する思いも感じることが出来ます。

しかし後半については、ブラックミュージック、ルーツミュージックからの影響に留まらない、ウルフルズの幅広い音楽的影響を感じさせました。「きみんちのイヌ」などはまさにそんなナンバーで、GSあたりからの影響を感じさせるメランコリックで歌謡曲テイストの強い楽曲。また「黒田の子守唄」は沖縄民謡風の楽曲に。彼ららしいブギウギ風の「コミコミ」のような楽曲を挟みつつ、様々な音楽からの影響を感じさせる展開となっていました。

そしてラストはバリバリのJB風のファンクナンバー「続けるズのテーマ」へ。まさにウルフルズの王道を行くようなナンバーで、歌詞も30周年を迎えたウルフルズのこれからの未来を見据えたナンバーになっています。ある意味、過去を振り返る「楽しいお仕事愛好会」と対比的な楽曲で、30周年記念盤のラストを飾るにふさわしい、30周年以降のウルフルズを感じさせる楽曲となっています。

ウルフルズらしい楽曲をちりばめつつ、一方ではソウルやルーツ志向以外の彼らの音楽的嗜好も垣間見れるアルバム。歌詞の内容も含めて、実に30周年記念盤としてふさわしいアルバムとなっています。これからの彼らにも期待できそうな傑作でした。

評価:★★★★★

ウルフルズ 過去の作品
KEEP ON,MOVING ON
ONE MIND
赤盤だぜ!
ボンツビワイワイ
人生
ウ!!!
ウル盤
フル盤
ズ盤


ほかに聴いたアルバム

10の足跡/湯川潮音

なんと約10年ぶりとなるシンガーソングライター湯川潮音のニューアルバム。ほとんどが1発録りによる作品で、ヴァイオリンやチェロ、バンジョーやサックス、フルート、さらにはリコーダーやユーフォニウムといった多種多様な楽器を用いたサウンドが特徴的。ただ、基本的にアコースティックな作風となっているため、アコースティックギターを中心とした静かな作風にまとめあげられています。一方で彼女の特徴であり魅力でもあるファンタジックな世界観は健在で、彼女らしさを強く感じる作品に仕上がっていました。

評価:★★★★★

湯川潮音 過去の作品
灰色とわたし
Sweet Children O'Mine
クレシェンド
濡れない音符
セロファンの空

超天獄/大森靖子

約2年ぶりとなるオリジナルアルバム。彼女らしいバリエーションのある分厚いサウンドで、勢いもあるパンキッシュで、サイケデリックな要素も入ったある種のヒステリックさも魅力的な楽曲が並びます。彼女の主張を赤裸々に綴った歌詞も大きな魅力なのですが、ただ今回のアルバムに関しては、その歌詞のインパクトが少々薄かったような。彼女のアルバムは、1曲2曲、聴いていてハッとするような歌詞に出会えるのですが、今回のアルバムに関しては残念ながらそういう要素を感じませんでした。

評価:★★★★

大森靖子 過去の作品
洗脳
トカレフ(大森靖子&THEピンクトカレフ)
TOKYO BLACK HOLE
kitixxxgaia
MUTEKI
クソカワPARTY
大森靖子
Kintsugi
PERSONA#1

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2022年12月26日 (月)

タイアップ効果でよりポピュラリティーが増した作品

Title:HOWL
Musician:ROTH BART BARON

ここ5作連続、1年おきのリリースが続くなど精力的な活動が続く、現在は三船雅也のソロプロジェクトとなっているROTH BART BARONのニューアルバム。前作「無限のHAKU」も高い評価を受けたのですが、知名度も徐々に上げてきており、本作に収録されている「赤と青」は深夜ドラマとはいえ、TBS系ドラマ「階段下のゴッホ」のエンディングテーマというタイアップがつき、「KAZE」はJR東日本のCMソングとして起用されるなど、その名前を聴く機会が広がってきています。

エレクトロサウンドやピアノ、ストリングスなど多彩な楽器を取り入れたサウンドに三船雅也の魅力的なファルセットボイスを加えて幻想的な世界観を醸し出しているというスタンスは前作と同様。基本的には前作と同じ方向性を感じさせるROTH BART BARONらしいと言える作品となっています。ただ、様々な楽器を取り込んで多彩な色を作り上げていたという印象を受けた前作と比べると、今回のアルバムは音の多様性というよりは、むしろ、作風としてよりポピュラリティーを増したという方向性を強く感じる作品になっていました。

そもそも冒頭を飾る「月に吠える」からして、いきなりボーカルとして中村佳穂を起用しており、郷愁感あるメロディーラインに最近では映画「竜とそばかすの姫」で声優として起用されるなど、その「声」の魅力に注目をあつめている彼女の優しくも力強いボーカルが楽曲にインパクトあるポピュラリティーを与えていますし、続くJR東日本CMソングの「KAZE」は伸びやかなファルセットボイスを聴かせつつ、ポップで明るいメロディーラインにピアノにストリングス、ホーンも加えて祝祭感を覚える作風で、広いリスナー層が聴いていて気持ちよさを感じさせそう。

Disney+「すべて忘れてしまうから」ライヴ・エンディング曲というタイアップがついた「糸の惑星」もエレクトロサウンドでスペーシーな雰囲気を醸し出しつつ、ポップなメロを静かに歌い上げいますし、そしてドラマタイアップとなった「赤と青」も、三船雅也のファルセットボイスを魅力的に聴かせつつ、サビのメロディーラインにもインパクトを持たせつつ、ROTHの魅力を保ちながらもポップでインパクトある作風に仕上がっています。アルバムとしてポップなタイアップ曲を前半に配することによって、全体としても耳なじみあるポップなアルバムという印象を受ける作品となっています。

その後も「ONI」は疾走感ある、比較的スタンダードなギターロックに仕上がっており、ポピュラリティーがありますし、つくばみらい市シティープロモーション曲という公的なタイアップがついた「MIRAI」も、スケール感ある合唱を取り入れつつ、未来への希望を感じさせる、ある種のベタさを感じさせる作風になっています。

もっともただただポップである訳ではなく、これらの曲も様々な音を取り込んだ重厚なサウンドを聴かせてくれていますし、その他もタイトルチューンである「HOWL」では打ち込みのリズムに力強いバンドサウンドを加えてダイナミックな作風に仕上げていますし、「陽炎」も後半にノイズを取り入れて、幻想的でサイケな作風に仕上げるなど、バラエティー富んだ音楽性は本作でもしっかりと感じることが出来ます。

もともと前作もメランコリックでどこか懐かしいそのメロディーラインにしっかりとしたポピュラリティーを感じさせたのですが、今回のアルバムもそのポップというROTHの魅力が、タイアップ曲の効果により、より顕著になったように感じさせます。加えて、幻想的な作風と多彩な音楽性もしっかりと加味されており、ROTHの実力をしっかりと感じさせる作品に仕上がっていました。前作に引き続き本作も、文句なしに年間ベスト候補の1枚。徐々に注目があつまっている彼ですが、今後、さらなる注目を集めそうです。

評価:★★★★★

ROTH BART BARON 過去の作品
無限のHAKU


ほかに聴いたアルバム

Cocoon for the Golden Future/Fear,and Loathing in Las Vegas

約3年ぶりとなるニューアルバム。ハードコアなサウンドに疾走感あるエレクトロのトランシーなサウンドが加わるスタイルが独特のスタイルのバンド。インパクト満載の楽曲の連続で、素直に聴いていて気持ちよさを感じます。特に「Evolve Forward in Hazard」などは終始、軽快なエレクトロサウンドとヘヴィーなバンドサウンドとの対比がユニークで、彼ららしい作品と言えるでしょうか。正直言ってしまうと、インパクトだけを前面に押し出したようなトランシーなサウンドは大味という印象も受けてしまうのですが、ただ、サウンド的には聴いていて素直に気持ちよさを感じてしまいます。難しいこと抜きに楽しめる1枚でした。

評価:★★★★

Fear,and Loathing in Las Vegas 過去の作品
HYPERTOUGHNESS

WEAVER/WEAVER

来年2月の解散を発表した3ピースピアノポップバンドのラストアルバム。セルフタイトルにもなっているアルバムなのですが、ただ残念ながら彼らの持ち味のピアノよりもシンセが微妙に目立つような作品となっており、物足りなさは否めない感じ。ピアノを取り入れたポップソングというスタイルが好みなので毎作聴いている一方、ベタなメランコリックさを押し出したメロディーには若干食傷気味な部分もあるのですが、今回のアルバムはそんな中でも一番ピンと来ない作品だったかも。なんとなく、解散に至った理由もわからないでもない感じがしてしまった作品でした。

評価:★★★

WEAVER 過去の作品
Tapestry

新世界創造記・前編
新世界創造記・後編

ジュビレーション
Handmade
ID
Night Rainbow
流星コーリング
ID2

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2022年12月25日 (日)

YUKIの全てがつまた6時間

2002年のソロデビューから今年で20年目を迎えたYUKI。今回紹介するのはソロデビュー20周年を記念してリリースされた配信限定のベストアルバムです。

Title:YUKI 20th Anniversary The Singles Collection 2002-2022「Tears of JOY」
Musician:YUKI

Yukisingles

まずこちらがシングルコレクション。デビューシングル「the end of shite」から、現時点での最新シングル「鳴り響く限り」までがリリース順に収められています。

Title:YUKI 20th Anniversary Coupling + Remix Collection 2002-2022「Ode to JOY」
Musician:YUKI

Yukicoupling

こちらは彼女のシングルのカップリング曲、全曲を収録したカップリング曲集と、リミックス音源を加えた、いわゆるB面ベストとなります。

彼女はもともと5周年、10周年、15周年とそれぞれベストアルバムをリリースしていますので、今回のアルバムはその流れでのリリースとなります。ただ、5年前にリリースしたシングルコレクション「すてきな15才」は10周年のベストアルバム「POWERS OF TEN」以降のシングルをまとめたアルバムだったため、デビュー以来すべてのシングルを収録したオールタイムのシングルコレクションは、「POWERS OF TEN」以来ということになります。シングルコレクション「Tears of JOY」は全41曲3時間強、B面ベスト「Ode to JOY」は全42曲3時間20分というボリューム感となり、すべて合わせると6時間超え(!)の、まさにYUKIの全てがわかるアルバムとなっていました。

そんな訳で、いきなり「YUKIの全てがわかる」なんて大言壮語な表現をしてしまいましたが、ただ一方、6時間聴いても、正直なところYUKIというミュージシャンの音楽的な方向性がいまひとつ捉えきれないという印象を受けてしまいました。というのも、デビュー以来、彼女が歌ってきた曲のタイプはバラバラ。YUKIといえばこういうタイプの曲、といった明確なものがありません。

以前にも書いたことがあるのですが、いわゆるJ-POPバンドと目されていたジュディマリ解散後は、いかにもサブカルチャー方面を志向した楽曲から並びます。デビュー作「the end of shite」はあきらかなオルタナ系ギターロック、「プリズム」は比較的シンプルなポップなのですが、「66db」はエレクトロアレンジを取り入れて、新たなサウンドへの挑戦もられます。「JOY」なんかもエレクトロダンスチューンに仕上げられており、2000年代初頭の流行にのったような方向性になっています。

その後もダブも取り入れたレゲエ風の「メッセージ」、ちょっとジャジーな「COSMIC BOX」、トランシーな「誰でもロンリー」、エレクトロサウンドにミニマルなコーラスを入れて挑戦的な作風を感じさせる「好きってなんだろう...涙」などなど、最近でも「My lovely ghost」もハウスミュージックの要素を取り入れるなど、自由な作風が続いています。

B面ベスト「Ode to JOY」では、その自由な作風という方向性はさらに顕著で、特に序盤はサブカル寄りの方向性が目立ちますし、ラテン風の「恋人よ」、ブルージーな「AIR WAVE」、軽快なエレクトロポップ「裸の太陽」「just life!all right!」など、バラエティー富んだ作風が並びます。ただ、自由度が高いミュージシャンの場合、このカップリング曲でよりぶっ飛んだ作風を聴かせてくれたりするのですが、彼女の場合、もともとシングルで自由度の高いポップスを聴かせてくれるため、ある意味、カップリング曲との差がさほど大きくありませんでした。それでも後半のリミックスではtofubeatsややけのはら、Mighty Crownといったミュージシャンがそれぞれ自らのフィールドでYUKIの曲を調理。さらなる幅広い音楽性を聴かせてくれます。

ただ一方で、これだけ幅広い音楽性を見せながらも、全体的にはYUKIとしての色も感じられるのは、やはりボーカリストとしての彼女の魅力が大きいように感じます。かわいらしい彼女のボーカルはジュディマリ時代からも「ロリータボイス」として注目を集めていましたが、この独特な声が幅広い音楽性の楽曲に統一感を与えている印象を受けます。そして50歳となった今でも、この声が全く衰えていないという事実に驚かされます。ルックスも年齢を感じさせませんし、いやはや(誉め言葉ですが)バケモノかよ・・・(笑)。いや、この状態を保つためには相当の努力をしていることは想像に難しくありませんが、ここらへんがソロデビューから20年を経て、いまだに高い人気を維持している大きな要因なのでしょう。

まさにYUKIとしての魅力のつまった6時間。かなりフルボリュームの内容なので、一気に聴き切るのは難しいかもしれませんが、どちらかというとプレイリスト的な作品なので、気になる部分をピックアップして聴いてみるのも悪くないかも。まだまだ彼女の活躍は続きそうです。

評価:どちらも★★★★★

YUKI 過去の作品
five-star
うれしくって抱きあうよ
megaphonic
POWERS OF TEN
BETWEEN THE TEN
FLY
まばたき
YUKI RENTAL SELECTION
すてきな15才
forme
echo(Chara+YUKI)
Terminal


ほかに聴いたアルバム。こちらはYUKIの旦那様のバンドです。

TODAY/真心ブラザーズ

約2年ぶりとなる真心ブラザーズのニューアルバム。前作「Cheer」はポップ方面にシフトした作品になっていましたが、今回は郷愁感あふれるブルージーな「一触即発」からスタートし、全体的に落ち着いた大人な雰囲気のアルバムに仕上がっています。「ブレブレ」みたいな陽気なロックンロールナンバーもあり、ある意味YO-KINGらしいユーモラスなこの曲は、真心らしい諧謔性も備えたポップになっているのですが、全体的には地味という印象を受けてしまう作品に。もっとも大ベテランの彼らだからこそ、一定以上の水準のアルバムに仕上がっているのは間違いないのですが。

評価:★★★★

真心ブラザーズ 過去の作品
DAZZLING SOUND
俺たちは真心だ!
タンデムダンデイ20
GOODDEST

Keep on traveling
Do Sing
PACK TO THE FUTURE
FLOW ON THE CLOUD
INNER VOICE
トランタン
Cheer

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2022年12月24日 (土)

5作同時リリース!その2

突如リリースされたSAULTの5作同時リリースのアルバムの紹介。昨日からの続きとなります。

Title:Today&Tomorrow
Musician:SAULT

Sault-today-tomorrow

5枚の中で、バンドサウンド色が一番強かったのがこの作品。まず「In The Beginning」では力強いベースのリフとドラムスが重低音を響かせる中、ギターノイズが重なるスタート。一方、6分37秒にも及ぶ本作は、後半では一転、優しいボーカルにギターが重なるポップな様相の楽曲になります。

その後もギターサウンドを前面に押し出した曲が続き、特に中盤の「The Jungle」はヘヴィーなギターリフを主導とした作品でハードロック色が強い作風になっており、続く「The Plan」も疾走感あるギターサウンドにシャウト気味の女性ボーカルが重なるというパンキッシュな楽曲に。「Money」も同じくアップテンポなギターサウンドのパンキッシュな楽曲となっているなど、ギターロック色の強い作品となっていました。

もっとも全体的にはヘヴィーなベースラインとドラムスという重低音を強調した作風になっており、どす黒い雰囲気とファンキーな要素も兼ね備えており、そういう意味ではSAULTらしさはもちろん健在の作風にも仕上がっています。ソウルやファンクだけではなく、SAULTのロックという側面を強く感じることの出来るアルバムでした。

評価:★★★★★

Title:UNTITLED(God)
Musician:SAULT

Sault-untitled-god

そして、全5枚の中で全21曲、73分にも及ぶボリューム感たっぷりだったのがこちらのアルバム。SAULTではおなじみの「無題」というタイトルを含めて、最もSAULTらしさを感じさせる、ある意味「王道」とも言える作品になっており、今回同時リリースされた5枚のアルバムの「顔」的存在と言えるかもしれません。

伸びやかなストリングスを聴かせるオープニング的な「I Am Free」からスタートし、続く「God Is Love」はいきなりファンキーなベースラインとギターサウンドが響いてくる、実にSAULTらしい作品になっています。

その後はソウルを基調としつつバラエティーに富んだ展開が楽しめます。続く「Love Will Free Your Mind」はメロウな歌を聴かせるソウルナンバーに仕上がっていますし、「I Surrender」も同じく女性ボーカルでメロウに聴かせる楽曲に仕上がっています。「Champions」は女性コーラスを主導としつつ、ファンキーなサウンドでグルーヴィーに聴かせる作品になっています。

その後も力強いゴスペル風の「Spirit High」、同じくゴスペル風のボーカルに疾走感ファンキーなリズムでグイグイと押し込んでくるような「Love Is All I Know」、ジャジーに聴かせる「Safe Within Your Hands」、ソウルなサウンドに途中、ラップも加わる「Free」など、基本的にグルーヴィーなサウンドが流れている中、様々な作風の曲が並んでおり、ボリューム感ある内容ながらも最後まで飽きさせることがありません。「My Light」ではラテン調のリズムまで流れてくるメロウな楽曲になっており、あらためてSAULTの音楽性の幅広さを感じさせます。SAULTの魅力のつまったアルバムでした。

評価:★★★★★

そんなわけで全5枚。すべてあわせると3時間30分以上に及ぶボリュームのある内容を一気にリリースしたSAULT。そもそも彼らの最初のリリースとなった2019年の「5」から、わずか3年に6枚のアルバムをリリースしており、この5枚を含めると、実に11枚のアルバムをリリースしたことになります。そのあまりのハイペースぶりに驚かされます。

ただ一方、それだけのハイペースゆえに、個人的には若干、傑作続きだった以前の作品に比べると、若干、失速気味のようにも感じてしまいます。もちろん、今回の5枚のアルバムはいずれも傑作と称するには十分すぎる出来栄えだったとは思いますが、年間ベストクラスの傑作が続いていた以前のアルバムと比べると、残念ながらその水準には至っていなかったようにも思います。これだけハイペースではなくてもいいから、もうちょっと曲を絞った方がよいのでは?とも感じる部分は否定できませんでした。

個人的にはこの5枚のアルバムでおなか一杯になったので、次はもうちょっとスロウペースでしっかりと曲を絞った作品でOKですよ??とも思ってしまうのですが、でもこれだけワーカホリックなSAULTなだけに、次のアルバムも近いうちにリリースされるんだそうなぁ。まあ、それはそれで楽しみなんですけどね。そのリリース形態を含めて、目の離せないグループです。

SAULT 過去の作品
Untilted(Black is)
Untitled(Rise)
NINE
AIR

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2022年12月23日 (金)

突如、5枚同時リリース!!

ここ最近、非常にハイペースなリリースを続けるイギリスの実験的ファンクロックバンドSAULT。そのメンバーはベールにつつまれていましたが、ここに来て、シンガーソングライターのCleo SolやラッパーのKid Sister、Little Simzなどのプロデュースも手掛けるDean "Inflo 1st" Josiahがメンバーだと反映してきています。そんな謎のユニットだった彼らですが、リリース形態もユニークで、2021年にリリースしたアルバム「Nine」は99日間のみストリーミング&ダウンロード可能というリリース形態に。さらに今年11月1日に、SAULTのTwitterに突如、こんなツイートがなされました。

なんとリンク先から5日間のみアルバムがダウンロード可能という突然のアナウンス。さらにパスワードはこの文章の中から推測しなくてはいけないという、一種の「謎あてゲーム」的な要素も含まれたリリース形態。ちなみにパスワードは結構難しく、私もTwitter上でようやく探し当てることが出来、なんとかパスワードを解除することが出来ました(パスは"godislove"でした)。

さて、今回紹介するのは、そんな謎あてゲームの結果入手できた5枚のアルバム。ちなみに5日間のみのダウンロードでのリリースでしたが、現在は普通にストリーミングで聴くことが出来ます。

Title:11
Musician:SAULT

Sault-11

彼らのアルバムには数字のタイトルの曲が散見されますが、10月10日にリリースされたシングル曲「X」に続く形となるのが本作。1曲目「Glory」は非常にグルーヴィーでヘヴィーなベースラインからスタートし、アルバムへの期待を高めますが、途中からメロウな女性ボーカルが加わり、中盤には男性の説教(?)に合唱というスタイルが登場。ユニークな構成の作品に仕上がっています。

全体的には女性ボーカルによるポップな歌モノにヘヴィーなベースラインを中心としたファンキーなリズムが重なるという構成。実験性の高い彼らの作品の中では比較的ポップで聴きやすいという印象を受けます。特に「Together」はファンキーでリズミカル。ポップな女性ボーカルも加わり、どちらかというとちょっとレトロな雰囲気のするポップに。続く「Higher」も伸びやかなボーカルに爽快なエレピが入り、80年代あたりのブラコンを彷彿とさせるような楽曲に仕上がっています。

その後も「Envious」もメロウな女性ボーカルでしんみり聴かせるメランコリックでソウルなナンバー。「River」も同じくメロウなボーカルで静かに歌い上げるソウルバラード。ラストの「The Circle」もファンキーなベースラインをバックに清涼感ある美しい女性ボーカルでしんみり歌を聴かせる楽曲となっています。

そんな訳で彼らの作品の中では、特により「歌」にスポットをあてた作品。ただ一方ではSAULTの大きな魅力であるファンキーなリズムもしっかりと聴かせてくれており、しっかりとSAULTらしい壺も押さえられた作品になっています。そういう意味では彼らの最初の1枚としても最適の作品だったかも。いい意味で聴きやすさを感じた1枚でした。

評価:★★★★★

そして2作目・・・

Title:AⅡR
Musician:SAULT

Sault-aiir

今年4月にリリースされた「AⅠR」はいままでの彼らのイメージを覆すようなオーケストラアレンジによる作品でしたが、本作はいわばその第2弾とも言うべき作品。「AⅠR」と同じくオーケストラアレンジの作品が並んでいます。前回「AⅠR」の時はあまりの意外性にちょっと抵抗感も覚えた作品なのですが、さすがにこの全5枚というフルボリュームのアルバムの中では、どす黒いファンキーな作品の中の一服の清涼剤のような感覚を覚える作品になっていました。

ダイナミックなストリングスに伸びやかなコーラスラインも入れてスケール感を覚える作品は、クラッシックな交響楽というよりは、むしろ映画音楽のような感覚を覚える作品。1曲あたり5分程度という聴きやすさを感じる区切りもあり、作品としての複雑性もなく、あくまでもポピュラーミュージックの範疇に留まっている点も、映画音楽的な印象を覚える大きな要因でしょうか。大胆なオーケストラの導入という点に彼らの実験性を感じますが、一方で小難しさはなく、いい意味で聴きやすくポップにまとまっている作品に仕上がっていました。ちょっと薄味気味という印象は「AⅠR」同様ですが、全5枚同時リリースというボリュームの中では、その薄味さがちょうど心地よく感じるアルバムでした。

評価:★★★★★

Title:Earth
Musician:SAULT

Sault-earth

全5枚のアルバムの中で、本作の最大の特徴はトライバルなリズム。オープニング的な1曲目に続く「The Lord's with Me」はトライバルなリズムとピアノの重なりが印象的なナンバー。ある意味、アフリカ的なリズムと、その対極にある、西洋音楽の典型的な楽器であるピアノを重ね合わせることにより、アフリカと西洋の融合を図っているような、そんな印象すら受ける作品になっています。

さらに「Valley of the Ocean」ではメロウな女性ボーカルにトライバルなリズムが力強く重なる楽曲。さらにもっともトライバルな要素が強かったのが「Soul Inside My Beautiful Imagination」で、パーカッションの力強いリズムにコールアンドレスポンスが重なる、まさにアフリカ音楽的な要素を色濃く入れた楽曲に仕上がっています。

もっともアルバムとしては一方で「Stronger」のようにピアノをバックにメロウな女性ボーカルで歌いあげるような曲もあったりと、バリエーションも感じさせる作品に。冒頭でも書いたように、まさにアフリカと西洋音楽の融合を意図したアルバムだったのかもしれません。SAULTの新たな魅力も感じさせる作品でした。

評価:★★★★★

あと2枚の紹介は次回に!

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2022年12月22日 (木)

話題のアニメ主題歌で注目のミュージシャンがランクイン

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

まず今週1位はまた男性アイドルグループがランクイン

1位初登場はINI「Awakening」。オーディション番組「PRODUCE 101 JAPANSE SEASON2」から誕生した男性アイドルグループのデビューアルバムとなります。CD販売数及びダウンロード数で1位を獲得しています。オリコン週間アルバムランキングでは初動売上24万枚で1位初登場。

2位はAimer「Deep down」が初登場。今年、「鬼滅の刃」の主題歌「残響散歌」が大ヒットを記録し、今年の紅白出場も決定している彼女ですが、本作では同曲は「THE FIRST TAKE」のバージョンがボーナストラックとして収録されているのみ。ただ同じく話題のアニメ「チェンソーマン」のエンディングテーマ「Deep down」が収録されたミニアルバムとなります。CD販売数3位、ダウンロード数2位。オリコンでは初動売上1万7千枚で3位初登場。直近作はB面ベスト「星が消えた夜に」で、同作の初動売上1万9千枚(3位)からダウンしています。

そして3位には10-FEET「コリンズ」がランクイン。こちらは同じく話題の映画「THE FIRST SLUM DUNK」の主題歌「第ゼロ感」がヒット中。こちらには同作も収録されています。CD販売数2位、ダウンロード数4位。オリコンでは初動売上1万9千枚で2位。直近作はコラボレーションアルバム「10-feat」で同作の初動1万枚(6位)からアップ。ただ、直近のオリジナルアルバム「Fin」の初動4万3千枚(2位)からはダウンしています。

続いて4位以下の初登場盤ですが、まず9位にSKY-HI「THE DEBUT」がランクイン。CD販売数9位、ダウンロード数8位。ラッパーとしても活動しているAAAのメンバーによる新作。タイトルは「THE DEBUT」ですが、これが6枚目のオリジナルアルバムとなります。オリコンでは初動売上8千枚で10位初登場。前作「八面六臂」の初動1万4千枚(5位)からダウンしています。

最後10位にはShe Is Legend「Job for a Rockstar」が初登場。スマートフォンゲーム「ヘブンバーンズレッド」に登場する架空のバンドによる初のフルアルバム。CD販売数7位。こういう名前、現実のバンドならば違和感ありまくりなのですが、そこはあくまでもゲーム中のバンドなので・・・。オリコンでは初動売上1万枚で6位初登場。

また、今週はベスト10返り咲きも。先週12位にダウンした松任谷由実「ユーミン万歳!~松任谷由実50周年記念ベストアルバム~」が今週6位にランクアップ。2週ぶりにベスト10に返り咲きました。また、これでベスト10ヒットは通算10週目となります。

一方で先週までロングヒットを続けていたAdo「ウタの歌 ONE PIECE FILM RED」は今週10位から13位にダウン。ついにベスト10から陥落。ベスト10ヒットも連続18週でストップとなってしまいました。

今週のHot Albumsは以上。チャート評は次は来週の水曜日・・・のはずですが、Billboardの更新状況が不明なので、年明けになるかも??

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2022年12月21日 (水)

ヒゲダンと米津のデッドヒート再び

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

ここ最近、デッドヒートを繰り広げているヒゲダンと米津ですが、今週、再び1位2位に並びました。

Subtilte

まずOfficial髭男dism「Subtitle」が3週連続の1位を獲得。ストリーミング数は9週連続の1位、ダウンロード数は3週連続の1位、You Tube再生回数も2週連続の2位を獲得。これで10週連続のベスト10ヒット&ベスト3ヒットを記録しています。さらに「ミックスナッツ」も先週の10位から8位にアップし、2曲同時ランクイン。「ミックスナッツ」はこれで通算30週目のベスト10ヒットとなりました。

そして米津玄師「KICK BACK」が先週の3位から2位にランクアップ。こちらもストリーミング数が9週連続の2位、You Tube再生回数が2週連続の3位を記録しているほか、ダウンロード数が5位から3位にアップ。こちらも10週連続のベスト10&ベスト3ヒットを記録しています。

初登場組で最高位は3位のKis-My-Ft2「想花」。CD販売数1位、ストリーミング数56位、ラジオオンエア数2位、You Tube再生回数73位。日テレ系ドラマ「祈りのカルテ 研修医の謎解き診察記録」主題歌。オリコン週間シングルランキングでも初動売上24万3千枚で1位初登場。前作「Tow as One」の初動24万6千枚(1位)よりダウンしています。

続いて4位以下の初登場盤ですが、今週は初登場はあと1曲のみ。4位に女性アイドルグループNiziU「Blue Moon」がCDリリースに合わせて先週の66位からランクアップし、ベスト10入り。CD販売数2位、ダウンロード数46位、ストリーミング数92位、ラジオオンエア数61位、You Tube再生回数42位。オリコンでは初動16万1千枚で2位初登場。前作「CLAP CLAP」の初動13万2千枚(1位)よりダウンしています。

一方、ロングヒット曲ですが、まずはAdo「新時代(ウタ from ONE PIECE FILM RED)」が5位から7位にダウン。7週連続4位をキープしてきたストリーミング数が5位にダウン。You Tube再生回数も6位から10位にダウン。一方、ダウンロード数が16位から8位に、カラオケ歌唱回数も3位から2位にアップしています。これで28週連続のベスト10ヒットとなりました。

なとり「Overdose」も6位から10位にダウン。こちらも7週連続3位だったストリーミング数が4位にダウン。一方、You Tube再生回数は先週と変わらず5位をキープ。これで13週連続のベスト10ヒットとなりました、後がなくなりました。

また、先週ベスト10に返り咲いたTani Yuuki「W / X / Y」は11位にダウン。ベスト10返り咲きは1週で終わりました。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

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2022年12月20日 (火)

一気に注目度がアップ!

Title:Endure
Musician:Special Interest

本作がオリジナルアルバムとしては3作目となる、ニューオリンズ出身のノー・ウェーヴパンクバンド、Special Interestのニューアルバム。ここで紹介するのはこれが2作目となりますが、前作「The Passion Of」を紹介した時点では、日本はおろか、海外でもほとんどネット上に情報が上がっておらず、どんなバンドなのかほとんど謎・・・という状況でした。しかし、前作の評価が高かった影響で、知名度は一気に上昇。前作の段階ではなかったWikipedia(英語版)も無事、作成され、本作ではなんと輸入盤使用ながらも解説をつけた国内仕様のCDもリリース。現時点で彼らについて検索をかけると、日本でのインタビュー記事までアップされており、ここ2年で一気に知名度があがったことが伺えます。さらに本作では名門ラフトレードと契約。まさに今、最も注目されるバンドのひとつとなってきています。

もっとも基本的なスタイルは前作から大きく変化はありません。ハイテンポかつ強烈なドラムのビートにシャウト気味のボーカルが加わるパンキッシュなサウンド。本作も1曲目「Cherry Blue Intention」から疾走感あふれるビートが繰り広げられ、いきなりリスナーのテンションは上がりまくります。続く「(Herman's)House」はヘヴィーなギターリフとボーカルの力強いシャウトが特徴的な楽曲。パンキッシュという以上にヘヴィーなロック路線が特徴的な作品となっています。

その後もメタリックなビートでダウナーに聴かせる「Love Scene」や同じくノイジーなビートでインダストリアル色も強い「My Displeasure」など、ヘヴィーで緊迫感あふれるサウンドを聴かせてくれるのが大きな特徴的。前作同様、最後まで耳の離せないアルバムになっていました。

ただもうひとつ大きな特徴だったのが、そんな緊迫感あふれるサウンドの中で、意外とポップという側面を感じられる点でした。例えば「Foul」はヘヴィーでパンキッシュなバンドサウンドの中で繰り広げられる男女の掛け合いのボーカルにテンポ良さを感じますし、「Midnigh Legend」に至っては、エレクトロアレンジのディスコチューンに仕上がっているほど。「Kurdish Radio」もダークでメタリックなサウンドながらも、力強さを感じつつ伸びやかな「歌」も聴かせるナンバーとなっています。

今回のアルバムは前作以上にバリエーションも増え、かついい意味で聴きやすさも増した作品となっていました。ラフトレードに移籍し、また世間からの注目もグッとましたことから、以前より、よりリスナーや「マス」を意識したような曲づくりにシフトした、といった感じでしょうか。もちろん、前作に引き続き今回も文句なしの傑作アルバム。国内でもグッと注目度が高くなっただけに、来年のフジかサマソニあたりで初来日となりそう。これからの活躍にも注目です。

評価:★★★★★

Special Interest 過去の作品
The Passion Of


ほかに聴いたアルバム

As Above,So Below/Sampa The Great

アフリカのザンビアに産まれ、ボスワナに育ち、現在はオーストラリアを拠点に活動しているという、ユニークな経歴を持つ女性ミュージシャン/ラッパーの2枚目となるオリジナルアルバム。トライバルなリズムにリズミカルなラップ、さらに伸びやかなボーカルを聴かせてくれる曲調で、ちょっと怪しげな雰囲気を醸し出しつつ、トライバル的な要素とスタンダードなポップの流れを上手く取り込んだ独特のサウンドを繰り広げています。これからさらなる注目が集まりそうなシンガーです。

評価:★★★★★

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2022年12月19日 (月)

命を懸けた渾身のパフォーマンス

Ryuichi Sakamoto:Playing the Piano 2022

会場 オンライン 日時 2022年12月11日(日)24:00~

今回は坂本龍一の約2年ぶりとなる配信ライブ「Playint the Piano 2022」のライブレポート。現在、がん闘病中の彼。今回の配信ライブはリアルタイムでの配信ではなく、1日に数曲ずつ収録された映像をつなぎあわせた形でのライブとなりました。会場は坂本龍一本人が「日本でいちばんいいスタジオ」と語る東京渋谷のNHK放送センター509スタジオで、今回のライブに関して彼は「ライヴでコンサートをやりきる体力がない――。この形式での演奏を見ていただくのは、これが最後になるかもしれない」と語っており、まさに命すらかけた渾身のパフォーマンスとなりました。

「最後かもしれない」という話もあり、ともすれば重苦しいイメージの中でのライブになってしまうのかも・・・そんなイメージすらあったのですが、そんなイメージを変えたのが事前に配信されたメッセージビデオでした。


「通常のコンサートのように楽しんでいただければ」という教授からのメッセージで、最後は「Enjoy!」というメッセージで締めくくられています。重苦しく考えることなくライブを楽しめばいいんだ!そう強く感じられた教授からのメッセージでした。

当日は夜24時からの回を視聴。時間になるとおもむろにライブがスタート。詳細については公式サイトで全曲解説が行われているのでご参考にしていただければと思いますが、個人的な感想を・・・。映像はほぼ白黒のモノトーン。1曲目は「Improvisation on Little Buddha Theme」からのスタートですが、ほぼ坂本龍一の手元をアップする映像となっていました。

個人的に特に前半で印象に残ったのが「Lack of Love」で、数少ない音をゆっくり聴かせる作品なのですがそのパフォーマンスは緊迫感があふれ、ゾクゾクと来るものがありました。その後は「Solitude」と続き「Aubade 2020」で雰囲気は一転。軽やかなパフォーマンスに、どちらかというと黒を基調とした映像が続いた前半から、白い壁をバックに教授の姿も映し出した映像に変わりました。

その後も「Ichimei - Small Happiness」「Aqua」と続き、おなじみのYMOのナンバー「Tong Poo」へと続きます。原曲と異なりゆっくりとピアノで聴かせるパフォーマンスなのですが、この曲も含めて、がん闘病中ですっかり痩せてしまっている彼ですが、パフォーマンス自体には正直ほとんど衰えを感じさせません。曲によってはむしろパフォーマンスに力強さすら感じられ「Enjoy!」というメッセージの通り、聴いている最中は、彼のおかれた状況を忘れさせ、そのパフォーマンスを楽しむことが出来る内容となっていました。

さらに演奏は「The Wuthering Heights」「20220302 - sarabande」「The Sheltering Sky」と続き、これまたおなじみの「The Last Emperor」。力強いパフォーマンスを楽しませてくれた後は、さらに代表曲「Merry Christmas Mr. Lawrence」と続きます。こちらに関してはYou Tubeで配信されているようですので、見逃した方も是非ともチェックしていただければ・・・。闘病中であることを感じさせないその会パフォーマンスに胸があつくなる思いでした。


ラストは「Opus - Ending」で締めくくり。映像ではスタッフのクレジットが重なる形となります。そして最後は引きの映像から、坂本龍一本人がおもむろに椅子から立ち上がると、歩いて静かに去っていきました。その歩いて去っていくというラストには、まだまだ彼が生きて歩んでいくんだ、という意識をかんじさせます。これが「最後」という話をしていましたが、ひょっとして本人はこれが本当に最後にするつもりはないのかもしれません。そう感じさせるエンディングでした。

パフォーマンスは1時間10分程度。上にも書いた通り、がん闘病中ということを感じさせないような力強い生命力がみなぎるパフォーマンスでした。本人は「これが最後かも」と言っているのですが、これがいわゆる「終わる終わる詐欺」になることを心から願って。素晴らしいステージに、教授のメッセージの通り、心から楽しめたステージでした。

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2022年12月18日 (日)

久々のバンド形式のライブ!

KAN BAND LIVE TOUR 2022【25歳】

会場 Zepp Nagoya 日時 2022年12月9日(金) 18:30~

毎回、捧腹絶倒のKANのライブツアー。直近のアルバム「23歳」はコロナ禍の最中にリリースされたアルバムだったため、バンド形式でのライブツアーが出来ず。結局、それから2年を経過したため、ツアータイトルも「25歳」となったバンド形式でのライブツアーに久々に参加してきました!バンド形式でのライブに参加するのは2014年以来、ちょっと久しぶり。その間、弾き語りライブや弦楽四重奏形式でのライブの参加はあったため、それだけスパンが開いたというのはちょっと意外な感じもしました。

Kan2022_1

いつもは、開演ギリギリに会場入りするのですが、今回はちょっと余裕をもって会場入り。というのは、↓をグッズ売り場で購入したため。

Kan2022_2

KANの詞を集めた詞集「きむらの和歌詞」。本当は本屋とかAmazonとかで買ってもよかったのですが、ライブ会場で買った方が、利益が直接KANの元に届くかな、と思って。半分くらいお布施のつもりで(笑)。

で、ライブは定刻を5分程度遅れてスタート。KANは、上のポスターのバックの画像を彷彿とさせるような様々な色をコラージュしたカラフルなスーツで登場。他のバンドメンバーもみんなド派手なスーツでの登場となりました。そして1曲目は「Sunshine of my heart」からスタート。今回のステージではバックに横長のLEDモニターを設置されており、曲のタイトル、収録アルバム、さらには歌詞が流れる構成になっていました。さらに「胸の谷間」でちょっとエロ歌詞で盛り上がりを見せたかと思えば、そこから一転、ピアノ弾き語りの「まゆみ」へと展開していくあたりは、KANの音楽の幅広さを実感する構成になっていました。

さらに個人的に鳥肌モノだったのが次の「ときどき雲と話をしよう」で大好きなナンバーなだけに非常にうれしい選曲になりました。で、前半は楽曲のバリエーションを聴かせつつも、ただ途中のMCは全くなし。その後も「東京ライフ」などを聴かせつつ、おなじみの「愛は勝つ」で盛り上がり「MAN」までの全10曲、MCなしで一気に展開しました。

ここでようやくMCに。「MCなしでやってきましたが、ここからはいつも通り、ちょこちょこMCを入れてきます」というトークから、昔の留守電の話に。昔のKANの留守電は、カセットテープに応答用メッセージを録音できる形式だったそうで、その応答メッセージ用に曲を書いたのだとか。それが「もしもし木村です」という曲で、非常に好評だったそうで、曲はそのまま歌詞だけ変えて「今夜はかえさないよ」として発表されたとか。その「今夜はかえさないよ」の元曲「もしもし木村です」をこの日は特別に披露。いかにも留守電のメッセージらしくも非常にユニークな歌詞が楽しいナンバーでした。これ、何らかの形で音源化してほしいなぁ。

さらにその後はセットチェンジを兼ねてのおトイレタイムということで、時間が空くのでトイレに行くことを促しつつ「(トイレに行く人のために)おもしろいことはしゃべりません」というMCへ。最初は先日、KANがついにかかった新型コロナの話(「自分は流行に無縁なのでかからないと思った」みたいなネタ)。さらには名古屋に来る途中、Twitterに「一見するとまじめな外国語だけども翻訳するとユニークになる言葉」を富士山の写真と共にアップしようと外国語を考えているうちに富士山を撮り損ねたという話で、なんだかんだ言ってユニークな話に盛り上がりました。

ちなみに、このツイートのことですね・・・

その後「ふたり」やサポートメンバーの菅原龍平、磯貝サイモンと3人でアカペラでハモった「ほっぺたにオリオン」を披露。途中、ずっとKANのライブでキーボードのサポートとして入っていた矢代恒彦が9月に逝去したという悲しい報告もありました(ただ、ライブはあくまでも楽しくという方針で、あくまでも報告のみということで、一瞬しんみりしたのですが、すぐに明るい雰囲気に戻りました)。

続く「23歳」では、シーケンス(同期)の話を。別の場所で事前に録音しておいた音源をライブ会場でバンド演奏と合わせて流すスタイルなのですが、KANのライブでは、会場に流れる音はステージ上だけで作ろうというスタンスの下に長らく使用してこなかったそうです。ただ、この曲だけはどうしてもシーケンスが必要ということで、例外的にシーケンスを導入。ちなみに「最近のミュージシャンはシーケンスとプロンプターと覚せい剤に頼りすぎ」というちょっとブラックなネタを挟みつつ「自分はプロンプターも使っていません」という宣言をしながら「23歳」では途中、歌詞を忘れて「プロンプターいるじゃん!」と突っ込まれるという、狙ったようなハプニングも発生しました。

そしてそこからは一気に終盤戦に。「テレビの中に」「WHITE LINE~指定場所一時不停止~」「君のマスクをはずしたい」と新旧の盛り上がるナンバーが続き、さらには「Oxanne~愛しのオクサーヌ~」へ。ここ最近のライブではこの曲に合わせて、おっぱいの形をした大きな風船が客席の上を舞うそうですが、今回はコロナの影響で実施できず。その映像だけが流れるちょっとシュールな展開となりました。

本編ラストは「キセキ」に。この曲はもともと秦基博の「カサナル」と同時再生すると1つの曲になるのですが、2番からは菅原龍平が秦基博のパートを担当し「カサナルキセキ」として披露し、本編は幕を下ろします。

最後は全員がステージ前方にあつまり挨拶をした後、ステージ下手に去っていく・・・と思ったら、そのまま上手から登場。ほぼアンコールをする暇もなく、アンコールとなりました。で、アンコールでは還暦を迎えたKANの話題に。ただ還暦といっても赤いちゃんちゃんこは着たくない、ということで、写真館で振袖を着て写真撮影を行ったそうで、ライブではその貴重な(?)振袖姿のKANの写真がお披露目されました。

アンコールでは「適齢期LOVE STORY」で盛り上がりつつ、おなじみのライブの1曲目からライブで披露した曲のダイジェスト版をメドレーで再度演奏するコーナーへ。途中、例のごとくネタではAdoの「うっせいわ」に「Oxanne」のおっぱいの歌詞を組み合わせたネタで盛り上がります。そして最後は例のごとくKANが一人ステージ上に残り、ピアノ弾き語りで「エキストラ」を披露。約2時間40分のステージで幕を下ろしました。

今回も気が付けば3時間近い時間がたっていた、非常に楽しいライブだったのですが、今回はいつもと異なって、途中、ユニークなMCはいつも通りだったものの、ギミック的なものはほとんどなく、コントみたいな展開もほとんどなし。いままで見たKANのバンド形式のライブの中では、もっともオーソドックスなライブ、といった印象を受けました。KANといえばネタ満載のステージという印象があったので、いつもよりはあっさりとしたステージだったかな、という印象を受けました。

とはいえ、途中のMCもいつも通りユーモラスでしたし、最後の全曲ダイジェストは例の如くネタはしこんであるし、何よりも名曲をたくさん聴くことの出来たステージで今回も文句なしに大満足のステージでした。やっぱりKANのライブは楽しいですね!ちなみに最後の偽ツアータイトルは「あうあうあう おっぱいぱい」でした(笑)。

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2022年12月17日 (土)

話題作に続く注目の2作目

Title:Stumpwork
Musician:Dry Cleaning

デビューアルバム「New Long Leg」がいきなり全英チャートで4位を獲得。また各種メディアでも高い評価を受け、年間ベストに数多くランクインするなど注目を集めたイギリスのポストロックバンド、Dry Cleaning。そんな話題作から、わずか1年6ヶ月というスパンで早くもニューアルバムがリリースされました。デビューアルバムでいきなり注目を集めた彼女たちだけに、2枚目も注目の1枚だったのですが、この2枚目のアルバム、彼女たちが決して奇跡のアルバムをリリースしたような一発屋ではないことを証明する傑作に仕上がっていました。

楽曲の基本的な路線は前作と同様。オルタナ系のギターロックが流れる中、ボーカルは「歌」ではなく、淡々とポエトリーリーディングを行うようなスタイル。ある意味、楽曲パターンとしては前作と大きく変わっていません。ただ、決して「歌」がないスタイルでありつつも、意外とそのサウンドゆえにポップでメロディアスと感じてしまう点がDry Cleaningの不思議であり、かつ大きな魅力であったりします。

実際、1曲目「Anna Calls From The Arctic」から、ちょっと気だるい感じのギターサウンドがメランコリックでメロディーを奏でています。この気だるいサウンドにポエトリーリーディングもピッタリマッチ。続く「Kwenchy Kups」もまた、ポエトリーリーディングにピッタリマッチするような気だるい雰囲気のサウンドに、メロディアスさを感じる方も多いのではないでしょうか。

注番の「Driver's Story」「Hot Penny Day」はノイジーでヘヴィーなギターを力強く聴かせる楽曲。タイトルチューンの「Stumpwork」もメランコリックなギターサウンドが魅力的。ちょっとだけ「歌」らしきパートも登場したりして?さらに後半の「Conservation Hell」は疾走感あるサウンドが心地よいナンバー。さらにラストを飾る「Icebergs」はサイケなサウンドも加わるノイジーなナンバー。ちょっと不気味な様相を醸しつつ、アルバムは幕を下ろします。

前作もそうだったのですが、ちょっとメランコリックでローファイな雰囲気のオルタナ系のギターサウンドと、ポエトリーリーディング的なフローレンス・ショウのボーカルが絶妙にマッチ。歌がないにも関わらず、ポップという印象を抱く、不思議な、かつDry Cleaningしかもっていないような個性的な雰囲気を醸し出すアルバムに仕上がっています。そういう意味でも前作に引き続いての傑作ですし、前作が気に入った方なら、間違いなく気に入りそうなアルバムだと思います。

ただ一方では、やはりローファイ気味のギターサウンド+ポエトリーリーディングという組み合わせではどうしてもバリエーションに限りがありますし、正直、前作から考えて似たようなタイプの曲が多かった、というのも事実。新鮮味という意味では残念ながら前作は超えられなかった感があります。実際、アルバムの売上的にもベスト10入りした前作から反転、本作は全英チャート最高位11位と惜しくもベスト10入りを逃す結果になっており、前作は超えられなかったかな、という印象も受けます。

そういう意味では良くも悪くも今後の動向も気になるバンドですが・・・一方では11月に初の来日公演も行われ、日本での知名度も上がってきた模様。今後のさらなる知名度アップにも期待がかかります。今後の展開にも注目したいバンドなのは間違いないでしょう。要注目の1枚です。

評価:★★★★★

Dry Cleaning 過去の作品
New Long Leg


ほかに聴いたアルバム

( ) 20th Anniversary Edition/Sigur Ros

アイスランドのポストロックバンド、シガー・ロスが2002年にリリースし、グラミー賞へのノミネートも果たし話題となった名盤「( )」。今回、リリース20周年を記念し、リマスター盤がリリース。さらにDisc2としてBサイトや未発表のデモ音源も収録されています。同作についてはリアルタイムにも聴いているのですが、今聴いても美しいギターのホワイトノイズとメランコリックなメロディーラインがドリーミーで素晴らしい作品になっています。基本的にDisc2も本編の延長的な作品なので目新しさはありませんが、このアルバム自体、今聴いてもドリームポップの傑作として魅力的な作品。久々にシガー・ロスの魅力を堪能できたリマスター盤でした。

評価:★★★★★

Sigur Ros 過去の作品
Með Suð Í Eyrum Við Spilum Endalaust(残響)
valtari(ヴァルタリ~遠い鼓動)
KVEIKUR
Odin's Raven Magic

Here It Is: A Tribute to Leonard Cohen

1960年代から活躍し、数多くのヒット作を世に送り出したシンガーソングライター、レナード・コーエン。2016年に亡くなるまで生涯現役で活動を続けた彼ですが、本作はそんなレナード・コーエンに対するトリビュートアルバム。ノラ・ジョーンズ、イギーポップ、ピーター・ガブリエルなど、そうそうたるメンバーが参加しています。全体的にはスモーキーな雰囲気でムーディーに聴かせる「大人な」ポップが多いのですが、その中でも圧倒的だったのが「If It Be Your Will」をカバーしたMavis Staples。現在83歳の彼女は、今でも作品を発表し続け、さらに最近のアルバムでもその圧巻なボーカルを聴かせてくれるのですが、このカバーでもその圧倒的なボーカルを感情たっぷりに聴かせてくれており、アルバムの中でも格の違いすら感じさせる内容になっています。全体的に良質なカバーが揃っているのですが、メイヴィスのカバーを聴くだけでも価値のある1枚かと。

評価:★★★★

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2022年12月16日 (金)

Thundercatの盟友によるニューアルバム

Title:Quality Over Opinion
Musician:Louis Cole

今回紹介するのはロサンゼルスを拠点に活動するドラマーであり、シンガーソングライター、プロデューサーとしても活動しているルイス・コールのニューアルバムです。今回、アルバムを聴くのもはじめてながら、彼の曲について聴くのもこれがはじめて・・・なのですが、ルイス・コールといえば、Thundercatの盟友として知られるドラマー。今年の来日公演でもThundercatと共に来日したことが話題となり、私もライブでそのプレイを既に体験済。そんな訳で、ルイス・コールについては、音源を聴くのはこれがはじめてでも、既にドラムプレイについてはライブを見たことがある、そんなミュージシャンとなります。

そんな訳で、Thudercatの盟友というイメージそのもの、楽曲の方向性としてはおそらくThundercatが好きなら間違いなく気に入りそうな楽曲になっています。さらに、ジャズの方向性が強いThundercatに比べると、よりポップスの方向性が強い、といった感じでしょうか。本作でもまず「Dead Inside Shuffle」は彼のハイトーンボイスを聴かせつつ、軽快で爽やかなポップチューンに。ドラムのリズムやギターサウンドにジャズ的な要素を感じつつも、全体的には爽やかなポップ寄りの作品に。続く「Not Needed Anymore」もアコースティックな様相の爽快なポップチューンに仕上がっています。

しかし、これがユニークなのが続く「Shallow Laughter」でガラッと雰囲気が変わる点。オーケストラアレンジと伸びやかなボーカルでしんみり聴かせるスケール感があって厳かな楽曲でグッと雰囲気が一転。かと思えばSam Gendelも参加した続く「Bitches」はプログレ的な要素も感じさせるダイナミックなバンドサウンドのインストナンバーに。そんな感じで、アルバムは次々と展開していきます。

ただ、基本的にはファルセットボーカルで美しくメロディアスな曲を聴かせるポップチューンが全体の軸になっています。その後もシンセを入れつつ暖かい雰囲気でメランコリックに聴かせる「Message」や、アコースティックギターで暖かく聴かせつつ、ファルセットボーカルの美しいボーカルが耳を惹く「Disappear」、女性ボーカリストのGenevieve Artadiを迎えてテンポよく軽快に聴かせるAOR風のポップチューン「Don't Care」など、いい意味で広い層にアピールできそうなメロディアスなポップチューンが目立ちます。

さらにエレクトロチューンを入れた軽快なダンスチューン「Planet X」、80年代を彷彿させるような軽快なエレクトロダンスポップ「Park Your Car on My Face」など、ちょっと懐かしさを感じさせるナンバーなどもあったりして、ここらへんも幅広い層が楽しめるポップチューンに仕上がっています。

一方で、途中、いきなり悲鳴が入り、後半一気にアバンギャルドに展開する「Let Me Snack」なんていうちょっと奇抜なつ実験的なナンバーがあったり、今風のジャズ的な音で疾走感ある展開となっている「Outer Moat Behavior」みたいな実験的な曲もあったりするため、ポップなメロという感覚で聴いていると、かなりビックリするような展開もあるかもしれません。ただ、アルバムの中でこれらの曲もちょうどよいインパクトになっているようにも感じました。

いろいろな音楽的要素を取り込んだ作品で、ルイス・コールの音楽的趣味の幅広さと、かつ音楽に対する自由度を感じさせるアルバム。バラエティー富んだ展開なゆえに、最後まで飽きることなく次の展開をワクワクしながら聴ける傑作になっており、今年のベスト盤候補とも言える作品だったと思います。ポップのアルバムとして広い層も楽しめそうな作品でした。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

Laughing so Hard, it Hurts/Mavi

Mavi

アメリカはノース・カロライナ出身のラッパーによるオリジナルアルバムとしては2枚目となるアルバム。日本では完全に無名なミュージシャンなのですが、1曲目「High John」でいきなり日本のアニメをサンプリングしているように聞こえたのですが、気のせいでしょうか?全体的にループするメロウなトラックをまずは聴かせるスタイルで、ラップ以上にこのトラックが聴いていて非常に気持ちよさを感じる作品。全16曲ながらも38分程度の長さというのも楽曲が次々展開していくのにはちょうどよく、この心地よいメロウなトラックに酔いしれることの出来るアルバムでした。

評価:★★★★★

Se Ve Desde Aqui/Mabe Fratti

メキシコで活動を行うチェロ奏者によるニューアルバム。ストリングスを主軸にシンセを加えたフリーキーなサウンドが特徴的。そこに伸びやかで清涼感がある女性ボーカルで、実験的ながらもどこか牧歌的だったりオーガニックだったりと、真逆な要素を感じさせるのがユニーク・・・ではあるのですが、このスタイル、ボーカルスタイルも含めて、終始どこかビョークが頭に浮かんできてしまうのが残念なところなのですが・・・。

評価:★★★★

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2022年12月15日 (木)

男性アイドルグループが目立つ

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週は男性アイドルグループの目立つチャートとなりました。

まず1位初登場は&TEAM「First Howling:ME」。CD販売数2位、ダウンロード数51位。韓国のオーディション番組「I-LAND」と「&AUDITION-The Howling-」から誕生した日韓合同の男性アイドルグループ。本作がデビューのEP盤となります。オリコン週間アルバムランキングでは初動売上15万枚で1位初登場。

2位は韓国の男性アイドルグループSEVENTEEN「DREAM」が先週の6位からランクアップし、2週ぶりのベスト3返り咲きとなっています。

今週は、この1位2位を含んで男性アイドルグループが目立ちました。4位にRM「Indigo」、5位にTREASURE「THE SECOND STEP:CHAPTER TWO」、8位にATEEZ「THE WORLD EP.PARADIGM」と、K-POP勢を中心にベスト10のうち5枚が男性アイドルグループ。特にここ最近、CDが売れただけでは上位に食い込めないHot100に比べて、CDの売上でチャート上位に食い込めるK-POPのアイドル勢の力の入れようを感じさせます。ここらへん、いまだにシングルヒットにこだわるジャニーズ系や秋元系を中心としたJ-POP系との差が開くばかりのような感じが・・・。古いスキームに不必要にこだわるスタンスが、音楽に限らず最近の日本の凋落を象徴しているような印象すら受けてしまいます・・・。

3位にはEXILE「POWER OF WISH」が初登場。CD販売数3位、ダウンロード数16位。オリコンでは初動売上4万1千枚で3位初登場。前作「PHOENIX」の初動1万6千枚(6位)よりアップしています。

続いて4位以下の初登場盤はまず6位に「うたの☆プリンスさまっ♪Shining Live 5th Anniversary CD」がランクイン。CD販売数6位。スマホ向けゲーム「うたの☆プリンスさまっ♪Shining Live」の5周年を記念したアルバム。オリコンでは初動売上1万9千枚で5位初登場。

9位には声優、斉藤壮馬「陰/陽」がランクイン。CD販売数9位、ダウンロード数19位。6曲入りで3枚目となるミニアルバム。オリコンでは初動売上9千枚で9位初登場。同じくミニアルバムで直近作でもある「my beautiful valentine」の初動1万枚(5位)から若干のダウンとなっています。

今週の初登場盤は以上。一方、ロングヒット盤はAdo「ウタの歌 ONE PIECE FILM RED」は今週9位から10位にランクダウン。後がなくなりました。ただ、これで18週連続のベスト10ヒットとなります。

一方で、松任谷由実「ユーミン万歳!~松任谷由実50周年記念ベストアルバム~」は今週12位にダウン。ベスト10ヒットは9週連続でストップです。

今週のHot Albumsは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2022年12月14日 (水)

見事2週連続の1位獲得!

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

見事2週連続の1位獲得です。

Subtilte

今週1位はOfficial髭男dism「Subtitle」が獲得。ダウンロード数は先週から変わらず1位。ストリーミング数はこれで8週連続の1位獲得。ほか、ラジオオンエア数4位、You Tube再生回数2位、カラオケ歌唱回数6位といずれも上位にランクインし、見事2週連続、通算6週目の1位獲得。また9週連続のベスト10&ベスト3ヒットを獲得しています。さらにヒゲダンは今週「ミックスナッツ」が先週の12位からランクアップして10位にランクイン。4週ぶりのベスト10返り咲きとなっています。同時に4週ぶりの2曲同時ランクイン。通算29週目のベスト10ヒットとなりました。

一方、初登場組の最高位は2位初登場乃木坂46「ここにはないもの」が獲得。CD販売数1位、ダウンロード数4位、ストリーミング数87位、ラジオオンエア数8位、You Tube再生回数97位。オリコン週間シングルランキングでは初動売上65万3千枚で1位初登場。前作「好きというのはロックだぜ!」の初動売上57万7千枚で1位初登場。

そしてヒゲダンとデッドヒートを繰り広げている米津玄師「KICK BACK」は今週、ワンランクダウンの3位となりました。ストリーミング数は8週連続の2位獲得。ただ、先週2位にアップしたダウンロード数は5位にダウン。You Tube再生回数も2位から3位とダウンしています。こちらもヒゲダンと同様、9週連続のベスト10&ベスト3ヒットとなりました。

続いて4位以下の初登場曲なのですが、7位に宇多田ヒカル「First Love」がランクインしています。本作は1999年にリリースした彼女の3枚目となるアルバム。今回、U2やサム・スミスの作品も手掛けるミキシング・エンジニアのスティーヴ・フィッツモーリスにより新たなステレオミックスがほどこされ「First Love(2022 Mix)」として配信リリース。さらに新たにリマスタリングされた「初恋(2022 Remastering)」とともにアナログ盤としてもリリース。結果、CD販売数では8位、ストリーミング数6位を記録し、ベスト10入りしてきました。そのほか、ダウンロード数84位、ラジオオンエア数16位、You Tube再生回数58位、カラオケ歌唱回数39位にランクイン。アナログ盤のみの集計に関わらず、オリコンでは初動売上6千枚で6位にランクインしています。20年以上前の作品にも関わらず、これだけの売上を上げるのは驚き。また宇多田ヒカルの根強い人気を感じさせる結果となりました。

そして初登場もう1曲は9位にランクインしたパンクロックバンド10-FEET「第ゼロ感」。ダウンロード数2位、ストリーミング数24位、ラジオオンエア数6位、You Tube再生回数16位。映画「THE FIRST SLAM DUNK」エンディングテーマ。話題の映画に使われているということもあり、見事ヒットを記録しました。ストリーミング数とYou Tube再生回数がまだ少ないのが気になりますが、今後、ロングヒットを記録するのでしょうか?

またベスト10返り咲き組としてTani Yuuki「W / X / Y」が先週の11位からランクアップし、3週ぶりのベスト10返り咲き。特にストリーミング数は今週で8週連続の5位という結果となっています。これで通算33週目のベスト10ヒットとなりました。

ほかのロングヒット曲は、まずはAdo「新時代(ウタ from ONE PIECE FILM RED)」が7位から5位に再度ランクアップ。先週10位にダウンしたYou Tube再生回数が再び6位にアップ。ストリーミング数も7週連続の4位を記録しています。これで27週連続のベスト10ヒットとなりました。

なとり「Overdose」は今週9位から6位にアップ。ストリーミング数は7週連続の3位。また今週、You Tube再生回数が34位から5位に大幅アップしています。ただ、こちらはここ4週で6位→圏外→34位→5位と激変しており、若干、You Tube再生回数の集計に疑義を感じる部分も・・・。これで12週連続のベスト10ヒットとなりました。

一方、YOASOBI「祝福」は今週11位にダウン。ベスト10ヒットは連続9週でストップとなりました。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

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2022年12月13日 (火)

待ちに待った振替公演!

black midi JAPAN TOUR 2022

会場 THE BOTTOM LINE 日時 2022年12月6日(水)19:00~

Blackmidi1 独特の音楽性が高い評価を受け、今、もっとも注目されるロックバンドの一組であるイギリスのロックバンド、black midi。その来日公演が決定されたのが昨年の9月でした。コロナ禍がちょっと収まりつつあった中での開催決定で、ようやく外タレのライブも見れるのか・・・と期待があったのですが、その後の状況悪化により結局来日は延期に。それから約1年3ヶ月、コロナ禍も徐々に収束に向かい、ライブ活動も以前の形を取り戻す中、ようやく延期となっていた来日公演が決定となりました。会場は同じくボトムライン。1年3ヶ月ごしにかなった来日ライブなだけに楽しみにして足を運びました。

で、19時ピッタリに会場は暗くなり、音楽が鳴り響きます。もう早くもライブがスタートか・・・と思いつつ、ここから全くメンバーがステージに来ない・・・この音楽が延々に鳴り響く中、待ちわびます・・・しかし、全くメンバーがあらわれない・・・。

大音量の音楽の中、ちょっとしたクラブのような雰囲気になり、Twitterの情報によると2階席にバンドメンバーがあらわれたとかあらわれなかったとか・・・。延々50分近くが経過し、ようやくメンバーがステージ上にあらわれ、ライブがスタートとなりました。

まず1曲目は「953」からスタート。いきなりヘヴィーな爆音が会場を包みます。

Blackmidi2

序盤はさらに「Speedway」「Welcome to Hell」とダイナミックなナンバーが続きます。この日はメンバー3人+サポートのキーボード1人という編成なのですが、息の合ったプレイが印象的でした。

Blackmidi3

ドラムスのモーガン・シンプソン。迫力あるドラミングでステージを支えます。

迫力ある演奏を聴かせてくれたかと思えば、続く「27 questions」では一転、しんみりと歌を聴かせる構成に。力強い演奏だけではなく、「歌」もしっかりと魅力的に聴かせてくれるという音楽性の幅も彼らの実力の一つと言えるでしょう。しかしその後は一転、「Sugar/Tzu」「Raggae」とダイナミックなナンバーを聴かせます。

Blackmidi4

ベースのキャメロン・ピクトン。彼の力強いベースもバンドの土台を支えていますが、中盤アコギをかかげ「Still」では伸びやかな歌声を聴かせてくれます。しんみり聴かせる「Still」から一転、ダイナミックな「Eat Man Eat」でも彼のボーカルで迫力あるバンドサウンドを聴かせてくれました。

その後はなぜか「クワイ河マーチ」をプレイし、そのまま「Chondro」「John L」「Near DT」へ。途中、簡単なMCで今回のツアーでまわった(と思われる)世界各地への感謝の言葉かけ、最後は"Many thanks to you,friends"と会場のファンにも感謝の言葉をかけていました。

Blackmidi5

ギターのジオルディ・グリープ。終盤の「Magician」ではハンドマイクを持って、しっかりと歌い上げます。もちろん、ダイナミックなギタープレイも大きな魅力。ラストは「Slow」で締めくくり。実演奏時間は1時間20分くらいのステージ。最後はグリープが1人ステージに残り、挨拶。最後は"Merry Christmas"で締めくくりました。

20時ちょっと前にスタートしたライブでしたが、ライブ終了は21時ちょっと過ぎ。うーん、ライブ開始があれだけ遅れるくらいなら、もっと早くはじめて、もっと長くプレイしてほしかったなぁ。そんな不満もありつつ、ライブ自体は予想以上に素晴らしいものでした!とにかく、メンバーの息がピッタリと合った演奏で、静と動のメリハリのつけた演奏にはゾクゾクとくる瞬間も多々ありました。ライブバンドとしての実力をしっかりと感じさせる演奏でした。

迫力あるダイナミックなプレイから歌をしっかり聴かせるステージまで幅もあり、ミュージシャンとしての実力もしっかりと感じられます。あらためてblack midiというバンドの素晴らしさを感じたステージ。なかなかはじまらないステージにちょっとイライラもしたのですが、大満足の1時間強でした!

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2022年12月12日 (月)

昭和のレア・グルーヴ企画拡大版 その4

前回に引き続いてカルト昭和歌謡のオムニバス盤「GROOVIN'昭和アーカイブス」シリーズ。今年6月にリリースされた第2弾から、残り2枚です。

Title:GROOVIN'昭和アーカイヴス9 魅惑の女性シンガーvol.1

vol.7,8と男性シンガーで来たのですから、当然vol.9,10は女性シンガー編。1曲目はあの山本リンダが歌う「世界の国からこんにちは」からスタート。山本リンダのイメージとはちょっと異なるようなかわいらしい曲調も印象的ながら、三波春夫の原曲のイメージからも異なり、こんな曲があったんだ、とちょっとビックリしました。

この女性ボーカル編の特徴なのは、ムード歌謡曲の割合が多かった男性ボーカル編に比べると、曲調にバラエティーが多かった点。レモンレモンズの「夢みるツイッギー」は60年代の洋楽のガールズポップを彷彿させる内容。司美智子の「あなたっていいわ」はセクシーなボーカルが魅力的な歌謡曲。西崎緑の「ちいさなプリンセス」は子供からの視点がユニークなかわいらしいキッズソング。加賀ひとみの「東京フラメンコ」はラテン調のサウンドが特徴的。女性らしいかわいらしさやセクシーさを強調した曲が多いのですが、全体的に男性編よりもバラエティーに富んだ曲調が特徴的でした。

一方、いかにもな珍曲はあまり見受けられません。あえていえばセクシーなスキャットの間に、ただ「東京」とだけ歌われる北沢マリ「Dubi Dub 東京」は珍曲と言っていいかもしれません。全体的に男性ボーカル曲と女性ボーカル曲の方向性の違いがわかる構成に。なぜ、方向性に違いが出てくるのかは不明ですが、なかなか興味深く感じられました。

評価:★★★★

Title:GROOVIN'昭和アーカイヴス10 魅惑の女性シンガーvol.2

そして、こちらはその女性ボーカル編の第2弾。特徴としては第1弾と同じく、バラエティーに富んだ音楽性。可愛らしくもちょっとエッチなフラワー・メグの「ベッドにばかりいるの」、エロっぽい歌詞と小唄調の曲調のギャップもおもしろい五月みどり「ブギウギ小唄」、典型的なムード歌謡曲ながらもサビでいきなり浪曲風に変化するのがどこかコミカルな上原ことみ「女なんです」、ムードたっぷりでエロティシズム満開なフラワー・メグ「ジュテーム」などなど。まさにバラエティー富んだ作風の曲が並びます。

全体的には特にセクシーなエロっぽい曲が目立ったような印象も。特にフラワー・メグなどは可愛らしくもエロっぽい歌詞とボーカルが耳を惹きます。彼女、1年程度活躍した後、20歳の若さで引退したそうですが、ここ最近、彼女への再評価に伴い復活したとか・・・確かに、この2曲だけでも、時代を超えて評価される彼女の魅力を感じることが出来ます。

どちらのアルバムも、ともすれば男性視点からの偏見まじりの「女らしさ」を強調した曲が目立つのもまた、「時代」ゆえでしょうか。良くも悪くも昭和らしさを感じさせる曲の並んだ女性ボーカル編。私の生まれる前の曲がメインですが、懐かしさも感じさせる作品でした。

評価:★★★★


ほかに聴いたアルバム

KAZUYOSHI SAITO LIVE TOUR 2021 “202020 & 55 STONES” Live at 東京国際フォーラム 2021.10.31/斉藤和義

毎回恒例の斉藤和義のライブアルバム。今回は、「KAZUYOSHI SAITO LIVE TOUR 2021 “202020 & 55 STONES”」のツアーファイナル、東京国際フォーラムのライブ音源をおさめたアルバム。コロナの影響でアルバム「202020」のツアーが順延になった影響で、「202020」と「55 STONES」2枚のアルバムを元としたツアーで、この2枚のアルバムがいずれも傑作だったことから、ライブ盤もかなりの充実ぶりとなっていました。彼のライブ盤はMC部分が省略されるのですが(とても音源に残せない下ネタが多いため・・・)、今回はコロナ禍で声が出せない状況であることを語ったMCが収録されているなど、時代を反映された記録的な側面もあるライブ盤になっています。次のライブ盤は、観客の歓声もしっかりと入っている作品になるといいのですが。

評価:★★★★★

斉藤和義 過去の作品
I (LOVE) ME
歌うたい15 SINGLES BEST 1993~2007
Collection "B" 1993~2007
月が昇れば
斉藤“弾き語り”和義 ライブツアー2009≫2010 十二月 in 大阪城ホール ~月が昇れば 弾き語る~
ARE YOU READY?
45 STONES
ONE NIGHT ACOUSTIC RECORDING SESSION at NHK CR-509 Studio
斉藤
和義

Kazuyoshi Saito 20th Anniversary Live 1993-2013 “20<21" ~これからもヨロチクビ~ at 神戸ワールド記念ホール2013.8.25
KAZUYOSHI SAITO LIVE TOUR 2014"RUMBLE HORSES"Live at ZEPP TOKYO 2014.12.12
風の果てまで
KAZUYOSHI SAITO LIVE TOUR 2015-2016“風の果てまで” Live at 日本武道館 2016.5.22
斉藤和義 弾き語りツアー2017 雨に歌えば Live at 中野サンプラザ 2017.06.21
Toys Blood Music
歌うたい25 SINGLES BEST 2008~2017
Kazuyoshi Saito LIVE TOUR 2018 Toys Blood Music Live at 山梨コラニー文化ホール2018.06.02
KAZUYOSHI SAITO 25th Anniversary Live 1993-2018 25<26 〜これからもヨロチクビーチク〜 Live at 日本武道館 2018.09.07
小さな夜~映画「アイネクライネナハトムジーク」オリジナルサウンドトラック~
弾き語りツアー2019 "Time in the Garage" Live at 中野サンプラザ 2019.06.13
202020
55 STONES
KAZUYOSHI SAITO LIVE TOUR 2020 "202020" 幻のセットリストで2日間開催!~万事休すも起死回生~ Live at 中野サンプラザホール 2021.4.28

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2022年12月11日 (日)

昭和のレア・グルーヴ企画拡大版 その3

徳間ジャパンコミュニケーションズが原盤を所有する昭和のレア音源を集めたオムニバスアルバム企画「GROOVIN'昭和アーカイヴス」シリーズ。10月に第1弾であるVol.1からVol.5まで紹介しましたが、今回は2回にわけて、Vol.6からVol.10までを紹介します。

Title:GROOVIN'昭和アーカイヴス 6 カルトGSコレクション

1967年から1969年にかけて一世を風靡したグループ・サウンズ。その流行はかなり短い期間だったものの、雨後のたけのこのように数多くのグループが登場し、そして時代のあだ花として消えていきました。中にはほとんど売れなかったバンドも数多く、そんなカルト的なグループ・サウンズの曲を集めたのがこの作品となります。

そんなGSバンドは、ビートルズやローリング・ストーンズなど海外のバンドの影響を強く受けたバンドも少なくなく、自身のライブでは洋楽テイストの強い作品を演奏していた一方、シングル曲では歌謡曲路線の曲を歌っていたという二面性が、特に昭和歌謡曲の研究が進んだここ最近、よく知られるようになっています。本作は、そのGSの二面性を如実にあらわした構成になっており、前半は洋楽テイストの強い楽曲が並びます。ラ・シャレローズの「うさわの二人」などはメロこそ歌謡曲テイストながらもサイケなギターが非常にカッコいいナンバーですし、石橋志郎とストーンズの「恋のシンガリング」などもファンキーなリズムを聴かせる楽曲になっています。

一方、後半は歌謡曲路線。ザ・デビィーズの「エルムの恋」やキッパーズの「小雨の風景画」などは完全にムード歌謡曲となっており、ある意味、前半との差にも驚かされるくらいです。

そんなグループ・サウンドの二面性をよくあらわした構成になっている本作。特に前半は、洋楽テイストの強いサウンドと歌謡曲がほどよく融合された曲もユニークで、レコード会社がこの路線のバンドをもっと売ろうとしていれば、日本のロックシーンも大きく変わったのかも・・・そんな想像もしてしまうような1枚でした。

評価:★★★★

Title:GROOVIN'昭和アーカイヴス7 魅惑の男性シンガーvol.1

こちらはタイトル通り、男性シンガーの曲が並ぶのですが、これがかなり珍曲も多い、この手のオムニバスならではの構成が実に魅力的。まず強いインパクトがあるのがジョニー広瀬の「太陽に抱かれたい」で、楽曲的には典型的なムード歌謡曲なのですが、あまりのダミ声に度肝を抜かれます。上田吉二郎・武智豊子の「上吉・豊子のハレンチ・アモーレ」も年配の男女によるデゥオなのですが、エロ歌詞のため非常に気持ち悪く、これまたインパクト満点。同曲のB面だった「おじいちゃんのへ長調作品5番」も下品極まりない曲で、どちらも珍曲中の珍曲。決してお勧めはしませんが、この手のカルトソングが好きならばたまらない選曲といった感じでしょう。

滝しんじの「ケメ子がなんだい」もエフェクトをかけたボーカルを使ったコミカルな作品。また、勝新太郎や千昌夫といった大御所の曲も収録されたりするのですが、特に勝新の「アンチェイン・マイ・ハート」などは男が聴いていても色気を感じさせる曲になっており、時代を超えて勝新の魅力が伝わってくるような曲になっていました。

そんな訳で、万人向けではないものの聴きどころがたくさん、珍曲が多い1枚。昭和歌謡曲の、ある種の奥深さを感じるオムニバスアルバムとなっていました。

評価:★★★★

Title:GROOVIN'昭和アーカイヴス8 魅惑の男性シンガーvol.2

そして、その男性ボーカルシリーズの第2弾。1曲目はおなじみ五木ひろしなのですが、洋楽的なリズムを取り入れており、ちょっとビックリします。ただ、歌自体は思いっきり演歌なのですが・・・。

また、このvol.2で特に目立つのは民謡を取り入れた曲が並んでいる点。友川かずきの「乱調秋田音頭」はタイトル通りの秋田音頭を方言そのままに軽快に歌い上げています。喜納昌吉とチャンプルーズの「東京讃美歌」も沖縄民謡ですし、大木英夫の「ジョンガラ・ロック」もファンキーなリズムと民謡的な節回しの融合がユニークな作品。この時代から洋楽的なサウンドやリズムと民謡を融合させようとする試みが行われていたことを感じさせます。

その他は基本的にムード歌謡曲テイストの曲が多く、珍曲やカルトさという意味ではvol.1にちょっと見劣りしてしまう点は残念ですが、さすがにvol.1みたいな濃さを男性ボーカルというくくりをもってアルバム2枚分リリースすることは出来ないのでしょう。とはいえ、昭和のレア曲たっぷりの内容で、こちらも好きな方には聴きごたえ十分の作品でした。

評価:★★★★

GROOVIN'昭和!シリーズ 過去の作品
GROOVIN' 昭和!1~こまっちゃうナ
GROOVIN'昭和!2~ベッドにばかりいるの
GROOVIN'昭和!3~恋のサイケデリック
GROOVIN'昭和4~自衛隊に入ろう
GROOVIN'昭和5~ぐでんぐでん
GROOVIN'昭和!6~東京ディスコ・ナイト
GROOVIN'昭和!7~ロマンチスト
GROOVIN'昭和アーカイヴス 1 シティ・ポップ&メロウ・サウンド
GROOVIN'昭和アーカイヴス 2 オン・ザ・ロックス
GROOVIN'昭和アーカイヴス 3 ファンク&ブルース
GROOVIN'昭和アーカイヴス 4 歌謡ディスコ&ソウル
GROOVIN'昭和アーカイヴス 5 ロックンロール80's

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2022年12月10日 (土)

2度目の配信ライブ【宣伝有】

ヤバイTシャツ屋さん 無観客スタジオワンマンライブ「無料だから許して!低画質!低音質!5曲だけライブ!!!2022」

会場 オンライン 日時 2022年12月2日(金)20:00~

最近、コロナ禍も収まって・・・というよりも、徐々に「風邪扱い」に移行する中、ライブも通常ベースに戻りつつあります。それに伴い配信ライブも以前に比べて少なくなりつつあるのですが、そんな中、久しぶりに配信ライブに参加してきました。今回のライブはヤバイTシャツ屋さん。まだコロナ禍が吹き荒れているおととし2020年7月にYou Tube上で無料生配信ライブを実施したのですが、これから約2年5ヶ月ぶり。再びYou Tubeで無料生配信ライブを実施ということで、今回も視聴してみました。

場所は某スタジオ内部。最初はメンバー3人のグダグダな会話からスタート。今回もボーカルのこやまたくやがスマホを持って、Twitterで反応を確認しつつのスタートに。この時点で視聴者数は約9千7百人程度だったので「視聴者数が1万人を超えたらライブがスタートします」と言いつつ、その間にもりもとのコンテンポラリーダンスなる怪しいダンスを披露。そうこうしているうちにあっという間に視聴者数が1万人を超え、ライブがスタートとなりました。

ライブはまず「かわE」からスタート。さらに「ヤバみ」へと続きます。トークではゆるゆるで良くも悪くも今時のバンドらしい軽いノリをみせる彼らですが、「ヤバみ」では配信越しでも感じられるヘヴィーなバンドサウンドで、ロックバンドの力量を感じさせます。

その後はトーク。Twitterのつぶやきを読みつつ、この日の配信ライブの目玉である重大発表の第1弾。3月1日に5枚目のフルアルバム「Tank-top Flower for Frriends」、さらにブルーレイ/DVD作品「Tank-top of the DVD SpecialⅡ-NIPPON BUDOKAN-」のリリースの宣伝がありました。

そして3曲目へ。3曲目は6月にリリースした最新シングルから「ちらばれ!サマーピーポー」へ。かなりアップテンポで賑やかなナンバー。早口の部分はいまひとつ聴き取りにくかったので、まだ言いなれていない感も?今後のライブツアーでのバンドとしての成長の可能性も感じさせます。

さらにここであらたな重大発表。サンリオピューロランドへ瞬間移動(という体で録画パートへ)して、キティーちゃんに許可を取ったという形でサンリオとのコラボTシャツの発表となります。コラボTはCDの特典となるそうで、それなりのお値段になり、CDや映像作品、コラボTなどでお金を使わせて申し訳ない・・・という流れからの「NO MONEY DANCE」への突入。これが4曲目となります。

そして5曲目、最後は「ハッピーウエディング前ソング」で盛り上がりつつ、全5曲のライブは終了。この段階で21時の10分くらい前。ちょっと早いかな・・・と思っていたら、案の定、アンコールへ。といってもメンバー自らアンコールをかける形のセルフアンコールとなりました(笑)。

アンコールのラストは「喜志駅周辺なんもない」で締めくくり。最後はメンバー全員のスクショタイムに。宣伝で拡散してくれるのならば、利用可能ということで利用させていただきます。ちなみに、上のCD/映像作品について太字なのは宣伝だからです(笑)。

Yabat

ちなみにこちらはTシャツでも限定生産のおふざけタイプのTシャツだそうです。これにコラボするのはかなりすごい・・・。

そんな訳でアンコールふくめてちょうど1時間のライブ。全5曲+アンコール1曲の全6曲のライブとなりました。今回、配信ライブは2度目なのですが、同じく「低画質!低音質!」とうたった前回は、間違いなく画質も音質も悪かったのですが、今回は2度目だからなのか、画質も音質もグッとアップしていた感じ。ほとんどストレスなく配信ライブを楽しむことが出来ました。

また、前回のライブでも思ったのですが、ゆるいノリのMCや楽曲の内容と比べて、バンドとしての力量にはしっかりとした実力を感じさせます。いままで彼らのライブは一度も行ったことがないのですが、早く一度、彼らのライブも見てみたいなぁ。今回、2度目の配信ライブだったのでしたが、そう強く感じました。そろそろコロナ禍明けのライブも徐々に解禁されており、彼らのライブを見る機会も増えていきそう。次は、生ライブでヤバTを見てみたい!そう強く感じた配信ライブでした。

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2022年12月 9日 (金)

熱狂的な人気

Title:Midnights
Musician:Taylor Swift

日本でも報道されているのでご存じの方も多いかとは思いますが、今、テイラー・スウィフトの人気がすさまじいものとなっています。約1年10カ月ぶりのリリースとなる本作ですが、このアルバムに収録された曲でアメリカビルボードHot100のベスト10を独占するという、ビルボード史上初となる快挙を達成。さらに来年予定されている約5年ぶりの全米ツアーのチケットの申し込みが殺到し、チケット販売会社のシステム障害が発生。チケット発売が取りやめとなる事態となりました。まさにポピュラーミュージック史上、類を見ない熱狂的な人気となっています。

この熱狂的な人気ぶりの要因のひとつは、2020年にリリースされた2枚のアルバム「forklore」「evermore」が、いずれも彼女の自己最高作とも言える傑作に仕上がっていたというのも大きな要因でしょう。この2作ではThe Nationalのアーロン・デスナーがプロデュースに参加。いままでの彼女とはちょっと異なった人選で、インディーロックの影響を反映させた作品になっています。テイラー・スウィフトといえば、特にカントリー歌手という出自から、少々保守的なポップシンガーに見られていました。ただ最近では反トランプを明言したり、性差別やLGBTへの差別を批判したりと、リベラル寄りのスタンスを明確にしています。その結果、いままであまり積極的に支持されなかった層まで、その支持を伸ばした結果が、今の熱狂的な人気につながったのではないでしょうか。

ただ、その2作連続でリリースしたアルバムから2年弱のインターバルを経てリリースされた今回の作品は、彼女の盟友とも言えるプロデューサーのジャック・アントロノフが全面的に参加。彼女にとってみれば挑戦的だった前2作と比べると、どちらかというとオーソドックスなポップ路線に回帰するような作風に仕上がっていました。

とはいえ、決して初期のカントリー路線・・・という訳ではありません。冒頭を飾る「Lavender Haze」からメロウなボーカルでリズミカルに歌い上げる、むしろR&Bに近いような楽曲になっていますし、「Maroon」もダークなエレクトロサウンドが楽曲に不穏な雰囲気を与えています。さらに「Snow On The Beach」では、こちらも今を時めく女性ボーカリストであるLana Del Reyが参加。伸びやかで美しい歌声を聴かせてくれています。

その後もメロディアスなポップチューンが並ぶ作品になっていますが、全体的には分厚いエレクトロサウンドで楽曲を彩るような構成の作品が並ぶのが特徴的。「You're On Your Own,Kid」「Midnight Rain」「Question...?」など、特にアルバムの中盤にエレクトロサウンドで聴かせるポップチューンが並びます。今回のアルバム、「Midnight」というタイトルなのは、今回のアルバム、真夜中に書かれた曲を集めたアルバムだそうで、ここらへんの分厚いエレクトロサウンドを入れる構成は、まさに夢の世界を表現したように感じます。それだけドリーミーな雰囲気の曲が並んでいました。

今回は、このように全体的にエレクトロポップを主軸にしつつも、彼女らしい聴きやすいメロディアスな歌モノを並べたアルバムに仕上がっていました。そのため、挑戦的だったここ2作に感じると、若干保守的。もっとも、それがネガティブな意味ではなく、あらためてポップミュージシャンとしての彼女の魅力を感じられる作品だったと思います。また、挑戦的ではないとはいえ、リズムなどはしっかりと今風なサウンドを取り入れており、しっかりと2022年にアップデートされた音楽である点は間違いありません。

ベスト10独占やらチケット販売中止やらのニュースについては、さすがにちょっと熱狂しすぎな感は否めないものの、それだけの人気となるのは納得の傑作アルバムとなっていました。まだまだ彼女の活躍が続きそう。まさに今の彼女を象徴するような充実作です。

評価:★★★★★

TAYLOR SWIFT 過去の作品
FEARLESS
RED
1989
REPUTATION
Lover
folklore
evermore
Fearless (Taylor's Version)
RED(Taylor's Version)

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2022年12月 8日 (木)

K-POPの男性アイドルグループが並ぶ

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週の1位2位には韓国の男性アイドルグループが並んでいます。

まず1位にはATEEZ「THE WORLD EP.PARADIGM」がランクイン。CD販売数1位、ダウンロード数33位。日本盤のミニアルバムとなります。オリコン週間アルバムランキングでは初動売上6万3千枚で1位初登場。前作「THE WORLD EP.1:MOVEMENT」の初動3万1千枚(4位)からアップ。

2位には同じく韓国の男性アイドルグループTREASURE「THE SECOND STEP:CHAPTER TWO」が先週の圏外からランクアップ。10月26日付チャート以来、6週ぶりのベスト10返り咲きとなりました。10月に韓国盤がリリースされていましたが、このたび国内盤がリリースし、そのCD販売数が加味されたようです。Hot Albumsでは韓国盤と同一アルバムという扱いでベスト10返り咲き。オリコンでは国内盤のみ別扱いで、初動5万4千枚で2位初登場という扱いとなっています。

3位は桑田佳祐のベスト盤「いつも何処かで」が先週の1位から2ランクダウンながらもベスト3をキープしています。

続いて4位以下の初登場盤です。まず4位には錦戸亮「Nocturnal」がランクイン。元NEWS&関ジャニ∞のメンバーで、現在はジャニーズ事務所を脱退し、ソロとして活動しています。本作はソロ3枚目のアルバム。オリコンでは初動売上1万4千枚で5位初登場。前作「Note」の初動売上3万1千枚から半減以下という厳しい結果となっています。

5位にはRM「Indigo」が初登場。BTSのメンバーによるソロデビュー作。12月10日リリース予定のCDの先行配信でのランクインで、ダウンロード数で1位を獲得し、総合順位も5位を獲得しています。

7位初登場は「THE IDOLM@STER MILLION LIVE! M@STER SPARKLE2 10」。CD販売数9位、ダウンロード数6位。男性向けアイドル育成ゲーム「アイドルマスター ミリオンライブ!」からのキャラクターソング。オリコンでは初動売上3千枚で11位初登場。同シリーズの前作「THE IDOLM@STER MILLION LIVE! M@STER SPARKLE2 09」(15位)から横バイ。

最後10位にはMANYO・麻枝准「HEAVEN BURNS RED Original Sound Track Vol.1」がランクイン。CD販売数6位、その他は圏外となりました。スマートフォンゲーム「ヘブンバーンズレッド」のサントラ盤。全6枚組というボリューミーな内容になっております。オリコンでは初動売上5千枚で9位初登場。

続いてロングヒット盤ですが、まず松任谷由実のベスト盤「ユーミン万歳!~松任谷由実50周年記念ベストアルバム~」。ダウン傾向が続いていたものの、比較的緩やかにダウンしていったのですが、今週は5位から8位に一気にダウンしてしまいました。これで9週連続のベスト10ヒットとなります。

またAdo「ウタの歌 ONE PIECE FILM RED」は8位から9位にワンランクダウン。ただし、こちらもダウンロード数が2位から5位に大幅ダウン。これで17週連続のベスト10ヒットとなります。

今週のHot100は以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2022年12月 7日 (水)

再逆転!

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

ヒゲダンと米津玄師のデッドヒートが続いています。

Subtilte

先週は、CDリリースの影響で米津玄師が1位を獲得したのでが今週は再逆転。再びOfficial髭男dism「Subtitle」が先週の2位から1位に返り咲きました。これで2週ぶり通算5週目の1位獲得に。一方、米津玄師「KICK BACK」は先週の1位からワンランクダウンの2位となっています。ヒゲダンはストリーミング数が今週7週連続で1位を獲得しているほか、ダウンロード数も2位から1位にアップ。米津はこちらもストリーミング数が7週連続で2位、ダウンロード数は3位から2位にアップ。一方、You Tube再生回数はヒゲダンは先週から変わらず3位、米津は1位から2位にダウンと、こちらだけヒゲダンと米津の順位が逆転しています。ちなみに今週で両者とも8週連続のベスト10ヒット&ベスト3ヒット。どちらもまだまだロングヒットが続いていきそうです。

3位はKing&Prince「ツキヨミ」が先週から同順位をキープ。特にCD販売数が先週の3位から1位にアップ。オリコン週間シングルランキングでも今週1位を獲得しています。売上枚数でも先週の7万6千枚から10万1千枚にアップ。メンバー3名脱退というニュースに加えて、紅白出演や、12月3日に日テレ系「ベストアーティスト2022」にメンバー脱退発表後、初の生パフォーマンスを披露したことによる影響でしょうか。

続いて4位以下の初登場曲です。まず4位にM!LK「STARS」が初登場。CD販売数4位、ストリーミング数41位、その他は圏外という結果に。スターダストプロモーション所属の男性アイドルグループ。オリコンでは初動売上4万1千枚で4位初登場。前作「奇跡が空に恋を響かせた」の2万9千枚(1位)よりアップしています。

6位にはハロプロ系女性アイドルグループOCHA NORMA「運命 CHACHACHACHA〜N」がランクイン。CD販売数2位、ダウンロード数39位、その他は圏外となっています。オリコンでは初動売上7万4千枚で2位初登場。前作「恋のクラウチングスタート」の初動9万5千枚(2位)よりダウンしています。

8位初登場はGENERATIONS from EXILE TRIBE「PARTY7~GENEjaNIGHT~」。ご存じEXILEの弟分のダンスグループで、本作はライブでのみ披露されていた楽曲で、限定盤シングルとしてのリリースだそうです。CD販売数3位、その他はランク圏外で総合順位はこの位置に。オリコンでは初動売上4万5千枚で3位初登場。前作「愛傷」の初動1万8千枚(9位)より大幅アップ。

また今週、先週ベスト10入りしたKing Gnu「Stardom」についてCD販売数が加味されています。ただ、順位は8位から5位にアップと思ったより伸び悩み・・・。オリコンでは初動売上2万7千枚で5位初登場。前作「カメレオン」の2万3千枚(2位)より若干アップ。2022 NHKサッカーテーマ曲で、あれだれW杯で盛り上がっている割には、思ったほど売れていない感じも・・・。

続いてロングヒット曲ですが、まずAdo「新時代(ウタ from ONE PIECE FILM RED)」は5位から7位にダウン。You Tube再生回数も6位から10位にダウン。一方、ストリーミング数は6週連続の4位となっており、まだまだ根強い人気も感じます。これでベスト10ヒットは連続26週になりました。

なとり「Overdose」は今週も先週から変わらず9位をキープ。またストリーミング数は今週も3位をキープしており、これで6週連続の3位に。ベスト10ヒットは連続11週となりました。

一方、YOASOBI「祝福」は7位から10位にダウン。これでベスト10ヒットは連続9週になりましたが、後がなくなりました。ただダウンロード数は先週から変わらず5位、ストリーミング数は6位から7位にダウンしていますが、まだまだ強さを感じます。来週、ふんばりを見せるのでしょうか?

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

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2022年12月 6日 (火)

50年前の日本ロック黎明期の雰囲気を伝える

Title:OZ DAYS LIVE '72-'73 Kichijoji The 50th Anniversary Collection

60年代にフィードバックノイズを前面に押し出した圧巻のサウンドが他を圧倒。伝説的バンドとして今なお語り継がれる裸のラリーズ。公式音源がほとんど世に出回らなかったことから、カルト的な人気も博ていた彼らでしたが、今年になって公式音源が正式に再発。先日、ここでもその音源を紹介しました。そして、こちらもそんなラリーズ音源再発に呼応する形でリリースされた音源。1972年から1973年という短い間でしたが、吉祥寺にあったライブハウス「OZ」の音源を収録した全3枚組となるオムニバスアルバムで、そのうち、裸のラリーズの音源が10曲にわたり収録されています。

この「OZ」というライブハウス、短い間ではあったものの、その間、裸のラリーズ、南正人、久保田麻琴と夕焼け楽団、カルメン・マキ&OZ、四人囃子、安全バンド、クリエイション、頭脳警察などなど、日本のロック黎明期を飾るミュージシャンたちが数多く演奏したことでも知られる伝説のライブハウスで、本作は、もともと1973年にレコード盤でリリースされたアルバム。その後、CDで再発されたのですが、廃盤となっていたところ、このたび「50周年記念盤」として再発されたものです。

全3枚組のアルバムで、Disc1から2にかけて、裸のラリーズの音源が10曲、Disc2に、南正人の音源が4曲、Disc3には都落ちの音源が3曲、アシッド・セブンの音源が7曲という構成となっています。さらに100ページに及ぶブックレットがついてきており、当時の雰囲気を伝える貴重な写真がついているほか、「OZ」の関係者による対談を収録した記事がついてきており、当時の様子を知ることが出来る内容になっています。

まずなんといっても注目されるのは裸のラリーズの音源ですが、まず冒頭の「OZ Days」からして、いきなりフィードバックノイズでガツンと脳天をかち割られるようなスタートとなっています。その後の楽曲については、先日紹介した裸のラリーズのアルバムのように、フィードバックノイズの洪水が押し寄せる・・・といった感じではないものの、かなり荒々しくヘヴィーなバンドサウンドは今聴いても迫力があり、50年も前の音源とは信じられないほど。こちらに収録された音源ではサイケデリックバンドというよりは、フォーキーなメロディーをバックにヘヴィーなバンドサウンドを繰り広げるハードロックバンドというイメージが強くなっているのですが、しっかりと裸のラリーズのすごさを感じされる音源にはなっていました。

南正人はフォークシンガーというイメージが強く、この並びで収録されるのはちょっと意外性があったのですが、「海が見えるあの丘へ」では力強いロックのサウンドをしっかりと聴かせてくれています。全体的にはフォークの色合いも強かったものの、裸のラリーズの次に並んでいても違和感ない作品を聴かせてくれていました。

あと2組は今回、音源を聴くのはもちろん、名前もはじめて聴いたバンド。都落ちは60年代ロックンロールのカバー。これはこれでカッコいいのですが、特に特色も感じないロックンロールそのままのカバーなだけに、他と比べるとちょっと物足りなさを感じてしまう印象も。最後のアシッド・セブンもなかなか興味深く感じられるバンドで、かなり骨太で泥臭さを感じさせるサウンドとボーカルを主軸としたガレージロックバンド。特に圧巻だったのが23分にも及ぶ「風よ吹きまくれ涙は枯れる光の中に」で、哀愁たっぷりのメロディーラインを聴かせつつ、サイケデリックなバンドサウンドでリスナーを圧倒するような楽曲。非常に個性を感じさせるバンドでした。

一方、再発盤の目玉のひとつであるブックレットの方ですが・・・こちらは正直、ちょっと残念な内容でした。「100ページに及ぶブックレット」という売り文句だったのですが、その大半は英訳版に割かれており、対談シーンはわずか20ページ程度。往時を彷彿とさせる写真の数々は貴重でしたし、対談で語られる数々の証言も貴重ではあるものの、やはり全体的には少々、物足りなさも否めませんでした。

収録曲全体としては、やはり裸のラリーズが頭2つくらいとびぬけている感じ。今の耳で聴いても非常にカッコよさを感じるものがあります。ただ、それ以外のミュージシャンについても、これだけカッコいいバンドが、50年も前の日本のライブシーンで活動していたのか、と驚かされるものもあり、全3枚組、非常に聴きごたえのあるオムニバスアルバムとなっていました。期待していたブックレットはちょっと残念でしたが、それを差し引いてもお勧めしたい、日本ロック黎明期のすごさを感じさせる作品でした。

評価:★★★★★

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2022年12月 5日 (月)

前作の方向性を踏襲

Title:The Car
Musician:Arctic Monkeys

Arctic Monkeysの前作「Tranquility Base Hotel & Casin」は、まさに賛否両論の異色作といっていい1枚でした。いままでのガレージロック路線が一転、オールドスタイルのムーディーな作風となり、ファンの間でも賛否両論を巻き起こすような作品となりました。本作は、そこから約4年5ヶ月ぶりとなるとなるニューアルバム。今回の作品はどのような方向性にシフトするのか、注目を集めるアルバムとなりました。

そして、結論から言うと、基本的には前作の方向性を踏襲したアルバムに仕上がっていました。しんみり聴かせるムーディーなアルバム。アルバムの1曲目「There'd Better Be A Mirrorball」のイントロからして、ストリングスとピアノでムード感たっぷりに聴かせるスタート。この1曲目のイントロから、もうリスナーにとってはどんなアルバムになるのか、予想の出来る作品になったのではないでしょうか。

そんな訳で、前作と同じ方向性のムード音楽を聴かせるスタイルの今回のアルバム。もっと言ってしまえば、このムード音楽という方向性がより強くなった作品にようにも感じます。続く「I Ain't Quite Where I Think I Am」はギターリフが入るのですが、非常にムーディーに聴かせるサウンドで、さらにストリングスも重なってムード音楽の雰囲気がさらに高まっています。さらに「Jet Skis On The Most」も同様に、ギター、ピアノそしてストリングスでムーディーな雰囲気を醸しつつ、しんみりゆっくり歌い上げるボーカルがメランコリックな雰囲気にさらに拍車をかけています。

タイトルチューンの「The Car」もストリングスで伸びやかに聴かせるムード感たっぷりのナンバー。エレピも入ってしんみり聴かせる「Big Ideas」やアコギアルペジオでメランコリックたっぷりの「Mr Schwartz」、ラストはストリングスが分厚く重なるサウンドが耳を惹く「Perfect Sense」で締めくくり。最後までストリングスやピアノを多用したムーディーな作風の曲が並びました。

前作同様、パッと聴いた感じだと地味な印象を受ける本作。ただよくよく聴くと、メロディーラインの美しさが耳を惹くナンバーになっていた・・・というのも前作と同様でした。今作は前作のように、ヘヴィーなバンドサウンドを聴かせるような曲もなく、一貫してしんみりとムーディーな雰囲気で聴かせる曲が並んでいます。前作の方向性を確固たるものとした作品と言えるかもしれません。

ただ結果としてアルバム全体としてちょっと似たようなタイプの曲が並んでしまった、といった印象は否めません。バリエーションという観点からすると、少々物足りなさを覚えてしまうという点は残念ながら否定できませんでした。また、同時に前作から同じ方向性のアルバムが続いただけに、やはりこちらもちょっとマンネリ気味なのは否めない部分も・・・。もちろん、そのメロディーラインの良さにより、しっかりと聴けるアルバムになっていたと思うのですが、美メロだけで突き通すとしてはちょっと物足りなさも感じてしまいます。

もし前作の前にこちらのアルバムがリリースされたら、傑作アルバムという評価になるのでしょうが、そういう意味で惜しさを感じるアルバムだったように思います。この2枚のムード歌謡路線のアルバムが続き、次のアルバムは再びガレージロック路線に回帰するのか、それとも・・・。今後の彼らの方向性に注目したくなる作品でした。

評価:★★★★

ARCTIC MONKEYS 過去の作品
Humbug
SUCK IT AND SEE
AM
Tranquility Base Hotel & Casin
Live at the Royal Albert Hall


ほかに聴いたアルバム

¡Ay!/Lucrecia Dalt

コロンビア出身で、現在はベルリンを拠点に活動している実験音楽家による新作。実験音楽といっても、彼女の出自であるラテンの音楽を取り入れつつ、ムーディーなメロディーラインを聴かせる作風。サイケデリックな要素や実験音楽的な要素も随所に感じるものの、一方ではムーディーな作風が意外と聴きやすさも感じられる作品に仕上がっていました。

評価:★★★★

blueblueblue/Sam Gendel

今年に入って早くも2枚目のアルバムとなるマルチ・インストゥルメンタル奏者、サム・ゲンデルのニューアルバム。昨年も複数枚のアルバムをリリースしており、そのワーカホリックぶりが目立ちますが、この最新アルバムは江戸時代に発展した日本の伝統的な刺しゅうである「刺し子」の模様にちなんだ作品となっており、曲名が、その模様の名称となっています。ただ、楽曲自体は「和風」というイメージはなく、ギターとサックスをベースにしつつ、ミニマルテイストのサウンドを静かに聴かせてくれます。サウンドにはフリーキーさを感じつつも、基本的には郷愁感を覚えるようなサウンドで、いい意味での聴きやすさも感じます。ただ、これまで聴いた彼のアルバムに比べると、新しいアイディア的な要素は薄めで、多作ゆえに全体的なクオリティーが若干下がってしまっているような感じも・・・。もうちょっと制作は絞ったような方がいいような・・・。

評価:★★★★

Sam Gendel 過去の作品
Satin Doll
AE-30
Superstore

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2022年12月 4日 (日)

名曲揃いの2時間!

PIXIES JAPAN TOUR 2022

会場 ダイアモンドホール 日時 2022年11月25日(金)19:00~

Pixies1

7月のレキシ以来、ちょっと久々となるライブに足を運んできました。今回行ってきたのは、ちょっと久々となるPIXIESのライブ。オルタナ系ロックバンドの先駆的存在として一部で熱烈な支持を得て、その後のシーンに大きな影響を与えたバンド。当初の活動期間は7年ほどと短く、「伝説のバンド」となっていたのですが、2004年にまさかの再結成。その直後の来日公演にももちろん足を運びました。ただ、その後、断続的に活動を続け、ちょくちょく日本にも来日。アルバムも何枚かリリースしたのですが、作品的には過去の貯金でなんとか維持できるような、かつての傑作と比べると・・・というレベルの作品だったので、正直、ここ最近は若干、気持ち的に遠のいていたのですが、今年リリースしたアルバム「Doggerel」は久々に傑作と言えるだけの充実作となっており、その直後の来日公演。日程的にも足を運べる日程であったため、久々(確か2010年のサマソニ)以来、彼らのライブに足を運んできました。

会場はダイアモンドホール。チケットは売り切れはしなかったようですが、コロナ禍の入場制限も解除され、人数的にはほぼ満員という熱気あふれる会場。世代的には確かに私と同世代も目立つのですが、20代30代という若い世代もチラホラ見受けられ、PIXIESが後の世代にも大きな影響を与えていることをあらためて実感させられました。

直前まで仕事があったので会場に入ったのは5分程度の遅刻。ただ、通常、この手のライブは10分程度遅れてはじまるのが普通。外タレでは下手すれば30分程度遅れることもよくあるケースなだけに、まだはじまっていないだろう、と高をくくっていたのですが・・・会場入りすると、既にホール内からは爆音が・・・。なんと、既にライブはスタートしていました!

Pixies2

4人のみのシンプルなステージ。ブラック・フランシスは基本的にアコースティックギターをかかえてのシャウト。全員熟年のバンドなのですが、年齢を感じさせない迫力のあるステージを見せてくれます。

「Doggerel」リリース直後のステージなのですが、楽曲的には過去のベスト的なセレクトで出し惜しみなしのセットリスト。前半から「Gouge Away」やさらに「Debaser」では大きな歓声も。さらに「Hey」や「head on」、「Bone Machine」などの代表曲が続々と続いていきます。

Pixies3 

紅一点のベーシストはパズ・レンチャンティン。キム・ディールが脱退してしまったのは非常に残念なのですが・・・。キム・ディール脱退後のメンバーで彼らのライブを見るのは今回はじめて。ただ、しっかりキム・ディールの後釜のコーラスラインを聴かせてくれていました。

中盤には「Doggerel」からのナンバーが並びました。「Vault of Heaven」「Who's More Sorry Now?」「There's A Moon On」「The Lord Has Come Back Today」と続きます。個人的には、最新アルバムからのナンバーも気に入っただけに、ここらへんの曲がきちんと聴けたのはうれしいところ。往年のナンバーと並んでも、見劣りはありません。

とはいえ、正直、最新アルバムからの曲と往年のナンバーでは明確に客席の反応が違うのは致し方ないところでしょうか・・・「Doggrel」からのナンバーに続き、「Here Comes Your Man」のイントロがスタートした段階で、再び大歓声があがります。個人的にも、やはり大興奮してしまったのですが。

Pixies4

最後までメンバー全員、楽器の持ち替えもなく、シンプルにステージは進みます。基本的にMCもなしで、途中、ほとんど休憩らしいシーンもなく、彼らの力強い演奏が息つく暇なく続いていくというステージに。ギミック全くなしというステージに彼ららしさを感じます。

後半も「Monkey Goes To Heaven」「Crackity Jones」「Wave of Mutilation」「Where is My Mind?」さらに「La La Love Song」と名盤「Dollitle」からのナンバーを中心に、代表曲が並ぶ構成になっており、会場も興奮のるつぼに。みんな暴れるというよりも、やはり彼らの奏でる素晴らしいメロディーラインと迫力あるサウンドに身体を揺らす、そんなステージになっていました。

ラストはおそらく、ここ最近のライブのラストナンバーであるNeil Youngのカバー「Winterlong」(だと思う)で締めくくりとなりました。

Pixies5

最後はメンバー全員がステージ前に並んで、肩を組んであいさつ。なにげにパズ・レンチャンティン含めてメンバー4人、仲よく演っているんだな、ということを感じます。MCなしのステージで、今回はアンコールもなし。40曲近いというフルボリュームで、終了時間が9時というピッタリ2時間のステージが幕を下ろしました。

そんな訳で久々となるPIXIESのステージでしたが、率直に言って、いままで見た彼らのステージの中でベストだったようにすら感じます。特にメンバー4人の相性がいいのでしょう。非常に息の合ったステージを見せてくれました。シンプルに曲を並べただけの構成というのもPIXIESらしさを感じ、しっかりと楽曲で勝負するという彼らのスタンスも感じさせます。久々に彼らのライブに足を運んで大正解!PIXIESの魅力を再認識できた2時間でした。

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2022年12月 3日 (土)

原坊の世界をしっかり満喫

Title:婦人の肖像(Portrait of Lady)
Musician:原由子

ご存じサザンオールスターズのキーボーディストであり、桑田佳祐の奥さんでもある原由子のニューアルバム。2010年にベストアルバム「ハラッド」を、2002年にはカバーアルバム「東京タムレ」をリリースしているものの、純粋なオリジナルアルバムとしては1991年の「MOTHER」から実に約31年ぶりとなるニューアルバムとなりました。これだけオリジナルアルバムの間隔が空いたというのも驚きですが、個人的に、その31年も前のアルバム「MOTHER」をリアルタイムで聴いていたというのも軽くショックなのですが・・・。

今回のアルバムは、サザンオールスターズのデビュー44周年となる2022年6月25日にリリース。桑田佳祐の全面バックアップの下に作成されたアルバムで、前作「MOTHER」では原由子の曲と桑田佳祐の曲、それぞれ別々だったのに対して、今回のアルバムは両者の共作が目立ちます。サザンの44周年の節目(・・・なのか?)なのですが、サザンとしての活動はなく、原由子の新作がリリースされたのですが、桑田佳祐自身は「代理・サザンオールスターズのニューアルバムだと思っていただきたい」と語っているようで、桑田佳祐のバックアップぶりも目立ちます。

ただ、そんな新作ですがサザンのニューアルバムとは全く異なる、しっかりと原坊らしさが表に出た、彼女らしいアルバムに仕上がっていたと思います。ストリングスとシンセで高らかにアルバムのスタートを告げるような「千の扉~Thousand Doors」からスタート。桑田佳祐が唯一、楽曲制作に全く関わっていない「Good Times~あの空は何を語る」は、現在のロシアウクライナ情勢を反映させた、ちょっと哀しげな雰囲気の歌詞も印象的なのですが、アコースティックに聴かせる郷愁感あるサウンドは、明確にサザンの世界とは異なるものを感じます。

「旅情」もタイトル通り、彼女らしい郷愁感あふれるナンバー。「ぐでたま行進曲」も、こちらもタイトルから想像できる通り、サンリオのキャラクター「ぐでたま」をモチーフとした曲で、「ぐでたま」が登場する実写ドラマの主題歌だそうで、こちらも原坊らしさを感じさせる明るいキッズソングとなっていますし、先行シングルとなった「ヤバいね愛てえ奴は」も、ストリングスとアコースティックギターで暖かく聴かせる彼女らしい楽曲に仕上がっています。さらにラストを飾る「初恋のメロディ」も切なく爽やかな郷愁感持って聴かせるラブソングとなっており、こちらも彼女らしさが表れている印象を受けました。

一方で、「スローハンドに抱かれて(Oh Love!!)」「夜の訪問者」は昭和歌謡の要素が強く、いかにもサザンというか、桑田佳祐らしさを感じる曲・・・といっても、「スローハンドに抱かれて(Oh Love!!)」の方は原由子作曲による曲で、桑田佳祐からの影響というか、やはり夫婦らしく、音楽的にはやはり共通項も多いんだろうな、とも感じさせる楽曲になっています。

全体的には、「代理・サザンオールスターズのニューアルバム」という桑田佳祐のアピールと反して、しっかりと原由子らしい作品となっています。かつ前作「MOTHER」の頃の作品は、もっとかわいらしく、「女の子」っぽさを感じさせる曲も目立ったのですが、今回のアルバムはしっかりと「大人の女性」を感じさせるような、しっかりと聴かせる曲が並んでいます。今の彼女を反映させた、等身大の作品と言ってもいいでしょう。

ただ、その上で気になるのが、アルバム全体としてはパワー不足を感じてしまいます。確かに原由子は間違いなくボーカリストとしてのシンガーソングライターとしても、しっかりとした実力がありますし、そこに日本を代表するミュージシャンで日本屈指のメロディーメイカーの桑田佳祐がバックアップをつとめるわけですから、楽曲のクオリティーとしては十分なものはあります。しかし、前作「MOTHER」では一度聴いたら忘れられないようなインパクトの強い曲や、原由子の新たな境地を感じさせるような曲もあった反面、今回のアルバムに関しては、正直、楽曲としてのインパクトは薄めで、新たな境地を感じさせるような作品もありませんでした。

良くも悪くも卒なくこなした安定感のあるアルバムだったかな、というのが今回の感想。もちろん、それでも十分楽しめるポップスアルバムなのは間違いないのですが、期待したほどではなかったかな、というのが率直な感想。いいアルバムではあるとは思うのですが・・・。

評価:★★★★

原由子 過去の作品
ハラッド

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2022年12月 2日 (金)

志磨遼平の好むポップソング

Title:戀愛大全
Musician:ドレスコーズ

昨年リリースした「バイエル」以降、約1年4か月ぶりとなるニューアルバム。ただ、オリジナルアルバムとしては前作となる「バイエル」は、ピアノの弾き語りからスタートし、徐々に作品を作り上げていく過程を見せるという、企画モノ的な側面も強かったため、純粋なオリジナルアルバムとしては2019年の「ジャズ」以来、ということになるのでしょうか。もっとも、その間にもベスト盤をリリースしたり、音楽劇のサントラ盤をリリースしたりと、かなり積極的な活動が目立ちます。

ドレスコーズというと、ご存じの通り、現在は志磨遼平のソロプロジェクトなのですが、そのため彼の音楽的な嗜好が強く反映される内容になっています。特にドレスコーズの初期は4人組バンドで、ロック色が強かったのですが、徐々にポップ色の強い作風に移行。途中、ファンクなどの要素が加わることもあったのですが、ここ最近はよりポップ、それも60年代や70年代あたりのレトロでキュートなポップソングの影響を受けたような作風の曲が目立ち、メロディーラインの甘さをより前に押し出した曲調が目立っています。

今回のアルバムも、まさにそんなドレスコーズのポップな側面がさく裂したアルバム。まずそもそも「戀愛大全」というアルバムタイトル自体から、とてもスィートでキュートな内容であることを彷彿とさせます。そんな期待を持ちつつアルバムを聴くと、このキュートでポップなメロディーラインを軸としつつ、バラエティーに富んだ作品に仕上がっていました。

まず1曲目「ナイトクロールライダー」は比較的分厚いバンドサウンドが加わった、ロック色の強い作品。ただ、ここにシンセの音色が加わり、ポップなメロディーラインもあり、彼らしいキュートなポップスに仕上がっています。続く「聖者」はモータウンビートの軽快なビートにドリーミーなシンセの音色が加わった、これまたキュートなポップチューン。さらに「やりすぎた天使」もウォール・オブ・サウンズの影響を受けた分厚くドリーミーなサウンドで聴かせるポップな楽曲に仕上がっています。

さらにバラエティー富んだ曲調は続きます。メロウさを感じ、シティポップテイストの強い「夏の調べ」にシューゲイザー的なノイズが楽曲を覆うドリームポップチューン「ぼくのコリーダ」、同じくドリーミーなサウンドが大きな魅力となっていながら、切ないメロも耳を惹く「エロイーズ」、軽快なシンセポップが80年代っぽい「ラストナイト」、ネオアコ的な雰囲気のあるキュートなギターポップ「惡い男」、分厚いサウンドに哀しげなメロが印象的な「わすれてしまうよ」と続き、最後はしんみり聴かせるバラードナンバー「横顔」で締めくくります。

そんな訳で、1曲1曲バラエティーに富んだ構成を見せる今回のアルバム。ただもっともどの曲も、分厚いドリーミーなサウンドでコーティングされており、志磨遼平ならではのキュートなメロディーラインを聴かせてくれるということでしっかりと統一感があります。ドレスコーズが志磨遼平のソロプロジェクトになってから、彼は自由に好きなようにポップソングを奏でていましたが(それはバンド時代も一緒だったかも?)、その自由度がさらに増した感のある、志磨遼平の好むポップソングがアルバム全体に繰り広げられた作品になっていました。

アルバムの構成として、10曲入り38分という長さもポップアルバムとしてちょうどよい長さ。最後までキュートな志磨遼平の音楽の世界を無心に楽しめる傑作に仕上がっていました。ここ最近、ポップ嗜好が強かった彼が、ある意味、行き着いたアルバムと言えるかもしれません。一方で、なにげに「バンド幻想」も抱いている彼は、それだけにひょっとしたら次回作は、バンドという方向性に戻る可能性も??

評価:★★★★★

ドレスコーズ 過去の作品
the dresscodes
バンド・デ・シネ
Hippies.E.P.

オーディション
平凡
ジャズ
バイエル(Ⅰ.)
バイエル(Ⅱ.)
バイエル
ドレスコーズの音楽劇《海王星》


ほかに聴いたアルバム

HELLO/ROTTENGRAFFTY

ロットン4年ぶりのニューアルバム。ここ数作はエレクトロサウンドを取り入れた曲も目立ったのですが、本作はヘヴィーなバンドサウンドを前面に押し出した曲が並びます。また、メランコリックなメロディーラインに良くも悪くもJ-POP的なものを感じるバンドですが、今回はさらに推し進めて哀愁感ただよう、ともすれば「歌謡曲」的なメロディーラインの曲に。ある意味、ロットンらしさをより前面に押し出したアルバムに仕上がっていました。

評価:★★★★

ROTTENGRAFFTY 過去の作品
LIFE is BEAUTIFUL
PLAY
You are ROTTENGRAFFTY

radio JAOR ~Cornerstones 8~/佐藤竹善

SING LIKE TALKINGのボーカリスト、佐藤竹善がライフワーク的に続けているカバーアルバム企画第8弾。今回は、「架空のFMラジオ局」をモチーフに、主に70年代~80年代の邦楽を取り上げています。公式サイトの紹介では「世界的に注目が集まる」と書いているのですが、それはもうちょっと洋楽テイストの強いシティポップ系の曲で、こちらで取り上げられているのは、確かにシティポップにカテゴライズされる曲ですが、もうちょっと歌謡曲寄りの作品が並んでいます。ただ、個人的にはKANの「カレーライス」が取り上げられているのが、そのセレクトといい、ファンとしてはうれしい感じ。また、2009年にスマッシュヒットしたコーヒーカラーの「人生に乾杯を!」をクリスマスバージョンとしてリメイクしてカバー。こちらも懐かしく楽しめました。全体的にはジャジーやソウル的な要素をより強めた大人の雰囲気漂うカバーに仕上げており、原曲の目新しい解釈というものはないものの、佐藤竹善らしい色を加えたカバーに仕上がっています。良い意味で安心して楽しめる作品です。

評価:★★★★★

佐藤竹善 過去の作品
ウタジカラ~CORNER STONE 4~
静夜~オムニバス・ラブソングス~
3 STEPS&MORE~THE SELECTION OF SOLO ORIGINAL&COLLABORATION~
Your Christmas Day III
The Best of Cornerstones 1 to 5 ~The 20th Anniversary~
My Symphonic Visions~CORNERSTONES 6~feat.新日本フィルハーモニー交響楽団

Little Christmas
Don't Stop Me Now~Cornerstones EP~
Rockin’ It Jazz Orchestra Live in 大阪~ Cornerstones 7

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2022年12月 1日 (木)

ソロ35周年のベスト盤が1位獲得

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週はソロデビュー35周年のベテランシンガーのベスト盤が1位獲得です。

今週1位は桑田佳祐「いつも何処かで」。先日、原由子のソロアルバムがリリースされたばかりですが、夫婦そろってのアルバムリリースとなります。こちらは2枚組のベストアルバムで、桑田佳祐ソロ作だけではなく、KUWATA BAND名義の曲も収録。ベスト盤としては2012年の「I LOVE YOU-now&forever-」以来、10年ぶり。その10年前には同じくベスト盤「TOP OF THE POPS」、さらにその10年前には「フロム イエスタデイ」をリリースしていますので、綺麗に10年毎にベスト盤をリリースしていることになります・・・ちょっとリリースしすぎでは?CD販売数、ダウンロード数、PCによるCD読取数いずれも1位獲得。オリコン週間アルバムランキングでは初動売上15万4千枚で1位獲得。直近のミニアルバム「ごはん味噌汁海苔お漬物卵焼き feat.梅干し」の初動9万7千枚(1位)からはアップ。ベスト盤としての前作「I LOVE YOU-now&forever-」の初動43万2千枚(1位)からは大きくダウンしています。

2位は先週1位のSEVENTEEN「DREAM」がワンランクダウンながらも今週もベスト3をキープしています。

3位は宮本浩次「秋の日に」が初登場。ご存じエレファントカシマシのボーカリストによる6曲入りのカバーアルバム。CD販売数及びダウンロード数3位、PCによるCD読取数20位。オリコンでは初動売上1万9千枚で3位初登場。前作「縦横無尽」の初動2万9千枚(2位)よりダウン。大ヒットしたカバーアルバム「ROMANCE」に続くカバー作で、「ROMANCE」が売れただけに、「カバー曲を歌うミュージシャン」路線にシフトしているような方向性に違和感を覚えてしまうのですが・・・。これでいいのか?

続いて4位以下の初登場ですが、4位には俳優としても活躍している松下洸平「POINT TO POINT」がランクイン。フルアルバムとしては本作が1枚目となります。CD販売数4位、ダウンロード数7位、PCによるCD読取数38位。オリコン初動売上1万1千枚(4位)は前作「あなた」(7位)から横バイ。

6位には韓国の男性アイドルグループONEUS「Dopamine」がランクイン。CD販売数5位、その他は圏外となります。オリコンでは初動売上5千枚で8位初登場。日本では本作がデビューアルバムとなります。

7位初登場は女性アイドルグループTEAM SHACHI「舞いの頂点を極めし時、私達は如何なる困難をも打ち破る」がランクイン。自主レーベル「ワクワクレコーズ」立ち上げ後、初となるアルバム。CD販売数6位、ダウンロード数53位。オリコンでは初動売上7千枚で6位初登場。前作「TEAM」(6位)より横バイ。

初登場最後は10位にASKA「Wonderful world」。CD販売数8位、PCによるCD読取数24位。薬物使用による逮捕から8年。最近では地上波にも登場するようになり、活発な活動も目立つようになった彼ですが、ただ、薬物使用時の周りに対する言動や、陰謀論まみれのTwitterのつぶやきからして、個人的には音楽と人柄は切放して考えるべき、という考えの持ち主なのですが、ここまで来ると、正直、彼の音楽を到底聴く気にはなれません・・・。というか、あれだけ陰謀論にまみれた主張をする人を、あんなに容易に地上波に出していいの??とすら思うのですが。オリコンでは初動売上6千枚で7位初登場。前作「Breath of Bless」の7千枚(14位)よりダウン。

続いてロングヒット盤ですが、まずは松任谷由実のベスト盤「ユーミン万歳!~松任谷由実50周年記念ベストアルバム~」が今週5位にランクインし、8週連続のベスト10ヒットとなりました。ここ数週、ランクダウン傾向とはいえ、3位⇒4位⇒4位⇒5位とその下落は非常にゆるやかで根強い人気を感じさせます。

一方、Ado「ウタの歌 ONE PIECE FILM RED」は先週の5位から8位に再びダウン。ただ、ここに来てダウンロード数が4位から2位に再びアップしています。これで16週連続のベスト10ヒットとなりました。

また、先週までロングヒットを続けていたSnow Man「Snow Labo.S2」は今週11位にダウン。ベスト10ヒットは連続9週でストップとなりました。

今週のHot100は以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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