パンデミック後の未来
Title:demon time
Musician:Mura Masa
2022年にフジロックにも参加し、話題となったイギリスのプロデューサー、Mura Masaの約2年半ぶりとなるニューアルバム。2019年にはグラミー賞の最優秀リミックス・レコーディング賞を受賞するなど、活躍の場を広げています。個人的には前作「R.Y.C.」ではじめて彼のアルバムを聴いたのですが、難しいことなしに純粋に楽しめるポップな楽曲に魅了されました。約2年半ぶりとなる今回のアルバムは、彼曰く、「パンデリックが終わった未来に向けて作ったアルバム」と語っているようですが、まさにコロナ後の明るい未来を感じさせる、非常に楽しくポップなアルバムに仕上がっていました。
まず序盤で耳を惹くのが「slomo」でしょう。本作には日本人ラッパーのTohjiが参加。途中、いきなり日本語が登場し、驚かされます。まあ、向こうの人の感覚では、よくわからない言葉が登場し、エキゾチックな雰囲気が漂う感じなのでしょうか。本作はミディアムテンポでメロウさも感じるエレクトロチューン。ただ非常にいい意味でインパクトがあり、ある種のわかりやすさを感じさせるエレクトロサウンドがインパクトに。もともとMura Masaというミュージシャン名自体、日本の名刀、村正から来ており(もっとも採用理由は語感の良さだけのようですが)日本ともなじみのある彼。インタビューでは中田ヤスタカからの影響も公言しており、この日本人にとってもなじみやすいエレクトロサウンドも、ヤスタカサウンドっぽくはないのですが、そんな部分から来ているのかも、しれません。
この曲以外にも、毎曲、様々なゲストが参加。軽快でポップなサウンドを聴かせてくれています。女性シンガーBAYLIが参加しているタイトルチューン「demon time」は軽快でエレクトロなガールズポップ。続く「bbycakes」も軽快なポップを聴かせてくれたかと思えば、「2gether」ではミディアムテンポのエレクトロサウンドで荘厳な雰囲気で歌いあげる楽曲に。メランコリックながらもポップなメロディーラインも印象的です。
その後も中盤、slowthaiが参加した「up all week」は軽快なエレクトロサウンドにラップが楽しいリズミカルなチューンに。女性ボーカリストLEILAHが伸びやかで清涼感ある歌声を聴かせてくれる「prada(i like it)」もリズミカルなエレクトロポップチューンに仕上がっています。
さらにトライバルなリズムがインパクトの「hollaback bitch」に、同じくトライバルなリズムにちょっとメランコリックな雰囲気のサウンドとメロが印象的な「blessing me」と、バリエーションを変えつつも、いずれもリズミカルなエレクトロサウンドを主軸としたポップなナンバーが並びます。ラストを締めくくるのは再びLEILAHが参加したエレクトロポップ「blush」。最後の最後までポップな楽曲が並びます。
正直、サウンド的にはさほど目新しさは感じません。ただ、最初から最後まで耳に残ってワクワクするような軽快なエレクトロビートが続き、かつポップなメロディーが流れる、文句なしに楽しさを感じさせるアルバム。「パンデミック後の未来」にふさわしい、変な憂いのない楽しいサウンドが並びます。もっとも、そろそろパンデミックが終わろうとしている現状ですが、世界はウクライナ問題など暗いニュースも流れている訳ですが・・・ただ、そうとはいえ、音楽の中ぐらいは、このMura Masaの曲のような明るい未来を楽しみたいところ。まずは広い層にお勧めできるポップで楽しいエレクトロアルバムでした。
評価:★★★★★
Mura Masa 過去の作品
R.Y.C.
ほかに聴いたアルバム
Superstore/Sam Gendel
ロサンジェルスを拠点に活動を続け、プロデューサー、マルチインストゥルメンタル奏者、サックスプレイヤーとしての顔を持つSam Gendelのニューアルバム。最近は日本でも折坂亮太や岡田拓郎との共演を行ったりと、その知名度を確実に上げています。今回のアルバムは、全34曲入りとなる作品。ただ、アルバムを通じても52分の長さで、1曲あたり1、2分の曲が続いていく展開となっています。エレクトロな作品からフリーキーな曲、ポップな曲、トライバルな作品、ちょっと優雅さを感じる作品など作風は多岐にわたっているのですが、その曲の短さゆえに1曲1アイディア的な内容で、ちょっと物足りなさも感じる部分も。こういうアイディアが次々浮かんでくるのが彼らしさなのでしょうが。
評価:★★★★
Sam Gendel 過去の作品
Satin Doll
AE-30
Gemini Rights/Steve Lacy
The Internetのギタリストで、ネオソウルのプロデューサーとしても活躍しているSteve Lacyのソロ2枚目となるアルバム。ゆっくりハイトーン気味のボーカルで聴かせるメランコリックなメロディーラインが大きな魅力。AORやHIP HOP、ギターロックまで手を広げた前作と比べると、今回はメロウなR&Bチューンに絞ったような作風となっているのですが、その分、歌の魅力をしっかりと感じさせるアルバムに仕上がっていました。
評価:★★★★★
Steve Lacy 過去の作品
Apollo XXI
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