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2022年11月 5日 (土)

イギリスで大ブレイク!

Title:Hold The Girl
Musician:Rina Sawayama

イギリスを拠点に活躍するシンガーソングライター、Rina Sawayamaの2枚目となるアルバム。ご存じの通り、新潟出身の日本人で、幼少期にロンドンに移住し、今に至っています。前作「Sawayama」は大きな話題を呼び、各種メディアでも軒並み、2020年のベストアルバムに選ばれるなど、大きな話題を呼びました。ただ、チャート的にはイギリスのナショナルチャートでも最高位80位とブレイクというには程遠く、「話題先行」の感は否めませんでした。

本作はそんな「Sawayama」に続く作品なだけに、勝負作とも言える作品。その動向にも注目されたのですが、なんとイギリスのナショナルチャートで3位を獲得。人気の面でも大きく躍進したアルバムとなり、名実ともに一気にブレイクという結果となりました。

ただ、日本のメディアが大喜びしそうな「世界で活躍する日本人」なのに、3位にランクインという快挙について日本のメディアは軒並み無視。BABYMETALのアルバムがイギリスのアルバムチャートのベスト10入りした時には大騒ぎした癖に、本作は完全にスルーという事実には違和感しか覚えません。おそらく彼女が日本の「芸能界」に全く関与していないからでしょうし、彼女のスタイルが、日本のメディアが喜びそうなアニメカルチャーや「かわいい」文化にリンクした「クールジャパン」のイメージからほど遠いものだからでしょう。

もちろん、そんな日本のメディアの閉鎖性は彼女の活躍に全く関係ありません。今回のアルバムも前作「Sawayama」に続き傑作アルバムに仕上がっていました。特に彼女は椎名林檎や宇多田ヒカルなどJ-POPのミュージシャンからの影響を公言していますが、前作に引き続きJ-POP的な部分を強く感じさせる曲も耳を惹きます。例えばタイトルチューン「Hold The Girl」も哀愁感ただようメロディーラインといい、楽曲タイトルを先頭にもってくるわかりやすいサビといい、かなりJ-POP的な構造。もっとJ-POPっぽいのが続く「This Hell」で、こちらもわかりやすいメロディーラインを持つポップチューンで、ほどよくノイジーなギターに、4つ打ちのリズムというのもJ-POP的。洋楽としては珍しくBメロを持った構造になっているのもJ-POPっぽさを感じます。

アルバム全体としてもR&Bをベースとしながらも雑食性のあるポップソングが並ぶ展開になっており、インパクトのあるわかりやすいメロディーラインのポップソングが魅力的。前述の「This Hell」のようなロック風のポップもありつつ、「Holy(Til You Let Me Go)」は疾走感あるトランシーなエレクトロチューン。「Your Age」ではより強いメタリックなビートを持つエレクトロチューンに。「Frankenstein」も哀愁感たっぷりのメロディーラインと打ち込みも入れて疾走感あるサウンドは日本人が好みそう。一方、「Send My Love To John」などはアコースティックギターでフォーキーに聴かせる曲となっていたり、ラストの「Phantom」「To Be Alive」は伸びやかな歌声を聴かせるスケール感ある楽曲で締めくくっています。

前作では、意識的に日本を前に押し出したような曲もありましたが、今回は楽曲的にJ-POPの影響を感じるものの、日本を目立って押し出した曲はありません。前作では日本を前に押し出すことにより、ある種のエキゾチックさをアピールポイントにしていたのかもしれませんが、今回のアルバムではそういうギミックは不要だった、ということでしょう。それだけ間違いなくRina Sawayamaの名前が音楽シーンに広まった、ということも言えるかもしれません。

楽曲的に目新しさは感じないものの(ひょっとしてこのJ-POP的な部分が海外では目新しいのかもしれませんが)インパクトがあり、いい意味で非常に聴きやすく、さらに私たちにとっても耳なじみのある楽曲が並ぶアルバムだったと思います。前作に引き続き、今回のアルバムも文句なしの傑作。勝負作とも言える本作でしたが、売上の面でも、内容の面でも、間違いなく勝負に「勝った」といえる結果になりました。彼女の快進撃はまだまだ続きそう。日本のメディアはいつまで無視しているのでしょうか・・・。

評価:★★★★★

Rina Sawayama 過去の作品
Sawayama


ほかに聴いたアルバム

I Love You Jennifer B/Jockstrap

Georgia ElleryとTaylor Skyeの2人組のオルタナティブポップデゥオのデビューアルバム。2020年にリリースされた2枚のEPはWarpからリリースされ、さらに本作はラフトレードからのリリースと、注目の高さをうかがわせます。本作はアコースティックギターからスタートするものの、その後はエレクトロサウンドやら歪んだギターノイズやらピアノやらストリングスやら様々な楽器で展開。かなりめまぐるしい内容となっています。「オルタナティブポップ」というイメージ通りのユニークな展開なのですが、ちょっとめまぐるしすぎる感があり、せわしない印象を受けます。いろいろとやりたいことがまとめきれていない感も。楽しさは感じるのですが。

評価:★★★★

Natural Brown Prom Queen/Sudan Archives

ヴァイオリニストでありつつ、自らもボーカルとして自作曲を歌っているLAのシンガーソングライターの新作。正直、ヴァイオリンとしての要素はほとんどなく、アフリカ音楽の要素を取り入れたトライバルなリズムに、伸びやかでメロウなR&B風の楽曲を挟みつつも、HIP HOPからの影響も感じさせる作風が印象的。非常にアグレッシブさを感じさせる1枚です。

評価:★★★★★

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アルバムレビュー(洋楽)2022年」カテゴリの記事

コメント

ゆういちさん、こんばんは。

リナ・サワヤマを日本のマスコミが取り上げない理由ですが、やはり彼女が“日本人ミュージシャン”ではあるものの、“日本のミュージシャン”ではないことが大きいと思います。マスコミが一番ほしいのは『日本で売れた“日本のミュージシャン”が海外でもウケた!!』だと思うので(あくまで僕個人の考えです)。まあ、それを抜きにしても彼女はもっと評価されるべきミュージシャンだと間違いなく思います。

投稿: 通りすがりの読者 | 2022年11月 6日 (日) 01時06分

一応今回は日本のフェス出演の間に情報番組でパフォーマンスしたり、それなりに注目はされてたかなぁと思います。
まあ個人的にはワッと注目されて本人のやりたいことに対して足引っ張るようなことされるくらいなら、このままでいいかなとは思ったりもします

投稿: 亮 | 2022年11月10日 (木) 22時51分

>通りすがりの読者さん
あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。
それもあるとは思いますが、ただ、大阪なおみみたいに、正直日本とほとんど関係なくても活躍したとたん、日本人というだけで騒ぐケースが多く、そういう中でも彼女の日本のマスコミの無視さはちょっと異常な感じもします。ジャニーズ系のTravis Japanとか、よくわかんないチャートでランクインしただけで「世界で通用した」と大騒ぎする癖に・・・。

>亮さん
あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。そうですね、日本の情報番組でようやくパフォーマンスを披露したりもしてくれましたね。まあ、変に足をひっぱられるよりはいいのかもしれませんが。

投稿: ゆういち | 2023年1月 6日 (金) 23時01分

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