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2022年11月15日 (火)

女王、降臨

Title:ユーミン万歳! ~松任谷由実50周年記念ベストアルバム~
Musician:松任谷由実

かなり大胆不敵なタイトルがすごいなぁ、と思うのと同時に、実にユーミンらしいなぁ・・・とも思うのですが、今年、デビュー50周年を迎えたユーミンこと松任谷由実のオールタイムベストアルバム。このド派手なジャケット写真も含めて、いかにもユーミンといった感じで、今回のレビュー記事のタイトル、同作が1位を獲得した時のチャート評の時にも使わせていただいたのですが、あらためて「女王」というイメージにふさわしい貫禄の持ち主のように強く感じます。

ただユーミンのベストアルバムというと、「日本の恋と、ユーミンと。」というベストアルバムをかなり大々的にリリースしたことを覚えています。それからもうベストアルバムがリリースされるのか…と思ってしまうのですが、同作のリリースが2012年と、もう10年前という事実を今回認識し、時の移り変わりの早さに驚いています!自分も歳を取ったな・・・。とはいえ、この10年でリリースされたユーミンのアルバムはわずか3枚。正直、シングル曲としてこれといったヒット曲もリリースしていない(この10年でシングルでベスト10入りした曲はありません)ので、ベスト盤をリリースする間隔としてはちょっと短すぎる印象も。実際、今回のベスト盤で、この10年の曲は「宇宙図書館」わずか1曲だけであり、かなりの割合、前のベストアルバム「日本の恋と~」と重なってしまっています。

しかし今回のベストアルバムで大きな目玉となるのが2つありました。ひとつは新曲として収録している「Call me back」。この曲は、彼女の荒井由実時代のボーカルを最新のAIで再現し、そのボーカルと現在の松任谷由実がデゥエットするという非常に意欲的な作品。デビューから50年を経た大ベテランの彼女が、AIという最新技術を積極的に用いてくるあたり、まだまだ現役として衰えていない彼女の挑戦心を感じさせます。もっとも、その試みが成功しているかと言われると、荒井由実と松任谷由実のボーカルがほとんど変わらず、あまり両者の違いがはっきり出ていないのが残念なところなのですが・・・。もっとも、今回のデゥオ、むしろこの「違いがない」点をユーミン自体、見せつけたかった可能性も高いだけに、狙い通りという可能性もあります。

そして最大の目玉と思わるのが今回、エンジニアのGOH HOTODAにより、オリジナルよりリミックス&リマスタリングが行われているという点。最新ベスト盤がリミックスやリマスタリングが行われているというケースは少なくありませんが、今回のベスト盤に関しては、オリジナルに比べてあきらかに音質が変化しています。冒頭の「真夏の夜の夢」はイントロのベースラインが印象的なのですが、こちらがオリジナルに比べてもかなりクリアに流れてきて思わず感激するほど。「ひこうき雲」についてもピアノが明らかにクリアに聴こえてきます。全体的に重低音をよりはっきりと際立たせた、今風なアレンジが多い、全体的なサウンドもはっきりと聴こえるようなアレンジに仕上がっています。これだけはっきりと違いのわかるリミックス&リマスタリングは珍しいかも。少なくともこの点だけにおいても今回のベスト盤は聴く価値のある内容になっていると思いました。

前のベストアルバムからほとんど変化のない収録曲で、正直、どうかな、と思っていた今回のベストアルバムでしたが、この音の違いによって、あらたなユーミンの世界が楽しめたベストアルバムになっていました。もちろん収録曲については、何度も聴いたことある耳なじみのある名曲ぞろいで、全3枚組51曲入りというボリューミーな内容ながらも、最後までほとんどダレることなく一気に聴き切ることのできた作品になっていました。ユーミンの入門盤としてももちろん、いままでの彼女の作品を聴きなれた方でも楽しめるベスト盤だと思います。あらためて女王としての格の違いを感じたベスト盤でした。

評価:★★★★★

松任谷由実 過去の作品
そしてもう一度夢見るだろう
Road Show
日本の恋と、ユーミンと。
POP CLASSICO
宇宙図書館
ユーミンからの、恋のうた。
深海の街


ほかに聴いたアルバム

IT'S GONNA WORK OUT 〜LIVE 82-84〜/高橋幸宏

今年、音楽活動50周年を迎えた高橋幸宏の1980年代前半のライフワークにスポットをあてる「ユキヒロ×幸宏 EARLY 80s」企画の最終弾。3CD+1Blu-rayのボックスセットで、Disc1,2は「WHAT, ME WORRY?」のリリースに合わせ行われた初の全国ソロツアー“YUKIHIRO TAKAHASHI 1982 WHAT, ME WORRY?" の1982年7月26日新宿厚生年金会館のライヴ音源を収録した内容。Disc3は1983年のライブアルバム「tIME and pLACE」のデジタルリマスター版、さらにBlu-rayは1982年のLIVE映像作品「BOYS WILL BE BOYS」と、1983年の映像作品「新青年」からセレクトしたLIVE映像のHDリマスター版を収録した内容となっています。

まさに80年代の彼の作品を存分に味わえるライブボックス。サウンド的には今聴くと、いかにも80年代的な部分が多く、ニューウェーヴからの影響の強さを感じさせる一方、いかにも高橋幸宏っぽいサウンドやメロディーラインはこの時期に確立されたんだ、ということを実感できるような内容となっており、最近、彼が関与したMETAFIVEのサウンドにもつながってくるようなものも感じます。いかにも80年代といっても、今の耳で聴いても十分楽しめるポップとなっており、ボリュームたっぷりの音源でしたが、ダレることなく楽しめる作品でした。

評価:★★★★★

高橋幸宏 過去の作品
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GOLDEN☆BEST
LIFE ANEW
Saravah Saravah!
GRAN ESPOIR

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