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2022年11月 8日 (火)

秋を感じる4部作の3作目

Title:SZNZ:Autumn
Musician:WEEZER

今年、四季の節目にあわせて4枚のEPシリーズ「SZNZ」をリリースしているアメリカのパワーポップバンドWEEZER。春分の日に第1弾「SZNZ:Spring」が、夏至の日に第2弾「SZNZ:Summer」がリリースされ、そして予想通り、秋分の日に第3弾「SZNZ:Autumn」がリリースされました。前回「Summer」の時と同様、今回も「サプライズリリース」と紹介されていましたが、これほどサプライズのないサプライズリリースも珍しいかもしれません。

さて、今回のEPシリーズ、第1弾も第2弾もWEEZERらしさを感じる分厚いバンドサウンドにポップでキュートなメロディーが載る楽曲が並んでいましたが、この第3弾についても、第1弾、第2弾同様、WEEZERの王道とも言えるパワーポップチューンが並ぶ作品になっています。1曲目「Can't Dance,Don't Ask Me」からしてまさにWEEZERらしいほどよくノイジーで分厚いギターサウンドで、切なさを感じさせつつポップでキュートなメロを疾走感あるリズムで聴かせるナンバー。続く「Get Off On The Pain」もハイテンポな出だしに続いてテンポがいきなりゆっくりとなって登場するヘヴィーなギターリフと、それにのせてゆっくりと歌いあげられるポップなメロも、まさにWEEZER節といっていい作風。聴いていて、率直に気持ちよくなるナンバーになっています。

哀愁たっぷりに聴かせる「What Happens After You?」を挟み、続く「Francesca」も、途中で転調を入れてくるあたり、いかにもWEEZERらしさを感じますし(というよりもJ-POPからの影響か?)、「Should She Stay or Should She Go」も軽快でメロディアスなメロが楽しいポップチューンに仕上がっています。

さらに「Tastes Like Pain」では、今回もまた、いままでの作品と同様、ヴィヴァルディーの「四季」のフレーズをサンプリング。今回も「秋」をテーマにしつつも、前作同様、なぜかピックアップされているのは「冬」の第2楽章。冬をイメージするような凍てつく感覚をバイオリンで表現している箇所なだけに、これを「秋」に持ってくるの?と不思議にも感じてしまうのですが、楽曲の中に上手く「四季」のフレーズを溶け込ましています。そしてラストの「Run,Raven,Run」も彼ららしい軽快なギターロックでメロディアスに聴かせるナンバー。最後までポップでキュートなナンバーを聴かせてくれる作品となっています。

正直なところ、作品としての目新しさはほとんどありません。良くも悪くも彼ららしいという点はいままでのこのシリーズと同様。ただ一方でWEEZERらしい壺はしっかりと押さえた作品になっており、ファンとしては申し分なく楽しめる作品になっていたと思います。なによりも難しいこと抜きにして安心して聴けるという点でも彼ららしい魅力のつまった作品だと思います。メロディーラインにもそれなりに勢いもあり、彼らの最高傑作レベル、とまではいかないまでも、魅力的な良盤であることは間違いないでしょう。

次は間違いなく冬至の日にラストのアルバムがリリースされるはず。おそらくまた本作のような魅力的なアルバムを聴かせてくれるのではないでしょうか。次の「サプライズリリース」も楽しみに待っていたいと思います。

評価:★★★★★

WEEZER 過去の作品
WEEZER(Red Album)
RADITUDE
HURLEY
DEATH TO FALSE METAL
Everything Will Be Alright in the End
WEEZER(White Album)
Pacific Daydream
Weezer(Teal Album)
Weezer(Black Album)
OK HUMAN
Van Weezer
SZNZ:SPRING
SZNZ:SUMMER


ほかに聴いたアルバム

Autofiction/Suede

90年代ブリットポップを代表するロックバンドSuede。2013年の再結成後、比較的コンスタントにアルバムをリリースし続けていますが、今回は約4年ぶりとなるニューアルバムとなりました。基本的にはメランコリックなメロディーラインを聴かせつつ、力強くグルーヴィーなバンドサウンドを聴かせるスタイル。曲によっては大御所バンドらしいスケール感を覚える曲も多く、まさに王道路線を行くような曲が並びます。ある意味、無難といえば無難な内容ですが、ファンなら文句なく楽しめるアルバムになっていました。

評価:★★★★

suede 過去の作品
night thoughts
The Blue Hour

The Mars Volta/The Mars Volta

2013年にメンバーのセドリック・ビクスラー・ザヴァラが脱退したため解散を発表したThe Mars Volta。ただ、比較的早いタイミングでセドリックとオマー・ロドリゲス・ロペスは合流し、At The Drive-Inとしてのレコーディングなども実施していた彼らですが、The Mars Voltaとしても活動再開。約10年ぶりとなるニューアルバムがリリースされました。セルフタイトルとなる本作は、メランコリックな歌を主軸に据えた「歌モノ」のアルバム。時おり、彼ららしい複雑でダイナミックなサウンドが顔をのぞかせたりはするのですが、全体としてはThe Mars Voltaらしいサウンドはあまり目立ちません。そのため、久々のアルバムとしてはちょっと期待していた作品とは異なる感が強く、少々残念にも感じましたが、彼らの歌も十分に魅力的。ついに活動を再開した彼らなだけに、今後の活躍に期待したいところです。

評価:★★★★

THE MARS VOLTA 過去の作品
The Bedlam In Goliath(ゴリアテの混乱)
OCTAHEDRON
Noctoumiquet
Landscape Tantrums

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