LEO今井と砂原良徳の才能が融合
Title:EP1 TSTST
Musician:TESTSET
高橋幸宏を中心として小山田圭吾、砂原良徳、TOWA TEI、ゴンドウトモヒコ、LEO今井という豪華なメンバーが一堂に会して結成されたバンドMETAFIVE。残念ながら例の小山田圭吾を巡る東京五輪の騒動に巻き込まれる形で話題になってしまい、今年に入ってようやく通常リリースできた2ndアルバム「METAATEM」は「ラストアルバム」とアナウンス。正式に解散等を公表されている訳ではありませんが、事実上の活動停止状態となってしまいました。
そんな小山田圭吾の騒動の最中に開催されたのが昨年8月に実施されたフジロック。METAFIVEはフジロックに出演したのですが、メンバーの中で砂原良徳とLEO今井のみが出演。ここにサポートとして相対性理論の永井聖一、GREAT3の白根賢一という4人でのパフォーマンスとなったのですが、このたび、この4人が新たにグループを結成。TESTSETと名付けて新たな音楽活動をスタートさせました。
ある意味、METAFIVEの派生グループとも言えるTESTSET。ただ、METAFIVEはあくまでも高橋幸宏のグループ、ということで完全に違う名前、別バンドとしてのスタートとなったようです。もっとも楽曲の方向性としてはMETAFIVEの延長線上にあるような作品で、ニューウェーヴからの影響を感じさせつつ、バンドサウンドとエレクトロサウンドを融合させたサウンド。METAFIVEが好きならTESTSETももちろん気に入るのではないでしょうか。
基本的に作詞はLEO今井が担当。作曲はLEO今井と砂原良徳の共作という形になっています。ここらへん、5人での共作だったMETAFIVEと比べると、LEO今井と砂原良徳の音楽性がより表に出たような作品に仕上がっています。特にLEO今井の影響は大きく、METAFIVEに比べると、かなりロック寄りにシフト。1曲目「Carrion」もエレクトロのリズムを刻みつつ、ギターサウンドを前面に押し出した作風でロッキンなカッコいい楽曲。「Where You Come From」もLEO今井のシャウト気味のボーカルにマッチさせたような迫力あるロックなナンバー。LEO今井のボーカルを前に持ってきたこともあって、全体的にはLEO今井のボーカルスタイルにマッチした作風が並びます。
もちろん一方の砂原良徳からの影響も顕著で、今回の作品の中では「Testealth」などは、より砂原良徳の色の濃い作品に仕上がっていましたし、全体的にテクノという側面がMETAFIVE以上に強く押し出された作品に。LEO今井の音楽性と砂原良徳の音楽性が上手い形で融合したサウンドをこの1枚目のEPから既に作り出しており、今後、リリースされるフルアルバムが待ちきれなくなるような傑作となっています。
今回、ラストには向井秀徳をゲストに迎えたKIMONOSのナンバー「No Modern Animal」のカバーも収録。KIMONOSのナンバーをTESTSET風にアレンジした楽曲もかなりカッコよく、原曲とはまた違った雰囲気の作品に。TESTSETの楽曲の中にも違和感なく溶け込んでいます。
ある意味、小山田騒動があったからこそ誕生したバンドで、TESTSETが結成されたことは怪我の功名とも言えなくはありません。もっとも、小山田騒動がなければ、METAFIVEとしての活動が問題なく続けられていた可能性も高いのですが・・・(高橋幸宏の健康問題もあるのでなんとも言えないのですが・・・)。ただ、バンドとしては1枚目からメンバーの相性の良さを強く感じさせますし、これからが非常に楽しみになってくるバンドです。来るべきデビューアルバムはとんでもない傑作に仕上がっているかも。わずか5曲入りのアルバムですが、TESTSETというバンドの可能性を強く感じさせる内容でした。
評価:★★★★★
ほかに聴いたアルバム
Orbit/STUTS
フルアルバムとしての前作「Eutopia」がMusic Magazine誌の「日本のラップ/HIP HOP」部門の2018年年間1位を獲得し、さらにドラマ「大豆田とわ子と三人の元夫」の主題歌を担当するなど、ここ最近、一気に注目を増しているトラックメイカーによる3枚目のアルバム。メロウなR&B系のエレクトロトラックに、メランコリックな歌やHIP HOPが加わるスタイル。非常に完成度の高さを感じさせる内容になっていますが、「Eutopia」に比べると、無難にまとまっている感を強く覚えてしまったかも。
評価:★★★★
STUTS 過去の作品
Eutopia
Contrast
Presence(STUTS&松たか子 with 3exes)
Harvest/04 Limited Sazabys
コロナ禍での中止もありつつ、最近は、地元名古屋でロックフェス「YON FES」を開催するなど積極的な活動を見せるフォーリミの約4年ぶりとなるニューアルバム。ハイトーンなボーカルと分厚いサウンド、ハイテンポなリズムにキュートなポップという組み合わせが特徴的なメロパンクバンド。ここ数作、アルバム毎にメロのインパクトが増していた感もあったのですが、久々となった新作は、それなりにポップでインパクトのある曲もあったものの、全体的にはメロを聴かせるというよりも勢いで一気に最後まで展開していくような内容に。フォーリミらしさはしっかり出ているものの、前作までの流れから期待していたほどではなかったのはちょっと残念な感も。
評価:★★★★
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