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2022年11月

2022年11月30日 (水)

逆転!

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

ここ数週、ヒゲダンと米津玄師のデッドヒートが繰り広げられていましたが、今週は米津が見事逆転しています。

米津玄師「KICK BACK」は長らくヒゲダンの後塵を拝していましたが、今週、見事1位を獲得。6週ぶりの1位返り咲きとなりました。もっとも理由ははっきりしており、今週、「KICK BACK」のCDシングルがリリースされ、その売上が加わった影響。CD販売数1位、PCによるCD読取数3位がランキングに加わり、1位獲得となっています。ちなみにオリコン週間シングルランキングでも初動売上30万枚で1位初登場。前作「M八七」の初動22万8千枚(2位)よりアップしています。

一方、Official髭男dism「Subtitle」は先週の1位からワンランクダウンの2位。ただ、ダウンロード数はヒゲダン2位、米津3位、ストリーミング数もヒゲダン1位、米津2位とヒゲダンが上回っています。ただし、You Tube再生回数は今週、米津玄師が3位から1位にアップした一方、ヒゲダンは2位から3位にダウンしており、両者が逆転しています。

3位にはKing&Prince「ツキヨミ」が先週の7位からランクアップし、2週ぶりのベスト3返り咲き。特にCD販売数が今週4位から3位にアップしています。

続いて4位以下の初登場曲ですが、4位に≠ME「はにかみショート」がランクイン。指原莉乃プロデュースによる声優アイドルグループ。CD販売数2位、PCによるCD読取数38位、Twitterつぶやき数13位。オリコンでは初動売上12万4千枚で2位初登場。前作「す、好きじゃない!」の初動9万2千枚(2位)からアップ。

6位にはBTSのメインボーカルJung Kookによるソロ「Dreamers」がランクイン。FIFAワールドカップカタール2022公式テーマソング。配信限定のシングルで、ダウンロード数1位、ストリーミング数21位、ラジオオンエア数10位、Twitterつぶやき数43位で、総合順位はベスト10入りを果たしています。

8位初登場はKing Gnu「Stardom」が先週の16位からランクアップし、ベスト10初登場。こちらは2022NHKサッカーテーマソング。4年前のワールドカップ時のテーマソングはSuchmosだったので、なんとなく系統は似ている点、同じ人がセレクトしているのでしょうか?ただ、いろいろと物議をかもした前回と比べると、今回はすんなり受け入れられているようです。まあ、曲調はかなり異なりますが・・・。11月30日リリース予定のシングルからの先行配信。ダウンロード数4位、ストリーミング数17位、ラジオオンエア数2位、Twitterつぶやき回数97位、You Tube再生回数31位。来週はCD販売数が加わるので、グッと順位はあがりそう。

最後10位にはハロプロ系女性アイドルグループJuice=Juice「全部賭けてGO!!」が初登場。CD販売数4位、ダウンロード数56位、ラジオオンエア数25位、PCによるCD読取数42位、Twitterつぶやき数64位。オリコンでは初動売上3万8千枚で5位初登場。前作「プラスティック・ラブ」の4万6千枚(3位)からダウンしています。

一方、ロングヒット曲は、まだまだ強いAdo「新時代(ウタ from ONE PIECE FILM RED)」が今週はここに来て、6位から5位にアップ。ストリーミング数が5週連続で4位をキープしているほか、You Tube再生回数が8位から6位にアップしています。これで25週連続のベスト10ヒットとなりました。

7位にはYOASOBI「祝福」がランクインし、これでベスト10ヒットを連続8週に伸ばしています。特にダウンロード数5位、ストリーミング数6位と上位をキープ。ただここ3週は4位⇒5位⇒7位と下落傾向となっています。

なとり「Overdose」は8位から9位にさらにダウンと下落傾向。ただ、ストリーミング数は今週も3位をキープし、これで5週連続の3位となりました。こちらはベスト10ヒットを連続10週に伸ばしています。

そしてTani yuuki「W / X / Y」は今週11位にダウンと、ベスト10ヒットはとりあえず通算32週でストップ。ただ、ストリーミング数はこちらも6週連続の5位となっており、まだベスト10返り咲きをうかがう位置にいます。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

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2022年11月29日 (火)

時代を超えた伝説のバンド

裸のラリーズというバンド名、ある程度、日本のロックに詳しい方ならご存じの方も多いのではないでしょうか。ギターヴォーカルの水谷孝を中心に、1960年代に結成。水谷孝を中心にメンバーが流動的ながらも1990年代まで活動を断続的に活動を続けていましたが、その大きな特徴は、これでもかというほど強烈なフィードバックの嵐を繰り広げるギターを中心としたサイケデリックな作風。唯一無二なそのサウンドを奏でるバンドでありつつ、一方で活動がアンダーグラウンドであったため、その実像については謎な部分が多く、さらに公式にリリースされたアルバムが1991年頃にリリースされた、わずか3枚のアルバムのみ。それもどうも水谷孝の意向で、リリース枚数は限定されたようで、インターネットオークションでは非常に高値で売却されていた「幻のアルバム」となっていました。

長らく「伝説のバンド」として神格化されていた裸のラリーズでしたが、昨年10月、突如、オフィシャルサイトがオープン。その中で水谷孝が2019年に死去したことを示唆するような記載がなされており(後に事実と確認)、さらにオフィシャル音源のリリースを拒んでいた水谷孝の逝去の影響か、このたび3枚のオリジナルアルバムが復刻。今回、さっそく伝説のバンドの3枚のアルバムを聴いてみました。

Title:67-’69 STUDIO et LIVE
Musician:裸のラリーズ

Rallizes1

まず1枚目のこのアルバムですが、アルバムの冒頭でいきなり大きくショックを受けるのではないでしょうか。いきなり強烈なインダストリアルメタル張りのヘヴィーなノイズからスタート。さらに1曲目「Smokin' Cigarette Blues」はまさにインダストリアルを彷彿とさせるような強烈なビートとノイズをギターを中心としたバンドサウンドで生み出しており、その音の洪水に圧倒されます。続く「La Mai Rouge」も不穏な雰囲気のギターノイズが展開されるダークなナンバー。独特なダークなサウンドが繰り広げられます。

ただ、もうひとつ大きな特徴だったのが、そんな圧倒的なフィードバックノイズの洪水を聴かせつつも、一方では意外とメランコリックなメロディーの歌モノも聴かせているという点で、この2曲に続く「眩 暈 otherwise My Conviction / Vertigo otherwise My Conviction」はひとつの展開。ヘヴィーなギターサウンドをバックにしつつ、メロディーラインは至ってメランコリック。郷愁感のあるメロディーラインは、むしろ典型的な60年代の日本のロックバンドのようなスタイルを感じさせます。この強烈なフィードバックノイズのサイケなサウンドで楽曲を埋め尽くしながらも、一方では、むしろ60年代フォークの影響すら垣間見れるメランコリックなメロディーラインも流れているというある種の奇妙なバランスこそが裸のラリーズのひとつの魅力のように感じます。

評価:★★★★★

Title:MIZUTANI / Les Rallizes Dénudés
Musician:裸のラリーズ

Rallizes2

そして、そのメランコリックという側面が強調されたのが、この2作目のアルバム。フィードバックノイズの嵐だった1枚目とはうって変わって、1曲目「記憶は遠い」から、アコースティックギターをバックにフォーキーな作風になっており、しっかりと歌を聴かせる楽曲に。続く「朝の光 L'AUBE」も、美しい鐘のサウンドにアコースティックギターのサウンドをバックに、切なくメランコリックに歌い上げる曲調が特徴的。その後も同様にメランコリックな歌を聴かせる曲が続き、このアルバムの前半だけ聴かせると、60年のフォークグループとすら感じられる方もいるかもしれません。ただ一方で歌詞の世界にはどこかサイケデリックな要素が感じられる部分も強く、裸のラリーズらしい独自性もしっかりと感じられます。

一方で後半、20分以上にも及び「The Last One」では最初は静かなギターでスタートするものの、徐々にダイナミックに展開。後半の繰り返させるギターリフと轟音に軽くトリップしそうな感じすらするサイケな作品に。後半のギターリフはミニマル的な要素も感じさせます。ラストの「黒い悲しみのロマンセ otherwise Fallin’ Love With」もフィードバックノイズを奏でるダークなギターをバックに哀愁たっぷりの歌を聴かせる楽曲に。全体的に水谷孝の内面を聴かせるような、単なる轟音を鳴り響かせるだけではないラリーズの魅力を感じさせるアルバムに仕上がっています。

評価:★★★★★

Title:'77 LIVE
Musician:裸のラリーズ

Rallizes3

ある意味、3作のうち、裸のラリーズらしい強烈さが一番あらわれているのがこの作品かもしれません。1977年3月12日に東京の立川市で行われたライブ音源を収録したアルバム。まず特に強烈なのが「氷の炎」で、これでもかというほどのギターのフィードバックノイズが楽曲を埋め尽くします。「夜より深く」も同じく狂暴とも言えるギターノイズが埋め尽くす作品。エフェクトをかけて浮遊感すら感じさせるサウンドは、今のダブの要素も感じさせます。最後を締めくくる「The Last」も強烈なギターノイズからスタート。こちらはギターリフがどこかミニマル的に聴かせる楽曲で、最後の最後までギターノイズで空間を埋め尽くすような楽曲が並びます。

ただ一方で、こちらも意外とメロディーラインのポップスさを感じさせる曲も多く、例えば「夜、暗殺者の夜」などはギターノイズで埋め尽くしつつも、ギターリフが意外とメロディアスにまとまっており、意外とポップという印象を受けるかもしれません。「夜の収穫者たち」も疾走感あるガレージロックの様相もあり、メロディーが意外とメロディアスという印象を受けそうです。

フィードバックノイズの洪水に圧倒されつつ、ただ、これが1977年のライブ音源という事実にあらためて驚かされます。日本国内はもとより、海外に目を向けても、70年代にこれだけ圧倒したギターノイズを奏でるバンドは思い当たりません。今のノイズミュージックの萌芽が70年代ということで、同時代の音源をYou Tubeで聴いたのですが、どちらかというとノイズで埋め尽くすというよりも、実験的にノイズを(ある種恐る恐る)奏でているような印象。ある意味、日本においても世界においても隔絶した存在のバンドだったのではないでしょうか。

フィードバックノイズの洪水に意外とポップなメロディーラインという点で、シューゲイザー系と重ね合わせる向きもあるそうです。シューゲイザー系というと80年代に起こったムーブメントであるため、そこから20年近く前に裸のラリーズという存在が日本にいたことも驚きですが、ただ、個人的にはその両者は似て非なるもの、という印象を受けます。シューゲイザー系は同じフィードバックノイズの洪水でも、こちらは甘いクリームのようにフィードバックノイズを音楽に対して塗りつくし、キュートなメロディーラインを聴かせてドリーミーにまとめ上げています。一方、裸のラリーズはこれが夢ならば完全に悪夢。フィードバックノイズはリスナーの耳に容赦なく攻撃を加えるような狂暴な武器。ある種、リスナーに対しても挑戦を企てるかのような攻撃性のあるサウンドになっており、そのスタンスにおいてシューゲイザー系とは全く異質であることが感じされます。

彼らの楽曲は、時代を超えた今においても、ある種非常に狂暴に聴こえ、その攻撃性は全く失われていません。むしろいまから50年近く前に、このようなバンドが日本で活動していたことに大きな驚きすら感じます。今回の3枚のアルバムの再販で、あらためて裸のラリーズというバンドのすさまじさを多くのリスナーに知らせることが出来た貴重な作品になりました。神格化された伝説は知っていましたが、確かにこれは「伝説」となるには十分すぎるアルバムだったと思います。そのフィードバックノイズの洪水に、聴きながらただただ立ち尽くしてしまう、そんなとんでもないアルバムでした。

評価:★★★★★

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2022年11月28日 (月)

自由度の高いエレクトロの傑作

Title:Cherry
Musician:Daphni

Caribou名義でも活動しているカナダのエレクトロミュージシャン、Dan Snaith(ダン・スナイス)のソロプロジェクト、Daphni(ダフニ)のニューアルバム。Daphni名義のオリジナルアルバムとしては3枚目となるアルバムで、特に2017年にリリースされた前作「Joli Mai」は、各種メディアの年間ベストでも上位にランクインするなど、高い評価を受けるアルバムになりました。

・・・と言っても私自身、彼のアルバムを聴くのは今回がはじめて。どんなアルバムであるのか、よくわらかないまま今回アルバムを聴いてみたのですが、本作に関して、彼自身「このアルバムを統一したり、まとまらせたりするような明確なものは何もない。ただ作っただけなんだ」と語っているようで、実際にアルバム全体として特に統一感もあるわけではない、自由度の高いアルバムに仕上がっていました。

アルバム冒頭の「Arrow」はハウス系のリズミカルなミニマルナンバーになっていますし、続くタイトルチューンの「Cherry」は同じくミニマル系のナンバーなのですが、硬度のあるサウンドが繰り返されるテクノ系の楽曲に仕上がっています。かと思えば続く「Always There」はちょっとエキゾチックなサウンドが入ったメランコリックなナンバーで、1曲目2曲目とは明確に方向性が異なり、まさに自由度の高い作品ならではの展開となっています。

その後もスペーシーなエレクトロチューンの「Crimson」「Arp Blocks」に、ボーカルをサンプリングしてリズミカルに聴かせるミニマルテクノ「Mania」、疾走感あるサウンドにリズミカルなバンドサウンドが加わり、AOR的な様相も感じさせる「Take Two」、エレクトロサウンドにメロウさも感じさせる「Clavicle」に、同じくピアノとサンプリングされたボーカルでメロウさを感じさせる「Cloudy」と続いていきます。

かと思えば終盤はメタリックなビートで力強く聴かせる「Karplus」、ピアノの音色が入って力強いビート感の「Amber」と続き、続き、ラストはピアノを入れて軽快にリズミカルに聴かせる、タイトル通り、将来への希望を感じるような「Fly Away」と続きます。最後まで、前述の彼のインタビュー通り、自由度の高い作品に仕上がっていました。

ただ、統一感が本当にないかと言えば、アルバム全体で言えば、やはりミニマルなサウンドが一つの軸になっています。また、リズミカルな4つ打ちのビートは基本的に良い意味で変なひねりもなく、ポップで聴きやすい作風に仕上がっていた点もひとつの統一軸でしょう。さらにアルバム全体としてメロディアスなメロディーラインがしっかりと流れており、その点もポップで聴きやすいという印象を受けた大きな要素。全体的にいい意味でリスナーを選ばない、比較的広いリスナー層にお勧めできるアルバムになっていたと思います。

高い評価も納得の傑作アルバム。全14曲入り47分程度のアルバムの長さも最後まで楽しむにはちょうどよい長さですし、難しいこと抜きに、そのミニマルなサウンドを最初から最後まで楽しめる作品に仕上がっていました。

評価:★★★★★

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2022年11月27日 (日)

強烈なビートでインパクトの塊

Title:MATA
Musician:M.I.A.

Mata

イギリスを拠点に活動するタミル系スリランカ人の女性シンガーソングライターM.I.A.の最新作。前作「AIM」から実に6年ぶり、少々久しぶりのニューアルバムとなりました。ただ、前作「AIM」の時に「これがアルバムのフォーマットとして最後のリリースとなる」とアナウンスしていたのですが、結局、新作も無事、アルバムの形でのリリースとなりました。もっとも今回は、CDというフォーマットでのリリースはなく、配信オンリーのリリースだったようですが・・・。

さて、そんな久々となった今回のアルバムでしたが、今回もまた、ムーンバートンやバンガラといったジャンルの影響を取り込みつつ、強烈なトライバルなビートの連続に、とにかく胸湧き踊るような、そんなアルバムに仕上がっています。

オープニング的な「F.I.A.S.O.M.Pt1」に、続く「F.I.A.S.O.M.Pt2」は彼女の雄たけびからスタートする、まさにアルバムのスタートを飾るにふさわしいような作品に。さらに「100% Sustainable」は子供たちのコーラスラインと彼女のラップのみというフィールドレコーディングのような作品になっており、トライバルな要素がより強い作品となっています。

そして序盤の軸となっているのが先行シングルにもなっている「Beep」。彼女らしいトライバルな強いビートとハイテンポなラップが繰り出される強烈なリズムのナンバーが強いインパクトに。ただ、その2曲先、こちらも先行シングルとなっている「The One」は今時なトラップ的なサウンドを取り入れた曲になっており、ちょっと意外性も。もっともアルバムの中のひとつのピースとしてはしっかりとはまっている1曲にはなっています。

さらにここから先は同じような強烈なリズムのトライバルなエレクトロビートとラップを組みわせた彼女らしい作品が続きます。このアルバムに収録されているもう1枚の先行シングル「Popular」などはまさにそんなタイプのナンバーで、リズミカルでトライバルなエレクトロビートが印象的なナンバー。その後も終盤まで似たようなエレクトロビートが強烈なナンバーが続いていきます。

しかしラスト「Marigold」では雰囲気が一転。厳かな雰囲気もある合唱も加わったサウンドにメランコリックに歌い上げる楽曲に。強烈なビートが印象に残ったアルバムでしたが、最後の最後は彼女の歌が印象に残る楽曲で締めくくられていました。

そんな訳で、今回の作品もM.I.A.らしい強烈なトライバルビートが強く印象に残るインパクトの強い作品に・・・ある意味、インパクトの塊とも言うべきアルバムになっていました。正直なところ、全体的には目新しさもなく、少々強烈なビート一本やりな部分もなきにしもあらずな感も否めなかったのですが、ただ、そんな点を差し引いても最後まで耳の離せない、強烈なインパクトを与える傑作になっていたと思います。しかし本作は非常に残念なことに全くというほどヒットせず、全英チャートもビルボードも圏外だったとか・・・。売上面ではかなり残念な結果ではありましたが、しかしアルバムとして素晴らしいのは間違いないわけで、いままでのM.I.A.が気に入っていたのならば要チェックの1枚です。

評価:★★★★★

M.I.A. 過去の作品
KALA
MAYA
MATANGI
AIM

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2022年11月26日 (土)

なんと今年2枚目!

Title:Return of the Dream Canteen
Musician:Red Hot Chili Peppers

前作「Unlimited Love」リリース時からアナウンスはされてきましたが、前作からわずか半年。なんと今年2枚目となるレッチリのニューアルバムがリリースされました。既に大ベテランの彼らが、これだけ積極的にアルバムをリリースしてくる時点で驚きなのですが、今年は意外なことにバンド初となるスタジアムツアーを決行。さらに来年には単独公演としては約16年ぶりとなる日本公演も予定されており、その勢いはまだまだ止まりません。

そんな今年2作目となるニューアルバムは、前作に引き続き全17曲1時間15分というボリューミーな内容。さらに前作に引き続きリック・ルービンをプロデューサーとして利用。いかにもレッチリらしいアルバムに仕上がっています。さらに前作は比較的メランコリックな作風を前に押し出した作品になり、彼ららしいファンキーなサウンドがちょっと後ろに下がってしまった、という印象も受けるのですが、今回のアルバムは前作に比べて、グッと、レッチリらしいファンキーなサウンドが前に出てきたアルバムに仕上がっています。

アルバムの冒頭を飾る「Tippa My Tongue」からいきなり彼ららしいファンキーなリズムをグイっと前に押し出した作品になっていますし、「Reach Out」でもヘヴィーでファンキーなサウンドを聴かせてくれています。さらに「Fake as Fu@k」もミディアムテンポからスタートしつつ、サビでグッとファンキーなサウンドにテンポが変わる構成がなかなかユニーク。その後も「Afterlife」「Shoot Me a Smile」などファンキーなリズムで聴かせる作品も目立ちまし、「The Drummer」のような疾走感あるサウンドを聴かせつつ聴かせる反面、比較的ポップなメロディーラインの楽しめる曲などもあります。

ただ一方、今回のアルバムも前作同様、メランコリックに聴かせる抑え気味な作風の曲も目立ち、「Shoot Me a Smile」などもファンキーなリズムながらもメロはメランコリックですし、「Handful」のような力強いベースラインを聴かせつつ、哀愁感あるメロでしっかり聴かせるようなナンバーや終盤には「Carry Me Home」みたいな郷愁感たっぷりに聴かせる曲も並んでいたりします。

また今回のアルバムでひとつの目玉なのが、先行シングルにもなっていた「Eddie」で、こちらは2020年に亡くなったエディ・ヴァン・ヘーレンに捧げた曲。彼らのエディーに対する思いを感じるのようにメロディアスながらも非常に泣かせるようなメロディーラインが特徴的な楽曲に仕上がっており、アルバムの中のひとつの核となっています。

そんな感じで前作に比べるとレッチリらしいファンキーなリズムを前に押し出した楽曲がグッと増えた印象を受けるのですが、ただ前作同様、メランコリックなメロを前に出して、全体的に抑制気味な「大人なレッチリ」も感じさせるアルバムになっていました。ファンキーなリズムの楽曲を交えつつ、バラエティー富んだ作品だっただけに、前作ほどはダレることはなかったのですが、それでも全17曲1時間15分はちょっと長かったような感じも・・・。個人的にはやはり、あと3曲くらい絞ってくれた方がよかったようにも思います。

ただ、一方では前作同様、しっかりレッチリとしての実力は間違いなく感じさせるアルバムになっており、活動開始から40年近くが経過していながらこの現役感はさすが。まだまだこれからも脂ののった活動が続きそうな予感もさせてくれる、そんな1枚でした。

評価:★★★★★

Red Hot Chili Peppers 過去の作品
I'm With You
2012-13 LIVE EP
The Getaway
Unlimited Love

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2022年11月25日 (金)

5作連続で1位獲得!

Title:Being Funny in a Foreign Language(邦題 外国語での言葉遊び)
Musician:The 1975

セルフタイトルだった2013年のデビュー作でのいきなりの1位獲得以降、リリースするアルバムがすべて全英チャートで1位を獲得。本作では5作連続1位という記録を成し遂げたロックバンドThe 1975。人気は本国イギリスに留まらず、全米ビルボードチャートでも本作を含めて4作連続のベスト10入りを獲得。さらに昨年のサマソニでヘッドライナーとなるなど、ここ日本でも高い人気を誇っています。

その高い人気と比例するようにアルバムの内容自体も非常に高い評価を受けています。アルバムはいずれも各種メディアの年間ベストに名前を連ね、個人的にも前作「Notes on a Conditional Form」は当サイトの2020年の洋楽年間ベストアルバムの1位としました。それだけに高い注目を集める約2年5ヶ月ぶりのニューアルバムですが、見事、その期待にしっかりと応える傑作アルバムに仕上げてきました。

前作「Notes on a Conditional Form」は実にバラエティー豊富な作風だったのが大きな特徴でした。以前からの彼らの作風だった80年代のニューウェーヴ風な作品も含まれていましたが、ノイジーなギターを前面に押し出したパンクロックやエレクトロ、アコギを用いてフォーキーに仕上げた作品もあり、全編通してThe 1975というバンドの様々な側面が楽しめるアルバムとなっていました。

それに対して今回のアルバムは全編通じて統一感ある曲調の作品となっています。特にアルバム前半にはThe 1975らしい80年代ポップスからの影響が顕著な軽快な楽曲が並びます。「Happiness」などはまさにいかにも80年代的なナンバーで、アルバムに流れるサックスの音色は、懐かしさを感じさせるかつてのAORそのまま。続く疾走感あるポップチューン「Looking For Somebody(To Love)」もまさに80年代ポップスそのままの軽快なポップチューンで、特にドラムのリズムなども往年のサウンドそのまま。目を閉じれば、80年代らしいMTVのミュージックビデオがそのまま流れてきそうな錯覚にすら陥ります。

その後も先行シングルともなった「Part Of The Band」もストリングスやアコギを入れてアコースティックテイストを強く出しつつメランコリックに聴かせるメロが魅力的なナンバー。軽快なポップチューン「I'm In Love With You」もリズミカルなサウンドを含めて、ちょっと80年代っぽさを感じさせつつ、一方で今風のボーイズグループっぽい曲調を感じさせる作品に仕上がっています。

ただ、80年代風ポップで統一感のあった前半と比べると後半に関しては楽曲のバリエーションが増し、The 1975の多彩な魅力を聴かせる展開になっています。

まず「All I Need To Hear」はピアノをバックにしんみり聴かせるバラードナンバー。ノイジーなギターもほどよく加えて、イメージとしては70年代の空気も覚えるような懐かしさも。なによりもメロディーラインの良さが魅力的なナンバーに仕上がっています。さらに印象的なのは「Human Too」でエレピで静かに聴かせつつ、ファルセットも取り入れたボーカルを美しく聴かせる楽曲。まさに美メロと言えるメロディーラインはメロディーメイカーとしての本領発揮といったところでしょうか。さらに「About You」はホワイトノイズをバックに美しいメロディーを聴かせる作品で、シューゲイザー系からの影響を顕著に感じる作品になっており、個人的にもアルバムの中で一番のお気に入りのナンバーです。

アルバムとしての統一感を保ちつつ、一方で後半にはThe 1975としての様々な側面もしっかりと聴かせる作品。ポップなメロディーラインも心地よい作品でしたし、The 1975の実力を存分に発揮した傑作アルバムに仕上がっていました。今回のアルバムも文句なしに年間ベストクラスの傑作アルバムに仕上がっていました。ある意味、デビュー作以来、これほどの傑作を立て続けにリリースするあたり、彼らの実力のすごさに感服してしまうのですが・・・まだまだThe 1975の勢いは続きそうです。

評価:★★★★★

The 1975 過去の作品
The 1975
I like it when you sleep, for you are so beautiful yet so unaware of it(君が寝てる姿が好きなんだ。なぜなら君はとても美しいのにそれに全く気がついていないから。)
A Brief Inquiry Into Online Relationships(ネット上の人間関係についての簡単な調査)
Notes On A Conditional Form(仮定形に関する注釈)


ほかに聴いたアルバム

Blue Note Re:imagined Ⅱ

ジャズの名門レーベル、ブルーノートの作品を、イギリスの新進気鋭のジャズプレイヤーが大胆にアレンジし、カバーした企画アルバムの第2弾。大胆にリアレンジした曲も少なくない中で、全体的にはジャズというよりもR&B系にメロウに聴かせるポップチューンも多く、ジャズのアルバムというよりも、ジャズというジャンルにこだわらず、ポップのアルバムとして幅広いリスナー層にアピールするような作品に仕上がっています。原曲ファンからすると違和感あるアレンジもあるかもしれませんが、バラエティーある解釈が楽しめるアルバムに仕上がっていました。

評価:★★★★★

Blue Note Re:imagined

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2022年11月24日 (木)

2週連続で1位獲得

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週も韓国の男性アイドルが1位獲得。それも2週連続となりました。

今週1位は韓国の男性アイドルグループSEVENTEEN「DREAM」が2週連続で1位を獲得しています。CD販売数1位、ダウンロード数15位、PCによるCD読取数25位。オリコン週間アルバムランキングでもワンランクダウンながらも2位をキープしています。

一方、2位には三宅健「NEWWW」が2位初登場。元V6のメンバーによるソロデビューミニアルバム。CD販売数2位、PCによるCD読取数7位。ジャニーズ系アイドルグループに所属していたメンバーのソロ作というと、最近はジャニーズ脱退組のアルバムのランクインが目立ちますが、彼はちゃんとまだジャニーズ事務所所属となっています。オリコンでは初動売上4万9千枚で、こちらはアルバムランキングで1位となっています。

3位初登場はLiSA「LANDER」。CD販売数3位、ダウンロード数1位、PCによるCD読取数8位。ご存じ、「鬼滅の刃」のテーマ曲で注目を集めた女性シンガーによるオリジナルアルバム。本作でも「炎」「明け星」など「鬼滅」がらみの曲が多数ランクインしています。ただ、初動売上2万6千枚と前作「LADYBUG」の3万枚(1位)からダウン。以前はほぼアニソン専業だった彼女ですが、「鬼滅の刃」主題歌で知名度を上げた影響で最近はアニソン以外の曲もグッと増えました。そんな中、LiSAとしての人気をどれだけ確保できるのか、これからが勝負といった感じでしょう。

続いて4位以下の初登場盤ですが、まず7位にC&K「CK OILY」がランクイン。男性2人組ボーカルデゥオ。CD販売数6位、ダウンロード数9位、PCによるCD読取数44位。オリコンでは初動売上5千枚で7位初登場。前作「CK TOKEN」の初動6千枚(10位)よりアップ。

8位初登場はukka「青春小節」。スターダストプロモーション所属の女性アイドルグループによるメジャーデビューミニアルバム。CD販売数5位、その他は圏外となり、総合順位はこの位置に。オリコンでは初動売上7千枚で5位に初登場しています。

初登場最後は10位にYOASOBI「E-SIDE2」がランクイン。彼女たちの曲を英語詞でセルフカバーした配信限定のミニアルバム第2弾で、現在ヒット中の「祝福」や「大正浪漫」などの英語版が収録されています。ダウンロード数で2位にランクインし、総合順位もベスト10入りを果たしました。

一方、ロングヒット盤ではまずAdo「ウタの歌 ONE PIECE FILM RED」が今週7位から5位に再びアップ。特にダウンロード数が5位から4位へとアップしています。これで15週連続のベスト10ヒットに。また、Snow Man「Snow Labo.S2」は先週から変わらず9位をキープ。こちらもこれで9週連続のベスト10ヒットとなりました。

今週のHot Albumsは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2022年11月23日 (水)

今週もヒゲダンと米津のデッドヒート

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

相変わらずヒゲダンと米津玄師の強さが目立ちます。

Subtilte

今週Official髭男dism「Subtitle」が先週の2位から1位に返り咲き。これで通算4週目の1位獲得となりました。一方、米津玄師「KICK BACK」は先週から順位変わらず3位という結果に。ただ今週もベスト3にヒゲダンと米津が同時にランクインする結果となっています。また各種チャートでは今週もダウンロード数はヒゲダン1位、米津3位、ストリーミング数もヒゲダン1位、米津2位という結果に。ただ先週まで米津がヒゲダンを上回っていたYou Tube再生回数はヒゲダンが2位をキープした一方、米津が3位にダウンしており、両者逆転しています。

その両者に割って入り、2位初登場となったのがジャニーズ系アイドルグループ、なにわ男子「ハッピーサプライズ」。サンスター「オーラツー」キャンペーンソング。CD販売数及びPCによるCD読取数1位、ラジオオンエア数10位、Twitterつぶやき数39位、You Tube再生回数11位。オリコン週間シングルランキングでは初動売上51万6千枚で1位初登場。前作「The Answer」の初動53万5千枚よりダウンしています。

続いて4位以下の初登場曲ですが、まず4位にOCTPATH「Like」がランクイン。オーディション番組「PRODUCE 101 JAPAN SEASON 2」に出演した元練習生による8人組男性アイドルグループ。CD販売数2位、ラジオオンエア数4位、PCによるCD読取数91位、Twitterつぶやき数33位。オリコンでは初動売上5万5千枚で2位初登場。前作「Perfect」の初動4万7千枚(2位)よりアップしています。

10位初登場はWACK所属の女性アイドルグループGANG PARADE「Priority」。CD販売数3位、Twitterつぶやき数94位。オリコンでは初動売上5万1千枚で3位初登場。前作「シグナル」の3万4千枚(4位)よりアップ。

続いてロングヒット曲ですが、まずAdo「新時代(ウタ from ONE PIECE FILM RED)」が先週からワンランクダウンの6位にランクイン。これでベスト10ヒットを連続24週に伸ばしています。一方、先週ベスト10返り咲きを果たした「私は最強(ウタ from ONE PIECE FILM RED)」は今週14位にダウン。ベスト10返り咲きは1週に留まりました。

なとり「Overdose」は6位から8位にダウン。これで9週連続のベスト10入り。You Tube再生回数は4位から6位、ダウンロード数は30位から36位と下落傾向を見せていますが、ストリーミング数で4週連続の3位を記録。まだまだ高い人気のほどを感じさせます。

Tani yuuki「W / X / Y」は先週の7位から再び9位にダウン。ただ、こちらもストリーミング数が5週連続の5位を記録しているほか、You Tube再生回数が8位から7位にアップ、ダウンロード数が24位から18位にアップ。通算32週目のベスト10ヒットとなりました。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

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2022年11月22日 (火)

まさか「メロン牧場」で・・・。

今回は最近読んだ音楽関連の書籍の紹介です。

電気グルーヴが長年、音楽誌「ROCKIN'ON JAPAN」誌で掲載している連載を1冊にまとめた「電気グルーヴのメロン牧場-花嫁は死神7」。タイトル通り、これが7冊目となります。

電気グルーヴといえば2019年3月にピエール瀧がコカイン所持で逮捕され、大きな衝撃が走りました。その逮捕を受け、電気グルーヴのCDが販売停止となり、ストリーミング等も配信停止となる事態となり、賛否両論が巻き起こりました。そんな中、あまり話題にはなかなかったものの、「表現の自由」の矜持を見せたのが出版界で、逮捕直前に発売された6巻目も販売休止にならず、また他の書籍類も一切、販売停止等の処置は取られませんでした。実際、この出版会の処置についてはメンバー、特に石野卓球も相当感謝しているようで、以前紹介したリットー・ミュージックの「電気グルーヴのSound & Recording 〜PRODUCTION INTERVIEWS 1992-2019」でも感謝の意を表していますし、本書でも「やっぱり今回電気グルーヴが復活するにあたって、いちばん力になったのが、リットーミュージックとロッキング・オン社(p93)」と「死の商人だから(p94)」と茶化しながらも、律儀に感謝しているあたりが、(リットーミュージックのムック本の感想でも書いたのですが)石野卓球の律儀な性格を感じてしまいます。

さて、そんな6冊目から約2年8ヶ月ぶりに発売された今回の7冊目ですが、今回の「メロン牧場」、まさか

「メロン牧場」を読んでいて、涙腺が緩むことになるとは思いませんでした!

「メロン牧場」を読んでいて、親孝行しなけりゃいけないな、と思うことになるとは思いませんでした!

・・・詳しくはネタバレになってしまうので、同書を読んでほしいのですが、ただ一言言えるのは、前回以上に非常に読み応えのある1冊になっているという点でした。

なんといっても今回の「メロン牧場」では大きなポイントとなるのが、ピエール瀧逮捕前後の回が収録されている点。さすがに逮捕直後の2019年4月号、5月号は休みとなっているのですが、6月号はまだ瀧が釈放される前で石野卓球1人でしゃべっています。ピエール瀧が逮捕された直後、ワイドショー近辺の「相方である石野卓球も謝罪すべき」という圧力に負けず、主にTwitterを中心に正常営業の悪ふざけのツイートを続け賛否両論を集めた彼(・・・というよりはファンからの圧倒的な賛同と、石野卓球を全く知らなかったような層からの反発、といった感じでしょうか)ですが、ここではそういう言動を取った理由についても(もちろんいつも通りに半分茶化した感じではありますが)しっかり語られています。

そこにはしっかりとした石野卓球なりの考えがあり、かつ、一本筋が通った確固たるスタンスを感じます。もちろん、その考え方についても賛否あるかもしれませんが、少なくとも、世間の空気と同調圧力という、理屈のない訳の分からない感情論で叩いていたワイドショー近辺とは勝負にならなかったな、ということを強く感じます。

また、立派に感じたのは、そんな石野卓球のスタンスをしっかりと引き継ぎつつ、ピエール瀧を逮捕前と全く変わらないスタンスで受け入れたロッキング・オン(というかインタビュアーの山崎洋一郎)のスタンスで、ピエール瀧復帰の第一声から「お務め、ごくろうさまでした!(p52)」といつも通りのジョークからスタートし、いつも通りの「メロン牧場」が展開していきます。最近ではすっかりアイドル誌になってしまってロックのかけらも感じられない「ROCKIN'ON JAPAN」には霹靂としていたのですが、ここのスタンスに関しては、ロック誌として最後に残されたような矜持も感じました。

そんなピエール瀧の逮捕にまつわる本人の裏話もあったり、今回の逮捕にあたっての電気グルーヴの事務所独立の話もあったり、以前の「メロン牧場」は電気グルーヴの日常にまつわる「ネタ」をグダグダと話している内容だったのですが(今回もそういうグダグダ話もありましたが)この7冊目に関しては、電気グルーヴや石野卓球近辺で大きな事件・出来事が相次ぎ、それだけに非常に読み応えのある内容でしたし、電気グルーヴのファンなら必読の1冊となっていました。

そんな訳で、いつもの「メロン牧場」に増して読み応えのあった1冊。帯の紹介に「今回の『メロン牧場』はいつもよりドラマティックで笑いながらもちょっと泣けます」という煽り文に全くの偽りがないところが驚くべきところ。心よりお勧めしたい1冊です!

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2022年11月21日 (月)

LEO今井と砂原良徳の才能が融合

Title:EP1 TSTST
Musician:TESTSET

Testset

高橋幸宏を中心として小山田圭吾、砂原良徳、TOWA TEI、ゴンドウトモヒコ、LEO今井という豪華なメンバーが一堂に会して結成されたバンドMETAFIVE。残念ながら例の小山田圭吾を巡る東京五輪の騒動に巻き込まれる形で話題になってしまい、今年に入ってようやく通常リリースできた2ndアルバム「METAATEM」は「ラストアルバム」とアナウンス。正式に解散等を公表されている訳ではありませんが、事実上の活動停止状態となってしまいました。

そんな小山田圭吾の騒動の最中に開催されたのが昨年8月に実施されたフジロック。METAFIVEはフジロックに出演したのですが、メンバーの中で砂原良徳とLEO今井のみが出演。ここにサポートとして相対性理論の永井聖一、GREAT3の白根賢一という4人でのパフォーマンスとなったのですが、このたび、この4人が新たにグループを結成。TESTSETと名付けて新たな音楽活動をスタートさせました。

ある意味、METAFIVEの派生グループとも言えるTESTSET。ただ、METAFIVEはあくまでも高橋幸宏のグループ、ということで完全に違う名前、別バンドとしてのスタートとなったようです。もっとも楽曲の方向性としてはMETAFIVEの延長線上にあるような作品で、ニューウェーヴからの影響を感じさせつつ、バンドサウンドとエレクトロサウンドを融合させたサウンド。METAFIVEが好きならTESTSETももちろん気に入るのではないでしょうか。

基本的に作詞はLEO今井が担当。作曲はLEO今井と砂原良徳の共作という形になっています。ここらへん、5人での共作だったMETAFIVEと比べると、LEO今井と砂原良徳の音楽性がより表に出たような作品に仕上がっています。特にLEO今井の影響は大きく、METAFIVEに比べると、かなりロック寄りにシフト。1曲目「Carrion」もエレクトロのリズムを刻みつつ、ギターサウンドを前面に押し出した作風でロッキンなカッコいい楽曲。「Where You Come From」もLEO今井のシャウト気味のボーカルにマッチさせたような迫力あるロックなナンバー。LEO今井のボーカルを前に持ってきたこともあって、全体的にはLEO今井のボーカルスタイルにマッチした作風が並びます。

もちろん一方の砂原良徳からの影響も顕著で、今回の作品の中では「Testealth」などは、より砂原良徳の色の濃い作品に仕上がっていましたし、全体的にテクノという側面がMETAFIVE以上に強く押し出された作品に。LEO今井の音楽性と砂原良徳の音楽性が上手い形で融合したサウンドをこの1枚目のEPから既に作り出しており、今後、リリースされるフルアルバムが待ちきれなくなるような傑作となっています。

今回、ラストには向井秀徳をゲストに迎えたKIMONOSのナンバー「No Modern Animal」のカバーも収録。KIMONOSのナンバーをTESTSET風にアレンジした楽曲もかなりカッコよく、原曲とはまた違った雰囲気の作品に。TESTSETの楽曲の中にも違和感なく溶け込んでいます。

ある意味、小山田騒動があったからこそ誕生したバンドで、TESTSETが結成されたことは怪我の功名とも言えなくはありません。もっとも、小山田騒動がなければ、METAFIVEとしての活動が問題なく続けられていた可能性も高いのですが・・・(高橋幸宏の健康問題もあるのでなんとも言えないのですが・・・)。ただ、バンドとしては1枚目からメンバーの相性の良さを強く感じさせますし、これからが非常に楽しみになってくるバンドです。来るべきデビューアルバムはとんでもない傑作に仕上がっているかも。わずか5曲入りのアルバムですが、TESTSETというバンドの可能性を強く感じさせる内容でした。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

Orbit/STUTS

フルアルバムとしての前作「Eutopia」がMusic Magazine誌の「日本のラップ/HIP HOP」部門の2018年年間1位を獲得し、さらにドラマ「大豆田とわ子と三人の元夫」の主題歌を担当するなど、ここ最近、一気に注目を増しているトラックメイカーによる3枚目のアルバム。メロウなR&B系のエレクトロトラックに、メランコリックな歌やHIP HOPが加わるスタイル。非常に完成度の高さを感じさせる内容になっていますが、「Eutopia」に比べると、無難にまとまっている感を強く覚えてしまったかも。

評価:★★★★

STUTS 過去の作品
Eutopia
Contrast
Presence(STUTS&松たか子 with 3exes)

Harvest/04 Limited Sazabys

コロナ禍での中止もありつつ、最近は、地元名古屋でロックフェス「YON FES」を開催するなど積極的な活動を見せるフォーリミの約4年ぶりとなるニューアルバム。ハイトーンなボーカルと分厚いサウンド、ハイテンポなリズムにキュートなポップという組み合わせが特徴的なメロパンクバンド。ここ数作、アルバム毎にメロのインパクトが増していた感もあったのですが、久々となった新作は、それなりにポップでインパクトのある曲もあったものの、全体的にはメロを聴かせるというよりも勢いで一気に最後まで展開していくような内容に。フォーリミらしさはしっかり出ているものの、前作までの流れから期待していたほどではなかったのはちょっと残念な感も。

評価:★★★★

04 Limited Sazabys 過去の作品
CAVU
eureka
SOIL

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2022年11月20日 (日)

マイペースな活動は続く

Title:Island CD
Musician:ホフディラン

ちょっと前の話になるのですが、テレビからいきなりホフディランの「スマイル」が流れてきて、ちょっとビックリしたことがあります。ご存じとは思いますが、女優森七菜がホフディランの1996年のデビュー曲「スマイル」をカバー。ホフディランもプロデューサーを手掛けたのですが、同作がスマッシュヒットを記録し、話題となりました。

そんなホフディランは2002年に一度活動休止となり2006年に活動を再開したのですが、そこからは比較的マイペースな活動を続けています。前作「帰ってきたホフディラン」も5年ぶりとなるアルバムだったのですが、その後もあまり彼らの活動を聞かなくなり、今回のアルバムも実に5年ぶりとなるニューアルバム。この10年でアルバムリリースが2枚のみというスローペースな活動となっています。

さて、ホフディランといえばメンバーのワタナベイビー、小宮山雄飛いずれも作詞作曲をてがけるユニットなのですが、比較的、楽曲のクオリティーが安定している雄飛に対して、ベイビーは曲の出来不出来が激しい、という特徴があります。そのため、いままでのアルバムに関しては、ベイビーの曲の出来が良ければ傑作、そうでなければ・・・というイメージがありました。

ただ、久しぶりとなった今回のアルバムはベイビーの曲は良くも悪くも安定してしまっているといった印象。「デジャデジャブーブー」も彼らしい明るいポップソングですし、特に「スレンダーGF」はワタナベイビーらしい、ユーモアなポップスながらも、どこか毒をはらんでいる雰囲気もある楽曲になっています。「ガンバレ小中学生」もタイトル通り、小中学生へのエールというユーモラスな観点の曲がベイビーらしいですし、かもめ児童合唱団とのコラボとなった「キミが生まれたから」は、子どもに対してささげた親としての視点が、ポップな曲調ながらもちょっとしんみりさせる作風もまた、ベイビーらしい暖かみを感じさせる曲となっています。

そんな感じで、全体的にはベイビーらしい曲が並んでおり、安定感がある反面、良くも悪くもぶっ飛んだような曲はなかったかな、という印象もあります。良くも悪くもベテランとなった今、安定感が増したといった感じでしょうか。もっとも卒ない作風とはいえ、ベイビーらしさは強く感じさせる曲が並んでいました。

一方、今回のアルバムに関して、残念ながら雄飛の作品に関しては、インパクト不足を感じます。ちょっとビートルズっぽさを感じる軽快なギターロック「生まれ続ける僕たち」や明るく軽快なギターポップチューン「風の誘いで」のように、それなりに卒なくこなしている感はあるのですが、無難にまとめているという印象が強く、勢いという観点では失速気味。全体的に物足りなさを感じてしまいました。

とはいえ、雄飛らしい魅力的なメロディーラインは随所に感じられ、特にバラードナンバー「花」などは、そんな彼のメロディーメイカーとしての実力が光る楽曲。小宮山雄飛らしい魅力はアルバムの中でしっかり感じることが出来ました。

正直、今回のアルバムに関しては、ベイビーも雄飛も勢い不足な感は否めず、傑作といった印象は受けませんでしたが、一方で、ベイビー曲も雄飛曲も、それぞれの魅力を卒なく伝えており、良くも悪くもベテランらしい安定感を覚える良作といった印象を受けます。マイペースな活動の中で久々のアルバムにしては・・・といった感も否めませんが、少なくともホフディランというミュージシャンの魅力はしっかりと伝わってくるアルバムではあったと思います。今のホフディランをしっかりと伝える1枚でした。

評価:★★★★

ホフディラン 過去の作品
ブランニューピース
13年の金曜日
14年の土曜日
15年の日曜日
2PLATOONS
帰ってきたホフディラン
帰ってきた多摩川レコード
帰ってきたWashington, C.D.
帰ってきたホフディランIII
帰ってきた31ST CENTURY ROCKS
帰ってきたPSYCHO POP KILLER BEE


ほかに聴いたアルバム

one-man tour 2021-2022-Editorial-@さいたまスーパーアリーナ/Official髭男dism

今を時めく人気バンドヒゲダンことOfficial髭男dismが昨年から今年にかけて行ったライブツアーより、さいたまスーパーアリーナでの公演を収録したライブアルバム。全2枚組22曲の収録曲にはおなじみのヒット曲も満載。2019年の「Pretender」の大ヒットから、急激に人気と知名度があがった彼らですが、パフォーマンスもその人気にしっかりとついてきているようで、ライブ音源を聴く限り、スーパーアリーナというキャパに全く負けていない力強くスケール感を覚える演奏を聴かせてくれています。ある種の人気バンドとしての余裕や貫禄すら感じられるライブパフォーマンスに。いい意味ですっかり「大物ミュージシャン」の仲間入りを果たしたことを感じさせるライブアルバムでした。

評価:★★★★

Official髭男dism 過去の作品
エスカパレード
Traveler
TSUTAYA RENTAL SELECTION 2015-2018
Official髭男dism one-man tour 2019@日本武道館
Traveler-Instrumentals-
HELLO EP
Editorial
ミックスナッツEP

魔法の手 Deluxe Edition/古内東子

彼女のデビュー30周年記念プロジェクトの第2弾。1998年にリリースされて、現時点で彼女の唯一のチャート1位獲得作のリマスタリング盤。彼女の脂ののった時期の作品ということもあって、彼女らしい切ない恋の歌を、ちょっとジャジーな雰囲気のアレンジに載せてメランコリックに歌い上げる、ある意味、古内東子の王道ともいえる作品。個人的には彼女のベスト作・・・といった感じではないと思うのですが、古内東子の魅力がつまった作品で、彼女の最初に聴くアルバムとしても最適な1枚かも。

評価:★★★★★

古内東子 過去の作品
IN LOVE AGAIN
The Singles Sony Music Years 1993~2002
Purple

透明
夢の続き
and then...~20th anniversary BEST~
Toko Furuuchi with 10 legends
After The Rain
誰より好きなのに~25th anniversary BEST~
体温、鼓動

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2022年11月19日 (土)

キュートでドリーミーなギターポップが壺をつく

Title:Blue Rev
Musician:Alvvays

バンド名の綴り的にはかなり奇妙な感じがするかもしれませんが、これでオールウェイズと読むカナダを拠点とする5人組インディーポップバンド。同作は約5年ぶりのアルバムとなるのですが、前作「Antisocialites」はカナダのグラミー賞に相当するジュノー賞を受賞し、一躍注目を集めるバンドに。さらに2019年にはフジロックへも出演するなど、日本でも注目を集めていました。

ただ、私が彼女たちを聴くのは本作がはじめて。彼女たちの音楽はシューゲイザーの影響を強く受けたバンド。さらに影響を受けたバンドとしてTEENAGE FANCLUBの名前をあげているそうで、個人的にTEENAGE FANCLUBの影響下にあるバンドって、すごく壺なバンドであることが多く・・・実際、今回はじめて聴いたこのアルバム、個人的に壺にはまりまくりなアルバムでした。

アルバムの前半は特にシューゲイザーからの影響が顕著。1曲目「Pharmcist」はギターのホワイトノイズに包まれつつ、疾走感あるギターロックにポップなメロディーラインという、シューゲイザーからの影響を強く感じさせる楽曲。さらに耳を惹くのが3曲目「After The Earthquake」でメロディアスでキュートさを感じさせるギターサウンドは、明確にTEENAGE FANCLUBからの影響を感じさせます。軽快でポップなメロディーラインとほどよくノイジーなバンドサウンドが耳を惹くポップソングに仕上がっています。

特にボーカルのモリー・ランキンのキュートなボーカルを生かしたポップソングも多く、「Many Mirrors」などもノイジーなギターサウンドに彼女のボーカルが映えるキュートなドリームポップに。アルバムの前半はギターのホワイトノイズを効果的に聴かせつつ、キュートなポップソングにまとめあげたギターポップ路線の曲が並ぶ作品になっています。

しかし、アルバムの中盤でガラリと作風が変わります。後半のスタートとなる「Very Online Guy」はシンセのサウンドを軸としつつ、メランコリックなメロを聴かせるシンセポップに。続く「Velveteen」も打ち込みのリズムなエレクトロなサウンドが目立つ、80年代的な懐かしさも感じさせるシンセポップになっています。

さらに後半になると、疾走感あるギターサウンドでパンキッシュな要素も感じる「Pomeranian Spinster」、また再びシューゲイザーの影響を強く感じるドリーミーな「Belinda Says」と再びギターサウンドでドリーミーに聴かせるポップチューンが続きます。終盤、分厚いギターサウンドをバックにメランコリックに聴かせる「Lottery Noises」などと続き、アルバムは幕を下ろします。

アルバム全体としてノイジーなギターサウンドとポップなメロディーライン、さらにキュートなボーカルを聴かせるドリーミーなポップソングがとても心地よく、まさに個人的に壺をつきまくる傑作アルバムに仕上がっていました。もちろん、個人的な好みだけの話ではなく、ポップなメロディーラインとドリーミーなサウンドがバランスよく絶妙に組み合わさった非常に良くできたアルバムであることは間違いなく、メロディーラインのインパクトも十分。文句ないに年間ベスト盤候補になりうる傑作アルバムだったと思います。ちょっと懐かしい要素も感じさせつつ、聴いていて素直に気持ちよくなる作品でした。

評価:★★★★★

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2022年11月18日 (金)

ポップス職人健在

Title:SOFTLY
Musician:山下達郎

オリジナルアルバムとしては2011年の「Ray Of Hope」以来、実に11年ぶりとなる作品。もともと音楽に対してこだわりをもって臨み、比較的、寡作なミュージシャンであっただけに11年ぶりというのも驚きではないものの、オリジナルアルバムのスパンとしては過去最高の長さになってしまったようです。とはいえ、11年の間にはシングルのリリースや過去作のリイシュー盤のリリース、「COME ALONG」シリーズの第3弾や「ドー・ワップ・ナゲッツ」シリーズの監修・選曲、そして何よりもベストアルバムのリリースなどがあった上にライブ活動もコンスタントに行っていただけに、オリジナルアルバムのリリースが11年ぶりという事実は逆に意外にすら感じてしまいました。

そんな11年というスパンを置いたニューアルバムなだけに、今回も文句なしに珠玉のポップスがつまった傑作に仕上がっていました。まず今回のアルバム、前半は非常に未来に対する希望を感じさせる曲が並びます。山下達郎の本領発揮ともいえるアカペラ曲「フェニックス」はまさに未来への希望を歌った曲。続く「LOVE'S ON FIRE」は四つ打ちのエレクトロチューンで、2曲目にいきなりのエレクトロチューンで驚かされますが、3曲目の「ミライのテーマ」はピアノを主軸に軽快で爽やかに聴かせる、実に山下達郎らしいポップチューン。タイトル通り、この曲も未来への希望をテーマとした曲に仕上がっています。

さらに中盤「CHEER UP!THE SUMMER」もまさにタイトル通りの夏への讃歌。テンポよいリズムも心地よい軽快なナンバーが聴いていてウキウキしてくるようなポップチューンとなっています。さらに「うたのきしゃ」も歌の楽しさを歌った音楽への讃歌。こちらも非常に前向きなナンバーとなっており、今回のアルバム、前半は未来への希望を感じさせる明るいポップチューンが並びます。

ただ、そんな前半の明るい雰囲気をガラッと変えるのが10曲目に配置された「OPPESSION BLUES(弾圧のブルース)」でしょう。世界各地で止まない戦争に心を痛めて山下達郎がつくった楽曲で、You Tubeでリリックビデオも公開。日本語字幕に加えて、英語、フランス語、イタリア語、スペイン語やポルトガル語の字幕版も公開されており、彼の強いメッセージを感じさせる本作。タイトル通りのブルージーで哀しげなギターをバックに切々と歌われる歌詞が強く心に響きます。本作は特に前半、未来を感じる明るい曲が並ぶだけに、本作がズシリと重くのしかかりました。

終盤の「光と君へのレクイエム」も山下達郎らしい爽やかな曲調のポップスなのですが、恋人との別れを歌った(「レクイエム」というタイトルからすると、死別でしょうか?)哀しい歌詞が、明るい曲調と対比的なゆえに心に響きます。さらにラストの「REBORN」も「死」をテーマとしたナンバー。こちらもしんみり聴かせるバラードチューンでメランコリックなメロディーラインが胸に響きます。ラストにこのような前半の曲と対比的な曲を配置してくるあたりに、単純な前向きポップスでは終わらせない彼の主張も感じさせます。ただ、この2曲も、別れをテーマとしつつも「ずっとずっと忘れない/ふたりのあの愛を」(「光と君へのレクイエム」)「めぐり会う時まで/少しだけのさよなら/たくさんのありがとう/少しだけのさよなら」(「REBORN」)と別れは決して「哀しさ」だけではないことのメッセージ性を感じさせ、聴いた後にどこか爽やかで、前向きな気持ちにさせてくれる構成になっていました。

全体的には楽曲自体はいつもの山下達郎といった感じの爽やかな珠玉のポップソングが並んでいます。正直、目新しさはないのですが、これほど完成度の高いポップソングならば、もう文句のつけようのない傑作と言えるのではないでしょうか。なによりも前向きで明るく、でもちょっと切なさも感じさせる歌詞の世界も魅力的。11年ぶりというスパンも全く不満に感じない最高のポップスアルバムに仕上がっています。

評価:★★★★★

山下達郎 過去の作品
Ray of Hope
OPUS~ALL TIME BEST 1975-2012~
MELODIES(30th Anniversary Edition)
SEASON'S GREETINGS(20th Anniversary Edition)

Big Wave (30th Anniversary Edition)
COME ALONG 3
POCKET MUSIC (2020 Remaster)
僕の中の少年 (2020 Remaster)
ARTISAN 30th Anniversary Edition


ほかに聴いたアルバム

A revolution/LOVE PSYCHEDELICO

途中、オールタイムベストのリリースなどを挟みつつ、純粋なオリジナルアルバムとしては約5年ぶりとなるニューアルバム。この5年の間、KUMIの再婚という大きな転機を迎えた彼女たちですが、ただLOVE PSYCHEDELICOとしてのスタイルは全く変わらず。ギターリフ主導のオールドスタイルのロックを彷彿とさせる作風というのは今回も変わらず。ただ、カラッとした雰囲気が特徴的だった前作に比べると、よりメランコリックさが増した作風となった感も。全体的にはいかにもなデリコサウンドといった感じで、良くも悪くも安心して楽しめる作品でした。

評価:★★★★

LOVE PSYCHEDELICO 過去の作品
This Is LOVE PSYCHEDELICO~U.S.Best
ABBOT KINNEY
IN THIS BEAUTIFUL WORLD
LOVE PSYCHEDELICO THE BEST I
LOVE PSYCHEDELICO THE BEST Ⅱ

15th ANNIVERSARY TOUR-THE BEST-LIVE
LOVE YOUR LOVE
LOVE PSYCHEDELICO Live Tour 2017 LOVE YOUR LOVE at THE NAKANO SUNPLAZA
"TWO OF US"Acoutsic Session Recording at VICTOR STUDIO 302
Complete Singles 2000-2019
20th Anniversary Tour 2021 Live at LINE CUBE SHIBUYA

ReLOVE&RePEACE/高橋優

前作「PERSONALITY」は正直、彼としては少々歌詞のインパクト面が不足していた感がありましたが、その反動か、今回は現在の状況を皮肉的に描く「あいのうた」や社会派な「STAND BY ME!!!」など、良くも悪くも彼らしい、インパクト満載の歌詞で、暑苦しいほどの楽曲を聴かせてくれます。聴いていて「ハイハイ、もうイイから!」と言いたくなるような暑苦しさなのですが(笑)、まあ、これが彼の特徴であり、ファンにとっては彼の良さなんでしょうが・・・。個人的にはもうちょっと押し一辺倒じゃない方が、というのは以前から何度も書いてきている話なのですが、もう彼や彼のファンにとってはこの「押し」こそが大きな魅力なんでしょうね。

評価:★★★★

高橋優 過去の作品
リアルタイム・シンガーソングライター
この声
僕らの平成ロックンロール(2)
BREAK MY SILENCE
今、そこにある明滅と群生
高橋優 BEST 2009-2015 『笑う約束』
来し方行く末
STARTING OVER
PERSONALITY

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2022年11月17日 (木)

K-POP勢が上位に

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

先週まで2週連続、韓国の男性アイドルグループが1位を獲得しましたが、今週も1位2位は韓国の男性アイドル勢が占めました。

まず1位初登場は韓国の男性アイドルグループSEVENTEEN「DREAM」が獲得。4曲入りのEP盤。CD販売数1位、ダウンロード数2位、PCによるCD読取数7位。オリコン週間アルバムランキングでも初動売上49万7千枚で1位初登場。直近作はリパッケージアルバム「SECTOR17」で同作の初動21万5千枚(1位)よりアップしています。

2位にはジェジュン「Fallinbow」が初登場。元東方神起のメンバーで、現在はJYJとして活動している彼の日本では2枚目となるオリジナルアルバム。CD販売数2位、ダウンロード数4位、PCによるCD読取数19位。オリコンでは初動売上2万8千枚で2位初登場。直近作が「映画『J-JUN ON THE ROAD』オリジナル・サウンドトラック」で同作の1万1千枚(6位)よりアップ。オリジナルアルバムとしての前作「Flawless Love」の4万2千枚(1位)からはダウンしています。

3位にはRADWIMPS/陣内一真「すずめの戸締まり」がランクイン。新海誠監督によるアニメ映画「すずめの戸締まり」のサントラ盤。新海誠監督の映画といえば「君の名は。」「天気の子」でいずれもRADWIMPSの作品が使われていましたが、今回もRADWIMPSが音楽を担当。今回は加えて、作曲家の陣内一真も参加しています。CD販売数6位、ダウンロード数3位、PCによるCD読取数20位。オリコンでは初動売上8千枚で7位初登場。RADWIMPSの直近作は同じくサントラ盤の「余命10年~Original Soundtrack~」で、同作の1千枚(30位)からは大きくアップ。ただ、同じ新海誠監督映画のサントラの前作「天気の子 complete version」の初動3万5千枚(2位)からは大きくダウンしています。

続いて4位以下の初登場盤です。まず5位に祖堅正慶「Sanctuary's Heart: FINAL FANTASY XIV Chill Arrangement Album」がランクイン。「ファイナルファンタジーXIV」の楽曲にチルアウト的なアレンジを施したアルバム。配信限定アルバムで、ダウンロード数で1位を獲得し、総合チャートでもベスト10入りです。

10位には女性アイドルグループTask have Fun「Violet tears」がランクイン。CD販売数7位で、その他のチャートはランク圏外。オリコンでは初動売上9位で4位に初登場しています。

また今週はベスト10圏外からの返り咲きアルバムも。King&Prince「Made in」が先週の19位からランクアップし、6位にランクイン。7月20日付チャート以来、17週ぶりのベスト10返り咲きとなっています。Hot100でも書きましたが、メンバーの平野紫耀・岸優太・神宮寺勇太の3人が脱退を発表しましたが、おそらくその影響でしょう。オリコンでも今週8千枚を売り上げて、5位にランクインしています。

ロングヒット盤ではAdo「ウタの歌 ONE PIECE FILM RED」が4位から7位にダウン。先週1位に返り咲いたダウンロード数は今週5位までダウンしてしまいました。ただ、これで14週連続のベスト10ヒットとなります。

またジャニーズ系アイドルグループSnow Man「Snow Labo.S2」が今週9位にランクイン。これで8週連続ベスト10ヒットで、ロングヒットの仲間入りをしています。

今週のHot Albumsは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2022年11月16日 (水)

メンバー脱退で話題のグループ

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

メンバーの脱退表明で話題となったグループが1位獲得です。

今週1位はジャニーズ系アイドルグループ、King&Prince「ツキヨミ」が獲得です。TBS系ドラマ「クロサギ」主題歌。CD販売数及びPCによるCD読取数1位、ラジオオンエア数17位、Twitterつぶやき数2位、You Tube再生回数3位。オリコン週間シングルランキングでは初動売上79万1千枚で1位獲得。前作「TraceTrace」の50万1千枚より大きくアップしています。

King&Princeといえば、来年5月をもって、メンバーのうち平野紫耀・岸優太・神宮寺勇太が脱退及びジャニーズ事務所からの退社を表明し、大きな話題となっています。ジャニーズ退社といえば、社長滝沢秀明の退任及び退社も大きな話題となり、以前よりジャニーズ事務所を退社するメンバーが増えているような印象を受けます。ジャニーズ事務所退社組が地上波テレビで冷遇されている異常事態は変わりませんが、ただ、今はテレビ以外でもタレントが活躍する場所が増えてきただけに、ジャニーズ事務所をやめやすくなったのかもしれません。

そして2位3位は今週もデッドヒートが続いています。今週は2位にOfficial髭男dism「Subtitle」、3位に米津玄師「KICK BACK」がランクインという結果になっています。今週もストリーミング数はヒゲダン1位、米津2位、You Tube再生回数は米津1位、ヒゲダン2位という結果に。一方、ダウンロード数はヒゲダンが今週も1位をキープした一方、米津は3位にダウンしています。またヒゲダンは「ミックスナッツ」が今週10位から8位にアップ。ベスト10入りを通算28週に伸ばしています。

続いて4位以下の初登場曲ですが、今週の初登場曲は1曲のみ。10位にMrs.GREEN APPLE「Soranji」がCDリリースにあわせて先週の55位からランクアップし、ベスト10入りしています。CD販売数7位、ダウンロード数14位、ストリーミング数29位、ラジオオンエア数42位、PCによるCD読取数15位、Twitterつぶやき数14位、You Tube再生回数47位。映画「ラーゲリより愛を込めて」主題歌。オリコンでは初動売上1万5千枚で6位初登場。前作「ロマンチシズム」の1万枚(9位)よりアップしています。

さらに今週、初登場ではありませんが、YOASOBI「祝福」のCDリリースに合わせて、7位から4位にアップ。CD販売数は4位にランクインしています。オリコンでは初動売上2万3千枚で3位初登場。CDリリースは昨年の「怪物」以来で、同作の初動売上からはほぼ横ばい(2位)となっています。ちなみに「怪物」に続き今回も生産限定盤で、テレビアニメ「機動戦士ガンダム 水星の魔女」のオープニングテーマであるこの曲には、なんとオリジナルガンプラがついてくるそうです。

またロングヒット曲では、まずAdo「新時代(ウタ from ONE PIECE FILM RED)」が先週と変わらず5位にランクイン。これでベスト10ヒットを連続23週に伸ばしています。さらに今週、先週11位にダウンした「私は最強(ウタ from ONE PIECE FILM RED)」が9位にランクアップし、2週ぶりにベスト10返り咲き。これで通算12週目のベスト10ヒットに。また2週ぶりにAdoの曲が2曲ランクインしたチャートとなりました。

さらにTani Yuuki「W / X / Y」が今週9位から7位にアップ。こちらは通算31週目のベスト10ヒットを記録しています。

そして今週、なとり「Overdose」が6位にランクイン。8週目のベスト10ヒットを記録し、ロングヒットの仲間入りをしています。TikTokで音楽活動を開始した19歳のシンガーソングライターによる配信デビュー作。TikTokで話題を集め、ヒットとなりました。ネット発というと、ボカロ系近辺のミュージシャンのヒットが目立ちましたが、本作はひらがなの名前はボカロPっぽいのですが、ボカロ系とは違ったルートでのネット発ヒットとなります。今後のさらなるロングヒットに期待できそうです。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

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2022年11月15日 (火)

女王、降臨

Title:ユーミン万歳! ~松任谷由実50周年記念ベストアルバム~
Musician:松任谷由実

かなり大胆不敵なタイトルがすごいなぁ、と思うのと同時に、実にユーミンらしいなぁ・・・とも思うのですが、今年、デビュー50周年を迎えたユーミンこと松任谷由実のオールタイムベストアルバム。このド派手なジャケット写真も含めて、いかにもユーミンといった感じで、今回のレビュー記事のタイトル、同作が1位を獲得した時のチャート評の時にも使わせていただいたのですが、あらためて「女王」というイメージにふさわしい貫禄の持ち主のように強く感じます。

ただユーミンのベストアルバムというと、「日本の恋と、ユーミンと。」というベストアルバムをかなり大々的にリリースしたことを覚えています。それからもうベストアルバムがリリースされるのか…と思ってしまうのですが、同作のリリースが2012年と、もう10年前という事実を今回認識し、時の移り変わりの早さに驚いています!自分も歳を取ったな・・・。とはいえ、この10年でリリースされたユーミンのアルバムはわずか3枚。正直、シングル曲としてこれといったヒット曲もリリースしていない(この10年でシングルでベスト10入りした曲はありません)ので、ベスト盤をリリースする間隔としてはちょっと短すぎる印象も。実際、今回のベスト盤で、この10年の曲は「宇宙図書館」わずか1曲だけであり、かなりの割合、前のベストアルバム「日本の恋と~」と重なってしまっています。

しかし今回のベストアルバムで大きな目玉となるのが2つありました。ひとつは新曲として収録している「Call me back」。この曲は、彼女の荒井由実時代のボーカルを最新のAIで再現し、そのボーカルと現在の松任谷由実がデゥエットするという非常に意欲的な作品。デビューから50年を経た大ベテランの彼女が、AIという最新技術を積極的に用いてくるあたり、まだまだ現役として衰えていない彼女の挑戦心を感じさせます。もっとも、その試みが成功しているかと言われると、荒井由実と松任谷由実のボーカルがほとんど変わらず、あまり両者の違いがはっきり出ていないのが残念なところなのですが・・・。もっとも、今回のデゥオ、むしろこの「違いがない」点をユーミン自体、見せつけたかった可能性も高いだけに、狙い通りという可能性もあります。

そして最大の目玉と思わるのが今回、エンジニアのGOH HOTODAにより、オリジナルよりリミックス&リマスタリングが行われているという点。最新ベスト盤がリミックスやリマスタリングが行われているというケースは少なくありませんが、今回のベスト盤に関しては、オリジナルに比べてあきらかに音質が変化しています。冒頭の「真夏の夜の夢」はイントロのベースラインが印象的なのですが、こちらがオリジナルに比べてもかなりクリアに流れてきて思わず感激するほど。「ひこうき雲」についてもピアノが明らかにクリアに聴こえてきます。全体的に重低音をよりはっきりと際立たせた、今風なアレンジが多い、全体的なサウンドもはっきりと聴こえるようなアレンジに仕上がっています。これだけはっきりと違いのわかるリミックス&リマスタリングは珍しいかも。少なくともこの点だけにおいても今回のベスト盤は聴く価値のある内容になっていると思いました。

前のベストアルバムからほとんど変化のない収録曲で、正直、どうかな、と思っていた今回のベストアルバムでしたが、この音の違いによって、あらたなユーミンの世界が楽しめたベストアルバムになっていました。もちろん収録曲については、何度も聴いたことある耳なじみのある名曲ぞろいで、全3枚組51曲入りというボリューミーな内容ながらも、最後までほとんどダレることなく一気に聴き切ることのできた作品になっていました。ユーミンの入門盤としてももちろん、いままでの彼女の作品を聴きなれた方でも楽しめるベスト盤だと思います。あらためて女王としての格の違いを感じたベスト盤でした。

評価:★★★★★

松任谷由実 過去の作品
そしてもう一度夢見るだろう
Road Show
日本の恋と、ユーミンと。
POP CLASSICO
宇宙図書館
ユーミンからの、恋のうた。
深海の街


ほかに聴いたアルバム

IT'S GONNA WORK OUT 〜LIVE 82-84〜/高橋幸宏

今年、音楽活動50周年を迎えた高橋幸宏の1980年代前半のライフワークにスポットをあてる「ユキヒロ×幸宏 EARLY 80s」企画の最終弾。3CD+1Blu-rayのボックスセットで、Disc1,2は「WHAT, ME WORRY?」のリリースに合わせ行われた初の全国ソロツアー“YUKIHIRO TAKAHASHI 1982 WHAT, ME WORRY?" の1982年7月26日新宿厚生年金会館のライヴ音源を収録した内容。Disc3は1983年のライブアルバム「tIME and pLACE」のデジタルリマスター版、さらにBlu-rayは1982年のLIVE映像作品「BOYS WILL BE BOYS」と、1983年の映像作品「新青年」からセレクトしたLIVE映像のHDリマスター版を収録した内容となっています。

まさに80年代の彼の作品を存分に味わえるライブボックス。サウンド的には今聴くと、いかにも80年代的な部分が多く、ニューウェーヴからの影響の強さを感じさせる一方、いかにも高橋幸宏っぽいサウンドやメロディーラインはこの時期に確立されたんだ、ということを実感できるような内容となっており、最近、彼が関与したMETAFIVEのサウンドにもつながってくるようなものも感じます。いかにも80年代といっても、今の耳で聴いても十分楽しめるポップとなっており、ボリュームたっぷりの音源でしたが、ダレることなく楽しめる作品でした。

評価:★★★★★

高橋幸宏 過去の作品
Page by Page
GOLDEN☆BEST
LIFE ANEW
Saravah Saravah!
GRAN ESPOIR

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2022年11月14日 (月)

老害たちのロックンロール

今回も最近読んだ本の紹介です。

今回は、レコード・コレクターズ誌が創刊40周年を記念して発刊した「ロック・アルバム200」。40周年記念企画として2022年の5月号から8月号にかけて10年代ごとに「ロック・ベストアルバム200」という企画を行ってきましたが、その集大成となる企画。1960年代から11990年代のロックアルバムを今回はまとめて各ライターが30位まで順位付け。その集計を行ったのが今回の企画となります。

で、その結果が、あまりに酷くてあきれてしまう順位となっていました。一番の理由として「2022年の現在という視点からの評価」が全くなされていなかった点。90年代のアルバムまで評価対象としていますが、90年代のアルバムはベスト20でも13位にNIRVANA「Nevermind」のみ。80年代まで広げても6位にTaking Heads「Remain In Light」があと1枚ランクインしているだけ。15年前にレココレの25周年で同様の「ロックアルバムベスト100」という企画を行っているのですが、その結果とほぼ変わらない結果となっています。

確かに、ロックの黄金期といえば60年代、70年代。それだけにこの時代のアルバムが比率として多くなる、というのは十分わかります。ただ実際に現時点までのロックの歴史を考えた際に、人気の面でも、それ以降のロックへの影響という面でも欠くことの出来ないアルバムは多くリリースされています。例えばアメリカのローリングストーン誌が選ぶ「The 500 Greatest Albums of All Time」の2020年の改訂版では、NIRVANA「Nevermind」が6位、(90年代ですらありませんが)RADIOHEAD「KID A」が20位に選ばれていますし、同ランキングはロックに限りませんが、80年代90年代のアルバムが多く上位にランクインしています。イギリスのNMEも同様の企画を2013年に行っていますが、こちらに至っては、1位はThe Smithの1986年のアルバム「The Queen Is Dead」ですし、こちらはベスト10のうち5枚までが80年代以降のアルバムとなっています。

それらのランキングと比較すると、明らかに選者が「自分たちの嗜好」に偏重しすぎており、本来、評論家として名乗るのなら持つべき「現在における視点」というのが完全に欠如したランキングは、そもそも批評と名前に値しないランキングと言わざるを得ません。もっとも、この回に限らず、ミュージックマガジン系の雑誌のランキングは、何名かの選者がそれぞれランキングをつけ、それを集計した単なる人気投票にすぎません。それはそれでひとつのやり方ではあるのですが、音楽専門誌を名乗っているのならば、数名の選者によって、ちゃんと雑誌としてのスタンスをあきらかにする批評的な観点を入れたランキングを作成してほしい、といつも強く感じています。また、選者の中にはロック史の観点からのベストアルバムではなく、単なる「個人としての好きなアルバムランキング」を載せている選者も多く、正直、評論家としての素質を疑わざる得ない選者も少なくありません。

またもうひとつ大きな疑問点として感じたのは、40周年という記念企画でありながらも、選択するアルバムを「ロック」に絞ってしまっているロック至上主義。60年代と70年代のロック黄金期のアルバムのみ、というのならまだわかります。ただ、90年代まで含めて、なおかつ2022年という今に評価するのに対して、ロックというジャンルに限定する方針は非常に時代遅れな感が否めません。実際、前述のローリングストーン誌のベストアルバム選でもNMEのものでもジャンルはロックに限らず、様々なジャンルからのアルバムが選ばれています。この点に関しても非常に違和感を覚えました。

要するに、いつまでたっても60年代や70年代のロックに凝り固まり、そんな時代遅れの音楽の価値観を最高と勘違いしている「老害」感をすごく感じてしまうランキングになっていました。もちろん、今回上位に並んだアルバムは名盤であることは間違いないため、ロック初心者が「歴史」を知るためのディスクガイドとする分には問題ありません。ただ、それでも非常に偏りを感じてしまうリストではありますが。もともとレココレ誌は60年代や70年代のロック愛好家がメインの雑誌だった感は否めませんが、もう90年代とか今の時代は無視して、60年代70年代ロック専門誌としてやっていけばいいじゃん。その代わり、そんな「村社会」から一歩も出てきてほしくないのですが。もっとも、そんな私もアラフォーどころかそろそろアラフィフが近づいてきた年代。若い世代の音楽を、無下にバカにしないように、自戒を込めて・・・。

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2022年11月13日 (日)

故郷アイスランドに戻って

Title:Fossora
Musician:Bjork

ニューアルバムとしては実に約5年ぶりとなるBjorkの新作。ここ最近、エレクトロミュージシャンのArcaをプロデューサーとして起用し、エレクトロ寄りにシフトした作品が続いていた彼女ですが、今回のアルバムではこの方向性を大きくシフト。久々にエレクトロ色を薄めた作品に仕上げてきました。

まず今回のアルバムでひとつの大きな特徴となっているのはクラリネットの音色。1曲目「Atopos」からスタートし、「Victimhood」「Fungal City」など、クラリネットを効果的に用いた作品が並んでいます。また同時にストリングスを全面的に取り入れた曲も目立つのが今回のアルバム。「Ancestress」や「Fungal City」ではバイオリンの音色を全面的に取り入れており、また「Allow」ではフルートの音色を全面的に取り入れるなど、ここ最近の作品から一転、「生音」を多く取り入れた作品に仕上がっています。

また今回のアルバムの特徴としては「Atopos」や「Trölla-Gabba」、さらにタイトルチューンの「Fossora」においてバリ島を拠点として活動しているガムランガバユニットGabber Modus Operandiを共同プロデューサーとして迎えている点。結果、これらの作品にといては、ガムランをベースとするトライバルな作風が特徴的となっていました。

これらの結果としてアルバム全体として、どこか土着的というか、地に足をついたというか、ある種の暖かみも感じさせるようなアルバムになっていました。おそらく今回、そのような方向性となった一つの理由として、コロナ禍の中、彼女が生まれ故郷であるアイスランドに戻ったという点も大きな理由でしょう。さらに大きな理由として2018年に母親のヒュドゥルを亡くしたということも大きな影響を与えているようです。本作では「Sorrowful Soil」「Ancestress」の2作は、亡き母親に捧げる曲ということでしたし、さらに今回、息子のシンドリと娘のイザドラがコーラスとして参加している曲もあり、あらためて「家族」というものを意識した作品になっていました。

今回のアルバムからエレクトロの作品が減り、生音を入れて、さらに土着的な雰囲気が強くなった背景には、そんな「家族」さらにはアイルランドに戻ったことにより自分のルーツをあらためて見つめなおした、という影響がひょっとしたらあるのかもしれません。その結果として、ここ最近のアルバムの作風からシフトしたアルバムに仕上がったのでしょうか。もっとも、楽曲によってはエレクトロサウンドを取り入れた曲もあり、「Mycelia」のような自分のボーカルをサンプリングした曲などもあったりして、前作から完全に大きくシフトした、といった感じでもありません。前作までの路線を気に入っていた方でも文句なしに楽しめる作品だったと思います。

本作は、Bjorkとしての新たな一歩・・・といった感じでも正直ありません。ある意味、コロナ禍の中で、故郷アイスランドで、自由に作ったアルバムなのかもしれません。ただ今回もBjorkらしさがしっかり出ていた傑作であることは間違いないかと思います。彼女らしい世界観をどっぷりと楽しめた作品でした。

評価:★★★★★

Bjrok 過去の作品
biophilia
2012-02-12 NY Hall of Science,Queens,NY
Bastards
Vulnicura
Vulnicura Strings
Biophilia Live

utopia


ほかに聴いたアルバム

Weather Alive/Beth Orton

ケミカル・ブラザーズの1stアルバムへの参加で有名となったイギリスの女性シンガーソングライターによる約6年ぶり8枚目となるアルバム。暖かい歌声を力強く聴かせるメランコリックな歌が印象的な作品。ピアノを入れて分厚いアレンジで、どこかドリーミーでちょっとジャジーな雰囲気が魅力的。なにげに既にベテランミュージシャンなのですが、今回、アルバムを聴いたのははじめて。暖かみのある楽曲に非常に惹かれた1枚でした。

評価:★★★★★

The End,So Far/Slipknot

アメリカのヘヴィーロックバンドによる約3年ぶりの新作。これでもかというほどの音圧を聴かせるヘヴィーなナンバーが魅力的・・・なのですが、今回のアルバムは全体的にはむしろメランコリックさも感じるメロディーラインが目立つ作品に。いや、意外とポップでメランコリックなメロディーを書いてくるのが彼らの魅力なのですが、今回はヘヴィネスさとメランコリックなメロのバランスで、メロに重心が移ってしまった感が。これはこれで悪くないし、それなりに彼ららしいヘヴィーなサウンドも楽しめるのですが、良くも悪くも「大人のバンド」といった感じになってしまった印象も。個人的にはもうちょっとゴリゴリにヘヴィーな作品を聴いてみたいのですが。

評価:★★★★

slipknot 過去の作品
All Hope Is Gone
ANTENNAS to HELL
We Are Not Your Kind

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2022年11月12日 (土)

「Doolittle」の「成長盤」

Title:Doggerel
Musician:Pixies

前作から約3年ぶりとなるPixiesのニューアルバム。2004年にまさかの再結成を果たした彼らは、しばらくはライブ中心の活動でアルバムのリリースはなかったものの、2014年に実に23年ぶりとなるニューアルバム「Indie Cindy」をリリース。その後は比較的にコンスタントにアルバムをリリースし、本作が早いもので再結成後4枚目となるアルバムに。なにげに最初の活動の時にリリースしたアルバムと同じ枚数をリリースしてしまった結果となります。

ちなみに今回の「Doggerel」という奇妙な言葉は、「(内容もふまじめで、韻律もふぞろいな)へぼ詩」という意味になるそうです。こういう名付け方はある意味、彼ららしいとも言えるのですが、ただ、このタイトルを見てファンなら彷彿とさせるようなアルバムがあるのではないでしょうか。そう、1989年にリリースされ、彼らの代表作の1枚とされるアルバム「Doolittle」。なんとなく語感が似ていることから、この名作を彷彿する方も少なくないのではないでしょうか。

ただ、この「Doolittle」との関連性はメンバーも意識しているようで、実際、ギターのジョーイ・サンティアゴは本作を「『Doolittle』の成長盤(the grown-up version)」と述べています。そんな「Doolittle」の延長線に位置付けられた本作は、Pixiesの王道を行くようなギターロックが並ぶアルバムになっていました。

実際、冒頭を飾る「Nomatterday」ではギターリフ主導のバンドサウンドのイントロからスタートしつつ、ブラック・フランシスの語りが入ります。このスタイル、なにげに「Doolittle」の1曲目「Debaser」とちょっと似たような構成・・・。「Dregs of the Wine」も同じくブラック・フランシスの語るような、シャウトするようなボーカルにノイジーなギターが重なる疾走感のあるPixiesらしい楽曲。「The Lord Has Come Back Today」もサビの部分で唯一の女性メンバー、パズ・レンチャンティンのコーラスが重なるあたりも、実に彼ららしさを感じる作品になっています。

その後も「Pagan Man」のような切ないメロディーラインでブラック・フランシスのメロディーセンスが光る作品があったり、「You're Such A Sadducee」のようなヘヴィーなギターサウンドを聴かせつつメランコリックなメロを聴かせる作品があったりと、最後までPixiesらしい魅力的なギターロックが並んでいました。

ただ一方、本作が「Doolittle」の成長盤と位置付けたのは、そんな「Doolittle」の系譜を引くような作品が並んでいる、というだけの意味ではないようで、同じくジョーイ・サンチャゴはアルバムについて「俺たちは成長した。2分以下の曲をもう作らなくなった。今じゃ、ちょっとしたブレイクもあるし、より一般的なアレンジも取り入れている、ただ俺たちなりの捻りはこれまで通りだけどね」と語っているようです。確かに実際、本作は全12曲入りで42分。1分あたりの長さは平均4分弱となっており、以前と比べると複雑に展開する曲も含まれています。ただ、これに関しては一本調子とはいえ勢いのあった「Doolittle」の方が潔くてよかったように思うのですが・・・。

そんな「Doolittle」との変化はありつつ、全体的には非常にPixiesらしさを感じた今回のアルバム。個人的には再結成後にリリースされた4枚のアルバムのうち、もっとも気に入ったアルバムではありました。ただ、比較対象はあくまでも「再結成後」であって、やはり再結成前の4枚の名盤たちには遠く及ばず。まあ、ここらへんは比較するだけ野暮とは思うのですが・・・。とはいえ、十分「傑作」の水準のアルバムであることは間違いないと思います。Pixiesらしさがしっかりとつまった作品でした。

評価:★★★★★

PIXIES 過去の作品
EP1
EP2

Indy Cindy
Doolittle25
Head Carrier
Beneath The Eyrie


ほかに聴いたアルバム

THAT'S WHAT HAPPENED 1982-1985-THE BOOTLEG SERIES,VOL.7/MILES DAVIS

モダンジャズの第一人者としても知られ「モダン・ジャズの帝王」とも呼ばれているMiles Daves。本作は、2011年から続けられている彼の「ブートレグ・シリーズ」の第7弾。今回はタイトル通り、1982年から1985年にかけての音源が収録されており、Disc1,2には1982年から85年までの未発表のスタジオ音源を、Disc3には1983年7月7日のモントリオール・ジャズ・フェスティバルのライブ音源が収録されています。

作風としては全体的にフュージョンのテイストが強く、かなり時代に沿った作風を感じさせます。特にシンディーローパーの「Time After Time」やマイケル・ジャクソンの「Human Nature」のカバーも収録。カバー自体はアルバム「You're Under Arrest」に収録されており、既発表なのですが、こういう当時の最新ヒット曲のカバーにも挑戦するという、音楽に対する柔軟さに感心してしまいます。出来としては、正直、あまりアイディアも感じさせないインストカバーになっているのですが・・・。

ただ全体としては哀愁たっぷりのサウンドをしっかりと聴かせるカバーが多く、彼にとっては活動後期にあたるこの時期の作品ですが、全く衰えの見せない演奏を聴かせてくれており、ライブ音源も含めて、終始耳を奪われるパフォーマンスの連続となっていました。3枚組でかなりボリューミーな作品で、ブートレグシリーズとちょっとファン向けな作品ですが、熱心なファンでなくてもマイルスに興味があれば聴いて損のないアルバムだと思います。時代に沿った挑戦を続けるマイルスの魅力を感じさせる音源でした。

評価:★★★★★

Miles Davis 過去の作品
The Final Tour: The Bootleg Series, Vol. 6(Miles Davis&John Coltrane)
Rubberband

God Save the Animals/Alex G

アメリカはフィラデルフィアを拠点に活動をするシンガーソングライターによる新作。前作「House of Sugar」ではフォーキーで美しいメロを主軸にしつつサイケやエレクトロの要素を取り入れたバラエティー豊富なアルバムになっていましたが、今回もメランコリックなメロディーラインを軸としつつ、インディーロックからAOR、カントリーやジャズなど様々な要素を入れたポップスを展開。ポップなメロディーラインを含めて、非常に楽しめる作品に仕上がっていました。

評価:★★★★★

Alex G 過去の作品
House of Sugar

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2022年11月11日 (金)

若大将のオールタイムベスト

Title:若大将ベスト
Musician:加山雄三

ご存じ、若大将の愛称で知られ、俳優やタレントとして活躍する一方、歌手としてもシンガーソングライターとして活動。「君といつまでも」をはじめ数々のヒット曲を持つ加山雄三。そんな彼も今年御年85歳。年内いっぱいでのコンサート活動からの引退を発表しています。本作は、コンサート活動終了に際してリリースされたオールタイムベスト。彼のベスト盤は数多くリリースされているものの、本作はCD1枚分1時間18分というちょうどよい長さであり、彼の代表曲も網羅されていることから、いままで加山雄三の曲を聴いてきたことはありませんでしたが、数多くのヒットを世に送り出したミュージシャンのベストとして抑えておきたいということで今回はじめてチェックしました。

もっとも彼のアルバムをこういう形で聴くのははじめてとはいえ、彼の代表曲自体は聴いたことがありました。加山雄三については、特に好きなミュージシャンでもなんでもなかったのですが、「お嫁においで」「旅人よ」などを聴くと、素直にいい曲だなぁ、と感じました。個人的には「旅人よ」のような、半音を行ったり来たりするような構成のメロディーラインって結構壺で、思った以上に楽しめたアルバムになっていました。

ただ、その上で強く感じたのが2点。まず1点目は加山雄三というのは、典型的な秀才肌の作家だな、という点でした。彼は作曲家としてだけではなく俳優業はもちろん、絵画にも秀でているなど様々な才能の持ち主のようです。ただ作曲家としては、「こんなメロディーを書けるのか!」といった驚きを感じるというよりも、聴きなじみのあるようなメロディーを上手く組み合わせているという印象も強く、今回のアルバムに収録されている曲も似たようなタイプの曲が散見されるなど、天才肌というよりは、卒なくこなす秀才肌といった印象を受けます。多彩な才能と合わせると、良くも悪くも器用な人、という印象を受けました。

そしてそれ以上に強く感じたのは彼の書くメロディーやサウンドに、「ビートルズ以前のポピュラーミュージック」という部分を強く感じる点でした。今、日本で活躍しているシンガーソングライターはほぼ全員、ビートルズ以降のポップミュージックの影響を直接的にすら間接的にすら受けています。その耳で彼の曲を聴くと、異質にすら感じる部分があり、典型的なのがリズム。4ビートのリズム感は8ビート以降のリズムに慣れ親しんだ私たちにとっては、かなりのっぺりとしたものを感じます。

特にその違いを強く感じるのが、本作に収録されている加山雄三とザ・ヤンチャーズ名義の「座・ロンリーハーツ親父バンド」で、このバンドは加山雄三と、谷村新司や南こうせつ、さだまさし、THE ALFEE、森山良子というメンバーが組んだバンド。ただ、このバンドのリズム感はあきらかに8ビートでリズム感も今の私たちが聴いてもあまり違和感のないもの。加山雄三と他のメンバーはだいたい一回りくらいの年の差があるのですが、この差が、音楽の、特にリズム感に与える影響が大きいんだな、ということを強く感じました。

一方で、85歳という年齢にこのキャリアに関わらず、全体的に洋楽の影響からも強く、最後の最後まで演歌の方面にシフトしなかった点に彼の一種の矜持を感じさせます。本作には残念ながら収録されなかったのですが、2014年にはTHE King ALL STARSと題して若手ミュージシャンとのコラボも行っていますし、その点、自分はポピュラーミュージックのシンガーソングライターであって、旧態依然の演歌にシフトすることなく、終始、新しいものを取り入れいきたいという意思のあらわれのようなものも強く感じました。

そういう点もあって、若い世代にとっても意外と聴きやすさも感じるアルバムではないでしょうか。もっとも、私も40代半ばになって、ムード音楽的なものも「良い」と感じるようになってしまった・・・という点も否定はできないのですが・・・。予想していたよりも楽しめた1枚でした。

評価:★★★★


ほかに聴いたアルバム

For./sumika

軽快なポップソングが楽しいsumikaのニューアルバムですが、今回のアルバムはとにかくバラエティー豊富な内容。ギターサウンドを前に押し出してきたり、ヘヴィーな打ち込みのサウンドを入れてきたかと思えば、ピアノやホーンセッションを取り入れた賑やかで楽しいサウンドや裏打ちの軽快なリズムを聴かせたりと実にバラエティー豊か。またメロディーラインもインパクトが強く、なんとなくイメージ的には90年代のミスチルをさらに明るくした雰囲気。全体的には王道のJ-POPといった感じも強く、良くも悪くも乱雑な感も否めませんが、それを含めて90年代J-POPのヒット作を彷彿とさせるアルバムになっていました。

評価:★★★★

sumika 過去の作品
Familia
Chime
Harmonize e.p
AMUSIC

BEWARE/SiM

「The Rumbling」がテレビアニメ「進撃の巨人 The Final Season Part2」のオープニングに起用されて話題となっているレゲエパンクバンドの新作は、同曲を含む4曲入りのEP盤。「The Rumbling」はメランコリックなメロを主軸に彼ららしいヘヴィネスさを維持しつつ、ポップスさも強い曲調となっていますが、それ以外の曲に関してはメランコリックなメロが流れつつも、かなりヘヴィーでダイナミックなSiMらしい作風が持ち味。来るべき久々のニューアルバムも楽しみになるEP盤でした。

評価:★★★★

SiM 過去の作品
PANDORA
i AGAINST i
THE BEAUTiFUL PEOPLE
THANK GOD, THERE ARE HUNDREDS OF WAYS TO KiLL ENEMiES

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2022年11月10日 (木)

2週連続の1位

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週は2週連続で1位獲得となりました。

今週は韓国の男性アイドルグループENHYPEN「定め」が2週連続で1位を獲得。ダウンロード数33位、PCによるCD読取数44位と伸び悩んでいますが、CD販売数で1位を獲得し、総合順位は1位獲得となっています。オリコン週間アルバムランキングでも2万8千枚を売り上げて、2週連続の1位獲得となりました。

2位はRYUJI IMAICHI「GOOD OLD FUTURE」が初登場で1位を獲得。CD販売数2位、ダウンロード数7位。三代目J SOUL BROTHERSのメンバーによるソロ4枚目となるアルバム。オリコンでは初動売上2万枚で2位初登場。前作「CHAOS CITY」の1万5千枚(4位)からアップしています。

3位は松任谷由実「ユーミン万歳!~松任谷由実50周年記念ベストアルバム~」がワンランクダウンながらもベスト3をキープ。まだまだ強さを見せつけています。

続いて4位以下の初登場盤です。まず5位に吉川晃司「OVER THE 9」がランクイン。CD販売数4位、ダウンロード数8位、PCによるCD読取数27位。約6年ぶりとなる20枚目のオリジナルアルバム。オリコンでは初動売上9千枚で5位初登場。前作「WILD LIPSの初動1万1千枚(5位)よりダウン。

6位初登場は声優宮野真守「THE ENTERTAINMENT」が初登場。CD販売数6位、ダウンロード数11位、PCによるCD読取数28位。こちらもオリジナルとしては約5年ぶりというちょっと久々のニューアルバム。オリコンでは初動売上8千枚で6位初登場。直近作はベストアルバム「MAMORU MIYANO presents M&M THE BEST」で、同作の初動2万2千枚(5位)からダウン。オリジナルアルバムとしても前作「THE LOVE」の初動1万8千枚(6位)からダウンしています。

7位には解散した女性アイドルグループEMPiREのメンバーによって結成された女性アイドルグループExWHYZのデビューアルバム「xYZ」がランクイン。CD販売数5位、ダウンロード数44位。オリコンでは初動売上7千枚で7位に初登場しています。

今週の初登場盤は以上。一方、ベスト10圏外からの返り咲きも1枚。原由子「婦人の肖像(Portrait of a Lady)」が先週の11位から9位にランクアップ。2週ぶりのベスト10返り咲きとなっています。

またロングヒット盤ではAdo「ウタの歌 ONE PIECE FILM RED」が先週からワンランクアップの4位を獲得。これで13週連続のベスト10ヒットに。今週はさらにダウンロード数が先週の3位からアップし、6週ぶり通算7週目の1位獲得となっており、まだまだ強さを感じさせる結果となっています。

今週のHot Albumsは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2022年11月 9日 (水)

ヒゲダン vs 米津 3週目

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

ヒゲダンと米津玄師の一騎打ち。今週で3週目となりました。

Subtilte

今週もOfficial髭男dism「Subtitle」が1位、米津玄師「KICK BACK」が2位という結果に。これでどちらも2週連続で同順位獲得という結果になっています。さらに今週はダウンロード数&ストリーミング数がヒゲダン1位、米津2位、一方You Tube再生回数は米津1位、ヒゲダン2位という結果に。両者のデッドヒートはまだまだ続きそうです。

さらにヒゲダンに関しては今週、「ミックスナッツ」が11位から10位にランクアップし、4週ぶりのベスト10返り咲き。通算27週目のベスト10ヒットを果たしました。これでヒゲダンは2曲同時ランクインとなっています。

初登場最高位は3位。ジャニーズ系アイドルグループSixTONES「Good Luck!」が獲得。CD販売数及びPCに読取数1位、ラジオオンエア数及びTwitterつぶやき数2位、You Tube再生回数23位。テレビ朝日系ドラマ「最初はパー」主題歌。オリコン週間シングルランキングでは初動売上39万1千枚で1位初登場。前作「わたし」の初動47万1千枚からダウンしています。

続いて4位以下の初登場曲ですが、4位にはJIN「The Astronaut」が先週の43位からランクアップし、ベスト10初登場。CD販売数2位、ダウンロード数27位、ストリーミング数85位、ラジオオンエア数31位、Twitterつぶやき数48位、You Tube再生回数16位。韓国の男性アイドルグループBTSのメンバーによるソロデビューシングル。オリコンでも初動売上10万4千枚で2位に初登場しています。

今週、初登場曲は以上2曲のみ。一方、前述の「ミックスナッツ」を含めベスト10返り咲きも。まず8位にSTU48「花は誰のもの?」が先週のベスト100圏外からランクアップし、ベスト10入り。4月20日付チャート以来、30週ぶりのベスト10返り咲きとなりました。これは11月2日付けで劇場盤Extra Editionがリリースされた影響のようです。

さらにロングヒット組ではまずAdo「新時代(ウタ from ONE PIECE FILM RED)」が6位から5位にランクアップ。これで22週連続のベスト10ヒットを果たしています。ただ一方、先週ベスト10に返り咲いた「私は最強(ウタ from ONE PIECE FILM RED)」は11位にランクダウン。ベスト10返り咲きは1週で終わりました。

先週、ベスト10に返り咲いたTani Yuuki「W / X / Y」は今週も先週から変わらず9位をキープ。これでベスト10ヒットは通算30週となりました。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

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2022年11月 8日 (火)

秋を感じる4部作の3作目

Title:SZNZ:Autumn
Musician:WEEZER

今年、四季の節目にあわせて4枚のEPシリーズ「SZNZ」をリリースしているアメリカのパワーポップバンドWEEZER。春分の日に第1弾「SZNZ:Spring」が、夏至の日に第2弾「SZNZ:Summer」がリリースされ、そして予想通り、秋分の日に第3弾「SZNZ:Autumn」がリリースされました。前回「Summer」の時と同様、今回も「サプライズリリース」と紹介されていましたが、これほどサプライズのないサプライズリリースも珍しいかもしれません。

さて、今回のEPシリーズ、第1弾も第2弾もWEEZERらしさを感じる分厚いバンドサウンドにポップでキュートなメロディーが載る楽曲が並んでいましたが、この第3弾についても、第1弾、第2弾同様、WEEZERの王道とも言えるパワーポップチューンが並ぶ作品になっています。1曲目「Can't Dance,Don't Ask Me」からしてまさにWEEZERらしいほどよくノイジーで分厚いギターサウンドで、切なさを感じさせつつポップでキュートなメロを疾走感あるリズムで聴かせるナンバー。続く「Get Off On The Pain」もハイテンポな出だしに続いてテンポがいきなりゆっくりとなって登場するヘヴィーなギターリフと、それにのせてゆっくりと歌いあげられるポップなメロも、まさにWEEZER節といっていい作風。聴いていて、率直に気持ちよくなるナンバーになっています。

哀愁たっぷりに聴かせる「What Happens After You?」を挟み、続く「Francesca」も、途中で転調を入れてくるあたり、いかにもWEEZERらしさを感じますし(というよりもJ-POPからの影響か?)、「Should She Stay or Should She Go」も軽快でメロディアスなメロが楽しいポップチューンに仕上がっています。

さらに「Tastes Like Pain」では、今回もまた、いままでの作品と同様、ヴィヴァルディーの「四季」のフレーズをサンプリング。今回も「秋」をテーマにしつつも、前作同様、なぜかピックアップされているのは「冬」の第2楽章。冬をイメージするような凍てつく感覚をバイオリンで表現している箇所なだけに、これを「秋」に持ってくるの?と不思議にも感じてしまうのですが、楽曲の中に上手く「四季」のフレーズを溶け込ましています。そしてラストの「Run,Raven,Run」も彼ららしい軽快なギターロックでメロディアスに聴かせるナンバー。最後までポップでキュートなナンバーを聴かせてくれる作品となっています。

正直なところ、作品としての目新しさはほとんどありません。良くも悪くも彼ららしいという点はいままでのこのシリーズと同様。ただ一方でWEEZERらしい壺はしっかりと押さえた作品になっており、ファンとしては申し分なく楽しめる作品になっていたと思います。なによりも難しいこと抜きにして安心して聴けるという点でも彼ららしい魅力のつまった作品だと思います。メロディーラインにもそれなりに勢いもあり、彼らの最高傑作レベル、とまではいかないまでも、魅力的な良盤であることは間違いないでしょう。

次は間違いなく冬至の日にラストのアルバムがリリースされるはず。おそらくまた本作のような魅力的なアルバムを聴かせてくれるのではないでしょうか。次の「サプライズリリース」も楽しみに待っていたいと思います。

評価:★★★★★

WEEZER 過去の作品
WEEZER(Red Album)
RADITUDE
HURLEY
DEATH TO FALSE METAL
Everything Will Be Alright in the End
WEEZER(White Album)
Pacific Daydream
Weezer(Teal Album)
Weezer(Black Album)
OK HUMAN
Van Weezer
SZNZ:SPRING
SZNZ:SUMMER


ほかに聴いたアルバム

Autofiction/Suede

90年代ブリットポップを代表するロックバンドSuede。2013年の再結成後、比較的コンスタントにアルバムをリリースし続けていますが、今回は約4年ぶりとなるニューアルバムとなりました。基本的にはメランコリックなメロディーラインを聴かせつつ、力強くグルーヴィーなバンドサウンドを聴かせるスタイル。曲によっては大御所バンドらしいスケール感を覚える曲も多く、まさに王道路線を行くような曲が並びます。ある意味、無難といえば無難な内容ですが、ファンなら文句なく楽しめるアルバムになっていました。

評価:★★★★

suede 過去の作品
night thoughts
The Blue Hour

The Mars Volta/The Mars Volta

2013年にメンバーのセドリック・ビクスラー・ザヴァラが脱退したため解散を発表したThe Mars Volta。ただ、比較的早いタイミングでセドリックとオマー・ロドリゲス・ロペスは合流し、At The Drive-Inとしてのレコーディングなども実施していた彼らですが、The Mars Voltaとしても活動再開。約10年ぶりとなるニューアルバムがリリースされました。セルフタイトルとなる本作は、メランコリックな歌を主軸に据えた「歌モノ」のアルバム。時おり、彼ららしい複雑でダイナミックなサウンドが顔をのぞかせたりはするのですが、全体としてはThe Mars Voltaらしいサウンドはあまり目立ちません。そのため、久々のアルバムとしてはちょっと期待していた作品とは異なる感が強く、少々残念にも感じましたが、彼らの歌も十分に魅力的。ついに活動を再開した彼らなだけに、今後の活躍に期待したいところです。

評価:★★★★

THE MARS VOLTA 過去の作品
The Bedlam In Goliath(ゴリアテの混乱)
OCTAHEDRON
Noctoumiquet
Landscape Tantrums

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2022年11月 7日 (月)

ドリーミーなポップ…かと思いきや

Title:Paradise review
Musician:踊ってばかりの国

コロナ禍の中でもかなり積極的な活動が目立つ踊ってばかりの国。昨年リリースした「moana」はコロナ禍の中での状況を歌った歌詞も特徴的でしたが、前作から1年3ヶ月ぶりとなるミニアルバムとなる本作。なにげにミニアルバムを含めるとパンデミック後、既に3枚目となるアルバムとなります。

そんな彼らの新作は、いままでの彼らと同様、サイケデリックなアレンジをほどこしつつ、メロディーラインについてはむしろ優しいポップという様相に強い作品になっています。1曲目「your song」もドリーミーなサウンドをバックにしつつ、ミディアムテンポの優しさを感じさせるポップになっていますし、続く「Ceremony」もアコースティックなサウンドを入れつつ、メロディアスでポップにまとめあげた作品に。「Amor」もムーディーで怪しげな雰囲気を醸し出しつつも、メロディーラインについては基本的にポピュラリティーあるものとなっています。

「海が鳴ってる」もギターを聴かせつつメロウに聴かせる作品になっていますし、最後に聴かせるタイトルチューン「Paradise review」もギターがドリーミーでサイケな雰囲気を醸し出しているのですが、メロディーラインについては至ってポップな内容になっています。アルバム全体としてほどよくサイケでドリーミーなサウンドとポップなメロディーラインが上手く交差しており、踊ってばかりの国らしい、サイケでポップな作品に仕上がっている・・・単純にサラッと聴いてしまうと、そう感じるような作品になっています。

ただ、アルバムを聴いていて、どうにも違和感を覚えてしまうのが歌詞の世界。アルバム全体として、どこか「死」をイメージしたような曲が目立つのが本作の大きな特徴となっていました。

例えばアルバムの冒頭「your song」では

「命授かりて今宵生まれる人
身体から離れ今宵旅立つ人
僕らの見送る真っ赤な夕焼けが
どこかの国で朝焼けになるのよ」
(「your song」より 作詞 下津光史)

と、まさに生と死をテーマとした歌詞を描いています。その後も「Amor」では同じく死の瞬間をテーマとしていますし、「知る由もない」も「死」という言葉が登場します。「死」を非常に意識させる今回のアルバムは、どこか社会を刹那的に捉えている彼らのスタンスを感じることが出来ます。

そんな刹那的な彼らのテーマが最も強く反映されたのがまさにタイトルチューン「Paradise review」のようで、本作では「俺たちに明日はない」と歌われており、このフレーズがツアータイトルになっているなど、彼らの今の主張を典型的にあらわした一文となっています。この作品は彼らが参加したライブとスピーチによる反戦街宣<No War 0305 Presented by 全感覚祭>の風景をそのまま歌った歌詞だそうで、この曲について下津光史はインタビューの中でロックンロールとは「明日なんか殴り捨てて、そういう気持ちをダウン・ピッキングにのっけるもの」と語っており、まさにアルバム全体に流れる刹那的な世界観は、彼らのロックンロール観を強く反映したものである、という点が明確になっています。

まあ、言い方を変えれば、今しかぶつけられない感情を曲にのせたのがロックンロール、といった感じでしょうか。そんな強烈な主張を歌っているからこそ、ドリーミーでポップな作品でありながらも、聴いていてのどに骨がひっかかったかのような違和感を、アルバムの中でどこか覚えるような、そんな強烈なひっかかりのある作品になっていました。あいかわらずそのスタンスも含め、彼らが唯一無二のバンドだと、あらためて実感した作品。相変わらずの傑作でした。

評価:★★★★★

踊ってばかりの国 過去の作品
グッバイ、ガールフレンド
世界が見たい
SEBULBA
FLOWER
踊ってばかりの国
サイケデリアレディ
SONGS
君のために生きていくね
光の中に
moana


ほかに聴いたアルバム

MMY/the peggies

9月いっぱいでの活動休止を発表したthe peggiesの、いままでの活動の集大成となるオールタイムベストアルバム。J-POPらしいポップスさとかわいらしさを兼ね備えたようなメロディーラインと、ロックバンドとしてのヘヴィネスさのバランスを模索していったような楽曲が並びます。彼女たちはいままでアルバム毎にポップ方向にシフトしたり、ヘヴィーなロックバンド寄りにシフトしたりと、方向性の模索を続けていたった感がありますが、このオールタイムベストではポップな楽曲を軸にしつつも、そんな彼女たちの模索を感じられる並びとなっていたように思います。結果、活動休止となってしまったのは、そのはざまでやはりなかなかうまくいかなかったということなのでしょうか。今後、活動再開がいつになるかわかりませんが、活動再開後は、もっと自分たちの自由な音楽活動を志向できればよいのですが。

評価:★★★★

the peggies 過去の作品
super boy! super girl!!
なつめきサマーEP
Hell like Heaven
アネモネEP
The GARDEN

Come on!!!/the telephones

the telephonesの2年ぶりとなるニューアルバム。メンバーのコメントとして、人の揚げ足取りのようなニュースが多く、地獄のような時代の中、「頭を空っぽにして楽しむ音楽が絶対必要」という信念のもとに作成されたアルバムだそうで、そんな信念の通り、全編、難しいこと抜きに楽しめるディスコチューンが並ぶような楽しいアルバムに仕上がっています。前作同様、多少一本調子なのも気になりますが、そんなこと抜きとしてとにかく楽しめればいいじゃん、そんなメンバーの声が聴こえてくるような作品でした。

評価:★★★★

the telephones 過去の作品
DANCE FLOOR MONSTER
A.B.C.D.e.p.
Oh My Telephones!!! e.p.

We Love Telephones!!!
100% DISCO HITS! SUMMER PACK
Rock Kingdom
D.E.N.W.A.e.p.
Laugh,Cry,Sing...And Dance!!!
SUPER HIGH TENSION!!!
BEST HIT the telephones
Bye Bye Hello
NEW!

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2022年11月 6日 (日)

日本特有のあのシーンについて語る

今日は最近読んだ音楽関連の書籍の紹介です。

今回紹介するのは、タイトル通り、日本独自の音楽文化とも言えるヴィジュアル系について、その歴史を中心に紹介した1冊「知られざるヴィジュアル系バンドの世界」。著者は冬将軍と名乗る音楽ライターだそうで、本作が単独名義の本としてはデビュー作。以前は音楽関連の業務に従事したそうです。

このヴィジュアル系バンドというのは、音楽ファンにとっては説明するまでもないでしょう。一般的にはX JAPANやBUCK-TICKをそのルーツ的な存在とする、音楽性よりもまずはそのどぎつい、ゴシック系のメイクを大きな特徴とするバンド。90年代に一世を風靡し一種のブームとなるものの、「ヴィジュアル系」という名前が示す通り、音楽性よりもルックスを重視したようなイメージがついてしまったこともあり徐々に衰退してしまいました。ただ、その後も一部では根強い人気を誇り、一方ではDir en greyのように、ヴィジュアル面ではなく音楽的にも高い評価を誇るバンドも登場。今でも、一定の根強い人気を誇り、日本独自のジャンルとして脈々とその系譜が続いています。

そんなヴィジュアル系について、その成り立ち、歴史を中心に紐解いているのがこの1冊。ヴィジュアル系という文化は、日本のポップスシーンにおいて間違いなく大きな足跡を残しているにも関わらず、音楽面ではなくそのルックスという側面から切り抜かれたシーンなっだけに、音楽シーンにおいては無視されがちなジャンル。X JAPANやBUCK-TICKのような個々のバンドについて取り上げられることはあっても、ヴィジュアル系全体についてはあまり詳しく語られることがなかっただけに、このシーンについて取り上げるというのは非常に興味深く読まさせてもらいました。

このヴィジュアル系の流れを知るにあたって、本書は非常に詳しく記されています。特に80年代後半から90年代にかけてのヴィジュアル系が、まだヴィジュアル系として確立されていなかった時期及び90年代のヴィジュアル系ブームに至るまでの流れについては、著者の詳しい知見を感じることが出来ます。BOOWYからスタートし、X JAPANやBUCK-TICKといった、まさにヴィジュアル系の黎明期のバンドに至る流れ、さらにCOLOR、ZI:KILL、黒夢、SOFT BALLETさらには初期はヴィジュアル系バンドとしてデビューしていたTHE MAD CAPSULE MARKETSなど、様々なバンドが紹介されています。

興味深いのがこの著者の知見が単なるバンドの紹介にとどまらず、楽器の面やファッション面にも言及されていた点。特に日本の音楽評論においては、ライターが実は楽器自体に疎いことが少なくなく(まあ、私も偉そうには言えませんが)、その点への追及がほとんどなされないケースが多いのですが、同書では楽器、特にギターに対するヴィジュアル系の特徴については詳しい記述がされています。またファッション面についても、あのヴィジュアル系のとがったメイク、特に髪型についてはどのように作られているのか、という外部から見ると興味のつきない面にも言及されており、この点も含めて、ヴィジュアル系というシーン全般について、著者の非常に深い知見を感じることが出来る1冊となっています。

ただ、それだけヴィジュアル系については非常に詳しい内容になっているがゆえに、逆にヴィジュアル系以外のジャンルについての著者の知識のあまりの拙さに気になってしまう面が目立ちました。

著者はヴィジュアル系以外のシーン、特にグランジロックやそれに連なるオルタナ系、あるいは80年代から90年代のインディーロック系についての、おそらくほとんど知らないのではないか、という記述が目立ちます。例えばhideについて、彼は亡くなる直前、このオルタナ系からの影響が顕著でしたが、その記載についてはほとんどなし。彼が立ち上げたレコードレーベルLEMONedは、もともとZEPPET STOREを紹介するために立ち上げたレーベルなのですが、ZEPPET STOREについての言及がほとんどない点はさすがに片手落ちすぎるのでは?

また、「ロックフェスが生んだヴィジュアル系差別」と題して、「ヴィジュアル系バンドはフェスに出られない」という偏見があると書かれていますが、初期のロックフェスにはヴィジュアル系に限らず、J-POP系のバンド全般がほとんど出られず、その理由は「偏見」とかではなく、第1回のフジロックで、THE YELLOW MONKEYのファンがバンドが出るかなり前から会場の前の方を占拠。イエモンの前に登場したバンドの時なども微動だにせず彼らの演奏を「無視」し続けたため、多くの音楽ファンの批判をあびた、いわゆる「イエモン地蔵」の登場がその後のフェスにJ-POP系のバンドが出られなかった大きな理由である点は音楽ファンにとっていわば「常識」のレベルなのですが、この点についても一切言及がないのは、さすがにちょっと知らなさすぎるのではないか(それかヴィジュアル系について「偏見」ということにしたいがためにあえて無視しているのか)とも思ってしまいます。

その他にも、このヴィジュアル系シーン以外についての知識のなさについてはかなり気になる部分も多く、かなり厳しい内容になっています。確かにヴィジュアル系を語る本であるため、それ以外について多少知識の不足は仕方がないのでしょうが、ブログの個人サイトで語るにはともかく、ライターとしてお金をもらう立場なら、興味がなくても、もうちょっと音楽シーン全般について知識を仕入れるべきでは?その点はかなり強く疑問を抱いてしまいました。

ヴィジュアル系シーン自体についてはかなり詳しい知識を持っており、タイトル通り、知られざるこのヴィジュアル系というジャンルについて、あらためて興味深く知ることが出来ただけに、この点については非常に残念ですし、惜しさも感じます。ヴィジュアル系に対して「偏見」が持たれているというのが著者の主張ですし、それは事実なのでしょうが、それだけに著者自身もヴィジュアル系以外に対して「偏見」を持たず、もうちょっと知見を広げてほしいなぁ、そう感じてしまった1冊でした。

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2022年11月 5日 (土)

イギリスで大ブレイク!

Title:Hold The Girl
Musician:Rina Sawayama

イギリスを拠点に活躍するシンガーソングライター、Rina Sawayamaの2枚目となるアルバム。ご存じの通り、新潟出身の日本人で、幼少期にロンドンに移住し、今に至っています。前作「Sawayama」は大きな話題を呼び、各種メディアでも軒並み、2020年のベストアルバムに選ばれるなど、大きな話題を呼びました。ただ、チャート的にはイギリスのナショナルチャートでも最高位80位とブレイクというには程遠く、「話題先行」の感は否めませんでした。

本作はそんな「Sawayama」に続く作品なだけに、勝負作とも言える作品。その動向にも注目されたのですが、なんとイギリスのナショナルチャートで3位を獲得。人気の面でも大きく躍進したアルバムとなり、名実ともに一気にブレイクという結果となりました。

ただ、日本のメディアが大喜びしそうな「世界で活躍する日本人」なのに、3位にランクインという快挙について日本のメディアは軒並み無視。BABYMETALのアルバムがイギリスのアルバムチャートのベスト10入りした時には大騒ぎした癖に、本作は完全にスルーという事実には違和感しか覚えません。おそらく彼女が日本の「芸能界」に全く関与していないからでしょうし、彼女のスタイルが、日本のメディアが喜びそうなアニメカルチャーや「かわいい」文化にリンクした「クールジャパン」のイメージからほど遠いものだからでしょう。

もちろん、そんな日本のメディアの閉鎖性は彼女の活躍に全く関係ありません。今回のアルバムも前作「Sawayama」に続き傑作アルバムに仕上がっていました。特に彼女は椎名林檎や宇多田ヒカルなどJ-POPのミュージシャンからの影響を公言していますが、前作に引き続きJ-POP的な部分を強く感じさせる曲も耳を惹きます。例えばタイトルチューン「Hold The Girl」も哀愁感ただようメロディーラインといい、楽曲タイトルを先頭にもってくるわかりやすいサビといい、かなりJ-POP的な構造。もっとJ-POPっぽいのが続く「This Hell」で、こちらもわかりやすいメロディーラインを持つポップチューンで、ほどよくノイジーなギターに、4つ打ちのリズムというのもJ-POP的。洋楽としては珍しくBメロを持った構造になっているのもJ-POPっぽさを感じます。

アルバム全体としてもR&Bをベースとしながらも雑食性のあるポップソングが並ぶ展開になっており、インパクトのあるわかりやすいメロディーラインのポップソングが魅力的。前述の「This Hell」のようなロック風のポップもありつつ、「Holy(Til You Let Me Go)」は疾走感あるトランシーなエレクトロチューン。「Your Age」ではより強いメタリックなビートを持つエレクトロチューンに。「Frankenstein」も哀愁感たっぷりのメロディーラインと打ち込みも入れて疾走感あるサウンドは日本人が好みそう。一方、「Send My Love To John」などはアコースティックギターでフォーキーに聴かせる曲となっていたり、ラストの「Phantom」「To Be Alive」は伸びやかな歌声を聴かせるスケール感ある楽曲で締めくくっています。

前作では、意識的に日本を前に押し出したような曲もありましたが、今回は楽曲的にJ-POPの影響を感じるものの、日本を目立って押し出した曲はありません。前作では日本を前に押し出すことにより、ある種のエキゾチックさをアピールポイントにしていたのかもしれませんが、今回のアルバムではそういうギミックは不要だった、ということでしょう。それだけ間違いなくRina Sawayamaの名前が音楽シーンに広まった、ということも言えるかもしれません。

楽曲的に目新しさは感じないものの(ひょっとしてこのJ-POP的な部分が海外では目新しいのかもしれませんが)インパクトがあり、いい意味で非常に聴きやすく、さらに私たちにとっても耳なじみのある楽曲が並ぶアルバムだったと思います。前作に引き続き、今回のアルバムも文句なしの傑作。勝負作とも言える本作でしたが、売上の面でも、内容の面でも、間違いなく勝負に「勝った」といえる結果になりました。彼女の快進撃はまだまだ続きそう。日本のメディアはいつまで無視しているのでしょうか・・・。

評価:★★★★★

Rina Sawayama 過去の作品
Sawayama


ほかに聴いたアルバム

I Love You Jennifer B/Jockstrap

Georgia ElleryとTaylor Skyeの2人組のオルタナティブポップデゥオのデビューアルバム。2020年にリリースされた2枚のEPはWarpからリリースされ、さらに本作はラフトレードからのリリースと、注目の高さをうかがわせます。本作はアコースティックギターからスタートするものの、その後はエレクトロサウンドやら歪んだギターノイズやらピアノやらストリングスやら様々な楽器で展開。かなりめまぐるしい内容となっています。「オルタナティブポップ」というイメージ通りのユニークな展開なのですが、ちょっとめまぐるしすぎる感があり、せわしない印象を受けます。いろいろとやりたいことがまとめきれていない感も。楽しさは感じるのですが。

評価:★★★★

Natural Brown Prom Queen/Sudan Archives

ヴァイオリニストでありつつ、自らもボーカルとして自作曲を歌っているLAのシンガーソングライターの新作。正直、ヴァイオリンとしての要素はほとんどなく、アフリカ音楽の要素を取り入れたトライバルなリズムに、伸びやかでメロウなR&B風の楽曲を挟みつつも、HIP HOPからの影響も感じさせる作風が印象的。非常にアグレッシブさを感じさせる1枚です。

評価:★★★★★

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2022年11月 4日 (金)

パンデミック後の未来

Title:demon time
Musician:Mura Masa

2022年にフジロックにも参加し、話題となったイギリスのプロデューサー、Mura Masaの約2年半ぶりとなるニューアルバム。2019年にはグラミー賞の最優秀リミックス・レコーディング賞を受賞するなど、活躍の場を広げています。個人的には前作「R.Y.C.」ではじめて彼のアルバムを聴いたのですが、難しいことなしに純粋に楽しめるポップな楽曲に魅了されました。約2年半ぶりとなる今回のアルバムは、彼曰く、「パンデリックが終わった未来に向けて作ったアルバム」と語っているようですが、まさにコロナ後の明るい未来を感じさせる、非常に楽しくポップなアルバムに仕上がっていました。

まず序盤で耳を惹くのが「slomo」でしょう。本作には日本人ラッパーのTohjiが参加。途中、いきなり日本語が登場し、驚かされます。まあ、向こうの人の感覚では、よくわからない言葉が登場し、エキゾチックな雰囲気が漂う感じなのでしょうか。本作はミディアムテンポでメロウさも感じるエレクトロチューン。ただ非常にいい意味でインパクトがあり、ある種のわかりやすさを感じさせるエレクトロサウンドがインパクトに。もともとMura Masaというミュージシャン名自体、日本の名刀、村正から来ており(もっとも採用理由は語感の良さだけのようですが)日本ともなじみのある彼。インタビューでは中田ヤスタカからの影響も公言しており、この日本人にとってもなじみやすいエレクトロサウンドも、ヤスタカサウンドっぽくはないのですが、そんな部分から来ているのかも、しれません。

この曲以外にも、毎曲、様々なゲストが参加。軽快でポップなサウンドを聴かせてくれています。女性シンガーBAYLIが参加しているタイトルチューン「demon time」は軽快でエレクトロなガールズポップ。続く「bbycakes」も軽快なポップを聴かせてくれたかと思えば、「2gether」ではミディアムテンポのエレクトロサウンドで荘厳な雰囲気で歌いあげる楽曲に。メランコリックながらもポップなメロディーラインも印象的です。

その後も中盤、slowthaiが参加した「up all week」は軽快なエレクトロサウンドにラップが楽しいリズミカルなチューンに。女性ボーカリストLEILAHが伸びやかで清涼感ある歌声を聴かせてくれる「prada(i like it)」もリズミカルなエレクトロポップチューンに仕上がっています。

さらにトライバルなリズムがインパクトの「hollaback bitch」に、同じくトライバルなリズムにちょっとメランコリックな雰囲気のサウンドとメロが印象的な「blessing me」と、バリエーションを変えつつも、いずれもリズミカルなエレクトロサウンドを主軸としたポップなナンバーが並びます。ラストを締めくくるのは再びLEILAHが参加したエレクトロポップ「blush」。最後の最後までポップな楽曲が並びます。

正直、サウンド的にはさほど目新しさは感じません。ただ、最初から最後まで耳に残ってワクワクするような軽快なエレクトロビートが続き、かつポップなメロディーが流れる、文句なしに楽しさを感じさせるアルバム。「パンデミック後の未来」にふさわしい、変な憂いのない楽しいサウンドが並びます。もっとも、そろそろパンデミックが終わろうとしている現状ですが、世界はウクライナ問題など暗いニュースも流れている訳ですが・・・ただ、そうとはいえ、音楽の中ぐらいは、このMura Masaの曲のような明るい未来を楽しみたいところ。まずは広い層にお勧めできるポップで楽しいエレクトロアルバムでした。

評価:★★★★★

Mura Masa 過去の作品
R.Y.C.


ほかに聴いたアルバム

Superstore/Sam Gendel

ロサンジェルスを拠点に活動を続け、プロデューサー、マルチインストゥルメンタル奏者、サックスプレイヤーとしての顔を持つSam Gendelのニューアルバム。最近は日本でも折坂亮太や岡田拓郎との共演を行ったりと、その知名度を確実に上げています。今回のアルバムは、全34曲入りとなる作品。ただ、アルバムを通じても52分の長さで、1曲あたり1、2分の曲が続いていく展開となっています。エレクトロな作品からフリーキーな曲、ポップな曲、トライバルな作品、ちょっと優雅さを感じる作品など作風は多岐にわたっているのですが、その曲の短さゆえに1曲1アイディア的な内容で、ちょっと物足りなさも感じる部分も。こういうアイディアが次々浮かんでくるのが彼らしさなのでしょうが。

評価:★★★★

Sam Gendel 過去の作品
Satin Doll
AE-30

Gemini Rights/Steve Lacy

The Internetのギタリストで、ネオソウルのプロデューサーとしても活躍しているSteve Lacyのソロ2枚目となるアルバム。ゆっくりハイトーン気味のボーカルで聴かせるメランコリックなメロディーラインが大きな魅力。AORやHIP HOP、ギターロックまで手を広げた前作と比べると、今回はメロウなR&Bチューンに絞ったような作風となっているのですが、その分、歌の魅力をしっかりと感じさせるアルバムに仕上がっていました。

評価:★★★★★

Steve Lacy 過去の作品
Apollo XXI

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2022年11月 3日 (木)

「日本」らしいタイトルですが・・・

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週1位はいかにも「日本」らしいタイトルのアルバムですが、列記としたK-POPアイドルのアルバムです。

今週1位は韓国の男性アイドルグループENHYPEN「定め」が獲得。CD販売数1位、ダウンロード数9位、PCによるCD読取数21位。日本盤では本作がデビュー作となります。オリコン週間アルバムランキングでは初動売上23万2千枚で1位初登場。直近作は韓国盤のミニアルバム「MANIFESTO:DAY 1」で、同作はフライング販売の都合上か、ランクイン2週目で12万2千枚を売り上げて1位を獲得していますが、その売上を上回る結果となっています。

2位は先週に引き続き松任谷由実「ユーミン万歳!~松任谷由実50周年記念ベストアルバム~」が獲得。オリコンでも依然として2位をキープしており、強さを見せつけています。

3位には藤井風「LOVE ALL SERVE ALL」が先週の21位からランクアップ。今年5月18日付チャートから24週ぶりのベスト10返り咲きとなりました。これはアナログ盤が売り出された影響によるもので、CD販売数(というかアナログ盤を含む販売数ですが)も33位から3位に大幅アップ。オリコンでも1万5千枚を売り上げて4位にランクインしています。ちなみにこれで通算9週目のベスト10ヒットとなります。

続いて4位以下の初登場盤です。まず4位にThe Beatles「Revolver」がランクイン。CD販売数4位、ダウンロード数17位、PCによるCD読取数5位。The Beatlesが1966年にリリースした本作をプロデューサーのジャイルズ・マーティンとエンジニアのサム・オケルによって、あらたにミックスを行ったスペシャルエディション。50年以上前のアルバムであるにも関わらず、これだけ高い順位を獲得するあたり、彼らの根強い人気を感じさせます。オリコンでも初動売上1万4千枚で5位初登場。同じくスペシャルエディションとしてリリースされた前作「Let It Be」の初動2万1千枚(4位)よりダウン。

6位には麻枝准&やなぎなぎ「Love Song from the Water」がランクイン。CD販売数5位、ダウンロード数9位。スマートフォンゲーム「ヘブンバーンズレッド」に収録されたボーカル曲を集めたアルバムで、ゲームシナリオライターで作詞・作曲家としても活動する麻枝准と、シンガーソングライター、やなぎなぎの連名名義でのアルバムとなります。オリコンでは初動売上1万2千枚で6位初登場。やなぎなぎ名義の直近作「やなぎなぎ 10周年記念 セレクションアルバム -Roundabout-」の1千枚(34位)から大幅にアップしています。

7位初登場はゆず「YUZU ARENA TOUR 2022 PEOPLE -ALWAYS with you-」。ライブツアー「YUZU ARENA TOUR 2022 PEOPLE -ALWAYS with you-」から、8月3日(水)に開催された神奈川・横浜アリーナ公演の模様を収録した配信限定のライブアルバム。ダウンロード数で1位を獲得し、総合順位でもベスト10入りを果たしました。

8位にはTaylor Swift「Midnights」がランクイン。CD販売数6位、ダウンロード数10位、PCによるCD読取数29位。日本でも高い人気を誇るアメリカのシンガーソングライターによる新作。本国アメリカでは、本作がアルバムチャートで1位を獲得しているのはもちろん、今週、同作からの楽曲がBillboard Hot 100のベスト10を独占するという史上初の快挙を成し遂げています。オリコンでは初動売上8千枚で7位初登場。

最後10位にロックバンドFear,and Loathing in Las Vegas「Cocoon for the Golden Future」がランクイン。CD販売数8位、ダウンロード数11位、PCによるCD読取数44位。オリコンでは初動売上5千枚で13位初登場。前作「HYPERTOUGHNESS」の1万1千枚(10位)よりダウンしています。

今週の初登場盤は以上。一方、ロングヒット盤としてAdo「ウタの歌 ONE PIECE FILM RED」は今週6位から5位にアップ。これで12週連続のベスト10ヒットとなりました。

今週のHot Albumsは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2022年11月 2日 (水)

ヒゲダン vs 米津 2週目

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

先週に引き続き、今週もヒゲダンと米津玄師の一騎打ちです。

Subtilte

ただ、今週も1位はOfficial髭男dism「Subtitle」が獲得。見事2週連続の1位となります。米津玄師「KICK BACK」も2週連続の2位。ストリーミング数は先週と変わらずヒゲダン1位、米津2位という結果に。ただ今週、You Tube再生回数で米津玄師が先週の100位から一気にランクアップし1位を獲得。ヒゲダンも4位から2位にアップしているものの、順位が逆転という結果となっています。

一方、初登場最高位は3位にランクインした日向坂46「月と星が踊るMidnight」。CD販売数及びPCによるCD読取数で1位、ダウンロード数19位、ラジオオンエア数46位、Twitterつぶやき数8位。オリコン週間シングルランキングでは初動売上42万8千枚で1位初登場。前作「僕なんか」の初動44万2千枚(1位)よりダウンしています。

続いて4位以下の初登場曲ですが、まず4位にジャニーズ系アイドルグループTravis Japan「JUST DANCE!」がランクイン。アメリカのキャピトル・ミュージック・グループと契約し、本作は全米デビューとなるジャニーズ系初となる配信シングル作。ダウンロード数及びTwitterつぶやき数1位、ラジオオンエア数38位、You Tube再生回数36位。あきからにK-POP勢の海外進出を意識したような行動で、ジャニーズ系としては珍しく、ネット系のメディアが全面解禁になっているのも海外進出を意識した影響でしょう。ただ、先日も報道されたようにTravis Japanを積極的に推していっていた滝沢秀明がジャニーズを退所するという不穏なニュースもあったり、肝心のストリーミング数があまり伸びていなかったり(ちなみにこの時点でSpotifyの再生回数はたった1万4千回弱だった…)と、前途多難な印象もあります。確かに、昨今のアメリカの音楽シーンを考えると、勝機は十分にあるかとは思うのですが、果たして、思惑通り上手くいくのでしょうか・・・。

5位にはback number「アイラブユー」がランクイン。NHK連続テレビ小説「舞い上がれ!」主題歌。配信限定シングルで、ダウンロード数2位、ストリーミング数19位、ラジオオンエア数1位、Twitterつぶやき数30位、You Tube再生回数21位。彼ららしいメランコリックなミディアムチューンで、今後、ロングヒットにつながるのでしょうか?

今週の初登場は以上。一方で今週はベスト10圏外からの返り咲きが何作かありました。まず先週14位にランクダウンしたTani Yuuki「W / X / Y」が今週は9位にランクアップし、2週ぶりにベスト10返り咲き。これで通算29週目のベスト10ヒットとなりました。

さらにAdo「私は最強(ウタ from ONE PIECE FILM RED)」が15位から10位にランクアップし、2週ぶりにベスト10返り咲き。これで通算11週目のベスト10ヒットとなります。「新時代(ウタ from ONE PIECE FILM RED)」は5位から6位にワンランクダウン。こちらはこれで21週連続のベスト10ヒット。今週、Adoが2週ぶりに複数曲をベスト10入りさせてきました。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

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2022年11月 1日 (火)

90年代ロックへの愛情あふれる良書

今回も最近読んだ音楽関連の書籍の紹介です。

「ゴッホより、普通にラッセンが好き」というネタでブレイクした芸人、永野の書いたロックにまつわるエッセイ本「僕はロックなんか聴いてきた〜ゴッホより普通にニルヴァーナが好き!」。永野は芸能界きってのロックフリークとして知られているそうで、そんな彼が、90年代の洋楽の代表的な作品を取り上げ、そのアルバムへの愛情を語りつくした1冊。紹介されているアルバムが個人的にも壺にはまる作品が多く、以前から気になっていたのですが、Kindle Unlimitedで読めるようになっていたことに気が付き、電子書籍の形で読んでみることにしました。

個人的に永野は、好きな芸人とかでは全くなく、むしろ「あまり好きではない」(積極的に嫌いではないが)の部類に入る芸人でした。ただ、彼が、90年代の洋楽ロックのようなサブカルチャー近辺に詳しい、というのは、ある意味予想通りといったイメージ。というのも、彼の「ゴッホより、普通にラッセンが好き」というネタは、そもそもラッセンが、一般的な人気や知名度はあるものの、その絵画については画壇などで全く評価されていない、という前提があって成り立つネタであって、その前提を知っているという段階で、ある程度カルチャー、あるいはサブカルチャーには精通しているんだろうな、というイメージを持っていたからです。

そんな訳で、決して好意的に読み始めたわけではないこの本ですが、読み進めるうちにグイグイとその内容にはまっていきました。そこに強く感じるのは90年代洋楽ロックに対する永野の強い愛情。同書では、彼がはまったアルバムを1枚1枚取り上げ、その紹介をしていくのですが、そこには彼の人生と密接にリンクしています。それだけに、ある意味、彼の自叙伝的な内容も兼ねている1冊なのですが、ある意味、ダメダメな部分も含めて赤裸々に、ある種ユニークに描写しているため、そんな自叙伝的な部分を含めて楽しみながら読み進むことが出来ます。

なにげに文章も結構うまく、読み手をグイグイと惹きつける力もあります。正直なところ、ここまで上手い文章を書いてくるというのはちょっと意外でした・・・。また、なによりもおもしろかったのは、そのロックに対する視点。彼が本書で書いている視点は、決して目新しい斬新な視点、という感じではありません。ただ、洋楽ファンが密かに思っていながらも、世の「評論」とは微妙に異なるため、表にできなかったような率直な感想。「僕にとってベックとビョークは、褒めなきゃいけないアーティストだった」「人は本当に暗いときって『キッドA』聴かないと思うんだ」(blurのアルバム「ブラー」について)「でも、大事な捻くれた部分、遊びの部分が後退しちゃったんだよね。」などなど、言いたいことがすごくわかる!と思う部分が要所要所にありました。特に最後、あとがきの「曲さえ良ければ、みたいなことを言い出してから、ロックがつまらなくなった気がします」という感想も、すごく同感で。なんか、アイドルも売れ線J-POPも曲が良ければいいじゃん、みたいな風潮、個人的にもすごく違和感があって・・・なんか、ある種の「こだわり」みたいなのって、すごく大切だと思うんですよね・・・。

正直言って、90年代ロックといっても、若干私と永野は趣向が違っている部分があって、永野は私より2歳年上ということと、彼は中学から洋楽ロックを聴いていたのですが、私は高校の頃から、という点でスタートの時期が一世代くらい違っています。そのため、彼はNIRVANAスタートで、どちらかというとアメリカのヘヴィーロック路線を好んでいたのに対して、私はoasisスタートでblur、RADIOHEADに進んで、あとは逆にPixiesやジザメリなど80年代インディーロックに戻った聴き方をしていました。ただそれでも、同じ90年代の洋楽ロックを聴いてきたということで言いたいことはすごくよくわかります。親近感を覚えながら読み進むことが出来ました。

予想外に楽しく読み進めることが出来た内容で、評論家とは違う、音楽ファンだからこそ書くことができた、まさに「良書」と呼ぶにふさわしい1冊だと思います。90年代の洋楽ロックをリアルタイムで楽しんできたアラフォー、アラフィフ世代の音楽ファンは、読んで損のない1冊。お勧めです!

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