大きな試練を乗り越えて
Title:The Alchemist's Euphoria
Musician:KASABIAN
デビューアルバム「Kasabian」でいきなり全英チャート4位を獲得し、注目を集めたロックバンドKASABIAN。2作目「Empire」では全英チャート1位を獲得し、その後、前作「For Crying Out」まで5作連続チャート1位を記録し、一躍、イギリスの国民的バンドとなりました。しかし、そんな彼らに大きな試練がおそいかかりました。2020年にメインボーカル、トム・ミーガンが妻への暴行により有罪判決を受け、それに伴いバンドも脱退。バンドの「顔」とも言うべきメインボーカルの逮捕はバンドに大きな衝撃を与えました。
そんな中、前作から5年、トム・ミーガン脱退から2年という歳月を経て、いままでツインボーカルとしてトムと共にボーカルをとっていたセルジオ・ピッツォーノをメインボーカルに起用し、ニューアルバムリリースにたどり着きました。そうして無事リリースされたニューアルバムは、どこかある種の懐かしさを感じさせるアルバムになっていました。
哀愁感たっぷりに歌い上げる「ALCHEMIST」からスタート。この曲もノスタルジックな雰囲気が魅力的でしたが、続く「SCRIPTVRE」はミクスチャーロックのナンバー。90年代後半あたりのサウンドを彷彿とさせるラップメタルのナンバーで、今となってはある種の懐かしさを強く感じます。
その後もノイジーなギターリフを主導にダイナミックに聴かせる「ALYGATYR」などは、まさに2000年代に流行ったようなオルタナ系のギターロックの王道を行くようなナンバー。「STARGAZR」もエレクトロチューンなのですが、このトランス風のアレンジも、今どきというよりはちょっと一昔前を行くようなサウンド。そういう意味でも強く懐かしアを感じさせます。
アルバム全体としては、そんな感じである種の王道を行くようなオルタナ系ギターロックを軸にしつつ、リズムマシーンなどを多く導入。さらに途中にエレクトロチューンを挟んでくるなど、ここらへんのエレクトロサウンドを用いたバリエーションの持たせ方も、2000年代に流行ったバンドっぽいなぁ、というのを強く感じます。
こんな「懐かしいサウンド」という言い方をしてしまうと、目新しさもなく陳腐な・・・という言い方をイメージしてしまうかもしれません。正直、そういう側面もなきにしもあらず、といった感は否定できません。ただ、前作もそうでしたが、難しいこと抜きに、ポップなメロディーラインとダイナミックなバンドサウンド、そしてエレクトロサウンドを楽しめるアルバムになっていました。前作ほどの傑作ではなかったのですが、ただ本作も間違いなく傑作アルバムと言える作品に仕上がっていたと思います。
そして今回のアルバムも見事全英チャートで1位を獲得。チャート1位記録をさらに伸ばしました。メインボーカルのチェンジという大きな試練を乗り越えた彼ら。今回のアルバムは、新たな彼らの一歩として文句ない作品だったと思います。これからのKASABIANの活躍も楽しみになってくる作品でした。
評価:★★★★★
KASABIAN 過去の作品
West Ryder Pauper Lunatic Asylum
VELOCIRAPTOR!
48:13
FOR CRYING OUT LOUD
ほかに聴いたアルバム
KEYSⅡ/Alicia Keys
最初はアルバム「KEYS」の続編的なアルバムかな、と思い、聴き始めたのですが、「あれ?これ以前も聴いたぞ…」と思い出し、調べてみると、「KEYS」に新曲2曲、リミックス2曲、配信限定でリリースされた曲5曲を加えただけのデラックスエディションでした・・・。最近、こういう「2度買わせ」商法が多いような気がするのですが、ストリーミングがメインとなった今、こういうアルバムをリリースしても、新曲部分だけつまみ食いできるから、ということなのでしょうか?「KEYS」自体が傑作だっただけに本作も申し分ない内容。ただ「KEYS」を聴いた人は、ストリーミングで新曲だけつまみ食いすれば十分かと。
評価:★★★★
Alicia Keys 過去の作品
As I Am
The Element Of Freedom
Girl On Fire
HERE
Alicia
KEYS
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