曽我部恵一の夏・・・
Title:Memories&Remedies
Musician:曽我部恵一
7月末に新型コロナウイルスに感染した曽我部恵一。本作は、その療養期間中に作成されたソロアルバムです。療養期間中にアルバム1枚つくってしまうあたり、曽我部恵一のワーカホリックぶりがうかがわせますが、まあ、確かに熱が下がれば暇になるんですよね、療養期間中って。思わず1枚つくってしまった彼の気持ちも、わかるような気がします。
今回、「記憶と療養」と名付けられた本作は、全編インストの作品。アンビエントな作風となっており、全編、ギターノイズが流れる作風になっています。療養期間でリハビリとして作ったと語る今回の作品は、本人曰く「ただ没入することができる音の方へ、一日の少しの時間をパソコンに向かって録音した。だれに聴かせるつもりもなかった。一曲録り終えるとぐったりして、後の時間は一日中ずっと寝ていた。」と語っています。彼は40度の熱が4日続いたそうで、いつもの風邪よりちょっと重い程度だった私と比べると、かなり辛い状況だったようですが、そんな中、ある意味、夢見心地の中でつむがれた作品ということでしょうか。全体的にも、そんな雰囲気を感じられる、ドリーミーな(彼の状況を考えると、そんなのんきなことを言える状況ではなかったかもしれませんが)作風の曲が並びます。
ただ、積極的に実験性の高い音楽、というよりは、その時の彼の心象風景をそのまま描いたような作風は、意外とメロディアスでポピュラリティーもある作品が多いという印象。「Summer Move」ではアコギアルペジオで優しく聴かせ、優しい日の光が差し込む森にいるような心持にするドリーミーな作風は、いい意味で聴きやすい作風になっていますし、「House Where Mother Lives」と題された作品も、そのタイトル通り、どこかノスタルジックな要素も醸し出す、優しくメロディアスな作品となっています。
ラストを飾る「Love In The Time Of COVID」とかなりストレートなタイトルになっていますが、サイケなノイズが全面に流れる本作も、熱にうなされた幻想的な様相を感じさせつつも、どこか優しいメロディーが流れてくるのが印象的。コロナの中で作られた作品ではあるものの、しっかりと曽我部恵一らしさを要所要所に感じられる作品になっていました。
先の本人のコメントの通り、だれにも聴かせるつもりもなかったリハビリ的な作品なのですが、それでもぬぐいきれない曽我部恵一らしさと、彼らしいメロディーセンスのあふれる作品に仕上がっています。ここ最近、脂ののった傑作が続く彼ですが、それはコロナ感染という特殊な状況下でつくられた本作も同様でした。間違いなく「曽我部恵一の新作」として要チェックの作品です。
評価:★★★★★
曽我部恵一 過去の作品
キラキラ!(曽我部恵一BAND)
ハピネス!(曽我部恵一BAND)
ソカバンのみんなのロック!(曽我部恵一BAND)
Sings
けいちゃん
LIVE LOVE
トーキョー・コーリング(曽我部恵一BAND)
曽我部恵一 BEST 2001-2013
My Friend Keiichi
ヘブン
There is no place like Tokyo today!
The Best Of Keiichi Sokabe -The Rose Years 2004-2019-
純情LIVE(曽我部恵一と真黒毛ぼっくす)
Loveless Love
プリンは泣かない
ワーカホリックな曽我部恵一は、さらにサニーデイサービス名義でも新作をリリースしています。
Title:冷し中華EP
Musician:サニーデイ・サービス
夏のはじめにリリースされた4曲入り(CD版では表題曲のインストが加わり5曲入り)のEP盤。曽我部恵一の前作が「プリンは泣かない」でしたから、食べもの系の作品が並びました(?)。
表題曲は、夏のはじめの街の風景を描いた作品。ちょっと気だるさを感じさせるフォーキーな作風は、いかにもサニーデイといった雰囲気の楽曲になっています。また、具体的な描写が続く歌詞は、街の風景を聴いていてそのまま想像できそうな内容となっており、曲を聴きながら、初夏の街並みを散歩している感覚になるような作品。「冷し中華はじめました」という(ある意味ベタな)夏のはじまりを彷彿とさせるフレーズが印象的に使われています。
その後も爽やかで夏の雰囲気を感じられる作品が続いていきます。特に3曲目「その気になれば」はザ・ディランⅡのカバーなのですが、夏を感じらせる風景描写に気だるい雰囲気、フォーキーな曲調といい、サニーデイの作風と、このEPの流れにもピッタリあてはまる名カバーに仕上がっています。
ラストの「夏のにおい」は、ちょっと意外なパンキッシュな楽曲。ただ、エモーショナルなバンドサウンドに反してフォーキーなメロディーラインと、こちらも夏の風景を描写した歌詞が実にサニーデイらしい作品。「夏」をイメージした本作を締めくくるにピッタリの内容となっています。
本作を紹介している今の時点は、既に秋なのですが、こちらの作品は、まさに夏の風景をサニーデイらしく描写した彼ららしい作品に。わずあ4曲入りのEP盤ですが、サニーデイの魅力を存分に感じさせるとともに、夏の空気をしっかりとパッケージした傑作に仕上がっていました。どちらも曽我部恵一らしさをしっかりと感じさせる作品。どちらも文句なしに要チェックです。
評価:★★★★★
サニーデイ・サービス 過去の作品
本日は晴天なり
サニーディ・サービス BEST 1995-2000
Sunny
DANCE TO YOU
桜 super love
Popcorn Ballads
Popcorn Ballads(完全版)
the CITY
DANCE TO THE POPCORN CITY
the SEA
サニーデイ・サービスBEST 1995-2018
いいね!
もっといいね!
ほかに聴いたアルバム
Tough Layer/Scoobie Do
今年、デビュー20周年を迎える彼らの、3年ぶりとなる15枚目のアルバム。前作「Have a Nice Day!」は爽やかなポップチューンがメインだった作品でしたが、今回のアルバムもファンクのリズムを聴かせつつ、全体的にはメランコリックなメロが印象に残る作品に。ファンキーなリズムという観点からすると、ちょっとおとなしくまとまりすぎた感もする作品に。あえていえば大人のポップスという感じになるのでしょうか。哀愁感ただようメロディーラインは魅力的ではありつつも、少々物足りなさも感じてしまいました。
評価:★★★★
SCOOBIE DO 過去の作品
ROAD TO FUNK-A-LISMO!
BEST OF CHAMP YEARS 2007~2016
CRACKLACK
Have a Nice Day!
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