ドラマ主題歌3曲を収録
Title:瞳へ落ちるよレコード
Musician:あいみょん
約2年ぶりとなるあいみょんのニューアルバム。前作「おいしいパスタがあると聞いて」に引き続き、微妙なインパクトのあるアルバムタイトルが目を惹きます。またアルバムの中で特徴的なのが全13曲中、ドラマタイアップ曲が3曲もある点。「初恋が泣いている」「ハート」「愛を知るまでは」とドラマ主題歌が目立ち、あいみょんの楽曲とドラマ主題歌の相性の良さを伺わせます。
さて、そんなあいみょんの大きな魅力としてシンプルな歌詞とメロディーラインにあります。オルタナ系ギターロックの影響を垣間見せつつも、ベースにあるのは、90年代J-POPを通り越してむしろ70年代フォークソングにあるのでは?と思わせるほど、これが中高生に受けるのか・・・(「マリーゴールド」のヒットから4年経っているので、そろそろファンの年齢層が上にシフトしている可能性は高いのですが)と思うほど、むしろ40代や、ともすれば50代以降が気に入っても不思議ではないほど、懐かしさと暖かさを感じさせるメロとサウンドが魅力となっています。
例えば今回のアルバムでも「初恋が泣いている」はシンプルなギターロック路線ながらも切ない歌詞の描写が魅力的。
「電柱にぶら下がったままの初恋は
痺れをきかして睨んでいる」
(「初恋が泣いている」より 作詞 あいみょん)
なんていう表現は、そのシュールな表現を含めて耳に残りますし、「3636」も別れる直前の恋人どうしの日常風景が妙にリアリティーがあり、胸に響きます。ラップも取り入れた「ペルソナの記憶」などもメランコリックなメロとギターがフォーキーな雰囲気を醸し出しつつ
「オムライスの返り血を受けて
私はようやく恋の終わりに気づいた」
(「ペルソナの記憶」より 作詞 あいみょん)
という歌詞も非常にユニークで強いインパクトを覚えます。
そんな訳で、恋愛をめぐる心境を素直に、時としてユニークだったりシュールな表現を含めながら聴かせる楽曲が強いインパクト。楽曲によってはフォークロックやギターロック路線、「強くなっちゃったんだ、ブルー」みたいなメロウなシティポップ風の曲など、それなりにバラエティーを持たせつつも、基本的にはシンプルなポップソングが主軸となっています。
そんなシンプルながらもインパクトの強いラブソングを書くからこそ、おそらく冒頭に書いたように、ドラマ主題歌との相性がよいのでしょう。今回のアルバムにドラマ主題歌が3曲も収録されていたというのは、決して偶然ではないようにも感じました。いつものあいみょんから大きな変化はなく、前作以前の路線を引き継いだ作風になっているのですが、いい意味で彼女らしさが確立されており、そして安心して聴ける傑作になっていたと思います。前にも書いたけれども、こういう外連味の無いシンプルな楽曲が素直に売れているという事実はやはりうれしいもの。これからもあいみょんの活動に期待したいところです。
評価:★★★★★
あいみょん 過去の作品
瞬間的シックスセンス
おいしいパスタがあると聞いて
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