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2022年10月16日 (日)

昭和のレア・グルーヴ企画拡大版

今回紹介するのは、現在の徳間ジャパンコミュニケーションズが、1965年にミノルフォンレコードとして創業して以来、設立したレーベルにおいて所有する原盤のうち、昭和に作成された邦楽ポップスに焦点を絞り選曲された、知られざる名曲、珍曲を集めたオムニバスアルバム。2010年に同じ企画で「GROOVIN'昭和!」というオムニバスアルバムがリリースされ、今回はその拡大版となるそうです。以前もその「GROOVIN'昭和!」と聴いて、レアグルーヴという強烈な珍味にはまってしまったのですが、今回も早速、拡大版「GROOVIN'昭和アーカイヴス」を聴いてみました。まずは今回は第1弾として5月にリリースされた5枚。今日はそのうちVol.1~Vol.3までを紹介します。

Title:GROOVIN'昭和アーカイヴス 1 シティ・ポップ&メロウ・サウンド

まず第1弾はタイトル通り、シティ・ポップの楽曲を集めたオムニバス。冒頭のサーカスは、「Mr.サーマータイム」や「アメリカン・フィーリング」で知られるコーラスグループですが、こちらはブレイクする前にリリースされたデビューシングルというレア盤。続くヴィーナスも、ザ・ヴィーナス名義で1981年に「キッスは目にして!」でブレイクするグループの、ブレイク前の楽曲というレア盤で、企画の冒頭からかなり攻めた選曲になっています。

ほかにも池田典代の「Dream In The Street」は、山下達郎が作曲・編曲を行い、本人もギター&コーラスで参加した作品。曲としてはほとんどヒットせず、彼女も同タイトルのアルバム1枚しかリリースできなかったようですが、今となっては知る人ぞ知る隠れた名盤だとか。確かにファンキーなリズムと爽やかなメロがいかにも山下達郎らしく、しっかりと耳に残るポップスに仕上がっています。

いかにも80年代っぽいジャケットのイラストも印象的で、女の子のデザインもいかにも80年代ですし、ラジカセも80年代に青春を過ごした方には懐かしさがあふれ出すアイテムではないでしょうか。実際、特に後半になるといかにも80年代的なシティポップが続く今回の作品。正直、目立って「これは」といった作品は少ないのですが、爽快なポップサウンドが心地よい曲が並んでいました。

評価:★★★★

Title:GROOVIN'昭和アーカイヴス 2 オン・ザ・ロックス

第2弾はタイトル通り、ロック系の曲を集めた曲。冒頭はショーケンからスタートし、その後も柳ジョージ&レイニーウッド、めんたんぴん、紫など、日本ロックの黎明期を飾るミュージシャンたちがズラリと並んでいます。個人的に特にユニークだったのが安全バンドの「怒りをこめて」で、冒頭は泥臭いロックなのですが、途中からいきなりピアノが入り、オペラ風に展開。このオペラ風に展開する冒頭の歌詞が「お母さん」ですし、複雑に展開される構成といい、クイーンの「ボヘミアンラプソディー」の元ネタ・・・なんて嘘をういても通用しちゃいそう(笑)。

ただオームの「まっぴらごめん」みたいに、今聴いてもカッコいいガレージロックのナンバーもありつつも、メロディーラインはかなり歌謡曲的なものが多く、ここらへんもある意味、魅力的と捉えられなくはないのですが、サウンド的には洋楽を目指しつつもメロディーとリズムはいかにも日本人的というチグハグさも違和感を覚えてしまいます。良くも悪くも日本ロックの成り立ちを感じさせるオムニバスでした。

評価:★★★★

Title:GROOVIN'昭和アーカイヴス 3 ファンク&ブルース

こちらはタイトル通り、ファンクやブルースの影響を受けた曲を集めた曲。まず聴いていて感じるのは、かなり手探り感のある曲。ソウルやファンクを自分たちなりに希釈して、日本風に新たな解釈を加える・・・というよりも、むしろ頑張ってむこうのサウンド、リズムを自分たちのものにしようとしているイメージと言っていいでしょうか。これまた日本のソウルやファンクの黎明期らしい、ある種の初々しさも感じされる楽曲が並びます。

特に、ウエスト・ロード・ブルース・バンドの「TRAMP」などは完全にJBそのままといった感じになっていますし、上田正樹とSOUTH TO SOUTHの「お前を離さない」はオーティス・レディングの「I Can'Ut Turn You Loose」のカバー。こちらもほぼそのまま感のあるリズムとサウンドになっています。

ただ、初々しさを感じさせつつも、今聴いても十分カッコよさは感じます。特にソー・バッド・レヴューやウエスト・ロード・ブルース・バンド、上田正樹とSOUTH TO SOUTHやめんたんぴんなど、この時代からこれだけソウルやファンクのリズムを奏でられるバンドがいたんだ、ということは(以前の「GROOVIN'昭和!」でも聴いていたのですが)あらためて感心してしまいます。正直、中にはいかにもムード歌謡な曲もあって違和感もなきにしもあらずなのですが、それを差し引いても、文句なしにカッコいいオムニバスに仕上がっていました。

評価:★★★★★

ちなみに2010年にリリースされた「GROOVIN'昭和!」の感想は↓こちらです。
GROOVIN' 昭和!1~こまっちゃうナ
GROOVIN'昭和!2~ベッドにばかりいるの
GROOVIN'昭和!3~恋のサイケデリック
GROOVIN'昭和4~自衛隊に入ろう
GROOVIN'昭和5~ぐでんぐでん
GROOVIN'昭和!6~東京ディスコ・ナイト
GROOVIN'昭和!7~ロマンチスト

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