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2022年10月22日 (土)

1曲1曲がキャラ立ち

Title:正気じゃいられない
Musician:マハラージャン

ターバンにスーツという強烈にインパクトある格好に、「マハラージャン」という一度聴いたら忘れられないような名前が大きなインパクトのシンガーソングライター。ただ、その強烈なインパクトに負けないファンクの要素を取り入れつつ、ポップにまとめあげたメロディーラインが大きな魅力で、前作「僕のスピな☆ムン太郎」は、私的ベストアルバムの年間10位にランクインしたりと、個人的にも大ハマリの1枚でいた。

それだけ強いインパクトのある作品だっただけに、それに続く2枚目のアルバムは、良くも悪くも注目していたのですが、その2作目のアルバムは、1枚目のアルバムをかるく凌駕する傑作に仕上がっていました。

まず1曲目からホーンセッションをスリリングに聴かせるタイトルチューン「正気じゃいられない」からして、いきなりインパクトのかたまりのようなスタート。彼らしいユーモラスなタイトルの「鼻の奥に米がいる状態」も力強いファンクチューンが耳に残ります。また、今回のアルバムで核になっているのが、ファンクのリズムを取り上げつつも爽快なポップチューンに仕上げている「その気にさせないで」でしょうか。インパクトのあるメロディーラインはヒットポテンシャル十分。なにげにシングルカットもされていない曲で、これだけインパクトある曲を書いてくるたり、かなり驚きです。

その後もファルセット気味のボーカルで聴かせる、シティポップ色も強い「エルトン万次郎」や分厚いサウンドのハードロック風の「先に言って欲しかった」、軽快なディスコチューン「持たざる者」など、バリエーションを持たせつつ展開していきます。最後を締めくくるのは、山下達郎の「BOMBER」のカバーを非常にファンキーに聴かせてくれます。ちなみにこの曲、同じようにファンキーなサウンドを聴かせてくれ、一時期はまっていたシンガーソングライターの森広隆もカバーしていたんですよね・・・森広隆、あれだけ素晴らしいSSWだったのに、結局ブレイクできず・・・マハラージャンは是非とも、ブレイクしてほしいのですが・・・。

話はちょっと逸れてしまいましたが、彼の楽曲、端的に言ってしまえば、1曲1曲、非常に「キャラが立っている」という表現がピッタリ来る印象を受けました。メロディーラインのインパクトはもちろんのこと、ファンキーで賑やかなサウンドも非常に目立ちますし、「鼻の奥に米がいる状態」「エルトン万次郎」みたいにタイトルからしてインパクト満点。さらに「先に言って欲しかった」のようなユニークな歌詞があったり、さらに「持たざる者」では、ジェイソン村田なる謎の人物が登場し、ユニークながらもシュールな歌詞の世界観を展開させています。どの曲をとっても聴いていて一発で印象に残りそうな、強度の強いポップチューンが並んでいました。

ただ、これだけ強いインパクトのある曲が並ぶと、逆に曲同士が個性を殺しあって、アルバム全体のインパクトが弱くなる傾向にあるのですが、このアルバムについてはそんな印象も受けません。やはりアルバム全体としてマハラージャンとしての方向性がはっきりしているからでしょうか。

そんな訳で、前作に引き続き文句なしの傑作アルバムとなった本作。間違いなく年間ベストレベルの傑作だったと思います。ヒットポテンシャルある曲調ですし、これでブレイクしなけりゃ嘘でしょ?と思ってしまうアルバム。本人のキャラの強さが、逆にブレイクを阻害している可能性もありそうですが・・そろそろ大ヒット作が出てもおかしくない、そんな可能性を感じさせる1枚でした。

評価:★★★★★

マハラージャン 過去の作品
僕のスピ☆なムン太郎


ほかに聴いたアルバム

永劫回帰II/上杉昇

90年代にWANDSのボーカリストとして一世を風靡した上杉昇が、WANDSを含めて彼の全キャリアの曲からセレクトしたオールタイムベストの第2弾。第1弾と同様、一部の曲は再レコーディングを行い、新たに生まれ変わっています。第1弾は、彼のグランジ、オルタナ系ロック好きの趣味が炸裂した、非常にロックな作品になっておりカッコよく、この第2弾も期待してきいてみました。今回も前半に関しては前作同様、ヘヴィーなロックサウンドにカッコよさを感じました。

ただアルバム全体としては、ロックな側面よりも、より哀愁感漂うメロディーラインに主軸を置いたようなアルバムになっており、これはこれで彼の魅力かもしれませんが、メランコリックなメロディーラインは平凡とまでは言わないまでも若干インパクト不足。ラストにはWANDS時代のヒット曲「世界が終わるまでは…」が織田哲郎の手によりリアレンジされているのですが、ほぼ原曲準拠のような内容で、正直、あまり新鮮味はありません。悪い内容ではないとは思うのですが、前作で期待してほどではなかった・・・という若干残念な印象を抱いてしまったアルバムでした。

評価:★★★★

上杉昇 過去の作品
永劫回帰I

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