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2022年10月17日 (月)

昭和のレア・グルーヴ拡大版 その2

前回紹介した、昭和の知られざる名曲・珍曲を集めたレア・グルーヴのオムニバス「GROOVIN'昭和アーカイヴス」の第2弾です。

Title:GROOVIN'昭和アーカイヴス 4 歌謡ディスコ&ソウル

第4弾は、ディスコやソウルミュージックの要素を取り入れた歌謡曲を集めたオムニバス盤。5月にリリースされた5枚のアルバムの中で、最もよかったのがこのアルバム。いわば歌謡曲の中に洋楽的な要素を取り入れた楽曲が集まっていますが、同じ洋楽の要素を取り入れたという意味では、他の作品も同様。ただ、他の4枚に関しては、「洋楽」に成ろうとしながらも、結果としてぬぐいきれない歌謡曲的な要素が強く残ってしまい、どこか洋楽としても邦楽としてもチグハグ感を覚えてしまった一方、こちらに関しては、自覚的に歌謡曲でありつつも、洋楽的なエッセンスを上手く取り込んだという意味で、歌謡曲、ひいては大衆音楽のたくましさを感じることが出来ます。

例えばザ・ヴァイオレッツの「スウィート インスプレーション」やスクーターズの「東京ディスコナイト」などは、モータウンのガールズポップの要素を上手く取り込んでおり、今聴いても非常に魅力的。来栖アンナの「BAD NIGHT」もスペーシーな打ち込みが、今となっては時代を感じさせますが、それはそれで「味」になっています。

ビューティ・ペアとして一世を風靡した女子プロレスラー、マキ上田が歌うのは、当時大流行したインベーダーゲームを歌詞に取り込んだ「インベーダーWALK」「あいつはインベーダー」。いかにもとってつけた感のある歌詞も変なインパクトがあるのですが、ここらへんのB級感も、いかにも歌謡曲的で、一周回って(?)楽しめますし、B級感あふれるといえば、B級アイドルのオナッターズ「恋のバッキン!」「モッコシモコモコ(しゅきしゅきダーリン)」もかなりのインパクト。今だとどう考えてもデビューできなさそうなエロ歌詞に時代を感じさせるのですが、メンバーの一人は、ダウンタウンの浜ちゃんの奥さんである小川菜摘という事実に驚かされます。あの浜ちゃんの奥さんがこんな歌を・・・というよりは、音楽的には、日本を代表するベーシストのハマ・オカモトのお母さまがこんな歌を・・・と思ってしまいますが。

最初から最後まで洋楽的なエッセンスを上手く取り込みつつ、歌謡曲的なベタさを上手く残した作品の連続を楽しめると同時に、歌謡曲のたくましさを感じることが出来るオムニバス。難しいこと抜きに楽しめる1枚でした。

評価:★★★★★

Title:GROOVIN'昭和アーカイヴス 5 ロックンロール80's

逆に一番チグハグさを感じたのは、タイトル通り80年代のロックンロールをコンセプトにあつめたこちらの1枚。80年代としてはアイドル全盛期で、世界的にもロックといえばスタジアム化してしまった時代。元キャロルのジョニー大倉が組んだTHE PLEASEはロックンロールバンドとしてカッコいいことはカッコいいのですが、やはりキャロルの二番煎じ的な部分は否めず。後半に至っては石野陽子や安田成美が登場し、ロックンロールというよりアイドルポップじゃない?さらに前述のオナッターズの「レッツゴー!ヨコシマ」という曲も収録。こちらもエロ歌詞が楽しい1曲なのですが、ロックンロールという並びで入ると違和感があります。

ZIGGYの「PLAYING ON THE ROCKS」など、かなり本格的なハードロックナンバーで、カッコいいことは間違いないですし、あか抜けたガールズポップを聴かせるスクーターズの「あたしのヒート・ウェイヴ」など魅力的な曲も少なくないのですが、ロックンロールという形でくくりには、80年代という時代は若干、品不足気味なのが否めません。ロックンロールという点を差し引いて、単なるレア・グルーヴとして楽しむのならば、十分楽しめるとは思うのですが。

評価:★★★★

ちなみに2010年にリリースされた「GROOVIN'昭和!」の感想は↓こちらです。
GROOVIN' 昭和!1~こまっちゃうナ
GROOVIN'昭和!2~ベッドにばかりいるの
GROOVIN'昭和!3~恋のサイケデリック
GROOVIN'昭和4~自衛隊に入ろう
GROOVIN'昭和5~ぐでんぐでん
GROOVIN'昭和!6~東京ディスコ・ナイト
GROOVIN'昭和!7~ロマンチスト


ほかに聴いたアルバム

リラックマと遊園地 オリジナル・サウンドトラック/岸田繁

Kishidayuenchi

Netflixオリジナルアニメ「リラックマと遊園地」のサントラ盤。同シリーズの前作「リラックマとカオルさん」に引き続き、くるりの岸田繁が音楽を担当。劇伴音楽ということで、1曲あたり1分程度の、ワンアイディア的なインスト曲が並ぶのですが、リラックマのアニメということもあり、全体的に明るくほっこりした作風の曲に聴いていて明るく暖かい気持ちになります。ラストはテーマ曲「ポケットの中」が収録されているのですが、こちらも岸田繁らしいメロディアスな名曲に仕上がっており、こちらを聴くだけでも十分に価値のある作品。前作同様、リラックマのイメージ通り、だらりんと楽しめるアルバムでした。

評価:★★★★

岸田繁 過去の作品
まほろ駅前多田便利軒 ORIGINAL SOUNDTRACK
岸田 繁のまほろ劇伴音楽全集
岸田繁「交響曲第一番」初演(指揮 広上純一 演奏 京都市交響楽団)
岸田繁「交響曲第二番」初演(指揮 広上純一 演奏 京都市交響楽団)
岸田繁「フォークロア・プレイリスト I」(指揮 広上純一 演奏 京都市交響楽団)
リラックマとカオルさん オリジナル・サウンドトラック

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