チバユウスケ、大いに歌う
Title:SINGS
Musician:YUSUKE CHIBA-SNAKE ON THE BEACH-
元ミッシェル・ガン・エレファント、現在はThe Birthdayで活躍しているボーカリスト、チバユウスケのソロプロジェクト、SNAKE ON THE BEACH。その4枚目となるオリジナルアルバムがリリースされました。いままでの彼のアルバムは比較的、サウンドの面で挑戦したアルバムが多かったのですが、今回のアルバムはタイトル通り、「歌」にフォーカスしたアルバム。その結果、ボーカリスト、チバユウスケの魅力が存分に発揮されたアルバムになっていました。
今回のアルバムは、全体を通じてヘヴィーでノイジーなギターサウンドが鳴り響くガレージロックの作品に。1曲目「ムーンライト」からして疾走感あるギターロックでスタートしつつ、続く「星粒」は力強くダイナミックなバンドサウンドをバックに、彼がゆっくりと歌いあげる作品。そして3曲目「恋人」は非常に分厚くヘヴィーなバンドサウンドが空間を切り刻むような作品となっており、ミッシェル時代からのチバユウスケのファンにとっては、たまらなくカッコよさを感じる楽曲になっているのではないでしょうか。
ダークなギターをバックに哀愁感たっぷりに聴かせるミディアムナンバー「新宿」も、ある意味非常に彼らしさを感じる作品。さらに「BEER&CIGARETTES」はヘヴィーなギターリフを背景にビールとタバコを(おそらく)片手に男2人が語り合っているというユニークなナンバー。こちらもくすんだ雰囲気が非常にカッコいいナンバーに。ちなみにこれ、ゲストではなくチバユウスケ2人が語り合っているというスタイル?
さらに後半で印象深かったのが「星の少年」。おそらく亡くなった友人に対してささげた1曲で、ノスタルジックな感じがあふれるパンキッシュな楽曲が大きなインパクトとなっています。そして「ベイビーアイラブユー」「ラブレター」とロマンチックなラブソングが続き、ラストの「M42」もシンプルなギターサウンドをバックに悲しく歌い上げるチバユウスケの歌が強く印象に残る作品。ある意味、反戦歌にも、このコロナ禍の世界を読み込んだようにも受け取れる歌詞も印象的で、メランコリックなメロディーラインとチバユウスケの歌声が大きなインパクトとなっています。
以前のSNAKE ON THE BEACHのアルバムレビューで、チバユウスケの声はガレージロックやパブロックのスタイルにピッタリマッチしていると書きました。今回のアルバムに関しては、そんなチバユウスケの声にピッタリとマッチしたサウンドの曲が並んでいました。おそらくミッシェル時代からのファンも、The Birthdayからのファンも、「そうそう、こんなチバユウスケのアルバムを聴きたかった!」と思えるようなアルバムではないでしょうか。もちろん、良くも悪くも予想の範囲を出ていない、という部分は否めないものの、その点を差し引いても文句なしにそのカッコよさに耳を奪われた、そんな傑作アルバムでした。
評価:★★★★★
SNAKE ON THE BEACH 過去の作品
DEAR ROCKERS
ほかに聴いたアルバム
FIT/堂島孝平
約2年半ぶりとなる堂島孝平のニューアルバム。メランコリックさを感じさせる軽快でポップなメロディーラインは、メロディーメイカーとしての堂島孝平の魅力をしっかりと感じさせる作品。一方、全体的にシンセのアレンジを前に押し出したシンセポップのアルバムとなっているのですが、このシンセのアレンジが、どうにも平凡というか、ちょっとチープに感じてしまった印象も。そのため、アルバム全体としてはいまひとつ印象が薄くなってしまったのが残念に感じました。
評価:★★★★
堂島孝平 過去の作品
UNIRVANA
VIVAP
Best of HARD CORE POP!
A.C.E.
A.C.E.2
シリーガールはふり向かない
フィクション
オモクリ名曲全集 第一集 堂島孝平篇
VERY YES
BLUE-FANTASIA
酸欠少女/さユり
「酸欠少女さユり」をキャッチコピーにデビューしたシンガーソングライターによる2枚目のフルアルバム。鬱屈した感情を力強いバンドサウンドにのせて歌い上げるスタイルはそれなりにインパクトはあるものの、ちょっと乱暴にカテゴライズしてしまうと、「陰キャ女子の心の叫び」という分野では、Adoがブレイクしちゃっている中、ちょっと彼女の個性は弱くなってしまっている印象も。かといって大森靖子ほど狂った感じにも走っていないし、悪いアルバムではないのですが、あと一工夫ないと厳しいのではないかな、と感じてしまったアルバムでした。
評価:★★★
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