30年たって気が付いた名盤
Title:Quiet Life(30th Anniversary Edition)
Musician:竹内まりや
竹内まりやの8枚目となるオリジナルアルバム「Quiet Life」。1992年にリリースされ、ミリオンセラーになる大ヒットを記録しました。竹内まりやの代表作のうちの1枚であると同時に、日本ポップス史に残る「名盤」である本作が、リリースから30周年記念盤としてリリース。最新デジタルリマスターがほどこされ、LP盤同時リリースという形でのリリースとなりました。
私自身、リアルタイムにリリースされたころは高校生。当時、リアルタイムで聴いた覚えはあります。ただ、その時、このアルバムにそれほどはまった、という記憶はありません。それから30年という月日を経て今回、リマスター盤で本当に久々、このアルバムを聴いてみた次第ですが、あまりに充実の内容に、いまさらながらこのアルバム、とんでもない傑作ということに気が付かされました。
ただこれって、やはり私が年を取ったから、という要素が大きいんですよね。この時、竹内まりや37歳。今の自分より年下ですが、ほぼ同年代。この年になって本作を聴くと、特に歌詞が心に染みます。特に印象に残るのが「家に帰ろう(マイ・スイート・ホーム)」で、倦怠期の夫婦を描いた歌詞が非常にリアル。これは、確かに高校生じゃ理解できないだろうなぁ・・・。他にも「AFTER YEARS」や「Forever Friends」なんかも、30代40代になったからこそ、胸に響いてくる歌詞の世界と言えるでしょう。
また印象に強く残ったのはメロディーやサウンドの側面も。このアルバム、非常に洋楽的な要素の強い楽曲と歌謡曲的な要素の強い楽曲が同時に並んでいます。「Forever Friends」や「コンビイ・ラヴァー」など60年代あたりのアメリカンポップの要素を強く感じる楽曲になっていますし、全体的にも彼女が影響を受けたソフトロックやシティポップ的な要素を強く感じる曲が並んでいます。かと思えば、「告白」や「シングル・アゲイン」などは、哀愁感たっぷりのメロディーラインを前面に押し出した歌謡曲路線になっています。
このある意味、真逆的な、バタ臭い洋楽的なポップスと、いかにも日本的な歌謡曲風の曲が同じアルバムで実に違和感なく並んでいます。ここらへん、竹内まりやの書くメロディーラインが魅力的という点も大きいのでしょうし、プロデューサーで編曲も担当している山下達郎の力量ゆえんという部分も大きいのでしょう。どちらにしても、この音楽性の振れ幅の大きさもこのアルバムの大きな魅力に感じました。
この音楽性についても、高校生の頃では歌謡曲的な曲に違和感しか覚えなかっただろうなぁ、ということを感じてしまいます。そんな点も、やはり30年たった今だからこそ、このアルバムの魅力に再度気が付くことが出来たのでしょう。リアルタイムで聴いたころはそこまでピンと来なかったのですが、30年という月日を経て、ようやく本作の名盤ぶりに気が付くことが出来ました。
ただ、30周年の記念盤ということですが、それで追加収録されたのはカラオケバージョンのみ、というのはちょっと寂しい感が・・・。もうちょっとレア音源とかなかったのかなぁ、とちょっと残念に感じてしまいました。あと、今回のアルバムではじめて気が付いたのですが、竹内まりやの曲はサブスク解禁されているんですね。奥さんの方はいいんだ・・・。
評価:★★★★★
竹内まりや 過去の作品
Expressions
TRAD
REQUEST -30th Anniversary Edition-
Turnable
ほかに聴いたアルバム
BAD HOP HOUSE 2/BAD HOP
BAD HOPの新作は、2018年に開催されたワンマンライブのタイトルを冠した「BAD HOP HOUSE」の続編的な8曲入りのEP。メロウな作風でゆったりとした空気の中で聴かせる作品が多く、リリックも基本的に身の回りの日常を描いたものがメイン。どちらかというと、肩の力を抜いてゆっくりと楽しみたいような作品になっています。リズムは今どきなトラップを取り入れて、BAD HOPの今を描いた印象を受ける作品となっていました。
評価:★★★★
BAD HOP 過去の作品
BAD HOP 1DAY
Mobb Life
BAD HOP HOUSE
BAD HOP ALLDAY vol.2
BAD HOP WORLD
Versus the night/yama
You Tubeなどへの歌唱動画投稿で人気を博したシンガー、yamaのニューアルバム。前作では主にボカロPが作詞作曲を手掛けていたのですが、今回のアルバムではVaundy、川谷絵音、ACIDMANの大木伸夫といった豪華メンバーが作家陣に名を連ねているほか、yamaが作詞作曲を手掛けた曲も収録されています。楽曲としては比較的シンプルなギターロックがメイン。メロディーラインは哀愁感を覚えるような曲が多く、歌謡曲的という印象も受けます。ただ、ちょっとかすれた感のあるボーカルがこのメランコリックなメロディーと相性がよく、素直に楽しめることが出来ました。今回はボカロPの枠組みからはずれた作家陣を起用したこともあり、前作のような「いかにも」感も薄れた感も大きな一歩かも。ネット発という枠組みにとらわれず、広い層にアピールできそうなそんな1枚でした。
評価:★★★★
yama 過去の作品
the meaning of life
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