決して目新しさはないけれども・・・
Title:Curtain Call 2
Musician:ENIMEM
ご存じ、アメリカでもっとも人気のあるラッパーとして日本でも高い知名度を誇るEMINEM。本作は、2005年にリリースされた「Curtain Call」以来2作目となるベストアルバムとなります。2009年にリリースされたアルバム「Relapse」以降の発表された曲を収録しているほか、現時点でアルバム未収録となっている最新シングル「The King&I」「From the D2 the LBC」も収録。さらには50Centと共演した未発表曲「Is This Love('09)」も収録されているなど、豪華な内容となっています。
さて、EMINEMといえば、一時期ほどの勢いはない、とはいえ、2000年にリリースされた「The Marshall Mathers LP」以来、2020年にリリースされた現時点での最新アルバム「Music To Be Murdered By」までオリジナルアルバムが9作連続チャート1位を獲得するなど、押しも押されぬアメリカを代表する大スターであり、間違いなく「セレブ」と言える1人。まず今回のベストアルバムで目立つのは、そんなアメリカを代表する大スターらしさを反映するような、超豪華なゲスト陣でした。
「Lighters」のBruno Mars、「Walk On Water」のビヨンセ、「Love The Way You Lie」「The Monster」のリアーナ、「Won't Back Down」のP!nk、「River」のエド・シーランといった超豪華なメンバーがズラリと顔を揃えています。そして彼らは楽曲の中で歌のパートを担当しているのですが、そのメロディーラインが楽曲の中で大きなインパクトとなっており、アルバムの中でも実に効果的な役割を担っています。「The Marshall Mathers LP」ではアメリカの「セレブ」を揶揄しまくっていた彼ですが、いまやすっかりそんな「セレブ」の仲間入りに・・・。ちょっと複雑な感もなきにしろあらずですが、それだけ豪華なゲストを揃えられるのは、まさに今の彼の地位を如実にあらわしているといっていいでしょう。
また、これら豪華ゲストの「歌」が大きなインパクトになったのも一つの要因でしょうが、聴いていていい意味でポップでわかりやすく、かつバリエーションが豊富というのもEMINEMの大きな魅力ですし、またこれだけ売れ続けている大きな要因だということが、今回のベストアルバムを聴いていて強く感じました。正直言って、EMINEMのラップは、今となって目新しさはほとんど感じられません。楽曲によってはトラップ的な要素を入れている作品もあるのですが、楽曲の移り変わりの激しいHIP HOPというジャンルの中では、ともすれば「時代遅れ」とすら捉えられかねない内容とも言えます。
ただ、そんな中、ラテン風なトラックにリアーナのボーカルを入れて哀愁感たっぷりに聴かせる「Love The Way You Lie」、ギターリフ主導でダイナミックでロッキンなビートが強いインパクトのある、ロックリスナーにも訴求力がある「Berzerk」、アコギも入って、「泣きメロ」とも言えるようなメロディーすら感じられる「Space Bound」、「Sound Of Silence」のフレーズをサンプリングし、悲しげに聴かせるトラックがインパクト大の「Darkness」などなど、バリエーションがあってインパクトたっぷりの楽曲が並びます。全35曲、2時間40分というボリュームたっぷりのベストアルバムでしたが、聴いていて飽きることなく最後まで一気に楽しむことが出来る内容になっていました。
「The Marshall Mathers LP」で大きな話題となって既に20年以上を経過し、すっかり「ベテランミュージシャン」の一員でもあるEMINEM。確かに目新しさはないものの、ただ、それでも今なお人気を持続し続けるその理由が十分すぎるほどわかるようなベストアルバムになっていたと思います。このいい意味でのポピュラリティーとインパクトの強さは他のラッパーにはなかなか持ちえないものでしょう。まだまだEMINEMが王者の座を維持し続けそうです。
評価:★★★★★
EMINEM 過去の作品
RELAPSE
RECOVERY
THE MARSHALL MATHERS LP 2
REVIVAL
Kamikaze
Music To Be Murdered By
Music To Be Murdered By - Side B
ほかに聴いたアルバム
I Am The Moon: III. The Fall/Tedeschi Trucks Band
「I Am The Moon」と名付けられ、全24曲を4枚のアルバムにわけてリリースする壮大なプロジェクトの第3弾。ブルースロックなどルーツロックの要素をふんだんに取り入れて、哀愁たっぷりのメロディーをゆっくり歌い上げるスタイルは、ある意味、彼らにとっての王道を行くようなスタイル。第1弾、第2弾と続き、彼ららしさを存分に押し出した良質なロックミュージックという印象でした。
評価:★★★★
TEDESCHI TRUCKS BAND 過去の作品
Revelator
MADE UP MIND
Let Me Get By
Signs
I Am The Moon:Ⅰ.Cresent
I Am The Moon:Ⅱ.Ascension
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