ようやくの傑作
Title:踊る様に
Musician:ポルカドットスティングレイ
ポルカドットスティングレイについては、惜しいミュージシャンだな、ということをいつも感じていました。女性ボーカル+男性のリズム隊3名というバンド編成は、レベッカからLINDBERG、ジュディマリへとつながる、J-POPのガールズボーカルバンドの典型的なメンバー構成。個人的には、この手のバンドは結構、壺だったりするだけに、いままでも彼女たちのアルバムについてはすべて聴いてきました。ただ、これまでの彼女たちのアルバムについては、ポップでそれなりにインパクトはあるものの、どうもメロディーの側面でもサウンドの面でも、あと一歩の物足りなさを感じ、非常に惜しさを感じるアルバムが続いていました。
本作は、そんな彼女たちの4枚目となるフルアルバムなのですが、個人的にはようやく「傑作」と言えるレベルの作品を聴けたような印象を受けます。まずなんといっても今回のアルバムの大きな特徴としては音楽的なバリエーションの多さでしょう。メロウなメロとファンキーなリズムを聴かせる「SHINOBI-NAI」からスタート。続く「青い」は一転、比較的スタンダードなギターポップチューンに。疾走感ありリズミカルな「ダイバー」と序盤から色とりどりのタイプの曲が並びます。
リズミカルでラップも入り、どこかソウル風な要素も感じる「dude」に、シンセを入れてファンキーなサウンドを聴かせる「hide and seek」へと続いたかと思えば、「SURF」は一転、キュートなポップソングを聴かせてくれます。さらに「ショートショート」は再び王道系のギターロックチューンへの続き、バラードナンバーの「恋愛論」から、「トーキョーモーヴ」はボーカル雫のアイドル性を前に出したようなキュートなポップソングに仕上げています。
全体的に前半は、ファンキーなリズムを聴かせるナンバーが多く、彼女たちが意外とソウルやファンク、R&B系の影響を受けたバンドなんだ、ということにあらためて気が付かされます。一方、後半は比較的ストレートなギターロック路線がメイン。いままでの彼女らしい作風と言っていいでしょう。ただ、ラストを締めくくる「odoru yo-ni」は再びメロウなR&B風のナンバーを聴かせてくれています。
いままでもバリエーションを出したアルバムはリリースしていたのですが、今回のアルバムに関しては、いままで以上にバンドとしての音楽性の幅を感じるアルバムになっていました。なによりも、いままでの作品以上に彼女たちのソウルやR&Bからの意外な影響を感じるアルバムとなっており、アルバムの中でも、特にそれらブラックミュージックからの影響を受けた曲の方がおもしろみを感じるほど。彼女たちの持つ音楽性の意外な側面を感じることの出来る作品だったと思います。
正直言うと、今回のアルバム、「会心の出来」というほどとびぬけた傑作、といった感じではありません。ただ、いままで非常に惜しいという印象を受けるアルバムをリリースし続けた彼女たちの中では、ようやく一定のレベル以上のアルバムをリリースしてきたかな、といった印象を受ける作品でした。このレベルの作品を今後もリリースし続ければうれしい限りですし、おそらく彼女たちのレベルなら、それも十分可能なはず・・・。彼女たちの新たな一歩を感じさせるアルバムでした。
評価:★★★★★
ポルカドットスティングレイ 過去の作品
大正義
全知全能
一大事
有頂天
ハイパークラクション
新世紀
何者
赤裸々
ほかに聴いたアルバム
Luxury Disease/ONE OK ROCK
約3年半ぶりとなるONE OK ROCKのニューアルバム。前作は安直に「洋楽的」な方向性を目指した結果、チープさを感じる凡作となっていました。今回のアルバムについては、今度はロックバンドのダイナミズムな作風を前面に押し出した作品に。ある意味、ONE OK ROCKのロックバンドとしての側面を強調した作品となっていますが、その分、ONE OK ROCKの魅力を感じられる作品になっていました。
ONE OK ROCKといえば、サマソニでTakaが禁止させる声出しを煽ったという点で物議を呼びました。正直、なぜライブで声出しを禁止されているのか、コロナ禍以降のライブを巡る状況を考えれば、すぐに理解できるはずなのに、そういうことに考えが及ばないTakaは、率直に言えば粋がっているだけで頭が悪いとしか思えないのですが、正直、そういう「粋がった」部分は今回のアルバムでも強く感じます。無駄に自己顕示欲が強い感が、アルバムの中でマイナスに働いている部分が否めず、その点は大きなマイナスになっているように感じました。
非常に勢いの強いバンドだとは思うのですが、一方で、そろそろもうちょっと「大人」になってほしいと感じさせるバンド。良くも悪くも若々しい感じがするのですが、それがプラスにもマイナスにも働いている感じがします。サマソニの件も含めて、いろいろと「痛さ」も感じさせてしまうアルバムでした。
評価:★★★★
ONE OK ROCK 過去の作品
Nicheシンドローム
残響リファレンス
人生×僕=
35xxxv
Ambitions
AMBITIONS INTERNATIONAL VERSION
Eye of the Storm
NIAGARA TRIANGLE Vol.2 40th Anniversary Edition
1982年に、大滝詠一が主催する「ナイアガラレーベル」からリリースされたアルバムの40周年記念盤。当時、新進気鋭のミュージシャンとして注目を集めていた杉真理と佐野元春が参加し、彼ら2人に大滝詠一の3名が参加する形でアルバムは作成されています。ロック色の強い佐野元春、AOR色の強い杉真理、洋楽ポップの大滝詠一と3人それぞれの色がしっかりと出ていながらも、アルバム全体としてゆるくまとまっているのがユニーク。通常盤ではDisc2でオリジナル盤リリース時に大滝詠一が自ら制作したスペシャル・ラジオプログラム「スピーチ・バルーン 1982」を完全収録。珠玉のポップスがつまった、文句なしの名盤です。
評価:★★★★★
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