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2022年10月

2022年10月31日 (月)

社会とリンクした傑作アルバム

Title:Long Voyage
Musician:七尾旅人

約2年10カ月ぶり。少々久しぶりとなる七尾旅人のニューアルバムは、「社会」と非常にリンクした、特に彼が訴えかける歌詞の世界観に大きな衝撃を受ける傑作アルバムに仕上がっていました。

七尾旅人は、以前より非常に社会性の強い活動を続けてきました。東日本大震災の時には音楽配信サイトDIY STARSを使い、義援金プロジェクトを立ち上げ、さらにコロナ禍においては自宅療養者に対して食べ物を届けるフードレスキューの活動をはじめたり、かなり積極的かつ具体的な活動を続けてきました。

音楽的にも、かつてアメリカ同時多発テロをモチーフとしたアルバム「911FANTASIA」をリリースしたほか、近い未来に生じるであろう、自衛隊員初となる戦死者をテーマとした舞台映像作品「兵士A」を発表したりと、かなり社会性のある作品をリリースしてきました。そんな中、コ新型コロナ流行後、初となる今回の作品は、いままでの作品以上に社会にリンクした作品となっていました。

インスト曲から続く、事実上の1曲目「crossing」は、単に仕事をなくした男性が、夜の街をドライブする話かと思いきや、最後にコロナ禍の中、港への長期停泊を余儀なくされたダイヤモンドプリンセス号の名前が登場。仕事をなくした経緯もおそらくコロナ禍だからであろうことを予期させる内容となっています。

その後も「ソウルフードを君と」では、BLMに直結するような黒人差別、さらには民族問題を彷彿とさせる歌詞となっていますし、「フェスティバルの夜、君だけいない」も切ないラブソングを装いながらも、コロナ禍の中で苦境となった音楽業界を彷彿とさせます。「Wonderful Life」「『パン屋の倉庫にて』」は、コロナ禍を経て、さらに拍車がかかり苦境に陥っている人々の現実を描写していますし、「미화(ミファ)」では自殺した在日の女の子がテーマ。ストレートには表現していないものの、背景には在日差別を感じさせます。さらに、かなりストレートなのが「入管の歌」で、最近、問題となっている入国管理局での外国人差別の問題をかなりストレートに切り込んでいます。

ただ、これら社会にリンクした曲に関して彼の書く歌詞の大きな特徴が、その実態をただ描写している歌詞が多い、ということ。前述の「兵士A」もそうでしたが、その上での明確な彼の主張をストレートに歌い上げている訳ではありません。あえていえば事実を提示した上で、「こんな実態があるが、どう思う」とリスナーに突き付けているような印象を受けるのが彼の歌詞の大きな特徴。ただただ実態を突き付けているがゆえに、より心に響いてくる作品になっています。

そしてそんな曲をシンプルなアコースティックのサウンドをバックに、とても優しい歌声で聴かせてくれます。以前の七尾旅人というと、非常に実験性の強いポップソングが特徴的でした。その後、メロディアスに歌を聴かせる曲が増えてきていたのですが、今回のアルバムはそんな中でも特にメロディアスな歌を聴かせてくれる曲が並びます。基本的にはアコースティックでしんみりと聴かせる曲がメインなのですが、「ソウルフードを君と」は歌詞の内容からリンクするようなジャズやソウルの要素を加えて楽しく賑やかに聴かせてくれますし、「フェスティバルの夜、君だけいない」はAORの要素も入ったポップなナンバー。「ドンセイグッバイ」ではブルージーなギターを聴かせつつ、ゲストボーカルとして大比良瑞希が参加し、メランコリックに聴かせる楽曲に。ラストを締めくくる「Long Voyage『筏』」では力強いリズムとアコーディオンでエキゾチックに聴かせるインストナンバーに仕上げるなど、バラエティー富んだ展開を楽しめます。

とはいえども、全体的にシンプルな楽曲がメインになっているのは、やはりあくまでも「歌」を聴かせることが主眼なのでしょう。ただ一方で決して派手ではないもののしっかりと耳に残るメロディーラインも魅力的で、デビュー当初から感じる七尾旅人のメロディーメイカーとしての実力もしっかりと感じさせます。そんな社会とリンクした「歌」を聴かせるこのアルバムは、コロナ禍の今だからこそ生まれたであろう、七尾旅人の才能と魅力のつまった傑作アルバムに仕上がっています。

ここ数作、傑作アルバムの続く彼でしたが、個人的には本作が彼の最高傑作ではないかと思えるほどの充実作。また文句なしに今年を代表する傑作アルバムに仕上がっていたと思います。あらためて七尾旅人はすごいミュージシャンなんだと実感できた作品。2022年の今だからこそ、ぜひとも聴いてほしい作品です。

評価:★★★★★

七尾旅人 過去の作品
billion voices
リトルメロディ
Stray Dogs


ほかに聴いたアルバム

ANTHEMICS/The Ravens

Dragon AshのKjこと降谷建志がソロ活動を行う中で、ソロでのサポートメンバーたちと結成したバンドThe Ravensのデビューアルバム。ソロアルバムの延長線ということもあって、ソロでリリースされた2枚のアルバムと同じような方向性となっており、ピアノを取り入れ、Dragon Ashに比べて、これでもかというほど分厚いサウンドと、メランコリックなメロディーラインが大きな特徴。ただ、ソロ2作と比べてバンド色が強くなり、一方でソロらしい繊細さはちょっと薄れた感じも。よりKjのパーソナルな要素が押し出されていたソロの方がよかったような感もあるのですが、バンドとしての活動をスタートさせたThe Ravensの今後も期待したいところでしょう。

評価:★★★★

Road to 老後 CM王への道/カーリングシトーンズ

寺岡呼人、奥田民生、斉藤和義、浜崎貴司、YO-KING、トータス松本というそうそうたるメンバーからなるロックバンド、カーリングシトーンズの新作は、奥田民生YouTubeチャンネルから誕生した企画だそうで、 カーリングシトーンズメンバーが即興で制作した作品をまとめたアルバム。コロナ禍に苦戦する街の自営業者を応援するコンセプトで店内のBGM用楽曲をまとめたコンセプトアルバムとなっています。1曲あたり1、2分程度のコンパクトな内容になっているのですが、ギターロックからカントリー、ダブ、ブルースロック、演歌、吹奏楽、ファンクなど、実にバラエティーに富んだ作品が並んでおり、メンバーの音楽性の幅広さを感じさせます。基本的に企画モノで楽しんで軽い気持ちで作った作品なのですが、それだけに聴いていても素直に楽しめる内容に。短いながらもキラリと光る作品に仕上がっていました。

評価:★★★★★

カーリングシトーンズ 過去の作品
氷上のならず者
カーリングシトーンズ デビューライブ! ~カーリング・シトーンズと近所の石~
Tumbling Ice

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2022年10月30日 (日)

ポップなメロディーの強度がさらに増した傑作

Title:Keep On Smiling
Musician:TWO DOOR CINEMA CLUB

Keeponsmiling

約3年ぶり・・・というから、ちょっと久しぶりとなるイギリスは北アイルランドのインディーロックバンド、TWO DOOR CINEMA CLUBのニューアルバム。非常に軽快なポップチューンで人気を集める彼ら。特にオリジナルアルバムとして前作となる「False Alarm」や、その後リリースされたEP盤「Lost Songs(Found)」では、いい意味であか抜けたポップソングを楽しめる作品となっており、次の作品にも期待を抱かしてくれました。

そしてリリースされた今回のニューアルバムですが、そんな前作までで感じた期待をそのまま引き継ぐような、ポップで楽しいアルバムに仕上がっていました。オープニング曲から続いてはじまる事実上の1曲目「Blue Light」は、80年代ポップスをそのまま継承したようなダンサナブルなシンセポップ。まずはウキウキとした気分で楽しませてくれます。続く「Everybody's Cool」も、MVが作成されたアルバムの代表曲の1曲ですが、こちらもメロディアスで楽しい気分に浸れるシンセポップチューン。序盤からいきなりインパクトあるメロディーが耳に残る楽曲からスタートします。

この80年代っぽい軽快なシンセポップというのは、以前からのTWO DOOR CINEMA CLUBの特徴でしたが、今回のアルバムではその傾向がさらに強化。加えてメロディーラインのインパクトがさらに強まった印象を受けます。「Everybody's Cool」と同様、MVが作成された「Lucky」も、同じく80年代風のシンセポップなのですが、ちょっとメランコリックさを感じるメロディーラインが大きなインパクトに。しんみり聴かせる「High」なども、やはりシンセのサウンドもそうですし、ちょっとAORテイストを感じさせるメロディーラインも実に80年代的。どこか懐かしさも感じさせます。

そしてアルバムの中でも大きな核となっているのが、先行シングルでもある「Wonderful Life」でしょう。こちらも80年代風の軽快なエレクトロポップ。ダンサナブルなリズムが楽しく、洋楽としては珍しく、わかりやすいサビの部分を持ったインパクトあるメロディーラインが特徴的。ワクワク感の止まらない作品になっています。

80年代を感じさせるシンセポップを主軸に、ポップなメロディーラインが大きなインパクトを持つ楽曲が並ぶ今回のアルバム。なんといってもメロディーラインのインパクトが、いままでのアルバム以上に強く、よりポップなアルバムに仕上がっていたように感じます。前作「False Alarm」でポップなメロディーラインの強度がより増した、という印象を受けましたが、今回のアルバムではさらに進化したようにすら感じました。インディーロックという枠組みにとらわれず、より広い層が楽しめる、そんな傑作でした。

評価:★★★★★

TWO DOOR CINEMA CLUB 過去の作品
Tourist History
Beacon
Gameshow
False Alarm
Long Songs(Found)


ほかに聴いたアルバム

The Elephant Man's Bones/Roc Marciano&The Alchemist

ニューヨークのアンダーグラウンドシーンで活躍するラッパーRoc Marcianoと、ロサンジェルスを拠点に活動を続け、様々なミュージシャンへのプロデュースに加えて、エミネムのDJとしても知られるThe Alchemistが組んでリリースした作品。不穏な雰囲気をベースとしつつも、メロウなトラックやジャジーなサウンド、ミニマルなトラックなど様々に展開するサウンドに耳を惹かれる作品に。淡々としたRoc Marcianoのラップも大きな魅力。

評価:★★★★★

Heaven Come Crashing/Rachika Nayar

ニューヨークはブルックリンを拠点に活動しているプロデューサーによる2枚目のアルバム。ゆっくり聴かせるドリーミーなエレクトロサウンドが心地よいアンビエントな作品。ノイズやトランスを取り入れたり、バンドサウンドを入れてきたりと、なかなかバラエティーに富んだユニークな構成もおもしろいところ。ポップなメロもしっかりと流れており、いい意味での聴きやすさも感じる作品でした。

評価:★★★★★

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2022年10月29日 (土)

30年たって気が付いた名盤

Title:Quiet Life(30th Anniversary Edition)
Musician:竹内まりや

竹内まりやの8枚目となるオリジナルアルバム「Quiet Life」。1992年にリリースされ、ミリオンセラーになる大ヒットを記録しました。竹内まりやの代表作のうちの1枚であると同時に、日本ポップス史に残る「名盤」である本作が、リリースから30周年記念盤としてリリース。最新デジタルリマスターがほどこされ、LP盤同時リリースという形でのリリースとなりました。

私自身、リアルタイムにリリースされたころは高校生。当時、リアルタイムで聴いた覚えはあります。ただ、その時、このアルバムにそれほどはまった、という記憶はありません。それから30年という月日を経て今回、リマスター盤で本当に久々、このアルバムを聴いてみた次第ですが、あまりに充実の内容に、いまさらながらこのアルバム、とんでもない傑作ということに気が付かされました。

ただこれって、やはり私が年を取ったから、という要素が大きいんですよね。この時、竹内まりや37歳。今の自分より年下ですが、ほぼ同年代。この年になって本作を聴くと、特に歌詞が心に染みます。特に印象に残るのが「家に帰ろう(マイ・スイート・ホーム)」で、倦怠期の夫婦を描いた歌詞が非常にリアル。これは、確かに高校生じゃ理解できないだろうなぁ・・・。他にも「AFTER YEARS」「Forever Friends」なんかも、30代40代になったからこそ、胸に響いてくる歌詞の世界と言えるでしょう。

また印象に強く残ったのはメロディーやサウンドの側面も。このアルバム、非常に洋楽的な要素の強い楽曲と歌謡曲的な要素の強い楽曲が同時に並んでいます。「Forever Friends」や「コンビイ・ラヴァー」など60年代あたりのアメリカンポップの要素を強く感じる楽曲になっていますし、全体的にも彼女が影響を受けたソフトロックやシティポップ的な要素を強く感じる曲が並んでいます。かと思えば、「告白」「シングル・アゲイン」などは、哀愁感たっぷりのメロディーラインを前面に押し出した歌謡曲路線になっています。

このある意味、真逆的な、バタ臭い洋楽的なポップスと、いかにも日本的な歌謡曲風の曲が同じアルバムで実に違和感なく並んでいます。ここらへん、竹内まりやの書くメロディーラインが魅力的という点も大きいのでしょうし、プロデューサーで編曲も担当している山下達郎の力量ゆえんという部分も大きいのでしょう。どちらにしても、この音楽性の振れ幅の大きさもこのアルバムの大きな魅力に感じました。

この音楽性についても、高校生の頃では歌謡曲的な曲に違和感しか覚えなかっただろうなぁ、ということを感じてしまいます。そんな点も、やはり30年たった今だからこそ、このアルバムの魅力に再度気が付くことが出来たのでしょう。リアルタイムで聴いたころはそこまでピンと来なかったのですが、30年という月日を経て、ようやく本作の名盤ぶりに気が付くことが出来ました。

ただ、30周年の記念盤ということですが、それで追加収録されたのはカラオケバージョンのみ、というのはちょっと寂しい感が・・・。もうちょっとレア音源とかなかったのかなぁ、とちょっと残念に感じてしまいました。あと、今回のアルバムではじめて気が付いたのですが、竹内まりやの曲はサブスク解禁されているんですね。奥さんの方はいいんだ・・・。

評価:★★★★★

竹内まりや 過去の作品
Expressions
TRAD
REQUEST -30th Anniversary Edition-
Turnable


ほかに聴いたアルバム

BAD HOP HOUSE 2/BAD HOP

Badhophouse2

BAD HOPの新作は、2018年に開催されたワンマンライブのタイトルを冠した「BAD HOP HOUSE」の続編的な8曲入りのEP。メロウな作風でゆったりとした空気の中で聴かせる作品が多く、リリックも基本的に身の回りの日常を描いたものがメイン。どちらかというと、肩の力を抜いてゆっくりと楽しみたいような作品になっています。リズムは今どきなトラップを取り入れて、BAD HOPの今を描いた印象を受ける作品となっていました。

評価:★★★★

BAD HOP 過去の作品
BAD HOP 1DAY
Mobb Life
BAD HOP HOUSE
BAD HOP ALLDAY vol.2
BAD HOP WORLD

Versus the night/yama

You Tubeなどへの歌唱動画投稿で人気を博したシンガー、yamaのニューアルバム。前作では主にボカロPが作詞作曲を手掛けていたのですが、今回のアルバムではVaundy、川谷絵音、ACIDMANの大木伸夫といった豪華メンバーが作家陣に名を連ねているほか、yamaが作詞作曲を手掛けた曲も収録されています。楽曲としては比較的シンプルなギターロックがメイン。メロディーラインは哀愁感を覚えるような曲が多く、歌謡曲的という印象も受けます。ただ、ちょっとかすれた感のあるボーカルがこのメランコリックなメロディーと相性がよく、素直に楽しめることが出来ました。今回はボカロPの枠組みからはずれた作家陣を起用したこともあり、前作のような「いかにも」感も薄れた感も大きな一歩かも。ネット発という枠組みにとらわれず、広い層にアピールできそうなそんな1枚でした。

評価:★★★★

yama 過去の作品
the meaning of life

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2022年10月28日 (金)

力の入れようを感じるセルフタイトル作

Title:Legend
Musician:John Legend

約2年3ヶ月ぶりとなるJohn Legendのニューアルバム。事実上のセルフタイトルのようなアルバムになっていますが、今回のアルバムは全24曲1時間20分にわたるボリューム感ある内容。CDでは2枚組となり、その力の入れようがうかがえます。2組のCDで「Act-1」「Act-2」とわけられた本作は、本人曰く「1枚目は土曜日の夜のパーティーなバイブスで僕のパーティーな面を表現している。2枚目はどちらかというと日曜日の朝のバイブスで、1枚目に比べると大人しめな曲が多くなっている。この2枚のアルバムが僕のさまざまな側面を映し出してくれていると感じている」だそうで、2枚のCDで異なったJohn Legendの作風が楽しめる作品となっています。

実際、Act-1に相当する1枚目は、リズミカルな作風の曲が目立つ構成になっています。冒頭を飾る「Rounds」こそ伸びのあるボーカルで歌いあげるミディアムソウルのナンバーとなっていますが、続く「Waterslide」も、スタートこそ彼のファルセットボーカルでしんみり聴かせるスタートとなっているのですが、すぐにテンポのよいビートが入ってきて、リズミカルな作品にチェンジします。

続く「Dope」も強いビートのナンバー。John Legendはファルセット気味の伸びやかなボーカルを聴かせてくれるのですが、ラッパーのJIDも参加し、軽快なラップを聴かせてくれます。その後もちょっと80年代を彷彿とさせる軽快なダンスチューン「All She Wanna Do」やファルセットのボーカルを美しく聴かせつつも、軽快なビートの入った「You」など、リズミカルな作品が目立ちます。

その後は、Jazmine Sullivanが参加した「Love」のようなソウルバラードのナンバーもあるのですが、最後は再びダンスチューン「All She Wanna Do」の女性ラッパーのSaweetieをゲストに迎えたバージョンで締めくくり。アルバム全体としてダンスチューンが大きなインパクトを感じる作風となっていました。

一方後半は、彼自身が語るとおり、おとなしめのナンバーがメイン。ギターサウンドでしんみり聴かせるソウルバラード「Wonder Woman」、彼の王道とも言うべきアーバンなソウルチューン「Honey」や、昔ながらのメロウなソウルチューン「Good」など、ストレートなソウル、R&Bの楽曲が目立ちます。ここらへんはJohn Legendの本領発揮とも言うべきナンバーでしょう。

ただ、この2枚目についてはソウル、R&Bという枠組みに留まらないJohn Legendの音楽性を感じさせます。「I Want You To Know」はレゲエのリズムを取り入れていますし、アコギのアルペジオも入ってしんみり聴かせて「Memories」などはフォーキーな要素も感じさせます。ソウルシンガーという一言で留まらないJohn Legendの魅力を感じさせる作品となっています。

またあえていえばAct-1はサウンド的に比較的、「今風」を感じさせる作風。一方、Act-2については昔ながらのサウンドといった印象を受けます。ただ全体的にはサウンドに目新しさはなく、その点、若干残念に感じる部分もなきにしもあらずでした。もっとも、その分、安心して聴けるアルバムになっており、John Legendの魅力をしっかり生かされているアルバムにも感じました。2枚組で、事実上のセルフタイトルということで彼の力の入れようがわかる傑作アルバム。売上の側面では最近、若干低調気味な彼ですが、その実力に衰えはないことを感じさせる作品でした。

評価:★★★★★

John Legend 過去の作品
once again
WAKE UP!(John Legend&The Roots)
LOVE IN THE FUTURE
DARKNESS AND LIGHT
A Legendary Christmas
Bigger Love


ほかに聴いたアルバム

Will Of The People/MUSE

イギリスのロックバンド、MUSEによる約4年ぶりのニューアルバム。MUSEといえば、分厚いバンドサウンドをこれでもかというほどゴリゴリに押し付け、ダイナミックな楽曲を聴かせるバンド。良くも悪くも胸焼けしそうなこってりサウンドが特徴的なバンドですが、今回のアルバムも、いつものMUSE同様、バンドサウンドに打ち込みやピアノなども取り入れて、これでもかというほど分厚くダイナミックなサウンドを聴かせてくれます。MUSEとしての目新しさはないけれども、聴いた後にMUSEを聴いたな、という満足感は間違いなく感じることの出来る作品になっていました。

評価:★★★★

MUSE 過去の作品
The Resistance
The 2nd Law(邦題 ザ・セカンド・ロウ~熱力学第二法則)
Live at the Rome Olympic Stadium
Drones
SIMULATION THEORY

I Am The Moon:Ⅳ.Farewell/Tedeschi Trucks Band

全4作からなる「I Am The Moon」プロジェクトの最終章となる作品。前半は力強さを感じるバンドサウンドを聴かせる作品になっており、一方後半は、哀愁感たっぷりのメロディーを聴かせる内容になっています。この力強いバンドサウンドと哀愁感あるメロディーといえば、テデスキの魅力を端的にあらわした要素。そういう意味ではプロジェクト最終作にして、テデスキの魅力であり特徴を、わずか6曲の中で凝縮させた作品ともいえるかもしれません。

評価:★★★★

TEDESCHI TRUCKS BAND 過去の作品
Revelator
MADE UP MIND
Let Me Get By
Signs
I Am The Moon:Ⅰ.Cresent
I Am The Moon:Ⅱ.Ascension
I Am The Moon: III. The Fall

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2022年10月27日 (木)

女性アイドルが目立つチャート

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週は女性アイドルが目立つチャートとなっていました。

まず初登場で1位を獲得したのは韓国の女性アイドルグループLE SSERAFIMの2枚目となるミニアルバム「ANTIFRAGILE」。CD販売数1位、ダウンロード数2位。オリコン週間アルバムランキングでも初動売上4万3千枚で1位初登場。前作「FEARLESS」は国内盤リリースのタイミングで2万4千枚を売り上げて2位にランクインしていますので、そちらよりアップしています。

今週は彼女たちをトップに、まず日本の女性アイドルグループ、フィロソフィーのダンス「Red Carnival」が8位に、九州出身の女性で結成されたアイドルグループばってん少女隊「九祭」が10位にランクイン。フィロソフィーのダンスはCD販売数が8位にランクインし、その他は圏外。オリコンでは初動売上8千枚で8位初登場。前作「愛の哲学」の初動7千枚(8位)より微増。ばってん少女隊はCD販売数9位、ダウンロード数45位。オリコンでは初動売上8千枚で9位に初登場しています。

さらに9位には韓国の女性アイドルグループRed Velvetのメンバー、SEULGIことカン・スルギのソロデビューミニアルバム「28 Reasons」がランクインしています。CD販売数8位でその他は圏外。オリコンでは発売日の関係で先週のベスト50圏外から今週4千枚を売り上げ、13位にランクインしています。

さて、上位に戻ります。今週2位は先週まで2週連続で1位を獲得していた松任谷由実「ユーミン万歳!~松任谷由実50周年記念ベストアルバム~」がワンランクダウンながらもベスト3をキープしています。CD販売数は4位までダウンしましたが、ダウンロード数は今週も1位をキープしています。

3位にはChroNoiR「UP 2 YOU」がランクイン。CD販売数2位、ダウンロード数8位。にじさんじ所属のVTuber「叶」と「葛葉」が組んだユニットのデビューアルバムです。オリコンでは初動売上2万6千枚で3位初登場。

続いて4位以下の初登場盤ですが、まずは韓国の男性アイドルグループTREASURE「THE SECOND STEP:CHAPTER TWO」がランクインです。CD販売数3位、PCによるCD読取数62位。オリコンでは発売日の関係で先週4位にランクイン。今週は2万1千枚を売り上げて5位にランクダウンしています。

5位には原由子「婦人の肖像(Portrait of Lady)」が初登場。CD販売数5位、ダウンロード数4位、PCによるCD読取数7位。ご存じ、サザンオールスターズのメンバーで、桑田佳祐夫人の原坊こと原由子の、オリジナルアルバムとしては実に31年ぶり(!)となる作品となります。ただ、この31年前のオリジナルアルバム、リアルタイムで聴いていたんだよなぁ・・・つくづく、自分が年を取ったことを感じてしまいます・・・。オリコンでは初動売上2万2千枚で4位初登場。直近作はベストアルバムの「ハラッド」で同作の初動売上6万2千枚(3位)からはダウン。ちなみにオリジナルアルバムとしての前作「MOTHER」は初動売上8万2千枚(4位)でしたので、こちらからもダウン。まあ、30年以上前のCDをめぐる状況は今とは全く異なるので、参考にはならないかもしれませんが・・・。

ロングヒット盤としてはAdo「ウタの歌 ONE PIECE FILM RED」が今週は6位にランクイン。これで連続11週目のベスト10ヒットとなりました。

今週のHot Albumsは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2022年10月26日 (水)

ヒゲダン vs 米津

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週はヒゲダンと米津玄師の一騎打ちとなりました。

Subtilte

今週1位はOfficial髭男dism「Subtitle」が先週の3位からランクアップし、見事1位に輝きました。一方、米津玄師「KICK BACK」は1位から2位にダウン。先週と両者の順位が入れ替わる結果となっています。特に、ダウンロード数はヒゲダン2位、米津1位に対して、ストリーミング数はヒゲダン1位、米津2位と交互になっているのがユニークなところ。ただYou Tube再生回数はヒゲダン4位に対して米津100位と大きく差がついている点が1位2位の差となりました。

そして初登場組で最高位となるのが3位、THE RAMPAGE from EXILE TRIBE「ツナゲキズナ」。「2022世界バレー」TBS公式テーマソング。CD販売数2位、ストリーミング数64位、ラジオオンエア数1位、PCによるCD読取数45位、Twitterつぶやき数2位。オリコンでは初動売上14万6千枚で2位初登場。前作「THE POWER」の2万8千枚(4位)から大幅にアップしています。

続いて4位以下の初登場曲ですが、まず4位にAKB48「久しぶりのリップグロス」がランクイン。CD販売数は1位でしたが、ラジオオンエア数70位、PCによるCD読取数7位、Twitterつぶやき数9位。オリコンでは初動売上31万7千枚で1位初登場。前作「元カレです」の初動32万8千枚(1位)よりダウン。ベスト3から陥落したばかりか、CD販売数では上回っていたTHE RAMPAGEも総合順位で下回るという結果になってしまいました。

7位には刀剣男士 formation of 江水散花雪「お前が知ってる」が初登場。CD販売数3位、ダウンロード数30位、PCによるCD読取数1位、Twitterつぶやき数13位。ゲーム「刀剣乱舞」の舞台版に登場する役者によるシングル曲。オリコンでは初動売上10万7千枚で3位初登場。同舞台からの作品では前作、刀剣男士 formation of パライソによる「Free Style」の初動7万3千枚(3位)からアップしています。

9位には韓国の女性アイドルグループIVE「ELEVEN」がランクイン。CD販売数4位、ラジオオンエア数54位、PCによるCD読取数33位、Twitterつぶやき数31位。オリコンでは初動売上6万8千枚で4位初登場。本作が日本デビュー作となります。

続いてロングヒット曲ですが、まずはAdo「新時代(ウタ from ONE PIECE FILM RED」は先週から変わらず5位をキープ。これで20週連続のベスト10ヒットとなりました。一方、先週までベスト10ヒットを続けていた「私は最強(ウタ from ONE PIECE FILM RED)」は今週15位にダウン。こちらのベスト10ヒットは10週でストップ。長らく複数曲のベスト10ヒットを続けてきたAdoでしたが、今週、ついにベスト10ヒットは残り1曲となりました。

また、先週まで長らくベスト10ヒットを続けてきたTani Yuuki「W / X / Y」は今週14位にダウン。ついにベスト10から陥落となりました。ベスト10ヒットは連続28週でストップです。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

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2022年10月25日 (火)

拡大していくシーンの中で

昨日に引き続き、今日も最近読んだ音楽系の書籍の紹介です。

今回は、日本語ラップのブログ開設以降、特に日本語ラップの評論活動を続けるライターの韻踏み夫(「ギャグマンガ日和」に登場しそうな名前だな・・・)による日本語ラップの名盤ガイド「日本語ラップ名盤100」です。タイトル通り、日本語ラップの名盤100枚を紹介したディスクガイド。ラップ黎明期のいとうせいこうやTINNIE PUNXからスタートし、スチャダラやキングギドラ、THA BLUE HERBやShing02、RHYMESTER、BUDDHA BRANDといった早々たる面子の名盤を並べつつ、直近2021年の作品まで、日本語ラップの代表作がズラリと並んでいます。

日本語ラップの名盤ガイドといえば、昔、当サイトで「日本語ラップ伝説」という本を取り上げたことがあります。ただ、この本が出てから、もう10年も経つのですね・・・ちなみにこの10年間(2013年以降)に、本書では20枚もの作品が名盤として取り上げられており、日本語ラップが現在進行形で数多くの名盤がリリースされ続けていることを感じさせます。

さて、昨日はボカロの名曲ガイドを取り上げて、今日は日本語ラップ。実はこの2冊、あえて続けて取り上げさせていただきました。というのも、この2冊を読んで強く感じたのが、ボカロソングと日本語ラップ、ある意味、ここ数年内で日本のヒットシーンの中でもっとも勢いを感じさせるジャンルであるのですが、2冊続けて読むと、この両者、見事に正反対の特徴を持っていることを感じるからです。

特に特徴的なのが楽曲と社会全般とのリンク。ボカロは、正直、ちょっと異常と思われるほど「社会」から距離を置いているのに対して、日本語ラップは非常に社会派な曲が多くリリースされています。HIP HOPも、シーンの性質的に「内輪」な要素が大きいジャンルではあるのですが、昨日書いた、ボカロの「内向き」とはちょっと違って、HIP HOPは内輪ではあるものの、仲間との絆や地域のつながりを大切にしており、ある意味、「他者」を意識しているのに対して、ボカロは完全にある意味、他者を全く意識していない「内向き」さを感じます。

本書では、こちらはおそらく著者の意向もあるのでしょうが、この社会派的な側面を非常にクローズアップした批評が目立ったように思います。内輪でありつつ、社会とのつながりを意識している日本語ラップ・・・それは、日本語ラップが地域とのつながりを大切にしている点にもつながります。この点もボカロとは対極的で、日本語ラップは、横浜や名古屋など地域性を押し出したラッパーのグループが存在するのですが、ボカロの場合、こちらも異常と思えるほど地域性がありません。

もちろん、そういったHIP HOPの特徴がネガティブに反応する場合もあり、ビーフ(ラッパー同士、けなしあうこと)や、セルアウトに対する拒絶感などは他者を意識しているからこそ起こりえる現象とも言えるのでしょう。ボカロでは、ボカロP同士が批判し合うだとか、売れることに対して拒否反応を示す、などといった現象は一切起こっていません。そういった点でも対極性を感じます。

ちなみに本書、社会派にクローズアップしているという特徴の流れで、比較的、フィメールラッパーも積極的に取り上げているような印象を受けました。特にHIP HOPの世界では男尊女卑的な傾向が強く、シーンのネガティブな要素となっているだけに、そんな中で活動するフィメールラッパーはいずれも非常にその言動が意識的。それだけらこそ、後の世に強く印象付ける名盤を生み出しやすいのかもしれません。

ボカロソングが曲単位の紹介なのに対して、日本語ラップがアルバム単位という点も対極的と言えるかもしれません。ただ、両者に共通する点としては、ここ数年、そのすそ野がどんどんと広がっていっているという点でしょう。ボカロシーンもそうですが、日本語ラップも様々なラッパーがシーンに登場してきています。ある意味、水と油な両者ですが、両者が融合してあらたなシーンを生み出すのも近いかもしれません。

日本語ラップシーンがどんどん拡大している今だからこそ、あらためてチェックしたい名盤が並ぶ本書。日本語ラップの入門的にも最適に感じるアルバムでしたし、日本語ラップ黎明期からの流れもつかむことが出来るディスクガイドになっていました。どんどん更新されている日本語ラップの歴史がゆえに、今、チェックしておきたい1冊です。

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2022年10月24日 (月)

ボカロシーンの歴史を俯瞰

今回は、最近読んだ音楽関連の書籍に関しての紹介です。

ボーカロイドというソフト、音楽ファンなら間違いなく知っていると思います。初音ミクに代表される合成音声ソフトのこと。この「ボカロ」と略されているソフトを使用して音楽を作成し、You Tubeやニコニコ動画に投稿されたボカロソングは、今の日本の音楽シーンの中での大きな流れとなっています。そのボカロを使って曲をつくる「プロデューサー」は「ボカロP」と呼ばれていますが、最近では米津玄師、YOASOBI、ヨルシカなどといったボカロP出身のミュージシャンが、ヒットチャートを席巻するようになりました。

本書は、このネット上で話題となったボカロソングを100曲選曲し、紹介した楽曲ガイド「ボカロソングガイド名曲100選」です。ボカロソングの代表格的な曲がズラリと紹介されており、supercell、wowaka、DECO*27、ハチ(=米津玄師)、Mitchie M、じん、livetuneなどといった初期の代表的なボカロPの代表曲からスタートし、ここ最近の楽曲までズラリと網羅。ボカロに関係するトピックのコラムもついており、名曲ガイドを通じて、ボカロ界隈の音楽の流れ、歴史について知ることが出来る1冊となっています。

個人的に、このボーカロイドを使った音楽シーンの流れについては、初期の頃から非常に興味深く見てきました。楽器についてはパソコンで代替できることになった中、最後までどうしても人の手を介さなければならなかったボーカルというパートまでもが、人の手を介する必要がなくなった=ボーカルを含めて、全てのパートを1人で作成できるようになった、という意味で、非常に画期的な技術であり、またポピュラーミュージックの可能性を大きく広げるものである、ということを、比較的初期の段階から指摘していました。

ただ率直に言えば、私がその時期待していたほどの広がりを見せていません。ようやく米津玄師やYOASOBIなどがお茶の間レベルで知られるようになってきたのですが、正直、登場まで遅すぎると思っていますし、個人的にはボカロが本来持っているポテンシャルを考えると、まだまだ不十分と思っています。そして、この本を読むと、なんとなく、私が期待していたほどに伸びなかった理由がわかるような気がしました。

最大の理由は、このボカロシーンが非常に内向きであるという点だったと思います。今回、ボカロの歴史を網羅したこの100選ですが、これだけの曲がありながら、社会とリンクした曲が一切ありません。そのため、例えば、ここで紹介された曲が30年前の曲と言われようが、30年後の曲と言われようが、全く違和感なくマッチしてしまいます。政治性を排除した歌謡曲やJ-POPでも、楽曲にそれなりの社会性が反映されている中、ここまで社会性を排除した曲が並んでいるのは、少々異様にすら感じられました。

この内向きな方向性は音楽性にも感じられます。ここで紹介されているボカロソングをすべて聴いた訳ではありません。ただ、知っている曲や、ここでの紹介文を読む限り、音楽的には90年代J-POPから地続きの曲が多く、目新しさは感じられません。ここらへんの内向きさというか保守的な雰囲気がボカロソング全体に感じられました。個人的にはボーカロイド技術の画期性から、様々な才能がこのシーンに流れ込んで、聴いたことないような音楽のジャンルが生み出される、という期待をしていたのですが、そのような動きにならなかったのは、このシーン全体の内向きさが大いに関係しているように感じました。

そういう意味では、以前、ここでも紹介した「ボーカロイド音楽の世界2017」では、ボカロソングの奥深さも感じられただけに、本書では、シーン全体を俯瞰する必要性からか、その奥深さという点を紹介しきれていないのは少々残念に感じました。ただ一方で、本書を読む限りでは、ここ数年のシーンでは、どんどん新たなジャンルを取り入れたボカロソングも登場してきたことも伺うことが出来ます。初音ミク登場から15年近くが経過して、ようやくジャンルが広がってきた、と言えるかもしれませんし、ようやく外を意識するミュージシャンたちが登場してきたと言えるかもしれません。また、外を意識してきたからこそ、米津玄師をはじめお茶の間レベルで人気を博するボカロPが登場してきたのでしょう。

ある意味、いかにもロッキンオン出身っぽい、変な意味づけで無駄に絶賛することしか出来ない柴那典のような文体がちょっと気になるのですが、とりあえずはボカロシーンを俯瞰するには最適な1冊だと思います。初期以降のボカロシーンの問題点を感じつつ、それが最近、徐々に変わっていることを感じることが出来た1冊でもありました。このままいけばさらに15年後には、私が期待していた音楽シーンを一気に変えるような、とんでもない才能がボカロシーンから誕生するのでは?そんな予感もしてしまいました。

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2022年10月23日 (日)

ようやくの傑作

Title:踊る様に
Musician:ポルカドットスティングレイ

ポルカドットスティングレイについては、惜しいミュージシャンだな、ということをいつも感じていました。女性ボーカル+男性のリズム隊3名というバンド編成は、レベッカからLINDBERG、ジュディマリへとつながる、J-POPのガールズボーカルバンドの典型的なメンバー構成。個人的には、この手のバンドは結構、壺だったりするだけに、いままでも彼女たちのアルバムについてはすべて聴いてきました。ただ、これまでの彼女たちのアルバムについては、ポップでそれなりにインパクトはあるものの、どうもメロディーの側面でもサウンドの面でも、あと一歩の物足りなさを感じ、非常に惜しさを感じるアルバムが続いていました。

本作は、そんな彼女たちの4枚目となるフルアルバムなのですが、個人的にはようやく「傑作」と言えるレベルの作品を聴けたような印象を受けます。まずなんといっても今回のアルバムの大きな特徴としては音楽的なバリエーションの多さでしょう。メロウなメロとファンキーなリズムを聴かせる「SHINOBI-NAI」からスタート。続く「青い」は一転、比較的スタンダードなギターポップチューンに。疾走感ありリズミカルな「ダイバー」と序盤から色とりどりのタイプの曲が並びます。

リズミカルでラップも入り、どこかソウル風な要素も感じる「dude」に、シンセを入れてファンキーなサウンドを聴かせる「hide and seek」へと続いたかと思えば、「SURF」は一転、キュートなポップソングを聴かせてくれます。さらに「ショートショート」は再び王道系のギターロックチューンへの続き、バラードナンバーの「恋愛論」から、「トーキョーモーヴ」はボーカル雫のアイドル性を前に出したようなキュートなポップソングに仕上げています。

全体的に前半は、ファンキーなリズムを聴かせるナンバーが多く、彼女たちが意外とソウルやファンク、R&B系の影響を受けたバンドなんだ、ということにあらためて気が付かされます。一方、後半は比較的ストレートなギターロック路線がメイン。いままでの彼女らしい作風と言っていいでしょう。ただ、ラストを締めくくる「odoru yo-ni」は再びメロウなR&B風のナンバーを聴かせてくれています。

いままでもバリエーションを出したアルバムはリリースしていたのですが、今回のアルバムに関しては、いままで以上にバンドとしての音楽性の幅を感じるアルバムになっていました。なによりも、いままでの作品以上に彼女たちのソウルやR&Bからの意外な影響を感じるアルバムとなっており、アルバムの中でも、特にそれらブラックミュージックからの影響を受けた曲の方がおもしろみを感じるほど。彼女たちの持つ音楽性の意外な側面を感じることの出来る作品だったと思います。

正直言うと、今回のアルバム、「会心の出来」というほどとびぬけた傑作、といった感じではありません。ただ、いままで非常に惜しいという印象を受けるアルバムをリリースし続けた彼女たちの中では、ようやく一定のレベル以上のアルバムをリリースしてきたかな、といった印象を受ける作品でした。このレベルの作品を今後もリリースし続ければうれしい限りですし、おそらく彼女たちのレベルなら、それも十分可能なはず・・・。彼女たちの新たな一歩を感じさせるアルバムでした。

評価:★★★★★

ポルカドットスティングレイ 過去の作品
大正義
全知全能
一大事
有頂天
ハイパークラクション
新世紀
何者
赤裸々


ほかに聴いたアルバム

Luxury Disease/ONE OK ROCK

約3年半ぶりとなるONE OK ROCKのニューアルバム。前作は安直に「洋楽的」な方向性を目指した結果、チープさを感じる凡作となっていました。今回のアルバムについては、今度はロックバンドのダイナミズムな作風を前面に押し出した作品に。ある意味、ONE OK ROCKのロックバンドとしての側面を強調した作品となっていますが、その分、ONE OK ROCKの魅力を感じられる作品になっていました。

ONE OK ROCKといえば、サマソニでTakaが禁止させる声出しを煽ったという点で物議を呼びました。正直、なぜライブで声出しを禁止されているのか、コロナ禍以降のライブを巡る状況を考えれば、すぐに理解できるはずなのに、そういうことに考えが及ばないTakaは、率直に言えば粋がっているだけで頭が悪いとしか思えないのですが、正直、そういう「粋がった」部分は今回のアルバムでも強く感じます。無駄に自己顕示欲が強い感が、アルバムの中でマイナスに働いている部分が否めず、その点は大きなマイナスになっているように感じました。

非常に勢いの強いバンドだとは思うのですが、一方で、そろそろもうちょっと「大人」になってほしいと感じさせるバンド。良くも悪くも若々しい感じがするのですが、それがプラスにもマイナスにも働いている感じがします。サマソニの件も含めて、いろいろと「痛さ」も感じさせてしまうアルバムでした。

評価:★★★★

ONE OK ROCK 過去の作品
Nicheシンドローム
残響リファレンス
人生×僕=
35xxxv
Ambitions
AMBITIONS INTERNATIONAL VERSION
Eye of the Storm

NIAGARA TRIANGLE Vol.2 40th Anniversary Edition

1982年に、大滝詠一が主催する「ナイアガラレーベル」からリリースされたアルバムの40周年記念盤。当時、新進気鋭のミュージシャンとして注目を集めていた杉真理と佐野元春が参加し、彼ら2人に大滝詠一の3名が参加する形でアルバムは作成されています。ロック色の強い佐野元春、AOR色の強い杉真理、洋楽ポップの大滝詠一と3人それぞれの色がしっかりと出ていながらも、アルバム全体としてゆるくまとまっているのがユニーク。通常盤ではDisc2でオリジナル盤リリース時に大滝詠一が自ら制作したスペシャル・ラジオプログラム「スピーチ・バルーン 1982」を完全収録。珠玉のポップスがつまった、文句なしの名盤です。

評価:★★★★★

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2022年10月22日 (土)

1曲1曲がキャラ立ち

Title:正気じゃいられない
Musician:マハラージャン

ターバンにスーツという強烈にインパクトある格好に、「マハラージャン」という一度聴いたら忘れられないような名前が大きなインパクトのシンガーソングライター。ただ、その強烈なインパクトに負けないファンクの要素を取り入れつつ、ポップにまとめあげたメロディーラインが大きな魅力で、前作「僕のスピな☆ムン太郎」は、私的ベストアルバムの年間10位にランクインしたりと、個人的にも大ハマリの1枚でいた。

それだけ強いインパクトのある作品だっただけに、それに続く2枚目のアルバムは、良くも悪くも注目していたのですが、その2作目のアルバムは、1枚目のアルバムをかるく凌駕する傑作に仕上がっていました。

まず1曲目からホーンセッションをスリリングに聴かせるタイトルチューン「正気じゃいられない」からして、いきなりインパクトのかたまりのようなスタート。彼らしいユーモラスなタイトルの「鼻の奥に米がいる状態」も力強いファンクチューンが耳に残ります。また、今回のアルバムで核になっているのが、ファンクのリズムを取り上げつつも爽快なポップチューンに仕上げている「その気にさせないで」でしょうか。インパクトのあるメロディーラインはヒットポテンシャル十分。なにげにシングルカットもされていない曲で、これだけインパクトある曲を書いてくるたり、かなり驚きです。

その後もファルセット気味のボーカルで聴かせる、シティポップ色も強い「エルトン万次郎」や分厚いサウンドのハードロック風の「先に言って欲しかった」、軽快なディスコチューン「持たざる者」など、バリエーションを持たせつつ展開していきます。最後を締めくくるのは、山下達郎の「BOMBER」のカバーを非常にファンキーに聴かせてくれます。ちなみにこの曲、同じようにファンキーなサウンドを聴かせてくれ、一時期はまっていたシンガーソングライターの森広隆もカバーしていたんですよね・・・森広隆、あれだけ素晴らしいSSWだったのに、結局ブレイクできず・・・マハラージャンは是非とも、ブレイクしてほしいのですが・・・。

話はちょっと逸れてしまいましたが、彼の楽曲、端的に言ってしまえば、1曲1曲、非常に「キャラが立っている」という表現がピッタリ来る印象を受けました。メロディーラインのインパクトはもちろんのこと、ファンキーで賑やかなサウンドも非常に目立ちますし、「鼻の奥に米がいる状態」「エルトン万次郎」みたいにタイトルからしてインパクト満点。さらに「先に言って欲しかった」のようなユニークな歌詞があったり、さらに「持たざる者」では、ジェイソン村田なる謎の人物が登場し、ユニークながらもシュールな歌詞の世界観を展開させています。どの曲をとっても聴いていて一発で印象に残りそうな、強度の強いポップチューンが並んでいました。

ただ、これだけ強いインパクトのある曲が並ぶと、逆に曲同士が個性を殺しあって、アルバム全体のインパクトが弱くなる傾向にあるのですが、このアルバムについてはそんな印象も受けません。やはりアルバム全体としてマハラージャンとしての方向性がはっきりしているからでしょうか。

そんな訳で、前作に引き続き文句なしの傑作アルバムとなった本作。間違いなく年間ベストレベルの傑作だったと思います。ヒットポテンシャルある曲調ですし、これでブレイクしなけりゃ嘘でしょ?と思ってしまうアルバム。本人のキャラの強さが、逆にブレイクを阻害している可能性もありそうですが・・そろそろ大ヒット作が出てもおかしくない、そんな可能性を感じさせる1枚でした。

評価:★★★★★

マハラージャン 過去の作品
僕のスピ☆なムン太郎


ほかに聴いたアルバム

永劫回帰II/上杉昇

90年代にWANDSのボーカリストとして一世を風靡した上杉昇が、WANDSを含めて彼の全キャリアの曲からセレクトしたオールタイムベストの第2弾。第1弾と同様、一部の曲は再レコーディングを行い、新たに生まれ変わっています。第1弾は、彼のグランジ、オルタナ系ロック好きの趣味が炸裂した、非常にロックな作品になっておりカッコよく、この第2弾も期待してきいてみました。今回も前半に関しては前作同様、ヘヴィーなロックサウンドにカッコよさを感じました。

ただアルバム全体としては、ロックな側面よりも、より哀愁感漂うメロディーラインに主軸を置いたようなアルバムになっており、これはこれで彼の魅力かもしれませんが、メランコリックなメロディーラインは平凡とまでは言わないまでも若干インパクト不足。ラストにはWANDS時代のヒット曲「世界が終わるまでは…」が織田哲郎の手によりリアレンジされているのですが、ほぼ原曲準拠のような内容で、正直、あまり新鮮味はありません。悪い内容ではないとは思うのですが、前作で期待してほどではなかった・・・という若干残念な印象を抱いてしまったアルバムでした。

評価:★★★★

上杉昇 過去の作品
永劫回帰I

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2022年10月21日 (金)

曽我部恵一の夏・・・

Title:Memories&Remedies
Musician:曽我部恵一

7月末に新型コロナウイルスに感染した曽我部恵一。本作は、その療養期間中に作成されたソロアルバムです。療養期間中にアルバム1枚つくってしまうあたり、曽我部恵一のワーカホリックぶりがうかがわせますが、まあ、確かに熱が下がれば暇になるんですよね、療養期間中って。思わず1枚つくってしまった彼の気持ちも、わかるような気がします。

今回、「記憶と療養」と名付けられた本作は、全編インストの作品。アンビエントな作風となっており、全編、ギターノイズが流れる作風になっています。療養期間でリハビリとして作ったと語る今回の作品は、本人曰く「ただ没入することができる音の方へ、一日の少しの時間をパソコンに向かって録音した。だれに聴かせるつもりもなかった。一曲録り終えるとぐったりして、後の時間は一日中ずっと寝ていた。」と語っています。彼は40度の熱が4日続いたそうで、いつもの風邪よりちょっと重い程度だった私と比べると、かなり辛い状況だったようですが、そんな中、ある意味、夢見心地の中でつむがれた作品ということでしょうか。全体的にも、そんな雰囲気を感じられる、ドリーミーな(彼の状況を考えると、そんなのんきなことを言える状況ではなかったかもしれませんが)作風の曲が並びます。

ただ、積極的に実験性の高い音楽、というよりは、その時の彼の心象風景をそのまま描いたような作風は、意外とメロディアスでポピュラリティーもある作品が多いという印象。「Summer Move」ではアコギアルペジオで優しく聴かせ、優しい日の光が差し込む森にいるような心持にするドリーミーな作風は、いい意味で聴きやすい作風になっていますし、「House Where Mother Lives」と題された作品も、そのタイトル通り、どこかノスタルジックな要素も醸し出す、優しくメロディアスな作品となっています。

ラストを飾る「Love In The Time Of COVID」とかなりストレートなタイトルになっていますが、サイケなノイズが全面に流れる本作も、熱にうなされた幻想的な様相を感じさせつつも、どこか優しいメロディーが流れてくるのが印象的。コロナの中で作られた作品ではあるものの、しっかりと曽我部恵一らしさを要所要所に感じられる作品になっていました。

先の本人のコメントの通り、だれにも聴かせるつもりもなかったリハビリ的な作品なのですが、それでもぬぐいきれない曽我部恵一らしさと、彼らしいメロディーセンスのあふれる作品に仕上がっています。ここ最近、脂ののった傑作が続く彼ですが、それはコロナ感染という特殊な状況下でつくられた本作も同様でした。間違いなく「曽我部恵一の新作」として要チェックの作品です。

評価:★★★★★

曽我部恵一 過去の作品
キラキラ!(曽我部恵一BAND)
ハピネス!(曽我部恵一BAND)
ソカバンのみんなのロック!(曽我部恵一BAND)
Sings
けいちゃん
LIVE LOVE
トーキョー・コーリング(曽我部恵一BAND)
曽我部恵一 BEST 2001-2013
My Friend Keiichi
ヘブン
There is no place like Tokyo today!
The Best Of Keiichi Sokabe -The Rose Years 2004-2019-
純情LIVE(曽我部恵一と真黒毛ぼっくす)
Loveless Love
プリンは泣かない

ワーカホリックな曽我部恵一は、さらにサニーデイサービス名義でも新作をリリースしています。

Title:冷し中華EP
Musician:サニーデイ・サービス

Hiyashityuuka

夏のはじめにリリースされた4曲入り(CD版では表題曲のインストが加わり5曲入り)のEP盤。曽我部恵一の前作が「プリンは泣かない」でしたから、食べもの系の作品が並びました(?)。

表題曲は、夏のはじめの街の風景を描いた作品。ちょっと気だるさを感じさせるフォーキーな作風は、いかにもサニーデイといった雰囲気の楽曲になっています。また、具体的な描写が続く歌詞は、街の風景を聴いていてそのまま想像できそうな内容となっており、曲を聴きながら、初夏の街並みを散歩している感覚になるような作品。「冷し中華はじめました」という(ある意味ベタな)夏のはじまりを彷彿とさせるフレーズが印象的に使われています。

その後も爽やかで夏の雰囲気を感じられる作品が続いていきます。特に3曲目「その気になれば」はザ・ディランⅡのカバーなのですが、夏を感じらせる風景描写に気だるい雰囲気、フォーキーな曲調といい、サニーデイの作風と、このEPの流れにもピッタリあてはまる名カバーに仕上がっています。

ラストの「夏のにおい」は、ちょっと意外なパンキッシュな楽曲。ただ、エモーショナルなバンドサウンドに反してフォーキーなメロディーラインと、こちらも夏の風景を描写した歌詞が実にサニーデイらしい作品。「夏」をイメージした本作を締めくくるにピッタリの内容となっています。

本作を紹介している今の時点は、既に秋なのですが、こちらの作品は、まさに夏の風景をサニーデイらしく描写した彼ららしい作品に。わずあ4曲入りのEP盤ですが、サニーデイの魅力を存分に感じさせるとともに、夏の空気をしっかりとパッケージした傑作に仕上がっていました。どちらも曽我部恵一らしさをしっかりと感じさせる作品。どちらも文句なしに要チェックです。

評価:★★★★★

サニーデイ・サービス 過去の作品
本日は晴天なり
サニーディ・サービス BEST 1995-2000
Sunny
DANCE TO YOU
桜 super love

Popcorn Ballads
Popcorn Ballads(完全版)
the CITY
DANCE TO THE POPCORN CITY
the SEA
サニーデイ・サービスBEST 1995-2018
いいね!
もっといいね!


ほかに聴いたアルバム

Tough Layer/Scoobie Do

今年、デビュー20周年を迎える彼らの、3年ぶりとなる15枚目のアルバム。前作「Have a Nice Day!」は爽やかなポップチューンがメインだった作品でしたが、今回のアルバムもファンクのリズムを聴かせつつ、全体的にはメランコリックなメロが印象に残る作品に。ファンキーなリズムという観点からすると、ちょっとおとなしくまとまりすぎた感もする作品に。あえていえば大人のポップスという感じになるのでしょうか。哀愁感ただようメロディーラインは魅力的ではありつつも、少々物足りなさも感じてしまいました。

評価:★★★★

SCOOBIE DO 過去の作品
ROAD TO FUNK-A-LISMO!
BEST OF CHAMP YEARS 2007~2016
CRACKLACK
Have a Nice Day!

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2022年10月20日 (木)

女王、強し

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週も女王のベストアルバムが1位獲得です。

今週も松任谷由実「ユーミン万歳!~松任谷由実50周年記念ベストアルバム~」が先週に引き続いて1位獲得。CD販売数及びダウンロード数は1位、PCによるCD読取数2位は先週から変わらず。オリコン週間アルバムランキングでも6万7千枚を売り上げて、2週連続1位を獲得。女王の強さを感じさせる結果となりました。

2位初登場は三代目J Soul Brothersの岩田剛典のソロアルバム「The Cholocate Box」がランクイン。CD販売数2位、ダウンロード数7位、PCによるCD読取数25位。本作がソロデビュー作となります。オリコンでは初動売上3万7千枚で2位初登場。

3位には04 Limited Sazabys「Harvest」が初登場。CD販売数3位、ダウンロード数24位、PCによるCD読取数16位。ちなみにCD通常盤はわずか1,000円(税別)という挑戦的な価格での販売となっています。ただ、オリコンでは初動1万6千枚(5位)と、前作「SOIL」の2万3千枚(2位)からダウン。もういくら安くてもCDで買う人はいない、ということでしょうか。それとも1,000円だからこそ、これだけの下落で留まった、ということでしょうか。

続いて4位以下の初登場盤です。まず5位に天月-あまつき-「星霜ロマンスポット」がランクイン。CD販売数4位、ダウンロード数64位。天月-あまつき-は動画投稿サイトの歌唱動画で人気を博したシンガー。オリコンでは初動売上1万5千枚で6位初登場。前作「それはきっと恋でした。」の初動3万枚(5位)からダウン。

7位にはアメリカのロックバンドRed Hot Chili Peppers「Return of the Dream Canteen」がランクイン。CD販売数7位、ダウンロード数3位、PCによるCD読取数30位。なんと、今年2枚目となるフルアルバム。既に結成から40年近くが経つレジェンドとも言えるバンドですが、それでこれだけ積極的な活動を見せてくれるというのは驚きです。オリコンでは初動売上8千枚で9位初登場。前作「Unlimited Love」の初動1万3千枚(9位)からはダウン。

8位には宮本佳林「ヒトリトイロ」が初登場。CD販売数8位、ダウンロード数11位。ハロプロ系アイドルグループJuice=Juiceの元メンバーによるソロデビュー作。オリコンでは初動売上7千枚で10位初登場。

9位には「うたの☆プリンスさまっ♪HE★VENSドラマCD『HE★VENS LOVE AFFAIR』」が初登場でランクイン。CD販売数及びPCによるCD読取数9位。女性向け恋愛アドベンチャーゲーム「うたの☆プリンスさまっ♪」のキャラクターによるドラマCD。オリコンでは初動売上1万1千枚で7位初登場。

最後10位には、今年、サマーソニックに出演し話題を呼んだイギリスのロックバンド、The 1975「Being Funny in a Foregin Language」(邦題:外国語の言葉遊び)がランクイン。CD販売数11位、ダウンロード数5位。原題が長いせいか、最近の洋楽としては珍しく、毎回邦題が付いていますが、今回も比較的短い原題にも関わらず、しっかり邦題がついてきました。オリコンでは初動売上4千枚で12位初登場しています。

今週のHot Albumsは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2022年10月19日 (水)

人気モノたちが一気にランクイン

今週のHot100

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今週のHot100では、最近のヒットチャートを席巻している人気ミュージシャンが一気にランクインしています。

まず1位を獲得したのは米津玄師「KICK BACK」。テレビ東京系アニメ「チェンソーマン」オープニングテーマ。彼にしては珍しい、ハードなロックテイストの楽曲になっています。ダウンロード数及びストリーミング数で1位、ラジオオンエア数4位、Twitterつぶやき数2位、You Tube再生回数49位を獲得。総合チャートで見事1位獲得となりました。

そして3位にはOfficial髭男dism「Subtitle」が獲得。フジテレビ系ドラマ「silent」主題歌。ダウンロード数3位、ストリーミング数2位、ラジオオンエア数6位、Twitterつぶやき数57位、You Tube再生回数12位。ただ一方、長らくベスト10入りを続けていた「ミックスナッツ」は今週11位にランクダウンし、ベスト10ヒットは連続26週でストップ。2曲同時ランクインはなりませんでした。

さらに4位には藤井風「grace」がランクイン。NTTドコモCMソング。ダウンロード数はこちらが2位。You Tube再生回数も2位を獲得していますが、一方、ストリーミング数は14位に。ほか、ラジオオンエア数3位、Twitterつぶやき数10位を獲得し、総合順位はこの位置になっています。

そんな訳で、まさに今を代表する人気ミュージシャンが一気にランクインした今週のHot100。ただ、そんな中で2位を獲得したのがJO1「SuperCali」。先週の34位からCD販売に合わせてランクアップし、ベスト10入り。韓国の人気オーディション番組「PRODUCE 101」の日本版「PRODUCE 101 JAPAN」から誕生した、和製K-POP的な男性アイドルグループ。CD販売数、ラジオオンエア数、PCによるCD読取数、Twitterつぶやき数で1位を獲得。そのほか、ダウンロード数5位、ストリーミング数19位、You Tube再生回数50位を獲得し、総合順位はこの位置に。オリコン週間シングルランキングでは同曲を収録した「MIDNIGHT SUN」が、初動売上49万2千枚を獲得し、1位初登場。前作「WANDERING」の初動43万1千枚からアップしています。

続いて4位以下の初登場曲ですが、今週の初登場曲はあと1曲。10位にスターダストプロモーション所属の男性アイドルグループ超特急「宇宙ドライブ」がランクイン。CD販売数は2位でしたが、ストリーミング数35位、PCによるCD読取数40位、Twitterつぶやき数33位、その他のランキングは圏外となり、総合順位はギリギリベスト10入りという結果となりました。オリコンでは初動売上3万3千枚で2位初登場。前作「Asayake」の1万枚(10位)からアップしています。

さて、そんな人気モノが多くランクインしてきた今週のチャートでしたが、そのためここ最近、チャートを席巻してきたAdoが一気にランクダウンしています。「新時代(ウタ from ONE PIECE FILM RED)」は3位から5位にダウン。「私は最強(ウタ from ONE PIECE FILM RED)」も5位から8位にランクダウンしています。また「ウタカタララバイ(ウタ from ONE PIECE FILM RED)」「逆光(ウタ from ONE PIECE FILM RED)」はいずれもベスト10圏外にランクダウン。ベスト10入りはいずれも連続9週でストップしています。ただ一方、「新時代」はこれで19週連続、「私は最強」は10週連続でベスト10ヒットを記録。ダウン傾向とはいえ、今週も2曲同時ランクインという快挙となりました。

ロングヒットはあと1曲。Tani Yuuki「W / X / Y」は今週、7位から2ランクダウンの9位にランクイン。これでベスト10ヒットは連続28週となりました。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

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2022年10月18日 (火)

新進気鋭のジャズギタリスト

今回紹介するのは、新進気鋭のジャズギタリストとして最近注目を集めているMary Halvorsonが2作同時にリリースした最新アルバムです。

Title:Amaryllis
Musician:Mary Halvorson

まずこちらの作品では彼女を中心に、Patricia Brennan (ヴィブラフォン)、 Nick Dunston (ベース) 、 Tomas Fujiwara (ドラムス) 、 Jacob Garchik (トロンボーン) 、 Adam O'Farrill (トランペット)という6人組で構成されたアルバム。

Title:Belladonna
Musician:Mary Halvorson

そしてこちらのアルバムは、ギターとストリングスカルテットのために作曲された曲から構成されています。

今回のアルバムではじめて、アメリカのノンサッチ・レコードと契約。本作がその第1弾となる作品になります。ノンサッチ・レコードといえば、最初はクラシック音楽からスタートしながらも、その後ロックやジャズ、エレクトロや現代音楽、さらにはワールドミュージックまで手を広げ、ある意味、カテゴライズが難しいミュージシャンも多く擁するレーベルですが、彼女に関して言えば、まさにノンサッチ・レコードとの契約が非常にピッタリ来るミュージシャンと言えるかもしれません。

特に「Amaryllis」に関しては、王道路線のジャズを奏でていたかと思えば、突如、フリーキーなサウンドが展開されるのも特徴的。現代音楽的な要素も強く、ジャズに留まらない自由度の高い音楽性が大きな魅力となっています。一方、「Belladonna」に関しても、ストリングスで優雅なサウンドをメロディアスに奏でているかと思えば、微妙に歪んだフレーズが飛び込んでくるのも特徴的。さらに「Haunted Head」ではノイジーなギターが入ったり、ラスト「Belladonna」では後半、サイケデリックなギターフレーズが登場したりと、こちらもジャンルにとらわれない自由度の高い音楽性が特徴となっています。

また、どちらもポピュラリティーを感じるメロディアスなフレーズが流れている点も大きな特徴で、その点、聴きやすさも感じるアルバムになっています。ただその一方で、このメロディーラインも微妙に歪みを感じられ、一筋縄に行かない点も大きな特徴。ポップで聴きやすさを感じつつ、その中にある微妙な渋みが一つの魅力に感じられました。

ジャズをベースにしつつ、ロックやポップス的な要素もあり、なおかつ現代音楽の要素も感じられるアルバムになっているため、ジャズに限らず、その実験性に反して意外と幅広いリスナー層が楽しめるアルバムになっていると思います。これから彼女が、ジャズというジャンルに限らず、さらなる注目を集めそうな、そんな予感のする作品でした。

評価:どちらも★★★★★


ほかに聴いたアルバム

Unwanted/Pale Waves

イギリスはマンチェスター出身のインディーロックバンドによる3枚目のアルバム。デビュー作は80年代90年代のちょっと懐かしい雰囲気を持ったエレクトロポップが魅力でしたが、前作は何の変哲もないシンセポップバンドになってちょっとがっかりしました。3枚目となる今回のアルバムも、良くも悪くも売れ線といったイメージのシンセポップ。前作よりインパクトは増した感もあるのですが、よくありがちな平凡なポップミュージックといった印象が。本国では本作も最高位4位にランクインするなど、しっかり売れているようですが、このままだとちょっと厳しいような印象が・・・。

評価:★★★

Pale Waves 過去の作品
My Mind Makes Noises
Who Am I?

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2022年10月17日 (月)

昭和のレア・グルーヴ拡大版 その2

前回紹介した、昭和の知られざる名曲・珍曲を集めたレア・グルーヴのオムニバス「GROOVIN'昭和アーカイヴス」の第2弾です。

Title:GROOVIN'昭和アーカイヴス 4 歌謡ディスコ&ソウル

第4弾は、ディスコやソウルミュージックの要素を取り入れた歌謡曲を集めたオムニバス盤。5月にリリースされた5枚のアルバムの中で、最もよかったのがこのアルバム。いわば歌謡曲の中に洋楽的な要素を取り入れた楽曲が集まっていますが、同じ洋楽の要素を取り入れたという意味では、他の作品も同様。ただ、他の4枚に関しては、「洋楽」に成ろうとしながらも、結果としてぬぐいきれない歌謡曲的な要素が強く残ってしまい、どこか洋楽としても邦楽としてもチグハグ感を覚えてしまった一方、こちらに関しては、自覚的に歌謡曲でありつつも、洋楽的なエッセンスを上手く取り込んだという意味で、歌謡曲、ひいては大衆音楽のたくましさを感じることが出来ます。

例えばザ・ヴァイオレッツの「スウィート インスプレーション」やスクーターズの「東京ディスコナイト」などは、モータウンのガールズポップの要素を上手く取り込んでおり、今聴いても非常に魅力的。来栖アンナの「BAD NIGHT」もスペーシーな打ち込みが、今となっては時代を感じさせますが、それはそれで「味」になっています。

ビューティ・ペアとして一世を風靡した女子プロレスラー、マキ上田が歌うのは、当時大流行したインベーダーゲームを歌詞に取り込んだ「インベーダーWALK」「あいつはインベーダー」。いかにもとってつけた感のある歌詞も変なインパクトがあるのですが、ここらへんのB級感も、いかにも歌謡曲的で、一周回って(?)楽しめますし、B級感あふれるといえば、B級アイドルのオナッターズ「恋のバッキン!」「モッコシモコモコ(しゅきしゅきダーリン)」もかなりのインパクト。今だとどう考えてもデビューできなさそうなエロ歌詞に時代を感じさせるのですが、メンバーの一人は、ダウンタウンの浜ちゃんの奥さんである小川菜摘という事実に驚かされます。あの浜ちゃんの奥さんがこんな歌を・・・というよりは、音楽的には、日本を代表するベーシストのハマ・オカモトのお母さまがこんな歌を・・・と思ってしまいますが。

最初から最後まで洋楽的なエッセンスを上手く取り込みつつ、歌謡曲的なベタさを上手く残した作品の連続を楽しめると同時に、歌謡曲のたくましさを感じることが出来るオムニバス。難しいこと抜きに楽しめる1枚でした。

評価:★★★★★

Title:GROOVIN'昭和アーカイヴス 5 ロックンロール80's

逆に一番チグハグさを感じたのは、タイトル通り80年代のロックンロールをコンセプトにあつめたこちらの1枚。80年代としてはアイドル全盛期で、世界的にもロックといえばスタジアム化してしまった時代。元キャロルのジョニー大倉が組んだTHE PLEASEはロックンロールバンドとしてカッコいいことはカッコいいのですが、やはりキャロルの二番煎じ的な部分は否めず。後半に至っては石野陽子や安田成美が登場し、ロックンロールというよりアイドルポップじゃない?さらに前述のオナッターズの「レッツゴー!ヨコシマ」という曲も収録。こちらもエロ歌詞が楽しい1曲なのですが、ロックンロールという並びで入ると違和感があります。

ZIGGYの「PLAYING ON THE ROCKS」など、かなり本格的なハードロックナンバーで、カッコいいことは間違いないですし、あか抜けたガールズポップを聴かせるスクーターズの「あたしのヒート・ウェイヴ」など魅力的な曲も少なくないのですが、ロックンロールという形でくくりには、80年代という時代は若干、品不足気味なのが否めません。ロックンロールという点を差し引いて、単なるレア・グルーヴとして楽しむのならば、十分楽しめるとは思うのですが。

評価:★★★★

ちなみに2010年にリリースされた「GROOVIN'昭和!」の感想は↓こちらです。
GROOVIN' 昭和!1~こまっちゃうナ
GROOVIN'昭和!2~ベッドにばかりいるの
GROOVIN'昭和!3~恋のサイケデリック
GROOVIN'昭和4~自衛隊に入ろう
GROOVIN'昭和5~ぐでんぐでん
GROOVIN'昭和!6~東京ディスコ・ナイト
GROOVIN'昭和!7~ロマンチスト


ほかに聴いたアルバム

リラックマと遊園地 オリジナル・サウンドトラック/岸田繁

Netflixオリジナルアニメ「リラックマと遊園地」のサントラ盤。同シリーズの前作「リラックマとカオルさん」に引き続き、くるりの岸田繁が音楽を担当。劇伴音楽ということで、1曲あたり1分程度の、ワンアイディア的なインスト曲が並ぶのですが、リラックマのアニメということもあり、全体的に明るくほっこりした作風の曲に聴いていて明るく暖かい気持ちになります。ラストはテーマ曲「ポケットの中」が収録されているのですが、こちらも岸田繁らしいメロディアスな名曲に仕上がっており、こちらを聴くだけでも十分に価値のある作品。前作同様、リラックマのイメージ通り、だらりんと楽しめるアルバムでした。

評価:★★★★

岸田繁 過去の作品
まほろ駅前多田便利軒 ORIGINAL SOUNDTRACK
岸田 繁のまほろ劇伴音楽全集
岸田繁「交響曲第一番」初演(指揮 広上純一 演奏 京都市交響楽団)
岸田繁「交響曲第二番」初演(指揮 広上純一 演奏 京都市交響楽団)
岸田繁「フォークロア・プレイリスト I」(指揮 広上純一 演奏 京都市交響楽団)
リラックマとカオルさん オリジナル・サウンドトラック

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2022年10月16日 (日)

昭和のレア・グルーヴ企画拡大版

今回紹介するのは、現在の徳間ジャパンコミュニケーションズが、1965年にミノルフォンレコードとして創業して以来、設立したレーベルにおいて所有する原盤のうち、昭和に作成された邦楽ポップスに焦点を絞り選曲された、知られざる名曲、珍曲を集めたオムニバスアルバム。2010年に同じ企画で「GROOVIN'昭和!」というオムニバスアルバムがリリースされ、今回はその拡大版となるそうです。以前もその「GROOVIN'昭和!」と聴いて、レアグルーヴという強烈な珍味にはまってしまったのですが、今回も早速、拡大版「GROOVIN'昭和アーカイヴス」を聴いてみました。まずは今回は第1弾として5月にリリースされた5枚。今日はそのうちVol.1~Vol.3までを紹介します。

Title:GROOVIN'昭和アーカイヴス 1 シティ・ポップ&メロウ・サウンド

まず第1弾はタイトル通り、シティ・ポップの楽曲を集めたオムニバス。冒頭のサーカスは、「Mr.サーマータイム」や「アメリカン・フィーリング」で知られるコーラスグループですが、こちらはブレイクする前にリリースされたデビューシングルというレア盤。続くヴィーナスも、ザ・ヴィーナス名義で1981年に「キッスは目にして!」でブレイクするグループの、ブレイク前の楽曲というレア盤で、企画の冒頭からかなり攻めた選曲になっています。

ほかにも池田典代の「Dream In The Street」は、山下達郎が作曲・編曲を行い、本人もギター&コーラスで参加した作品。曲としてはほとんどヒットせず、彼女も同タイトルのアルバム1枚しかリリースできなかったようですが、今となっては知る人ぞ知る隠れた名盤だとか。確かにファンキーなリズムと爽やかなメロがいかにも山下達郎らしく、しっかりと耳に残るポップスに仕上がっています。

いかにも80年代っぽいジャケットのイラストも印象的で、女の子のデザインもいかにも80年代ですし、ラジカセも80年代に青春を過ごした方には懐かしさがあふれ出すアイテムではないでしょうか。実際、特に後半になるといかにも80年代的なシティポップが続く今回の作品。正直、目立って「これは」といった作品は少ないのですが、爽快なポップサウンドが心地よい曲が並んでいました。

評価:★★★★

Title:GROOVIN'昭和アーカイヴス 2 オン・ザ・ロックス

第2弾はタイトル通り、ロック系の曲を集めた曲。冒頭はショーケンからスタートし、その後も柳ジョージ&レイニーウッド、めんたんぴん、紫など、日本ロックの黎明期を飾るミュージシャンたちがズラリと並んでいます。個人的に特にユニークだったのが安全バンドの「怒りをこめて」で、冒頭は泥臭いロックなのですが、途中からいきなりピアノが入り、オペラ風に展開。このオペラ風に展開する冒頭の歌詞が「お母さん」ですし、複雑に展開される構成といい、クイーンの「ボヘミアンラプソディー」の元ネタ・・・なんて嘘をういても通用しちゃいそう(笑)。

ただオームの「まっぴらごめん」みたいに、今聴いてもカッコいいガレージロックのナンバーもありつつも、メロディーラインはかなり歌謡曲的なものが多く、ここらへんもある意味、魅力的と捉えられなくはないのですが、サウンド的には洋楽を目指しつつもメロディーとリズムはいかにも日本人的というチグハグさも違和感を覚えてしまいます。良くも悪くも日本ロックの成り立ちを感じさせるオムニバスでした。

評価:★★★★

Title:GROOVIN'昭和アーカイヴス 3 ファンク&ブルース

こちらはタイトル通り、ファンクやブルースの影響を受けた曲を集めた曲。まず聴いていて感じるのは、かなり手探り感のある曲。ソウルやファンクを自分たちなりに希釈して、日本風に新たな解釈を加える・・・というよりも、むしろ頑張ってむこうのサウンド、リズムを自分たちのものにしようとしているイメージと言っていいでしょうか。これまた日本のソウルやファンクの黎明期らしい、ある種の初々しさも感じされる楽曲が並びます。

特に、ウエスト・ロード・ブルース・バンドの「TRAMP」などは完全にJBそのままといった感じになっていますし、上田正樹とSOUTH TO SOUTHの「お前を離さない」はオーティス・レディングの「I Can'Ut Turn You Loose」のカバー。こちらもほぼそのまま感のあるリズムとサウンドになっています。

ただ、初々しさを感じさせつつも、今聴いても十分カッコよさは感じます。特にソー・バッド・レヴューやウエスト・ロード・ブルース・バンド、上田正樹とSOUTH TO SOUTHやめんたんぴんなど、この時代からこれだけソウルやファンクのリズムを奏でられるバンドがいたんだ、ということは(以前の「GROOVIN'昭和!」でも聴いていたのですが)あらためて感心してしまいます。正直、中にはいかにもムード歌謡な曲もあって違和感もなきにしもあらずなのですが、それを差し引いても、文句なしにカッコいいオムニバスに仕上がっていました。

評価:★★★★★

ちなみに2010年にリリースされた「GROOVIN'昭和!」の感想は↓こちらです。
GROOVIN' 昭和!1~こまっちゃうナ
GROOVIN'昭和!2~ベッドにばかりいるの
GROOVIN'昭和!3~恋のサイケデリック
GROOVIN'昭和4~自衛隊に入ろう
GROOVIN'昭和5~ぐでんぐでん
GROOVIN'昭和!6~東京ディスコ・ナイト
GROOVIN'昭和!7~ロマンチスト

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2022年10月15日 (土)

様々なサウンドをコラージュした独自の音世界を展開

Title:Betsu No Jikan
Musician:岡田拓郎

2010年代前半に大きな話題となったバンド「森は生きている」のメンバー、岡田拓郎による約2年ぶりとなるソロアルバム。久々となる今回のアルバムでは、豪華なゲストミュージシャンが数多く参加していることが大きな話題に。「Moons」ではログドラムで、あの細野晴臣がゲストとして参加しているほか、最近話題のマルチ・インストゥルメンタル奏者、サム・ゲンデルやWilcoのネルス・クライン、さらにはジム・オルークなどといった豪華なメンバーがズラリと参加している。

そんな彼の前作「Morning Sun」は、全編「歌モノ」のポップ的な要素が強い作品になっていましたが、今回は一転、2曲目「Moons」以外は全編インストの作品に。また、全編、ジャズ・ドラマーの石若駿が参加したことにもより、ジャズ色の非常に強い作風になっています。

まずいきなり印象的なのが1曲目。ジョン・コルトレーンの「A Love Supreme」のカバーからスタートしているのですが、シンセの音色にサム・ゲンデルのフリーキーなサックスと石若駿のダイナミックさも感じられるドラムス、さらには水の音などもサンプリングした重厚なサウンドがからみあう大胆なカバーに仕上がっています。

唯一の歌モノ「Moons」も、岡田拓郎のファルセット気味なボーカルに、静かながらも幻想的なピアノやドラムス、さらには細野晴臣奏でるログドラムのサウンドが印象的。続く「Sand」は岡田拓郎と石若駿の2人のみで音の世界を繰り広げているのですが、エキゾチックさを感じるギターの音色を中心に、様々な音がコラージュされたドリーミーな音が魅力的な楽曲に。「If Sea Could Sing」では森は生きているの盟友、大久保淳也による泣きのサックスで哀愁感たっぷりに聴かせるジャジーな作品に仕上がっています。

さらに本作のクライマックスとも言えるのが、サム・ゲンデルやネルス・クライン、ジム・オルークなども一同に参加し、総勢12名というバンドメンバーで奏でる「Reflection/Entering #3」でしょう。フュージョン風のギターを主導に、静かながらもどこか不穏な感じを覚える前半から一転、後半ではこの豪華なメンバーによりフリーキーでダイナミックなジャズサウンドを展開。こちらも様々な音が組み合わさった独特の音世界が大きな魅力となっています。

そしてラストの「Deep River」も、哀愁感たっぷりのサックスやピアノを中心に、ドラムスやシンセなど重厚に組み合わさり、雄大ながらも静かに流れる大きな河を彷彿とさせるようなサウンドを聴かせてくれます。ゆったりとした雰囲気の中、全9曲42分の岡田拓郎の世界が幕を下ろします。

これが3枚目のフルアルバムとなる岡田拓郎ですが、アルバム毎に進化を遂げる彼が、今回のアルバムでさらなる進化を遂げたように感じます。全編ジャズ色が強い作品の中に、様々なサウンドがコラージュされており、独自のサウンドの世界を築き上げている作品。ただ、非常に実験色も強いサウンドである一方、ポップなメロディーラインが流れており、しっかりとポピュラーミュージックに立脚した作品であることも間違いありません。まさに岡田拓郎しか作りえないような、独自の音楽性を強く感じる作品に仕上がっていました。

3作目にして文句なしの最高傑作ですし、また間違いなく今年のベストアルバム候補の1枚とも言える傑作アルバムだったと思います。作品をリリースするたびに進化を遂げる彼。その才能にはあらためて驚かされた傑作でした。

評価:★★★★★

岡田拓郎 過去の作品
ノスタルジア(Okada Takuro)
Morning Sun
都市計画(Urban Planning)(Okada Takuro+duenn)


ほかに聴いたアルバム

君に恋したときから/miwa

2月にアルバムをリリースしたばかりのmiwaの最新作は、5曲入りのEP盤。わずか5曲の内容ながらも、楽曲毎にバリエーションがあり、彼女の魅力を5つの方向から感じることが出来るEP盤になっていました。結婚・出産を経て、人気の面でガクッと下落してしまった彼女でしたが、ミュージシャンとしてはむしろ、気持ちの面でゆとりができたのか、充実してきているような感があります。次回作、意外と過去最高の傑作をリリースしてくる、かも。

評価:★★★★

miwa 過去の作品
guitarium
Delight
ONENESS
SPLASH☆WORLD
miwa THE BEST
Sparkle

TIGHT ROPE/9mm Parabellum Bullet

オリジナルアルバムとしては約3年ぶりとなる9mm Parabellum Bulletのニューアルバム。いつも通り、分厚くヘヴィーなバンドサウンドに、これでもかというほど哀愁たっぷりに聴かせる歌謡曲的なメロディーラインというスタイル。ある意味、大いなるマンネリとも言える作風で、素直に聴いていて気持ちよいのは間違いありません。目新しさはないけど、変に新しいことに挑戦するよりも、このスタイルがいいんだろうなぁ。

評価:★★★★

9mm Parabellum Bullet 過去の作品
Termination
VAMPIRE
Revolutionary
Movement
Dawning
Greatest Hits
Waltz on Life Line
BABEL
DEEP BLUE

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2022年10月14日 (金)

日本を代表するプレイヤーが集結!

Title:噂のザ・チャイチーズ 日本の名曲演ってます
Musician:ザ・チャイチーズ

スターダストレビューの根本要が2017年に還暦記念として、背の低いミュージシャンたちを集めて結成したバンド、ザ・チャイチーズ。「チャイチー」はいわば業界用語で「小さい」をさかさまに読んだアレなのですが、全員が身長168cm未満という、男性の平均身長未満という小柄な男性が集まって結成されたバンド。ただ、身長制限がありつつも、非常に豪華なメンバーが集結しているのが特徴的で、ギターボーカルの根本要をはじめとして、ギターは佐橋佳幸、キーボードに難波弘之、ドラムスが河村“カースケ"智康、さらにベースは根岸孝旨と、正直な話、身長制限がなく、日本を代表するプレイヤーを集めたとしても、このメンバーになるんじゃないか?と思うほど、豪華なメンバーが集結しています。

今回のアルバムは、メンバーのうちの河村"カースケ"智康、佐橋 佳幸、根岸 孝旨の3人が還暦になったのを記念して、4年ぶりに復活して開催された2021年8月13日に豊洲PITで行われたライブの模様を収録したライブアルバムです。「日本の名曲演ってます」というサブタイトル通り、邦楽の有名曲をカバーしたアルバム。最後にはMC集も収録されており、MC集によれば、邦楽オンリーになったのは、著作権の事情もあったとか・・・。また、チャイチーズのメンバーがオリジナルにも参加しているような曲もあったりして、「本物の偽物」なんていう表現もしたりしていました。

カバーしている楽曲は、主に70年代から90年台にかけての曲がメイン。「六本木心中」「悲しい色やね」のような歌謡曲テイストの強い曲から、「アジアの純真」「サヨナラ」(GAO)のような、J-POP黄金期に大ヒットした懐かしい曲までズラリと並んでいます。ここ最近の曲がほとんどなかったのは残念ですが、メンバーにとってなじみのあるような曲がメインということなのでしょう。

日本を代表するようなプレイヤーがズラリと顔をそろえたバンドなだけに、演奏力に関しては全く問題ありません。一方、歌唱力に定評のある根本要なだけに、あらゆるタイプの楽曲をいともたやすくカバーしてしまっています。特に「あなたに会えてよかった」のような女性アイドルの楽曲もオリジナルコードで難なくカバー。「六本木心中」のようなパワフルなボーカルが必要な曲も全く違和感なく、演奏力についてもむしろオリジナルより上では?とすら感じられる部分も。そのメンバーの実力に舌を巻くカバーに仕上がっています。

ただ一方、カバーは基本的にアレンジはオリジナルに忠実。ザ・チャイチーズなりの解釈はほとんどありません。そういう意味ではコピーとまではいかないものの、豪華なカラオケといったイメージ。まあ、確かに企画的ユニットに、ユニークな楽曲の解釈を求めるのも酷かもしれませんが、ただ、これだけ豪華なメンバーがあつまったバンドなだけに、ちょっと残念にも感じました。

企画モノのバンドなだけに、今後もコンスタントに活動を続けるかどうかは微妙ですが、メンバーの相性も良いみたいで、次の作品にも期待できるかも。身長が低いメンバーに関係なく、日本の名プレイヤーたちが集まった豪華なライブアルバムでした。

評価:★★★★

そしてスタレビは、同時期におなじみのライブアルバムもリリース!

Title:Mt.FUJI 楽園音楽祭2021 40th Anniv.スターダスト☆レビュー Singles/62 in ステラシアター
Musician:スターダストレビュー

こちらは2021年7月31日に河口湖ステラシアター野外音楽堂にて開催された「楽園音楽祭2021 40th Anniv. スターダスト☆レビューSingles/62」のライブ音源を収録したもの。ほぼ毎年、ライブツアーを実施しているライブバンドの彼らですが、2020年のライブツアーがコロナ禍のため中止になったため、約2年ぶり、コロナ禍以降初となるライブツアーとなりました。

コロナ禍の中ということもあって、声出しNGでのライブ。ただ、そんなステージでも、CD音源を通じてでもしっかりと観客の盛り上がりを感じさせるのはさすがといった感じ。収録曲は全曲シングル曲だそうですが、久しぶりのライブということもあってメンバーも楽しそうに演奏している印象も。ライブバンドとしての魅力もしっかり感じられるベスト盤でした。

評価:★★★★

スターダストレビュー 過去の作品
31
ALWAYS
BLUE STARDUST
RED STARDUST

太陽のめぐみ
B.O.N.D
Stage Bright~A Cappella & Acoustic Live~
SHOUT
スタ☆レビ-LIVE&STUDIO-
還暦少年
STARDUST REVUE 楽園音楽祭 2018 in モリコロパーク
スターダスト☆レビュー ライブツアー「還暦少年」
年中模索
STARDUST REVUE「楽園音楽祭 2019 大阪城音楽堂」


ほかに聴いたアルバム

X/MY FIRST STORY

ONE OK ROCKのtakaの弟、Hiro(ということは森進一、昌子の子ども)率いるロックバンドMY FIRST STORYのベストアルバム。ONE OK ROCKに勝るとも劣らないダイナミックなロックサウンドが強いインパクトを持っており、メランコリックなメロディーラインも大きな魅力的な反面、メロディーラインは哀愁メロ一本やりな部分が強く、その点に物足りなさを感じる部分も。ただ、最近のアルバムでは楽曲のバリエーションも増えてきている感があるため、このベスト盤を区切りに今後の活躍に期待したいところです。

評価:★★★★

MY FIRST STORY 過去の作品
ANTITHESE
V

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2022年10月13日 (木)

女王、降臨

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

見事、あの女王のベストアルバムが1位降臨です。

今週1位は松任谷由実「ユーミン万歳!~松任谷由実50周年記念ベストアルバム~」が獲得。CD販売数及びダウンロード数で1位、PCによるCD読取数で2位を獲得。タイトル通り、1972年のデビューからちょうど50年を迎えた彼女のオールタイムベスト。ユーミンのオールタイムベストって、この間、リリースしたばかりじゃないか?と思ったのですが、先のオールタイムベスト「日本の恋と、ユーミンと。」から、もう10年も経つのですね・・・時の流れの早さに自分も歳を取ったなぁ、とあらためて思ってしまいました・・・。オリコン週間アルバムランキングでも初動売上19万枚で1位獲得。直近作はオリジナルアルバム「深海の街」で、同作の初動4万7千枚(3位)からは大きくアップ。ただ、オールタイムベストの前作「日本の恋と、ユーミンと。」の初動33万6千枚(1位)からはダウンしています。

2位は高橋優「ReLOVE&RePEACE」が獲得。CD販売数2位、ダウンロード数10位、PCによるCD読取数37位。タイトル的にはリメイクしたセルフカバーっぽいタイトルですが、こちらは約2年ぶりとなるオリジナルアルバム。オリコンでは初動売上1万9千枚で2位初登場。前作「PERSONALITY」の初動2万3千枚(6位)よりダウンしています。

3位にはAdo「ウタの歌 ONE PIECE FILM RED」が先週の5位からランクアップしてベスト3返り咲き。まだまだ強さを感じさせる結果となりました。これで9週連続ベスト10ヒット&通算8週目のベスト3ヒットとなります。

続いて4位以下の初登場盤となります。まず6位に「FINAL FANTASY XIV:ENDWALKER-EP2」がランクイン。ダウンロード数で2位を獲得。オンラインPRG「ファイナルファンタジーXIV」の拡張パック「暁月のフィナーレ」のアップデートパッチ6.2「禁断のメモリア」の中で使われている楽曲を収録した、配信限定のミニアルバムです。

7位にはXIUMIN「Brand New」が先週の33位からランクアップ。CDリリースに合わせてのベスト10入りです。CD販売数5位、その他は圏外で、総合順位はこの位置に。韓国の男性アイドルグループEXOのメンバーによるソロデビュー作。オリコンではフライング販売があった影響でベスト10圏外からランクアップし、7千枚を売り上げて6位にランクインしています。

9位初登場は、手越祐也「Music Connect」。元NEWSのメンバーで現在はフリーランスで活動している彼のミニアルバム。CD販売数9位、ダウンロード数6位、PCによるCD読取数75位。オリコンでは初動売上4千枚で9位初登場。前作「NEW FRONTIER」の初動1万1千枚(8位)からはダウンしています。

最後10位には韓国の男性アイドルグループStray Kidsのミニアルバム「MAXIDENT」がランクイン。10月13日リリース予定のミニアルバムからの先行配信で、ダウンロード数で5位にランクインし、総合順位もベスト10入りを果たしました。

今週のHot Albumsは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2022年10月12日 (水)

ついにAdo陥落

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

永らくHot100を席巻してきたAdoでしたが、今週は軒並みランクダウンという結果となっています。まず先週まで2週続けて1位だった「新時代(ウタ from ONE PIECE FILM RED)」は3位にランクダウン。「私は最強(ウタ from ONE PIECE FILM RED)」が3位から5位、「ウタカタララバイ(ウタ from ONE PIECE FILM RED)」が6位から8位、「逆光(ウタ from ONE PIECE FILM RED)」が8位から10位といずれもランクダウン。ストリーミング数は1位こそ「新時代」が獲得したものの、「私は最強」は2位から3位に、「ウタカタララバイ」は4位から5位に、「逆光」は6位から7位に、それぞれダウンしてしまいました。

とはいえ、今週もやはり4曲同時ランクインという快挙を達成。「新時代」は18週連続のベスト10&10週連続のベスト3ヒットと記録を伸ばしていますし、「私は最強」「ウタカタララバイ」「逆光」いずれもベスト10ヒットを連続9週に伸ばしています。まだまだAdoの強さは目立つチャートとなっています。

一方、1位を獲得したのはSKE48「絶対インスピレーション」。CD販売数1位、ラジオオンエア数5位、PCによるCD読取数22位、Twitterつぶやき数14位。オリコン週間シングルランキングでも初動売上22万5千枚で1位初登場。前作「心にFlower」の初動21万3千枚(1位)よりアップ。

2位にはYOASOBI「祝福」が先週の14位からランクアップし、初のベスト10入り。TBS系アニメ「機動戦士ガンダム 水星の魔女」オープニングテーマ。ダウンロード数1位、ストリーミング数6位、ラジオオンエア数8位、Twitterつぶやき数9位、You Tube再生回数4位を獲得し、総合順位では2位にランクインしています。

今週の初登場曲はこの2曲のみ。続いてはロングヒット曲ですが、まずTani Yuuki「W / X / Y」。今週は5位から2ランクダウンの7位にランクイン。先週ベスト10入りした「もう一度」は13位にダウンしており、2週連続2曲同時ランクインはなりませんでした。なお、「W / X / Y」はこれで27週連続のベスト10入りとなります。

さらに、ここに来て再び粘りを見せているOfficial髭男dism「ミックスナッツ」は先週から変わらず9位をキープ。こちらはこれで26週連続のベスト10ヒットとなりました。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

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2022年10月11日 (火)

SPレコード収集のバイブル

昨日に引き続き、今回も最近読んだ音楽関連の書籍の紹介です。

今回読んだのは、音楽評論家・レコード史家で、当サイトでも時々紹介しているSPレコード復刻専門レーベル「ぐらもくらぶ」での選曲・監修を行っている毛利眞人氏による「SPレコード入門〜基礎知識から史料活用まで」。SPレコードとは、主に戦前に流行したレコード盤の企画。最大収録時間が4分程度の長さで、戦後には、今も販売されているLPレコードやEPレコードに取って代わられるのですが、戦前には数多くのSPレコードがリリースされ、現在も多くのSPレコードのコレクターが存在します。そんなSPレコードについて詳しく紹介した1冊が本書です。

個人的には、特にSPレコードを収集している訳でもなく、また、SPレコードを聴くような予定もないのですが、ぐらもくらぶからリリースされるSPレコード復刻のオムニバスを好んで聴いており、主に戦前に流通したSPレコードとはどんなものなのか興味があり、この本を手に取ってみました。そんな訳で、「入門」というタイトルからイメージされる通り、SPレコードの「入り口」に触れようとして読んだ1冊でしたが、この本、予想以上に濃い内容になっていました。

序章のSPレコードとは何か、という点からスタートし、第1章ではSPレコードの買い方や保存方法、さらに第2章ではレコードの歴史や、戦前のレコードレーベルの変遷などが書かれています。特に第2章で描かれるレコードの成り立ちや戦前のレコード会社の話などは、SPレコードに直接興味がなくても、興味深い内容になっています。

それが徐々に深く、濃くなっていくのは第3章から。第3章では「SPレコードの基礎知識」としてSPレコードの材質やら回転数やら歌詞カードやら、SPレコードにまつわるあれこれについて語られています。個人的にはじめて知って興味深かったのが、音楽の「アルバム」の語源。SPレコードを複数枚まとめて写真のアルバムのように発売していたのが、「アルバム」と呼ばれる語源だったということを今回はじめて知りました。

そして第4章以降、かなり深く、濃い内容になってきます。レーベルから読み取れる情報やさらにレコードに刻まれる刻印から読み取れる情報、それによって録音や製造の時期、版数まで読み取れるそうですが、まさにかなりマニアックな領域。さらにSPレコードの情報をより細かく入手するためのディスコグラフィーやデータベースの紹介まで行われており、「入門」というタイトルながらも、SPレコードを集めようとする人が必要とする情報をほぼ網羅するような、かなり広く、濃く、奥深い内容になっていました。

正直なところ、特に後半に関しては、コレクターでもなく、収集を行う予定もない自分にとっては、あまり直接興味のない内容ではあったのですが、それでもSPレコードの世界の奥深さに触れることが出来る内容だったと思います。また、この本、私の家の近くの書店でも置いてあったように、広く販売され、簡単に手に取れるような本であるにも関わらす、これだけマニアックとも思える情報まで網羅されている点も驚かされます。おそらく「SPレコード入門」というタイトルながらも、収集を行う人にとっては、バイブル的に中級者・上級者も活用できる内容ではないでしょうか。まさにSPレコードコレクターにとっては決定版ともいえる1冊のように感じます。

これを読んでみても、さすがにコレクションをしようとまでは思いませんが、この本を読んで、ちょっとSPレコードを手にとってみたいな、と思わせる1冊でした。SPレコードを集めたいと思っている人がいれば必読の1冊。そうでなくてもSPレコードに興味があれば、読んでみて損のない内容です。マニアックな部分もありつつも、SPレコードの奥深い世界に触れられた1冊でした。

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2022年10月10日 (月)

数々の興味深いエピソードに惹きこまれます。

今回は最近読んだ音楽関連の書籍についての紹介です。

今回紹介するのは、「黒人ばかりのアポロ劇場」(原題:UPTOWN:The Story Of Harlem's Apollo Theatre)という本。「アポロ劇場=アポロ・シアター」については、少しでもブラック・ミュージックに興味がある方なら、ご存じでしょう。ニューヨークはハーレムにある劇場で、様々な黒人ミュージシャンがその舞台を踏んできた、ある意味、ブラック・ミュージックにとっては「聖地」とも言える劇場。本書は、そんなアポロ・シアターの支配人だったフランク・シフマンの息子、ジャック・シフマンがアポロ・シアターにおける数々のエピソードを綴った1冊。もともとは1971年に発行され、1973年に武市好古の訳により日本でも発刊。名著として知られていましたが、その後、廃刊に。そんな作品が、その当時の訳文そのままに、このほど復刊されました。

そんなアポロ・シアターの物語が描かれているのが本書。前述の通り、アポロ・シアターの歴史を論文的な構成で綴られた作品、ではなく、アポロ・シアターでの様々なエピソードを紹介した作品になっています。アポロ・シアターについて編年的・論理的に書かれた作品ではないため、「アポロ・シアターの歴史」を学ぶにはちょっとわかりにくい部分もあります。ただ、様々な、それこそ人間味あふれるエピソードがつづられているだけに、アポロ・シアターがどのような劇場であったか、どのような雰囲気であったのかは、非常に良くわかる内容になっていました。

特に「第一幕 おれたちの劇場」では、アポロ・シアターがどのような劇場であったのかが、具体的な描写をまじえながら表現しているのですが、どのような劇場であったのか、本を読んでいる私たちにとっても、その風景が浮かんでくるような描写が見事。読んでいながら、まるでアポロ・シアターを訪問したかのような、そんな気持ちにすらさせられる章となっています。

「第二幕」以降は、それぞれ、様々なテーマに沿って、アポロ・シアターにまつわるエピソードを紹介しています。アポロ・シアターというと、特にソウルのミュージシャンたちが数多くその舞台に立ってきた・・・というイメージがあるのですが、この本を読むと、むしろソウル・ミュージシャンたちについては、その歴史の最後の方のページに少しだけ登場するだけ。むしろビックバンドやジャズ、ダンサーやコメディアンといった、音楽以外のジャンルを含む、様々なパフォーマーがそのアポロ・シアターの舞台に立ってきたということが、数多くのエピソードを通じて感じられます。

数多くのエピソードに彩られながら、戦前から戦後にかけての、非常に幅広いアメリカの黒人エンタテイメント界の状況がよくよく理解できる一冊。エピソードメインの内容なので非常に読みやすかったですし、もちろん私も知らないことだらけで、終始、非常に楽しめた1冊でした。もともとの発行が1971年ということで、それ以降の話はもちろん登場しないのですが、アポロ・シアター自体、この後1975年に資金難のために一度閉鎖されているため、アポロ・シアターについて取りまとめた本としてはちょうどよいタイミングだったかもしれません。

「名著」と呼ばれるにふさわしい1冊で、ブラック・ミュージックが好きなら、文句なしに楽しめる作品ですし、これはまずは「読むべき1冊」のようにも感じました。興味深いエピソードの数々に、一気に惹きこまれること間違いなしの作品でした。

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2022年10月 9日 (日)

チバユウスケ、大いに歌う

Title:SINGS
Musician:YUSUKE CHIBA-SNAKE ON THE BEACH-

元ミッシェル・ガン・エレファント、現在はThe Birthdayで活躍しているボーカリスト、チバユウスケのソロプロジェクト、SNAKE ON THE BEACH。その4枚目となるオリジナルアルバムがリリースされました。いままでの彼のアルバムは比較的、サウンドの面で挑戦したアルバムが多かったのですが、今回のアルバムはタイトル通り、「歌」にフォーカスしたアルバム。その結果、ボーカリスト、チバユウスケの魅力が存分に発揮されたアルバムになっていました。

今回のアルバムは、全体を通じてヘヴィーでノイジーなギターサウンドが鳴り響くガレージロックの作品に。1曲目「ムーンライト」からして疾走感あるギターロックでスタートしつつ、続く「星粒」は力強くダイナミックなバンドサウンドをバックに、彼がゆっくりと歌いあげる作品。そして3曲目「恋人」は非常に分厚くヘヴィーなバンドサウンドが空間を切り刻むような作品となっており、ミッシェル時代からのチバユウスケのファンにとっては、たまらなくカッコよさを感じる楽曲になっているのではないでしょうか。

ダークなギターをバックに哀愁感たっぷりに聴かせるミディアムナンバー「新宿」も、ある意味非常に彼らしさを感じる作品。さらに「BEER&CIGARETTES」はヘヴィーなギターリフを背景にビールとタバコを(おそらく)片手に男2人が語り合っているというユニークなナンバー。こちらもくすんだ雰囲気が非常にカッコいいナンバーに。ちなみにこれ、ゲストではなくチバユウスケ2人が語り合っているというスタイル?

さらに後半で印象深かったのが「星の少年」。おそらく亡くなった友人に対してささげた1曲で、ノスタルジックな感じがあふれるパンキッシュな楽曲が大きなインパクトとなっています。そして「ベイビーアイラブユー」「ラブレター」とロマンチックなラブソングが続き、ラストの「M42」もシンプルなギターサウンドをバックに悲しく歌い上げるチバユウスケの歌が強く印象に残る作品。ある意味、反戦歌にも、このコロナ禍の世界を読み込んだようにも受け取れる歌詞も印象的で、メランコリックなメロディーラインとチバユウスケの歌声が大きなインパクトとなっています。

以前のSNAKE ON THE BEACHのアルバムレビューで、チバユウスケの声はガレージロックやパブロックのスタイルにピッタリマッチしていると書きました。今回のアルバムに関しては、そんなチバユウスケの声にピッタリとマッチしたサウンドの曲が並んでいました。おそらくミッシェル時代からのファンも、The Birthdayからのファンも、「そうそう、こんなチバユウスケのアルバムを聴きたかった!」と思えるようなアルバムではないでしょうか。もちろん、良くも悪くも予想の範囲を出ていない、という部分は否めないものの、その点を差し引いても文句なしにそのカッコよさに耳を奪われた、そんな傑作アルバムでした。

評価:★★★★★

SNAKE ON THE BEACH 過去の作品
DEAR ROCKERS


ほかに聴いたアルバム

FIT/堂島孝平

約2年半ぶりとなる堂島孝平のニューアルバム。メランコリックさを感じさせる軽快でポップなメロディーラインは、メロディーメイカーとしての堂島孝平の魅力をしっかりと感じさせる作品。一方、全体的にシンセのアレンジを前に押し出したシンセポップのアルバムとなっているのですが、このシンセのアレンジが、どうにも平凡というか、ちょっとチープに感じてしまった印象も。そのため、アルバム全体としてはいまひとつ印象が薄くなってしまったのが残念に感じました。

評価:★★★★

堂島孝平 過去の作品
UNIRVANA
VIVAP
Best of HARD CORE POP!
A.C.E.
A.C.E.2
シリーガールはふり向かない
フィクション
オモクリ名曲全集 第一集 堂島孝平篇
VERY YES
BLUE-FANTASIA

酸欠少女/さユり

「酸欠少女さユり」をキャッチコピーにデビューしたシンガーソングライターによる2枚目のフルアルバム。鬱屈した感情を力強いバンドサウンドにのせて歌い上げるスタイルはそれなりにインパクトはあるものの、ちょっと乱暴にカテゴライズしてしまうと、「陰キャ女子の心の叫び」という分野では、Adoがブレイクしちゃっている中、ちょっと彼女の個性は弱くなってしまっている印象も。かといって大森靖子ほど狂った感じにも走っていないし、悪いアルバムではないのですが、あと一工夫ないと厳しいのではないかな、と感じてしまったアルバムでした。

評価:★★★

さユり 過去の作品
ミカヅキの航海

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2022年10月 8日 (土)

大きな試練を乗り越えて

Title:The Alchemist's Euphoria
Musician:KASABIAN

デビューアルバム「Kasabian」でいきなり全英チャート4位を獲得し、注目を集めたロックバンドKASABIAN。2作目「Empire」では全英チャート1位を獲得し、その後、前作「For Crying Out」まで5作連続チャート1位を記録し、一躍、イギリスの国民的バンドとなりました。しかし、そんな彼らに大きな試練がおそいかかりました。2020年にメインボーカル、トム・ミーガンが妻への暴行により有罪判決を受け、それに伴いバンドも脱退。バンドの「顔」とも言うべきメインボーカルの逮捕はバンドに大きな衝撃を与えました。

そんな中、前作から5年、トム・ミーガン脱退から2年という歳月を経て、いままでツインボーカルとしてトムと共にボーカルをとっていたセルジオ・ピッツォーノをメインボーカルに起用し、ニューアルバムリリースにたどり着きました。そうして無事リリースされたニューアルバムは、どこかある種の懐かしさを感じさせるアルバムになっていました。

哀愁感たっぷりに歌い上げる「ALCHEMIST」からスタート。この曲もノスタルジックな雰囲気が魅力的でしたが、続く「SCRIPTVRE」はミクスチャーロックのナンバー。90年代後半あたりのサウンドを彷彿とさせるラップメタルのナンバーで、今となってはある種の懐かしさを強く感じます。

その後もノイジーなギターリフを主導にダイナミックに聴かせる「ALYGATYR」などは、まさに2000年代に流行ったようなオルタナ系のギターロックの王道を行くようなナンバー。「STARGAZR」もエレクトロチューンなのですが、このトランス風のアレンジも、今どきというよりはちょっと一昔前を行くようなサウンド。そういう意味でも強く懐かしアを感じさせます。

アルバム全体としては、そんな感じである種の王道を行くようなオルタナ系ギターロックを軸にしつつ、リズムマシーンなどを多く導入。さらに途中にエレクトロチューンを挟んでくるなど、ここらへんのエレクトロサウンドを用いたバリエーションの持たせ方も、2000年代に流行ったバンドっぽいなぁ、というのを強く感じます。

こんな「懐かしいサウンド」という言い方をしてしまうと、目新しさもなく陳腐な・・・という言い方をイメージしてしまうかもしれません。正直、そういう側面もなきにしもあらず、といった感は否定できません。ただ、前作もそうでしたが、難しいこと抜きに、ポップなメロディーラインとダイナミックなバンドサウンド、そしてエレクトロサウンドを楽しめるアルバムになっていました。前作ほどの傑作ではなかったのですが、ただ本作も間違いなく傑作アルバムと言える作品に仕上がっていたと思います。

そして今回のアルバムも見事全英チャートで1位を獲得。チャート1位記録をさらに伸ばしました。メインボーカルのチェンジという大きな試練を乗り越えた彼ら。今回のアルバムは、新たな彼らの一歩として文句ない作品だったと思います。これからのKASABIANの活躍も楽しみになってくる作品でした。

評価:★★★★★

KASABIAN 過去の作品
West Ryder Pauper Lunatic Asylum
VELOCIRAPTOR!
48:13
FOR CRYING OUT LOUD


ほかに聴いたアルバム

KEYSⅡ/Alicia Keys

最初はアルバム「KEYS」の続編的なアルバムかな、と思い、聴き始めたのですが、「あれ?これ以前も聴いたぞ…」と思い出し、調べてみると、「KEYS」に新曲2曲、リミックス2曲、配信限定でリリースされた曲5曲を加えただけのデラックスエディションでした・・・。最近、こういう「2度買わせ」商法が多いような気がするのですが、ストリーミングがメインとなった今、こういうアルバムをリリースしても、新曲部分だけつまみ食いできるから、ということなのでしょうか?「KEYS」自体が傑作だっただけに本作も申し分ない内容。ただ「KEYS」を聴いた人は、ストリーミングで新曲だけつまみ食いすれば十分かと。

評価:★★★★

Alicia Keys 過去の作品
As I Am
The Element Of Freedom
Girl On Fire
HERE
Alicia
KEYS

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2022年10月 7日 (金)

2週連続1位獲得

当方の都合により、1日遅れの更新となります。

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週は大物の新譜もなかった影響もあり、2週連続1位獲得となりました。

先週に引き続き1位を獲得したのはSnow Man「Snow Labo. S2」。CD販売数は2位にダウンしましたが、PCによるCD読取数は1位をキープ。総合順位も1位となりました。オリコンでも3万6千枚を売り上げて、2週連続1位を獲得しています。

2位はラッパーZORN「RAP」が初登場。CD販売数は22位、PCによるCD読取数は47位ながらもダウンロード数で見事1位を獲得し、ベスト3入りを果たしています。フルアルバムとしての前作「新小岩」も、CD販売数は20位ながらもダウンロード数で1位を獲得し、総合順位で見事1位を獲得しているなど、典型的に配信主導の売り方をしているのですが、本作もCDはほとんど売れていないのに対して、ダウンロード数の売上で見事ベスト3入りを果たしています。今後はこういう売れ方をするミュージシャンがどんどん増えていきそうですね。オリコン週間アルバムランキングでは初動売上2千枚で24位初登場。直近作はセルフカバーアルバム「Tuxedo」はオリコンはベスト100圏外という結果になっています。また、オリジナルアルバムでの直近作はミニアルバム「925」で同作の1千枚(38位)よりはアップ。フルアルバムの前作「新小岩」の1千枚(36位)からもアップ。配信主導の売り方とはいえ、さすがにCDの方も売上枚数を増やしているようです。

3位は先週2位のNCT127「2 Baddies」がワンランクダウンながらもベスト3をキープしています。

続いて4位以下の初登場盤ですが、まず4位にハロプロ系アイドルグループBEYOOOOONDS「BEYOOOOO2NDS」がランクイン。CD販売数3位、ダウンロード数3位、PCによるCD読取数8位。タイトル通り、2枚目となるアルバム。オリコンでは初動売上2万5千枚で3位初登場。前作「BEYOOOOOND1St」の2万6千枚(3位)からは微減。

6位にはフランシュシュ「ゾンビランドサガ リベンジ フランシュシュ The Best Revenge」が初登場。CD販売数7位、ダウンロード数4位、PCによるCD読取数18位。佐賀県を舞台として活躍するアイドルを描いたアニメで、フランシュシュは同アニメに登場する架空のアイドルグループ。本作は第2期のベストアルバムとなります。オリコンでは初動売上7千枚で7位初登場。前作「ゾンビランドサガ フランシュシュ The Best」の2万6千枚(4位)からは大きくダウンとなりました。

7位初登場は「『ウマ娘 プリティーダービー』WINNING LOVE 08」。CD販売数6位、ダウンロード数9位、PCによるCD読取数19位。アプリゲーム「ウマ娘 プリディーダービー」に収録された曲をまとめたサントラ盤。オリコンでは初動売上7千枚で5位初登場。同シリーズの前作「『ウマ娘 プリティーダービー』WINNING LIVE 07」の8千枚(9位)から微減。

9位にはアメリカのヘヴィメタルバンドSlipknot「The End,So Far」がランクイン。CD販売数12位、ダウンロード数5位、PCによるCD読取数37位。オリコンでは初動売上5千枚で11位初登場。前作「We Are Not Your Kind」の初動9千枚(9位)からダウンしています。

初登場最後は10位に声優、東山奈央「Welcome to MY WONDERLAND」がランクイン。CD販売数8位、ダウンロード数38位、PCによるCD読取数40位。オリコンでは初動売上6千枚で8位初登場。直近作はコンセプトミニアルバム「off」(4位)で、同作からは初動売上横バイとなっています。

今週はベスト10圏外からの返り咲き組も。NGT48「未完成の未来」が先週の25位からランクアップし、13週ぶりにベスト10返り咲き。おそらく通販分のCD売上を加算した影響と思われます。

また、ロングヒット盤としてはAdo「ウタの歌 ONE PIECE FILM RED」が連続8週目のベスト10ヒットを記録。今週は3位から5位にランクダウンし、8週連続のベスト3ヒットは逃したものの、CD販売数は4位をキープしているほか、ダウンロード数及びPCによるCD読取数は2位にランクイン。まだまだロングヒットが続きそうです。

今週のHot Albumsは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2022年10月 6日 (木)

マスドレの魅力がつまった9曲

Title:Awakening:Sleeping
Musician:MASS OF THE FERMENTING DREGS

女性のベースボーカル+男性ギタリスト+男性ドラマーの3ピースバンド、MASS OF THE FERMENTING DREGS、通称「マスドレ」の約4年ぶりとなるニューアルバム。今回のアルバムは、レコーディングエンジニアにSiMやthe GazettE、bonobosを手掛ける原浩一、マスタリングエンジニアに、Beastie Boys「Licensed to Ill」や、Nirvana「Nevermind」、Gorillaz「Demon Days」を手掛けたHowie Weinbergという、超豪華な制作陣を擁した作品になっており、その力の入れようを感じます。また、本作ではDishcarming manの蛯名啓太とBO NINGENのTaigenをゲストボーカルとして起用するなど、新たな試みも感じさせる作品になっています。

そしてそんな力の入れようを反映するかのように、マスドレの魅力がしっかりとつまったアルバムになっています。今回も全9曲33分という比較的短いシンプルな内容になっているのですが、そんなシンプルな内容の中で、しっかりマスドレの様々な側面を感じさせる傑作アルバムに仕上がっていました。

まずメロディアスなギターロックナンバー「Dramatic」からスタート。続く蛯名啓太をゲストに迎えた「いらない」は躍動感あふれるダイナミックなバンドサウンドながらも、メロディーラインはボーカル宮本菜津子の清涼感ある声もあり、ポップにまとまっているというのはマスドレらしさを感じます。さらに続く「MELT」も切り裂くようなヘヴィーなギターサウンドの中に、メランコリックなメロディーラインが大きな魅力に。この冒頭3曲は比較的、メロディーを聴かせる要素が強く、今回は比較的ポップなアルバムになっているのか、そう感じる構成になっていました。

ただ、そこに続く「1960」でグッとアルバムの雰囲気が変わります。3ピースバンドとしての実力をこれでもかというほど発揮したインストナンバーなのですが、グルーヴィーなサウンドが非常にカッコいい1曲。前作「No New World」でも「YAH YAH YAH」という非常にカッコいいインストチューンが収録されていましたが、こちらもライブ映えしそうな、彼らのロックバンドとしての底力を感じさせる作品になっています。

さらに「Helluva」ではTaigenをゲストに迎えたミクスチャーロックのナンバー。ヘヴィーなバンドサウンドが容赦なくリスナーの耳を襲ってくるような作品になっています。中盤の2曲は、圧巻のサウンドを聴かせるロックバンドとしてのマスドレの実力をこれでもかというほど感じらる作品になっています。

後半は再び疾走感あるギターロック「Ashes」に、「鳥とリズム」はメランコリックなメロディーラインが魅力的なラブソングに。再びマスドレのポップな側面を押し出した作品が続き、ラストの「Just」は非常に分厚いギターノイズを聴かせつつ、爽やかな歌も同時に聴かせるドリーミーな作品に。また彼女たちのロックバンドとしてのダイナミズムさと、ポップなメロディーをしっかり両立させた作品で締めくくりました。

マスドレの大きな魅力である躍動感ありダイナミックなバンドサウンドと、爽やかさやメランコリックさを感じるポップなメロディーラインを両立させた作品。どちらの魅力もしっかり聴かせつつ、両者しっかりバランスの取れた構成になっている点も大きな魅力で、わずか9曲という内容ながらも、マスドレの魅力がこれでもかというほど詰まったアルバムになっています。また、レコーディングエンジニアやマスタリングエンジニアにも力を入れた影響か、非常に抜けのよくサウンドに奥行も感じさせます。その点も大きな魅力的でした。

個人的には年間ベストクラスの傑作アルバムだったように感じます。一時期はブレイク寸前とまで目された彼女たちですが、活動休止を経て、いままでに比べて若干注目度は下がってしまった感もあります。ただ、こんなアルバムをリリースするあたり、まだまだ今後、注目度が高まっていきそう。マスドレの実力をあらためて実感した傑作でした。

評価:★★★★★

MASS OF THE FERMENTING DREGS 過去の作品
MASS OF THE FERMENTING DREGS
ワールドイズユアーズ
ゼロコンマ、色とりどりの世界
No New World


ほかに聴いたアルバム

NIGHT TAPE/佐藤千亜妃

きのこ帝国のボーカリスト、佐藤千亜妃のソロ最新作は5曲入りのEP盤。きのこ帝国活動休止後の彼女のソロ作は、悪い意味でポップ寄りにシフトしてしまい、いまひとつ面白さを感じませんでしたが、今回のアルバムは全体的にアルバムタイトルに沿ったような、ちょっと気だるさもあるメロウな作風が特徴的。前作「KOE」では佐藤千亜妃にスポットを当てようとした作品でしたが、今回の作品はそれ以上に「声」に魅力を感じた作品。彼女らしさも生かしているし、この方向性はおもしろいのでは?とりあえず次のオリジナルアルバムがどのようにシフトしているのか注目したいところですが。

評価:★★★★

佐藤千亜妃 過去の作品
SickSickSickSick
PLANET
KOE

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2022年10月 5日 (水)

これで6週目の1位獲得!

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

Adoの快進撃はまだまだ続いています。

今週の1位は「新時代(ウタ from ONE PIECE FILM RED)」が2週連続で獲得。ダウンロード数は2位から3位にダウンしていますが、ストリーミング数は8週連続、You Tube再生回数は4週連続、カラオケ歌唱回数は5週連続で、それぞれ1位をキープ。圧倒的な強さを見せています。これで17週連続のベスト10ヒット&9週連続のベスト3ヒット、さらに1位獲得回数も通算6週目に伸ばしています。

以下、今週は「私は最強(ウタ from ONE PIECE FILM RED)」が3位、「ウタカタララバイ(ウタ from ONE PIECE FILM RED)」が6位、「逆光(ウタ from ONE PIECE FILM RED)」が8位と今週も4曲同時ランクイン。ただし「私は最強」は2位から、「ウタカタララバイ」は4位から、「逆光」は5位から、それぞれランクダウンしており、若干失速気味。ストリーミング数も「私は最強」は先週と変わらず2位をキープしたものの、「ウタカタララバイ」は3位から4位、「逆光」は4位から6位にそれぞれダウン。7週連続続いていたAdoのストリーミング数上位4位までの独占が、ついに崩れてしまいました。

一方で、今週で「私は最強」「ウタカタララバイ」「逆光」いずれもベスト10ヒットが8週連続に伸びました。また「私は最強」は通算6週目のベスト3ヒットに。まだまだAdoの快進撃は続きそうです。

さて初登場曲最高位は、2位に=LOVE「Be Selfish」がランクイン。指原莉乃のプロデュースによる声優アイドルグループ。CD販売数は1位でしたが、PCによるCD読取数18位、Twitterつぶやき数12位で、その他はランク圏外。総合順位も2位に留まりました。オリコン週間シングルランキングでは初動売上14万3千枚で1位初登場。前作「あの子コンプレックス」の初動14万7千枚(2位)より若干のダウンです。

続いて4位以下の初登場曲ですが、まず4位にBUMP OF CHICKEN「SOUVENIR」が初登場。テレビ東京系アニメ「SPY×FAMILY」オープニングテーマ。配信限定シングルで、ダウンロード数1位、Twitterつぶやき数3位、ラジオオンエア数5位。一方、ストリーミング数は64位に留まり、総合順位はこの位置に。

また10位にはTani Yuuki「もう一度」が先週の23位からランクアップし、ベスト10入り。ダウンロード数9位、ストリーミング数7位、ラジオオンエア数22位、Twitterつぶやき数97位。Tani Yuukiは「W / X / Y」も今週6位からランクアップし5位にランクインしており、これで26週連続のベスト10ヒットとなりました。

今週のロングヒット曲はもう1曲。Official髭男dism「ミックスナッツ」が先週の8位からワンランクダウンながらも今週も9位をキープ。これでベスト10ヒットは25週連続となっています。一方、SEKAI NO OWARI「Habit」は今週12位にダウン。ベスト10ヒットは通算19週でとりあえずはストップです。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

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2022年10月 4日 (火)

ドラマ主題歌3曲を収録

Title:瞳へ落ちるよレコード
Musician:あいみょん

約2年ぶりとなるあいみょんのニューアルバム。前作「おいしいパスタがあると聞いて」に引き続き、微妙なインパクトのあるアルバムタイトルが目を惹きます。またアルバムの中で特徴的なのが全13曲中、ドラマタイアップ曲が3曲もある点。「初恋が泣いている」「ハート」「愛を知るまでは」とドラマ主題歌が目立ち、あいみょんの楽曲とドラマ主題歌の相性の良さを伺わせます。

さて、そんなあいみょんの大きな魅力としてシンプルな歌詞とメロディーラインにあります。オルタナ系ギターロックの影響を垣間見せつつも、ベースにあるのは、90年代J-POPを通り越してむしろ70年代フォークソングにあるのでは?と思わせるほど、これが中高生に受けるのか・・・(「マリーゴールド」のヒットから4年経っているので、そろそろファンの年齢層が上にシフトしている可能性は高いのですが)と思うほど、むしろ40代や、ともすれば50代以降が気に入っても不思議ではないほど、懐かしさと暖かさを感じさせるメロとサウンドが魅力となっています。

例えば今回のアルバムでも「初恋が泣いている」はシンプルなギターロック路線ながらも切ない歌詞の描写が魅力的。

「電柱にぶら下がったままの初恋は
痺れをきかして睨んでいる」
(「初恋が泣いている」より 作詞 あいみょん)

なんていう表現は、そのシュールな表現を含めて耳に残りますし、「3636」も別れる直前の恋人どうしの日常風景が妙にリアリティーがあり、胸に響きます。ラップも取り入れた「ペルソナの記憶」などもメランコリックなメロとギターがフォーキーな雰囲気を醸し出しつつ

「オムライスの返り血を受けて
私はようやく恋の終わりに気づいた」
(「ペルソナの記憶」より 作詞 あいみょん)

という歌詞も非常にユニークで強いインパクトを覚えます。

そんな訳で、恋愛をめぐる心境を素直に、時としてユニークだったりシュールな表現を含めながら聴かせる楽曲が強いインパクト。楽曲によってはフォークロックやギターロック路線、「強くなっちゃったんだ、ブルー」みたいなメロウなシティポップ風の曲など、それなりにバラエティーを持たせつつも、基本的にはシンプルなポップソングが主軸となっています。

そんなシンプルながらもインパクトの強いラブソングを書くからこそ、おそらく冒頭に書いたように、ドラマ主題歌との相性がよいのでしょう。今回のアルバムにドラマ主題歌が3曲も収録されていたというのは、決して偶然ではないようにも感じました。いつものあいみょんから大きな変化はなく、前作以前の路線を引き継いだ作風になっているのですが、いい意味で彼女らしさが確立されており、そして安心して聴ける傑作になっていたと思います。前にも書いたけれども、こういう外連味の無いシンプルな楽曲が素直に売れているという事実はやはりうれしいもの。これからもあいみょんの活動に期待したいところです。

評価:★★★★★

あいみょん 過去の作品
瞬間的シックスセンス
おいしいパスタがあると聞いて

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2022年10月 3日 (月)

コロナ禍を描くコンセプチャルな新作

Title:story of Suite #19
Musician:AA=

ご存じ長らく活動休止中のバンド、THE MAD CAPSULE MARKETSの上田剛士によるソロプロジェクトAA=。約3年ぶりにリリースされた今回のアルバムは、作品全編を通じてひとつの物語が綴られる、コンセプチャルな作品になっています。もともとは昨年3月にリリースされた、配信ライブ「DISTORT YOUR HOME」の映像作品に同封されていたシングル「Suite #19」がきっかけ。この「Suite #19」の世界を拡大させる形で作成されたのが、このアルバムとなります。

歌詞は、世界のすべてが閉ざされる「冬」の時代を描いた物語。閉ざされた世界の中での人々の混乱や疲労を描いたり、この世界に慣れてしまいそうになる恐れを描いたり、この閉塞的な「冬」を生き抜く人を描写した作品となっています。言うまでもないかと思いますが、この冬に閉ざされた世界というのは、完全にCOVID-19によって人々の行き来も自由にできなくなり、ある意味閉ざされてしまったコロナ禍の今の時代を描写したもの。(タイトルの#19はおそらくCOVID-19から取られたんでしょうね・・・)そんな世界を、ある時は皮肉に、ある時は諦念を込めて、またある時はそんな世界の中でも感じる美しさや希望を描いており、このコロナ禍の中を生きる私たちにとって、胸に響いてくる内容と言えるのではないでしょうか。

そんな物語の世界を、緩急をつけたサウンドで描きあげているのが今回の作品。「Chapter 1_冬の到来」では静かな語りからスタート。そのまま幻想的なエレクトロサウンドを聴かせる「Chapter 2_閉ざされた扉、その理」ですが、後半は一転、メタリックなエレクトロビートが繰り広げられます。

基本的に「静」な部分はギターやストリングスでしんみり聴かせるメランコリックなサウンドに静かな語りがメイン。一方、「動」の部分はメタリックでダイナミックなバンドサウンドにボーカルのシャウトというスタイルになっています。一番典型的なのが「Chapter 7_ある日の告白、広がる銀世界 / COLD ARMS」で、この静かな語りの部分とダイナミックなバンドサウンドが交互に展開される構成になっています。

この物語の部分も含め、サウンドも含めた世界観に引きこまれる作品となっているのですが、ただ残念ながらポップな要素は薄め。ラストを締めくくる「Chapter 9_SPRING HAS COME、取っ手のない扉が見る夢、またはその逆の世界」は疾走感あるギターロックとポップなメロディーラインが流れ、彼らしい作品と言えるのですが、その他の曲に関しては、どちらかというとコンセプト先行といった感は否めません。また、サウンドに関しても、ちょっと似たような展開が多かった点も気になります。良くも悪くもAA=らしいといった感じもするのですが、全体的にまずはコンセプトを聴かせる作品になっていました。

評価:★★★★

そして、この「story of Suite #19」をライブで再現した作品もリリース。映像作品もリリースされていたのですが、そこから、「story of Suite #19」の曲をピックアップしたライブアルバムもリリースされていたので、そちらを聴いてみました。

Title:LIVE story of Suite #19 AT LIQUIDROOM 20220226
Musician:AA=

そんな訳で、タイトル通り、今年2月26日にLIQUIDROOMで行われたライブの模様を収録したライブアルバム。当日は、もちろん「story of Suite #19」以外の曲も演ったようですが、こちらでは「story of Suite #19」の9曲のみ収録されています。

ただ、正直なところ、音源としては本編から大きな変更はありません。多少、ハードな部分についてハードコア的な要素が増して、よりダイナミックな感じになったような感じがしますが、そこは生演奏ならでは、とった感じでしょうか。拍手の音は入っていますが、MCもありませんし、演奏の完成度の高さもあって、逆に本編がそのまま演奏されているといった感じになっています。もっとも、コンセプチャルなアルバムですから、本編の内容を大きく変更することは難しいんでしょうね。

そういう意味では純然たるライブアルバムを求めると本編を聴けば十分といった感じはあります。もちろん、非常に完成度の高いライブ音源になっているので、むしろ本編以上にこちらをチェックするという手もあるかもしれません。ただ、「story of Suite #19」の2枚のアルバムを通じて、AA=の訴えたいものが非常に伝わってくるように思います。そして本編ラスト「Chapter 9_SPRING HAS COME、取っ手のない扉が見る夢、またはその逆の世界」はタイトル通り、冬の終わり=コロナ禍の終わりの希望を表現した内容。コロナ禍が終息・・・というよりも共生のモードが強くなってきた昨今ですが、早くこの異常な時代が終わるといいのですが・・・。

評価:★★★★

AA= 過去の作品
#1
#2
#
4

#5
(re:Rec)
THE OIO DAY
#6

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2022年10月 2日 (日)

現在、話題沸騰中

Title:ウタの歌 ONE PIECE FILM RED
Musician:Ado

現在、ビルボードチャートHot100で、このアルバムに収録されている曲を同時に何曲もランクインさせ、話題沸騰中のシンガー、Ado。もちろんこのアルバムも大ヒット中ですが、本作は、アニメ映画「ONE PIECE FILM RED」の中でAdoが歌っている曲をまとめたアルバム。映画のサントラ的な作品ですが、楽曲はいずれもそれだけで完結している歌モノのポップソングであり、事実上、Adoのニューアルバムとして楽しめる作品となっています。映画の中でのキーパーソンとなる「ウタ」が劇中で歌っている曲のようで、この「ウタ」の歌パートをAdoが担当しているそうです。別に声優パートと歌パートをわけなくても、例えば坂本真綾なんかを起用すれば、どちらのパートも1人で行けたんじゃないの?と思ってしまうんですが、そこは大人の事情なのでしょうか。

ちなみに私は、この「ONE PIECE FILM RED」については一切見ていません。それなので基本的に映画の中でどう使用されたのかを一切考慮せず、純粋にこのアルバムを聴いた限りでの感想となりますので、その点、ご留意ください。

まず今回のアルバムで大きな特徴となっているのは、非常に豪華な作家陣が参加している点。主題歌となっている「新時代」を中田ヤスタカが提供しているほか、Mrs.GREEN APPLEの大森元貴、Vaundy、澤野弘之、折坂悠太、秦基博という豪華な作家陣がズラリと名を並べています。ただ、正直、今回の作家陣に関しては少々複雑な気持ちにもなりました。というのも、Adoのいままでの楽曲は、いわゆるボカロPにより楽曲が提供されており、ネット界という彼女の出自を現した作家陣となっていました。それが歌手としてブレイクして、「ONE PIECE」の曲を歌うとなった途端、呼び出された作家陣は「ネット界」とは無縁のポップスミュージシャンばかり・・・。今回参加している中では唯一、FAKE TYPE.がネット系に出自を持つミュージシャンのようですが、ここらへん、Adoには責任はないのでしょうが、このセレクトはいかにも「大人の事情」といった感じで、参加したミュージシャンだけ見れば、もろ手を挙げて絶賛できるような豪華な面子だけに、複雑な心境を抱いてしまいました。

また、これら豪華な作家陣を、今回のアルバムではあまり生かし切れていないようにも思いました。映画の中で統一感を持たせるためでしょうか、それとも「画」に負けないサウンドを志向したためでしょうか、全体的にアレンジが分厚く音を詰め込んだ、いかにもJ-POP的なアレンジで、のっぺりした印象を抱いてしまいます。特に折坂悠太や秦基博といえば、シンプルなアレンジが持ち味のミュージシャンだけに、彼ららしさがあまり出ていないようにも感じました。

さらにAdoのボーカルについても、緩急をつけて聴かせるところでは静かに聴かせる・・・というタイプではなく、どちらかというと力強い歌声で押し一辺倒のボーカリスト。もちろん、力強いボーカルは、決して「下手」ではないのですが、ドスを聴かせつつ、陰の部分を力強く歌い上げるタイプの曲には非常にマッチするものの、バラード系で静かに歌い上げるタイプの曲については、あまり得手ではないように感じました。その結果、全体的にも押し一辺倒なボーカルに終始してしまい、アレンジと悪い意味でマッチしてしまい、のっぺりとした印象を抱いてしまいました。

その結果、全体として一言で言ってしまうと、分厚いアレンジに、とにかく力強く押すボーカルという、良くも悪くもいかにもJ-POPといったアルバムになってしまった感があります。ただ、その点を差し引いても、ポップスアルバムとしては比較的よくまとまっていたようにも感じました。ここらへんはいかにもJ-POP的な部分が良い方にも作用した結果で、まずは楽曲としてどの曲も強いインパクトを持っているということ。主題歌「新時代」も、サビ先でインパクトたっぷり。中田ヤスタカらしいポピュラーセンスは間違いなく感じますし、「Tot Musica」にしても、これでもかというほど分厚いエレクトロサウンドはインパクトたっぷり。折坂悠太作詞作曲の「世界のつづき」にしても、ストリングスにアレンジ過剰感を覚えても、彼らしいメランコリックなメロはやはり魅力的です。

ボーカルにしても押し一辺倒とはいえ、やはりパワフルなボーカルは魅力的で、「ウタカタララバイ」や「Tot Musica」のようなドスを効かせたようなボーカルはAdoの魅力を存分に発揮していますし、どの曲もAdoの色に染めた結果、アルバム全体としての統一感も出しています。そういう意味で、「J-POP的」という表現を使いましたが、J-POPの良い面と悪い面が両方とも効果を発揮したアルバムになっていたように感じます。

ただ、全体としてはAdoの前作「狂言」の方が、よりAdoのボーカリストとしての魅力を引き出し、バランスよくアルバムとして着地させていたようにも感じました。そういう意味では、いままでのAdo同様、ボカロPをメインで起用した方が良かったのでは?とも思ってしまったのですが・・・。もっとも、逆に、ボカロP以外と組んだAdoという意味で彼女の新たな可能性も見えた、という言い方も出来ない訳ではないですが・・・。悪いアルバムではなく、確かに映画抜きにしてもヒットポテンシャルはある作品なのですが、いろいろな「大人の事情」も感じてしまった1枚でした。

評価:★★★★

Ado 過去の作品
狂言


ほかに聴いたアルバム

THE NIGHT SNAILS AND PLASTIC BOOGIE(夜行性のかたつむり達とプラスチックのブギー)/THE YELLOW MONKEY

1992年にリリースされたTHE YELLOW MONKEYのメジャーデビューアルバム。彼らのデビュー30周年を記念して、デラックスエディションがリリースされました。今回、本作をはじめて聴いたのですが、デビュー当初ながらも、グラムロックやハードロックと歌謡曲を融合させようとしたTHE YELLOW MONKEYのバンドとしての方向性をしっかりと感じられます。ただ、残念ながら両者の融合はこの時点では中途半端。変にロック方面にシフトした曲と歌謡曲的な曲がチグハグに収録されており、試みとしては良いものの、まだまだバンドとしての未熟さを感じさせます。とはいえ、バンドとしての原点を知るには最適とも言える作品。ファンならずともチェックして損のない1枚です。

評価:★★★★

THE YELLOW MONKEY 過去の作品
COMPLETE SICKS
イエモン-FAN'S BEST SELECTION-
砂の塔
THE YELLOW MONKEY IS HERE.NEW BEST
9999
Live Loud
30Years 30Hits

(Re)quest -Best of Plastic Tree-/Plastic Tree

デビュー25周年を記念したPlastic Treeのベストアルバム。今回のベストアルバムはファンからのリクエストに基づく選曲になっているそうです。メタルやハードロックの影響が強いヴィジュアル系界隈の中、数少ないオルタナ系やシューゲイザーからの影響を強く受けている彼らですが、歪んだノイジーなギターサウンドにやはり気持ちよさを感じさせる内容に。全体的にメランコリック一本やりなメロディーラインがちょっと単調のようにも感じるのですが、オルタナ系やシューゲイザーが好きなら、間違いなくチェックしておきたいバンド。通常盤2枚組のこのベスト盤は入門盤としても最適な作品です。

評価:★★★★

Plastic Tree 過去の作品
B面画報
ウツセミ
ゲシュタルト崩壊
ドナドナ
ALL TIME THE BEST
アンモナイト
インク
echo
剥離
doorAdore
続 B面画報
十色定理

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2022年10月 1日 (土)

決して目新しさはないけれども・・・

Title:Curtain Call 2
Musician:ENIMEM

ご存じ、アメリカでもっとも人気のあるラッパーとして日本でも高い知名度を誇るEMINEM。本作は、2005年にリリースされた「Curtain Call」以来2作目となるベストアルバムとなります。2009年にリリースされたアルバム「Relapse」以降の発表された曲を収録しているほか、現時点でアルバム未収録となっている最新シングル「The King&I」「From the D2 the LBC」も収録。さらには50Centと共演した未発表曲「Is This Love('09)」も収録されているなど、豪華な内容となっています。

さて、EMINEMといえば、一時期ほどの勢いはない、とはいえ、2000年にリリースされた「The Marshall Mathers LP」以来、2020年にリリースされた現時点での最新アルバム「Music To Be Murdered By」までオリジナルアルバムが9作連続チャート1位を獲得するなど、押しも押されぬアメリカを代表する大スターであり、間違いなく「セレブ」と言える1人。まず今回のベストアルバムで目立つのは、そんなアメリカを代表する大スターらしさを反映するような、超豪華なゲスト陣でした。

「Lighters」のBruno Mars、「Walk On Water」のビヨンセ、「Love The Way You Lie」「The Monster」のリアーナ、「Won't Back Down」のP!nk、「River」のエド・シーランといった超豪華なメンバーがズラリと顔を揃えています。そして彼らは楽曲の中で歌のパートを担当しているのですが、そのメロディーラインが楽曲の中で大きなインパクトとなっており、アルバムの中でも実に効果的な役割を担っています。「The Marshall Mathers LP」ではアメリカの「セレブ」を揶揄しまくっていた彼ですが、いまやすっかりそんな「セレブ」の仲間入りに・・・。ちょっと複雑な感もなきにしろあらずですが、それだけ豪華なゲストを揃えられるのは、まさに今の彼の地位を如実にあらわしているといっていいでしょう。

また、これら豪華ゲストの「歌」が大きなインパクトになったのも一つの要因でしょうが、聴いていていい意味でポップでわかりやすく、かつバリエーションが豊富というのもEMINEMの大きな魅力ですし、またこれだけ売れ続けている大きな要因だということが、今回のベストアルバムを聴いていて強く感じました。正直言って、EMINEMのラップは、今となって目新しさはほとんど感じられません。楽曲によってはトラップ的な要素を入れている作品もあるのですが、楽曲の移り変わりの激しいHIP HOPというジャンルの中では、ともすれば「時代遅れ」とすら捉えられかねない内容とも言えます。

ただ、そんな中、ラテン風なトラックにリアーナのボーカルを入れて哀愁感たっぷりに聴かせる「Love The Way You Lie」、ギターリフ主導でダイナミックでロッキンなビートが強いインパクトのある、ロックリスナーにも訴求力がある「Berzerk」、アコギも入って、「泣きメロ」とも言えるようなメロディーすら感じられる「Space Bound」、「Sound Of Silence」のフレーズをサンプリングし、悲しげに聴かせるトラックがインパクト大の「Darkness」などなど、バリエーションがあってインパクトたっぷりの楽曲が並びます。全35曲、2時間40分というボリュームたっぷりのベストアルバムでしたが、聴いていて飽きることなく最後まで一気に楽しむことが出来る内容になっていました。

「The Marshall Mathers LP」で大きな話題となって既に20年以上を経過し、すっかり「ベテランミュージシャン」の一員でもあるEMINEM。確かに目新しさはないものの、ただ、それでも今なお人気を持続し続けるその理由が十分すぎるほどわかるようなベストアルバムになっていたと思います。このいい意味でのポピュラリティーとインパクトの強さは他のラッパーにはなかなか持ちえないものでしょう。まだまだEMINEMが王者の座を維持し続けそうです。

評価:★★★★★

EMINEM 過去の作品
RELAPSE
RECOVERY

THE MARSHALL MATHERS LP 2
REVIVAL
Kamikaze
Music To Be Murdered By
Music To Be Murdered By - Side B


ほかに聴いたアルバム

I Am The Moon: III. The Fall/Tedeschi Trucks Band

「I Am The Moon」と名付けられ、全24曲を4枚のアルバムにわけてリリースする壮大なプロジェクトの第3弾。ブルースロックなどルーツロックの要素をふんだんに取り入れて、哀愁たっぷりのメロディーをゆっくり歌い上げるスタイルは、ある意味、彼らにとっての王道を行くようなスタイル。第1弾、第2弾と続き、彼ららしさを存分に押し出した良質なロックミュージックという印象でした。

評価:★★★★

TEDESCHI TRUCKS BAND 過去の作品
Revelator
MADE UP MIND
Let Me Get By
Signs
I Am The Moon:Ⅰ.Cresent
I Am The Moon:Ⅱ.Ascension

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