資本主義の矛盾を突く
Tilte:God's Country
Musician:Chat Pile
いままで2枚のEPをリリースし、本作がオリジナルアルバムとしてのデビュー作となるアメリカはオクラホマ・シティで結成された4人組ロックバンド、Chat Pile。ジャンル的には「スラッジメタルバンド」にカテゴライズされるバンドで、自らを「デス・グランジ」と形容しているそうです。
アルバムは、ダイナミックでメタリックなギターとシャウト気味のボーカルを聴かせる「Slaughterhouse」からスタート。どこか不穏な雰囲気の曲調が、まずは印象に残ります。その後も非常に不穏な雰囲気のメタリックなサウンドにシャウト気味のボーカルという組み合わせの作品が続きます。続く「Why」はヘヴィーなサウンドを前に押し出していて、どちらかというとメタル的な要素が強く感じますし、「Wicked Puppet Dance」などはアップテンポなサウンドにハードコアからの影響も強く感じます。
ただ、「デス・グランジ」を自称するように、サウンド的にはむしろグランジやオルタナティブロックからの影響も垣間見えます。例えば冒頭の「Slaughterhouse」のギターの音は、どこかグランジからの影響も感じさせますし、「Anywhere」などは、そのギターサウンドとボーカルから、個人的にはPixiesにつながる要素も感じさせます。ここらへん、スラッシュメタルとカテゴライズされる彼らですが、むしろメタルをあまり好まない、グランジ、オルタナ系ロックのリスナーでも楽しめる要素は大きいのではないでしょうか。
また加えて、彼ら、作品の中に社会的な要素を多分に取り入れているそうで、もともとChat Pileというバンド名自体、オクラホマシティーにある有害な鉱業廃棄物の山に由来するそうですし、今回のアルバムタイトルも、劣悪な環境で悪名高いオクラホマシティーの刑務所に由来するそうです。
他にも「The Mask」では銃乱射事件をテーマにしていたり、「Why」ではホームレスが増えているアメリカの現状を取り上げたりと、社会的テーマ性の高い音楽も特徴的。資本主義社会の中の矛盾をついたようなイメージでしょうか。残念ながらテーマ的にはいまひとつなじみのない部分もありますし、英語詞のためストレートに伝わらない部分もあります。ただ、彼らの社会に対する怒りは、このヘヴィーなサウンドを通じて、私たちにも響いてくるものはあるようにも思います。
前述のように、スラッシュメタルというカテゴリーに留まらず、意外と幅広いリスナー層にも受け入れられそうな部分もありますし、今後にも注目したいバンドでしょう。今後は、日本でも徐々に注目が集まるかも・・・。なんとなく、この手のバンドは来年あたりのサマソニで来日、という話もある、かも。
評価:★★★★★
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