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2022年9月27日 (火)

70年代の「日本の」ロック風

Title:Into The Time Hole
Musician:GLIM SPANKY

ルーツ志向の音楽を奏でる女性ボーカル+男性ギタリストのユニット、というミュージシャン、なぜか日本では、まるで系譜のように続いていて、LOVE PSYCHEDELICO、Superfly、そして彼女たちGLIM SPANKYと、特に影響を公言していないものの、似たようなタイプのユニットが少なくありません。ただ、どのユニットも活動を続けるうちに徐々にスタイルをシフトさせ、最近では3ユニットとも、それなりに別のベクトルを向いた音楽を奏でています。

LOVE PSYCHEDELICOはそのうち、もっとも愚直にルーツミュージックを志向しているイメージ。Superflyは直近のアルバムではいきなりポップなアルバムをつくりビックリしたのですが、基本的にはハードロックや90年代J-POPを取り入れる方向にシフトしています。そんな中、比較的デビュー当初から変わらずルーツ志向のロックを奏でてきた彼女たちですが、今回のアルバムは一つの方向性を示したように感じました。それは、歌謡曲的要素を取り入れる方向性。今回のアルバムは、イメージで言えば70年代あたりの洋楽志向の日本のロックバンドをなぞったような、そんなイメージでしょうか。ルーツ志向を感じさせつつ、どこか強く感じる日本人的な歌謡曲の要素、それを強く感じさせるアルバムでした。

例えば「レイトショーへと」は気だるい感じるのロックを奏でつつ、哀愁感たっぷりのメロディーラインは日本人的なウェットさを感じさせますし、「風は呼んでいる」もメランコリックな作風で、どこか感じるフォーキーな要素は70年代的な空気感も覚えます。「未完成のドラマ」も同じく哀愁感たっぷりのメロディーラインが涙腺を刺激します。

ただ、ある意味典型的だったのがラストの「ウイスキーが、お好きでしょ」のカバーでしょう。ご存じ1991年に坂本冬美が歌った曲のカバー。竹内まりややハナレグミなど数多くのミュージシャンがカバーしており、カバー曲の定番とも言える楽曲なのですが、まさに歌謡曲なこの楽曲がアルバムの流れとしてもピッタリとマッチ。締めくくりとしてピッタリの構成となっています。

もちろんダイナミックなバンドサウンドを聴かせる「シグナルはいらない」があったり、「未完成なドラマ」でもギターリフをしっかり聴かせてくれたりとロックとしてのカッコよさはこのアルバムでも健在。ただデビュー当初からのブルース色はちょっと薄れてしまって、全体的には今まで以上にポップテイストが強くなってしまった、そんな印象も受けます。

GLIM SPANKYとしては一つの方向性を示したアルバムというようにも感じた反面、賛否はわかれそうなアルバムだったかもしれません。個人的には(いままでの彼女たちの作品にも感じていたのですが)どちらの方向性に行くにしても、もうちょっと吹っ切れた方がおもしろかったのでは?とも思ってしまうのですが、ここらへんは今後のアルバム次第といった感じでしょうか。今後、どのような方向性に彼らが進んでいくのか、試金石のようなアルバムでした。

評価:★★★★

GLIM SPANKY 過去の作品
ワイルド・サイドを行け
Next One
I STAND ALONE
BIZARRE CARNIVAL
LOOKING FOR THE MAGIC
Walking On Fire


ほかに聴いたアルバム

PHALARIS/DIR EN GREY

約3年9ヶ月ぶりとなるDIR EN GREYのニューアルバム。非常にダイナミックなサウンドに対応するメランコリックなメロディーラインも魅力的。曲によってはストリングスやシンセを取り入れた曲も。今回のアルバムに関しては、前作同様、ヘヴィネスさが以前に比べてグッと増した印象も。一方で哀愁感たっぷりのメロを前面に押し出した歌モノも目立ち、いい意味で緩急のつけたアルバムになっていました。

評価:★★★★

DIR EN GREY 過去の作品
UROBOROS
DUM SPIRO SPERO
THE UNRAVELING
ARCHE
VESTIGE OF SCRATCHES
The Insulated World

PLASMA/Perfume

途中、ベスト盤のリリースを挟みつつ、オリジナルアルバムとしては約4年ぶりとなる新作。安定の中田ヤスタカ作詞作曲+プロデュース作で、彼らしいインパクトあるエレクトロポップが魅力的。非常にPerfumeらしさを感じる作品は、目新しさはないのですが、一方でこれだけ長く活動を続けていながら、一定以上のクオリティーを保ち続けるのはさすが。中田ヤスタカが他のミュージシャンに提供する作品は、結構良しあしがあるのですが、Perfumeに関しては軸がぶれていない感じがします。

評価:★★★★

Perfume 過去の作品
GAME
Future Pop
Perfume The Best "P Cubed"

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