謎の覆面ユニット
Title:Icons
Musician:Two Shell
今回紹介するのは、最近、イギリスで話題となっている覆面エレクトロデゥオ、Two Shellの新作EPです。海外版DOMMUNEともいえるライブストリーミングサイト、ボイラールームでの満員でのパフォーマンスが話題となり、さらにグラストンベリーへの出演を決めるなど、勢いのある活動を続ける彼ら。日本でも今後、徐々に話題となってきそうなユニットです。
今回のEPは5曲入りの作品なのですが、一言で言うと、高揚感があって非常に心地よいアルバムに仕上がっていました。1曲目の「Ghosts」は、まさにスペーシーなサウンドで、楽曲後半になるにつれ、どんどん高揚感の増してくるエレクトロチューン。続く「Pods」はちょっとダウナーな雰囲気ながらも、こちらもリズミカルで、近未来的な雰囲気の漂うエレクトロサウンドが心地よい楽曲に仕上がっています。
スペーシーなサウンドが心地よかった前半から変わって、中盤の「Dust」はトライバルなリズムで聴かせる楽曲に。後半の女性コーラスと相まって、こちらもリズミカルで高揚感ある作品ながらも、どこかエキゾチックな雰囲気が魅力的な作品になっています。続く「Memory」はサンプリングされたコーラスも心地よいリズムを奏でるリズミカルな楽曲。こちらもメタリックなサウンドが、他の曲とはちょっと異なる雰囲気を醸し出しています。
そしてラストを締めくくる「Mainframe」はリズミカルなナンバーながらも女性ボーカルをサンプリングさせつつ、ちょっとメランコリックな雰囲気で聴かせるのが魅力的なナンバーでこのEPは締めくくられています。
覆面のエレクトロユニットというと、どうしてもダフトパンクを思い出してしまいます。ただ、背景の物語性を含めて、覆面のコンセプトがはっきりとしていたダフトパンクに比べると、どうも「覆面」といっても顔を覆うマスクなどはその時々によって異なるようで、「覆面である」という以外のコンセプト性はまだあまり持っていない模様。また、サウンド的にも、王道路線といった印象で、一度聴けばTwo Shellの音である、というほどのはっきりした個性は、残念ながらいまのところまだ感じられません。
ただし一方で、終始高揚感のある心地よくリズミカルなエレクトロサウンドは大きな魅力。とにかく難しいこと抜きで、聴いていて非常に心地よさを感じる作品となっていました。そして、この気持ちよさの大きな源となっているのが、楽曲に流れるメロディーラインの心地よさでしょう。ラストの「Memory」のメランコリックなメロで、彼らのメロディーセンスの良さを実感させられますが、このセンスのよいメロディーがアルバム全体に流れており、聴いていて心地よさの大きな要因になっているように感じました。
まだ日本では無名のユニットのようですが、今後、徐々に日本でも知名度は高まってきそう。特にこの手のユニットは、比較的早い段階で来日公演とか実現しそうなので、そうなれば一気に注目度も高まるかもしれません。まだまだ2枚のEPをリリースしたのみで、謎な部分も多いユニットのようですが、これからの活躍が楽しみです。
評価:★★★★★
ほかに聴いたアルバム
Ella At The Hollywood Bowl: The Irving Berlin Songbook/Ella Fitzgerald
史上最高のジャズボーカリストの一人といわれるエラ・フィッツジェラルドが、1958年に、アメリカはカリフォルニア州ハリウッドにある野外音楽堂「ハリウッド・ボウル」で行ったライブの模様を収録したライブアルバム。今回、全貌が公開されるのは初という、かなり貴重な音源となっているようですが、まず感じるのは非常に録音状態が良いということ。今から60年以上前の録音で、かつ野外というのが信じられないほどクリアな音源で楽しめます。そして、その圧巻なエラのボーカルが楽しめるライブアルバムになっています。彼女の、時にはパワフルに、時にはしんみりと聴かせる緩急つけたパフォーマンスが実に魅力的。彼女のボーカリストとしての才能を存分に感じられるアルバムになっています。「ジャズボーカル」というカテゴリーに限らず、音楽ファンなら必聴の作品です。
評価:★★★★★
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